デジタルアシスタントは商売にどう使う? 「Amazon Alexa」などEC活用の3ポイント
旅行関連商品のネット販売を手がけるEBags、花のEC会社1-800-Flowersは、クラウド上で実行される音声アプリ「Amazon Alexa Skills」(Alexa Skills)を使用し、自社ECサイト用の音声ショッピング機能を提供、注文件数を伸ばしています。
小売事業者はデジタルアシスタントに投資すべきか?
国際ショッピングセンター評議会(ICSC)の最新調査によると、消費者の37%は買い物リストの作成、店頭で商品を受け取るための事前注文に、何らかのデジタルアシスタント(例:Siriなど)を使ったことがあることがわかりました。
会話型音声のインターフェースを提供するMindMeld社は、2017年初頭にはデジタルアシスタントを装備したデバイスが1000~1500万台も使用されるようになると推定していました。
Amazon(アマゾン)やGoogle(グーグル)のような大企業は、デジタルアシスタント技術で他社を引き離しています。そして、アマゾンは2017年3月、デジタルアシスタント技術であるAlexaの拡張機能と新しいプログラムを発表しました。
開発者が「Amazon Web Services」を使用して「Alexa Skills」(編注:クラウド内で実行されるアプリのようなもの)を無料で構築し、利用者に提供できるようにすると発表。その後、「Amazon Prime Now」でのAlexaによる音声ショッピング機能のリリースが続きました。
そんな状況下、デジタルアシスタント市場に参入する企業も増加しています。最近では、サムスンがデジタルアシスタント「Bixby」を発表しました。
消費者の関心の高まり、企業による巨額投資といった状況を見ると、デジタルアシスタント技術の普及に向けて注目が集まっていることは明らかです。しかし、今すべての小売事業者がデジタルアシスタントに投資するのは正しいのでしょうか?
最新テクノロジーを活用しているスターバックスやAdobeなどの著名ブランドや小売事業者は、ブランド構築、Webサイトへのトラフィックや売上増加、より良いカスタマーエクスペリエンスの提供のために、どのようにデジタルアシスタントを活用するのが良いか見極める時期にきています。
しかし、アマゾンが手がけているという理由で参入し、デジタルアシスタント機能を提供するべきではありません。それは無謀な賭けです。その前に、小売事業者は技術を理解。適切な枠組みを整え、それを使って何を達成したいのかを把握する必要があります。
① 目標を明確にする
消費者にデジタルアシスタントを提供する目的は何ですか? 顧客にデジタルアシスタント経由で注文して欲しいのでしょうか? または、注文した商品を追跡してもらいたいのでしょうか? もしくは、製品の詳細と在庫について質問してもらうだけで良いですか?
デジタルアシスタントは、消費者が地元の店で商品を見つけたり、重要な商品情報を提供したり、クリック&コレクトの追跡を手助けすることができます。
主要な事業開発や投資案件の時と同様に、小売事業者は一歩下がって、デジタルアシスタントで達成したい目標を定義する必要があります。スターバックスでの注文、よく利用する洗濯洗剤など、シンプルな商品やサービスについては、デジタルアシスタントを使ったショッピングではとても便利です。消費者の注文プロセスを明らかに簡素化することができるでしょう。
しかし、アパレルや専門小売業では、デジタルアシスタントによる注文は(今のところ)あまりにも複雑すぎるかもしれません。
ただ、デジタルアシスタントがそれらの小売事業者とその消費者にとって便利でないということではありません。たとえば、デジタルアシスタントは、消費者が地元の店で商品を見つけたり、重要な商品情報を提供したり、クリック&コレクトによる商品情報の追跡を手助けすることができます。
② 言語を学ぶ
すべての小売事業者にとって、「Amazon Alexa」「Google Assistant」などのデジタル音声アシスタントを研究するなら今がチャンスです。「Amazon Alexa Skills」「Google Conversation Actions」(編注:「Google Assistant」向けの開発プラットフォーム「Actions on Google」)で使用される言語に精通した人材がいる小売事業者は少ないでしょう。明確な目標を達成するためには、新しい技術でデジタルアシスタントを適切にプログラムできるように、まずは言語を理解する必要があります。
アマゾンとグーグルの両社は、無料のオンライン指導、テンプレート、特定のデジタルアシスタントのAPIを使用するための学習教材を提供しています。
プログラミングを始める前に、デジタルアシスタントと消費者がどのようにやり取りして欲しいかを決める必要があります。「洗濯洗剤がなくなりました」と話しかけたら、デジタルアシスタントが洗剤を注文してくれるだけで良いですか? それともより会話に近づけたいですか? たとえば、
顧客:「洗濯洗剤がなくなりました」
デジタルアシスタント:「洗濯洗剤Xを再注文しますか?」
顧客:「はい」
デジタルアシスタント:「洗濯洗剤Xを注文しました。」
などなど。どの言語を使用するかにかかわらず、ブランドやビジネス戦略との整合性が取れていることを確認し、一貫したカスタマーエクスペリエンスを顧客に提供できるようにしましょう。
接続を確立する
デジタルアシスタントを利用しショッピング機能を開発できるのは、アマゾンのセラーだけに限定されているわけではありません。どの小売事業者も「Amazon Alexa Skills」を簡単に作成できるのです。「Amazon Web Services」を使用すればすべて無料です。
スターバックスが実証したように、消費者はAlexa経由で直接注文することができます。EBagsと1-800-Flowersは「Alexa Skills」を使用して商品販売を促進し、注文数を伸ばしている小売事業者の好事例です。ドミノ・ピザは「Google Conversation Actions」上で独自開発し、消費者が「Google Assistant」を介してピザを注文できるようにしました。
「Amazon Alexa」「Google Assistant」と小売事業者のECサイト、または注文管理システムの接続を実現するために、小売事業者はまず適切なAPIを用意する必要があります。これらのAPIは、社内で開発する必要がある場合もあれば、プラットフォームを提供しているベンダー企業が管理している場合もあります。
これらのAPIを活用すると、簡単にECサイトとデジタルアシスタントと接続することが可能で、最小限の労力によってデジタルアシスタントと統合できます。
まとめ
大規模な投資を伴う場合、小売事業者は技術を理解するだけでなく、ブランドやビジネス戦略全体に適しているかどうかを判断する必要があります。次に、その技術が実際に消費者の役に立つかどうかを検討するために時間をかけてください。
デジタルアシスタントの技術と機能に何百万ドルも投資をすることは重要ではありません。しかし、言語を学び、枠組みを理解し、デジタルアシスタントがショッピングや小売の未来にもたらす可能性を検討し始める時がやってきています。