KDDIから「Wowma!」にやって来たau「三太郎シリーズ」名付親の矢野副社長に聞く「これからのWowma!」
ECモール「Wowma!」を運営するKDDIコマースフォワードの副社長へ就いた元KDDI宣伝部長の矢野絹子氏。CM好感度4年連続1位となった「au」のCM「三太郎シリーズ」の名付け親でもある。今後、「Wowma!」をどう変えていくのか? ブランディングをどう仕掛けていくのか? 矢野副社長に聞いてみた。
「三太郎シリーズ」名付け親に聞く「au」CMが人気を集めた理由
――CM好感度(CM総合研究所調べ)で4年連続1位となった「au」のCM「三太郎シリーズ」は、矢野さんがKDDIのコミュニケーション本部 宣伝部長時代に手掛けたCMだと聞きました。
2015年1月1日に始まった「三太郎シリーズ」は宣伝部長時代に携わったCMで、たくさんの関係者の尽力で誕生しました。
当時、「au」の課題と言えばブランドイメージがなかったこと。KDDIの調査では、NTTドコモは「安定感」「大手」「安心」、ソフトバンクは「チャレンジング」「先進感」といったイメージが強かった。そのなかで、「au」はどうだったのか? 何をやるにも2番手、3番手というイメージを抱いていた消費者は多かったと思います。
「au」というブランドを伝えるためにどうしたらいいのか? その課題を解決するためのCMとして、「三太郎シリーズ」が誕生しました。
「三太郎シリーズ」が誕生する前の2012年に、「au」は「あたらしい自由。」というスローガンを打ち出しました。“新しい”を掲げていたけれども、抽象的でわかりにくかったかなと。このスローガンをわかりやすく訴えるために考え出されたのが「新しい昔話」をテーマにした新シリーズでした。
昔話って誰もが知っていて、固定概念化されていますよね? 桃太郎(松田翔太さん)、浦島太郎(桐谷健太さん)、金太郎(濱田岳さん)の“三太郎”が登場し、若者たちが今時の言葉で話していく――こうした新しいストーリーで昔話の概念を壊し、視聴者へ「au」の考える「あたらしい自由。」を訴えようとしました。
――「三太郎シリーズ」の好感度が高い要因はどのように考えていますか?
親しみや意外性ではないでしょうか。桃太郎や浦島太郎、金太郎は、小さいお子さんから、おじいさん、おばあさんまで知っている昔話。「その昔話は本で読んだことがある」という親しみ……でも、「本で知っていた内容と違うぞ」という意外性。これが話題や好感度を集めたと考えています。
CMは、“三太郎”が楽しそうに会話をし、最後に商品やサービスのことに触れるといった構成です。商売っ気をなくし、CMっぽさを押さえたところも良かったのかもしれません。
「三太郎シリーズ」はTVCMでスタートしましたが、同時にネットにも波及していきました。たとえば、桐谷健太さんが歌うCMソング「海の声」。TVCMでは15秒や30秒が一般的ですが、Webサイトにフル楽曲を用意すると、徐々に視聴が拡大。年末の歌番組で桐谷さんがCMソングを歌うとネットでのアクセスが増え、カラオケで歌われるという状況に。マスメディアからネットに広がるという好循環が生まれました。
「Wowma!」の課題、今後の施策は?
――そんな矢野さんから見て、「Wowma!」のブランディングに思うところは?
「Wowma!」の特長やコンセプトを、お客さまにわかりやすく伝え、理解してもらうにはどうすればよいだろう? と考えています。
大手競合がEC市場において大きなシェアを占める中、私たちはお客さまに対して「Wowma!」の特長などをしっかりと打ち出し、理解してもらわなければ、埋没してしまいます。
店舗に足を運ばなくても商品を購入できる利便性、比較検討のしやすさ、お手頃な価格等は総合ショッピングモールとしてしっかり追求することは重要。並行して、「『Wowma!』は他のECサイトとは違うよね」と感じてもらうためのブランディングが必要となります。価格や機能だけではない特長を打ち出し、「Wowma!」を思い出してもらわなければなりません。
――ECモールのブランディングは難しそうですよね。
ECモールのプロモーションは、「名称の認知」「セール告知」「アプリダウンロード」といった手法が多いですよね。「au」のようなイメージブランディングだけでは難しいと思っています。ただ、まったく可能性がないわけではないので、チャレンジの仕方、方法はないのか模索しています。
――auショップとの連携も始めましたね。
12月1日から始まったauショップに来店されるお客さまに「Wowma!」を紹介する取り組みも「Wowma!」の認知を高めるための1つです。全国に約2500店舗あるリアル店舗は「au」の大きなアセットの1つ。auショップに来店されるお客さまは比較的多いのが50~60代の方々。デジタル施策ではアプローチしにくい層のため、大きな接点となっています。
店頭での紹介の際、「Wowma!」で販売している商品の掲載カタログ「by W」をauショップで配布しています。来店される方々の多くが手に取るカタログですが、auショップに置いてあるのは端末などに関するものが多い。今回刊行したカタログは店内では異色のテイスト。ファッション誌のように読んでもらうためのコンテンツを掲載し、来店されるお客さまの印象に残るようにという狙いです。
そして1月16日から「Wowma!」でのお買い物金額に応じて、携帯電話のご利用料金が割引になる「au通信料金還元」も始めました。
“通信料金が割安になる”と言ったような試みは、母体が通信会社の「Wowma!」だからこそできるサービスだと思っています。今までのポイント還元だけではなく「au」通信料金還元を選べることになりますので、お客さま1人ひとりに合ったサービスを提供することで、お客さまの満足度を高めていきたいと考えています。
まだECサービスの利用が習慣化されていないお客さまや「Wowma!」以外でのECサービスを利用しているお客さまに、「au」の利用料金の支払いが安くなるという明確なメリットを感じていただき、「Wowma!」を利用するきっかけ作りにつなげたいと考えています。
――「Wowma!」の課題はどのように感じていますか?
「Wowma!」の基礎的な力に大きな課題があるということを実感しています。認知度を引き上げる活動、お客さまへのアプローチを強化する活動、品質を向上させる活動――この3つの活動をしっかりやらないといけないと感じています。
2017年にテレビCMを行い、アプリのインストール数の増加などある一定の成果は出ました。その後もどのようにお客さまにアプローチしていくか検討してきましたが、まずは「au」という顧客基盤にしっかりアプローチし、サービスを磨き、ブランドを築いていく。それを強化するによって、「au」以外のお客さまにとっても使っていただきやすいサービスにつながると考えています。