小売事業者は、オンラインとオフラインを問わず、パーソナルで関連性の高いカスタマーエクスペリエンスを提供することで消費者の注目を集め、ロイヤリティを高めていく必要があります。そのためには、より多くのデータを集め、活用するためのテクノロジーを駆使しなくてはいけません。

2017年のデジタルメディア、および小売関連のニュースを見て、実店舗展開をしている事業者は“もう終わりだ”と思ったかもしれません。先行きの暗いニュースばかりでしたが、“小売が終わった”と思うのは早計です。

2017年、ブランドや小売事業者のマーケティングに綻びが見えました。しかし、小売の復活が2017年末のテーマとして多く語られていたのも事実なのです。

ECやデジタルのマーケターがオムニチャネル時代の消費者を理解し、つながろうとするための方法として、重要な資産となる大規模なデータの活用が注目を集めています。

オフラインにおけるイノベーション、カスタマーエクスペリエンス、データコラボレーションなど、2018年のコマースマーケティングには8つのトレンドがあります。

① 動画戦争が始まった

マルチメディア化の波で視聴できるコンテンツが増加、テレビ離れを引き起こす動きはさらに続くでしょう。消費者の動画視聴時間は順調に増えていきます。

小売事業者などの広告主、出版社、メディア企業は、さまざまな形態(インフィード、動画配信サービスなどで動画の閲覧後に挿入される広告「ポストロール広告」、YouTubeの動画再生時の前に表示される6秒間のスキップできない広告「バンパー広告」など)で視聴者へアプローチできるようになるので、臨戦体制を敷かざるを得ません

② 音声ショッピングの台頭

「Goole Home」(グーグルホーム)や「Amazon Echo」(アマゾンエコー)といったスマートスピーカー市場の成長が続きます。Global Market Insights社は、2024年までに1億台のスマートスピーカーが出荷されると予測しています。

Criteoのレポート「Trade Marketing in Transition」によると、ブランドマネージャーは、音声入力やパーソナルアシスタントのデバイスが、2年後にはマーケティングをする上で主流なテクノロジーになると考えています。

2年後には主流になると考えるテクノロジー(Criteo調査)
2年後には主流になると考えるテクノロジー
音声アシスタント:アマゾン「Alexa」、アップル「Siri」、サムスン「Bixby」、マイクロソフト「Cortana」など
家庭用音声デバイス:「Amazon Echo」「Dor」「Google Home」
個人用スキャナーとして使用できるスマートフォン
IoT家電(冷蔵庫など)
食品を自動注文するIoTデバイス(「Amazon Dash」「Kwik」
RFID
出典は「Trade Marketing in Transition」

音声を活用したショッピングが増えれば、利用者ごとにカスタマイズされたお勧め商品やコンテンツを提供する音声広告が出現してくるでしょう。

同様に、顧客の興味や好みに基づいたリッチデータが広く利用できるようになるため、スマートスピーカーは新しい商品をお勧めし、新たなサービスを提供できるようになるのです。

③ ソーシャルコマースの台頭

コマースとソーシャルの境界線がさらになくなっていきます。また、複数のソーシャルメディアがソーシャルコマースの概念を広げ、自らECプラットフォームを立ち上げ始めています。

Facebook(フェイスブック)のマーケットプレイス、Amazon(アマゾン)のショッピングSNS「Spark」(スパーク)などのソーシャルサービスは、商品購入のハードルを下げるために運用されていきます。

事業者は、閉じられた各プラットフォーム内で消費者が行動していることを理解すべきです。ブランドや小売事業者は消費者と関係性を築き、プラットフォームと消費者の間で交わされるデータを上手にコントロールする必要があるということです。

④ オフラインからオンラインへのカスタマージャーニー

デジタルとリアルの世界の両方で得た大規模データを利用するには、キャンペーンと顧客データをひも付ける必要があります。小売事業者は、店舗のCRMデータを用いて、それをオンライン上でのプロモーションに活用する取り組みへ注力するようになるでしょう。カスタマイズされたパーソナルなコンテンツをオンライン上で提供すれば、商品購入につながります

大手小売事業者は、オンラインで購入された商品を店舗で受け取りやすくするため、「優先駐車スペース」「店内ロッカー設置」など、より良い受け取り方法を模索するはずです。

⑤ データのコラボレーション

先見の明があるブランドや小売事業者は、閉じられた各プラットフォーム内でのデータ集めに注視しています。そして、競争力が高くイノベーションにつながるヒントを見つけました。

Criteoが公表したレポート「Commerce Data Opportunity」によると、ブランドと小売事業者の5分の1はすでに、プラットフォームと自社のデータコラボレーションに着手。そして、消費者とつながることを目的に、個人が特定できないデータも貯めていっています。

2018年は、コンテンツのカスタマイズ、売上向上、顧客との関係構築のために、自社サイト、プラットフォーム内でさまざまなデータを集めていくことでしょう。

⑥ 商品情報の最適化

小売事業者などの広告主は、商品詳細やイメージビジュアルなども含めた、商品情報の最適化を進める方法を模索することでしょう。

商品が持つストーリーに合わせた写真、高画質の近影写真、360度のイメージといった商品詳細情報が、オンラインでのカスタマーエクスペリエンスに大きく影響します。

ECサイトやアプリなど、オンラインでのユーザー体験向上にリッチなディスプレイ広告などを利用することで、コンバージョンも改善されるはずです。

⑦ 個人データ保護規則とデータ管理

2018年5月25日に施行される欧州連合(EU)の個人データ保護規則(GDPR)は、世界中のマーケターや企業が影響を受けることになります。GDPRを遵守するには、マーケターは閲覧者のデータをより慎重に取り扱う必要があります(たとえばEU圏内の個人情報を扱う越境取引など)。

ブランドや小売事業者が持つ商品情報、ユーザー発信のコンテンツと購買情報を統合する上で、データ管理は今までにないほど重要になっていますが、今後はさらに慎重な取り扱いが求められます。

⑧ 買収とパートナー提携

直近6か月間で、大手小売事業者の買収やパートナー提携がありました。アマゾンとWhole Foods Market, Inc.(ホールフーズ)、アマゾンとKohl's、Walmart Inc.(ウォルマート)とGoogle Expressサービスなどです。

2018年は、多くの小売事業者やブランドが、ビジネス拡大やオペレーション強化を目的に、戦略的買収や競争力向上につながるパートナー提携を模索するでしょう。

オフラインとオンラインをつなげる方法を探る企業は、パートナー提携などから貴重な価値を見出すはずです。

アマゾンと戦うということは、「自分イチから作る」ことよりも、「企業を買う」ことを意味しています

まとめ:2018年の戦い方

オムニチャネル化が進んだ現在の世界では、オンライン、オフライン両方で、パーソナル化された関連性の高いカスタマーエクスペリエンスを提供し、消費者の注目を集める必要があります。そして、ロイヤリティを高めていくのです。

そのためには、より多くのデータにアクセスし、データを活用するためのテクノロジーを駆使しなくてはいけません。一部の例外を除いて、小売事業者もブランドも、自社だけでこれを実現することは難しく、コマースエコシステムの中で信頼の置ける企業やサービスと組み、ハンデのない状況で戦う必要があります。

2018年は、データ利用でイノベーションを起こす企業向けのコマースエコシステムが台頭してくるでしょう。その中で負け組も出てきます。一方で、複数の勝ち組も登場するはずです。

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア「Internet RETAILER」の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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