Digital Commerce 360 2018/1/25 6:30

音声検索を使った買い物の時代がすぐそこまでやってきています。小売事業者やブランドにとって難しいのは、音声検索による買い物にはどんなコンテンツが役立つのかを見極め、自社ECサイトのコンテンツをカスタマイズしていくことです。

音声検索はここ数年のトレンド

もうすぐ2歳になるアダムは、英語と自己流の幼児語を話します。夜になると、両親が大きな絵と文字が描かれた絵本を読みます。アダムは読み聞かせをしてもらうことで、動物や色などの名前を覚えていきます。そう、彼は毎日、言語への自信を深めているのです。

最近、アダムの家族は、彼がスマートフォンに話しかけていることに気づきました。絵本で見た牛を検索するために、「モー」とスマホに向かって言うのです。鳥が見たいときは「カーカー」と言い、羊を探すときは「メーメー」と言います。誰に教えてもらったわけでもなく、自発的にやり始めたのです。

興味深いのは、アダムがタイピングを覚える前に、音声を使ったテクノロジーを駆使していること。同時に彼は、言葉の使い方も学んでいます。言語とテクノロジーは、彼の頭の中では対になっているのです。アダムの話は、また後ほど言及しましょう。

最近、音声アシスタントが大きな話題になっています。使い方はとてもシンプルで、幼児でも利用できます。将来的に、Google(グーグル)の検索から、声で質問する検索に変わった場合、どのような変化が起きるのでしょうか?

その流れが、買い物の仕方まで変えることになったら? すでにデジタル化の波に乗り遅れている小売事業者やブランドは、この変化に対応するにはどうしたら良いのでしょうか?

音声検索の最適化は、ここ数年のトレンドとなっています。2014年にグーグルが発表した資料によると、10代の55%、成人の41%が毎日1回以上、音声検索を使っています。利用用途は主に、電話する時、行き先を探す時、テキスト入力の代替、宿題に関する質問などに音声検索機能を使っています。

10代の55%、成人の41%が毎日1回以上、音声検索を使ってい(編集部が画像を追加、出典はGoogleの発表資料
音声検索の利用用途について(画像の出典はGoogleの発表資料
  • 10代
    • 電話をするとき……43%
    • 行き先を探すとき……38%
    • 宿題に関する質問……31%
    • 音楽を聴くとき……30%
    • 映画の時間を見つけるとき……20%
    • 時間をチェックするとき……13%
  • 成人
    • 行き先を探すとき……40%
    • テキストの代替……39%
    • 電話をするとき……31%
    • 時間をチェックするとき……11%
    • 音楽を聴くとき……11%
    • 映画の時間を見つけるとき……9%

今までスマホなどに利用されていたこのテクノロジーを、自宅や家電に応用することが、グーグルとAmazon(アマゾン)の最重要課題です。

最近発表されたアマゾンの第3四半期の収支報告書内で、最も登場した単語がAlexa(アレクサ、編注:アマゾンが提供するクラウドベースの音声認識サービス)でした。私たちは、クリスマスシーズンにアレクサ関連のプロモーションを数多く目の当たりにしていますよね。

「Amazon Echo」(アマゾン エコー、編注:クラウドベースの音声認識サービス「Amazon Alexa」に対応したデジタルアシスタント)のデバイスが自宅に届けられ、さまざまな家電とつながる時、家庭内が“音声革命”の主戦場になります。すでに音声アシスタント時代に突入している今、音声認識を活用した買い物が、ビジネスの次の開拓地になるわけです。

音声認識サービス「Amazon Alexa」対応の音声アシスタント「Amazon Echo」
「Amazon Alexa」搭載の「Echo」

音声検索はビジネスシーンを急速に変える?

小売事業者やブランドが取り組まなければいけないのは、消費者が音声テクノロジーを使う際、どのようにして自然に彼らへアプローチできるのかを考え、そのための戦略を立てることです。

Webの検索結果で上位に食い込むためにブランドや小売事業者が実行できる対策は、ユニークなコンテンツを作る、価格を下げる、素敵な画像を用意する、ディスプレイ広告を行うといった施策でした。これらを音声アシスタントでどのように実現できるかは、模索状態が続いています。

位置情報サービス支援のYext社で業界分析部門の副社長を務めるデュアン・フォレスター氏は自著「音声検索が全てを変える」で次のように指摘しています。

これまでの10年がキーワードの関連性を競う競争だったとしたら、次の10年は文脈の関連性を競う競争になるでしょう。音声認識の台頭は、ビジネスシーンを急速に変えています

そう、文脈が重要なキーワードになるのです。デュアン氏は自著で、「個人が体験している文脈を瞬間ごとに捉え、意味を考えられるかどうかが、音声検索でどれくらい成功できるかどうかのカギになります」と指摘。つまり、スマホに話しかけて検索する時と、文字をタイピングして検索する時は異なる言葉を使うため、文脈にも変化が起きるということなのです。

音声検索をリードする「Amazon Alexa」

音声検索を活用した買い物は始まったばかりです。しかし、アマゾンが市場に投入している投資額を考えると急速に広がると予想できます。小売事業者やブランドにとって難しいのは、どんなコンテンツが音声認識による買い物に役立つのかを見極め、自社コンテンツをカスタマイズしていくことです。

音声を活用した買い物が最も利用されるのは、自宅ですぐに欲しいものが発生した時です。洗濯用洗剤、乾電池、おむつなどがその良い例でしょう。これらの商品では、知名度の高い有名ブランドが有利となります。消費者は、「アレクサ、乾電池をお願い」「アレクサ、洗濯用洗剤を注文して」といった内容で話しかけます。

アレクサでの検索結果に名前を出すために、小売事業者やブランドが実行できる対策があります。しかし、それらの対策について事前に知っておくべきことが2つあります。すべての小売事業者やブランドがそれらの対策を採らなければいけなくなること、そして、それらの対策は長期的に見れば大きな戦略のなかの一部でしかないことです。

アレクサの検索結果に出る方法

  • Amazon's Choice badge(アマゾンのチョイスバッジ、編注:一般的な日常的なアイテムを探すときに時間と労力を節約できるようにする機能。Amazon Alexa対応デバイス向けの機能で、特定の基準を満たす製品をAmazonが認定するもの。対象商品はAmazonプライムと考えられるという)を獲得する → アレクサの検索結果に出てくる59%のブランドは、チョイスバッジを保有している
  • Amazon.comで展開されている、Amazon Alexa対応デバイス向けの機能で、特定の基準を満たす製品をAmazonが認定する「Amazon's Choice」
    Amazon.comで「Amazon's Choice」を獲得している商品(画像は編集部がキャプチャ)
  • プライムに対応にすること。そして、売り上げを伸ばし、良いレビューを集め、評価の高い販売者に商品を売ってもらうこと
  • ベストセラー第1位を獲得すること → アレクサの検索結果では、25%のブランドがベストセラー第1位を獲得している
  • 消費者の購買履歴に残るようにする → アレクサは他の商品をすすめる際、購買履歴のデータを使っている

すでに知られている上記の基本的な項目以外では、アレクサに連携しているすべての商品リストやソーシャルメディアのプロフィール、製品パッケージなどに「(Alexaに)Ask for Us(私たちを尋ねてください)」と追加するのも良いでしょう。どのような効果があるか実際に見てみましょう。

最後に

Gartner社は、2020年までに検索の3分の1は音声で行われるようになると予測しています。

検索の半分は2020年に音声検索へ――米国の専門家が語るEC企業の音声ショッピング戦略
調査会社ComScore社では、「音声検索は2020年までにすべてのインターネット検索の半分を占めるようになる」と予測。図はセグメント別ヴァーチャルデジタルアシスタントのユニーク・アクティブ・ユーザー数 (出典はTracticaの公表資料)
青:一般ユーザー
赤:企業ユーザー
縦軸:百万人

その頃、アダムは5歳になっており、きちんと話しができるようになっているでしょう。クレジットカードやビットコインの決済方法はまだわからないかも知れませんが、正確にモバイルデバイスを使いこなし、幼稚園生らしく変わった楽しい質問を投げかけていることでしょう。

今までとは異なる考え方ができ、テクノロジーを最優先事項に置き、そして開発にリソースを割く覚悟がある小売事業者やブランドであれば、音声検索の時代がやってきても将来は明るいでしょう。

ソーシャルメディアができた時、それにどんな意味があるのかわからなかったのと同じことです。大切なのは、すべての可能性を受け入れていくことです。なぜなら今の段階では、ほとんどすべてが可能だからです。

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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