仮想モールの「Qoo10」を手がけるイーベイジャパンは2月、戦略本部長に佐藤丈彦氏が就任し、次の成長ステージに向けた新たな戦略展開を開始している。越境ECビジネスを運営するイーベイ・ジャパンの社長も兼任する佐藤氏が目指す、仮想モール市場での勝ち残り策やQoo10独自の強みについて話を聞いた。

「若年層」や「越境」で優位性、人材流出を防ぐ仕組みも

――2月に戦略本部長に就任した。

「私自身、『越境EC』という言葉が生まれる前からイーベイ・ジャパンで12年ごろから日本と海外をつなぐビジネスを行ってきたが、そことも融合させることでよりオポチュニティを日本市場に持ってくることができると考えている。

この先は少子高齢化で人口自体が減少し、海外からの移住者を受け入れながら人口増加を図っていくことも考えられる。そうすると日本市場も多様化してくると思うし、今後、色々なセグメント化が進むという点で、もしかしたら高齢者だけをターゲットにしたECが出てくるかもしれない。その意味では、セグメント化された中でどれだけ強みを出して行けるかが重要。まだまだ先の話だとは思うが、そうなった時に外国人や若い人から見るとQoo10やイーベイ・ジャパンは強みを出して行けると思う」

イーベイジャパンの戦略本部長に就いた佐藤丈彦氏
イーベイジャパンの戦略本部長に就いた佐藤丈彦氏。イーベイ・ジャパンの社長も兼任

――具体的には。

「現在の利用者は20~30代の女性が多く、実はこの層の開拓が中々難しいところ。そこに強みがあることが勝ち抜くためのツールになる。また、越境ではイーベイグループ自体で約12億個の在庫がある。そのすべてが日本市場に投入できて売れるというわけではないとは思うが、世界中にあるユニークな物、海外から購入した方が良いものがたくさんある中で、まだQoo10とのシナジーが出せていないので、今後その仕組みを作っていくことで強いプラットフォームになると思う

――そのためにも開発を支える人材の確保などは重要テーマになる。

「これは今どのプラットフォームでも頭を悩ませている問題だと思うが、人材募集をかけても5~10年前と比べて本当に大変。(求職者が)企業を選ぶ立場に立っているので、企業がどれだけ自社を魅力的に見せるのかということ。いくら良いビジョンやビジネスモデルを持っていたとしてもそれを支える組織がないといけないので、ここの部分はしっかり進めていかないといけない課題」

――対策としては。

「Qoo10の場合は知名度でまだまだの部分もあり、これから攻めていく面では余白があるというプラスにはなるが、人材確保の面では浸透がもっと必要になる。テレビCMを行っているのも、単に利用者だけでなく、市場に知ってもらうという重要な要素がある

また、人材流出を防ぐことも鍵。その点では、イーベイグループが以前から行っている『エンゲージメントサーベイ』を今年から導入した。これは年に数回、社員に上司や職場環境について社内アンケートを行い、その結果を集計して統計を取るというもの。社員が企業に対して満足しているかを重要視しているので、上司やマネージャー陣だけの報告に頼らないで、環境整備をしている」

――回答結果はどのような形で共有するのか。

「回答は無記名で、誰が答えたか特定できないよう一定数以上の部下からの回答があった上司は、結果を見ることができる。この結果は、例えば私だとイーベイジャパン、その上のAPAC、さらにその上のイーベイグループ全体の平均値など、グループ内の全社員がどのレベルでどれだけ満足しているか統計がすべて数字で出てくる。仮に上司側に問題があった場合、どのようなコーチングをしたら良いかのトレーニングが組まれることもある。ただ、これも前向きに捉えて、チームや環境を変えていけるかを考える機会にもなる。本当に良くできた仕組み」

――効果としては。

人材・育成の観点からすると、世界中にオフィスがある中でどこに時間とリソースをさけば組織力が上がるかがすぐ分かると思う。私の経験上、アジア系の人はあまり意見を直接言わないがこうしたサーベイがあるとしっかりスコアをつけてくれる。私たちもそこで察しながら、いかにグローバルスタンダードに合わせていくか頭を使うし、逆にこうしたスコアが出てくれることで社員の不満の声に気づかずに人が流出してしまうということが避けられている

通常、企業買収の直後は人が一気に流出するということもあるが、Qoo10の場合はそうしたことが起こらなかった。まだこのサーベイの導入前ではあったが、買収前から組織の中身を見て、イーベイグループが培ってきた人をしっかりと育てる文化や仕組みを導入したことが(既存)社員の満足度につながったのではと思う」

イーベイジャパンの戦略本部長に就いた佐藤丈彦氏
「Qoo10」の利用者は20~30代の女性が多い(画像は編集部が追加)

投資の優先順位が明確に、テレビCMの活用に手応え

――国内モールとしては後発組だが、そのデメリットやメリットとは。

「国内で『ビック3』と呼ばれているような他のモールは2000年代前半に市場参入したが、Qoo10は10年からなので約10年の差がある。ただ、組織が小さい分だけ小回りが効く利点があり、もし効果が期待できるものがあれば何でも投資をしようと言われているので、そういった意味ではペイメントやマーケットプレイスのプラットフォームなど改善の余地がある」

――モール運営で重要なポイントとは。

「私自身もイーベイに入る前にいくつかのモール運営企業で経験を積んだが、やはりトータルで考えるとセラーをどうサポートするかに尽きる。その経験から考えてもQoo10の場合はオペレーションや人材の面だけでなく、プラットフォーム自体にもまだ手を入れていかなくてはいけない部分がある。

昨年春ごろは商品の画像もまだ煩雑で、テキストがたくさん入っていた。その修正などガイドラインの改修もしながら進めているが、他にもサイト内検索であったり、セラーの効果的な露出方法をまだできていない部分もある。開発の人材をたくさん入れていくのもこの1年間でハードにしっかり手を入れていくという狙いが背景にある。後発である分、開発の余地というものがクリアに見えているので、小回りを利かせてどこに投資をするのか、優先順位をつけるのかということが明確に分かっている」

――越境サービスは一つの強みとなるか。

「日本の他の仮想モールが海外で中々上手くいっていないことがしばらく続いているようだが、そこの部分で強みが出せると思うし、勝てるツールがある。セラーも利用者も、海外とのやりとりを当たり前にできる時代はすぐそこに来ている。イーベイグループがグローバルに展開しているマーケットプレイスに出品販売してもらうのは当然の流れで、そこをどうしていくかという部分が今年の課題。すでに大手の物流企業では海外に発送する仕組みもできており、サードパーティーのソリューションプロバイダーがそれをより簡単にできる仕組みも作っている。セラーがこれまでと全く同じ運用方法で海外に販売できる環境が整ってきているので越境ECということを考えなくても、普通にオペレーションすれば実現できるところまで来るのではないか」

――モールの認知活動に向けては。

テレビCMを引き続き行う予定。昨年のCMでまずはQoo10とは何かを知ってもらった。今年については他の仮想モールと比べても“コスパ”が良い商品がものすごく多いという強みをしっかりと浸透させたい。幸い、日本は他の国と比べてCMの力がまだまだ強い印象。海外では(広告などが)ほとんどウェブに移行しておりコントロールが効かない部分もあるかもしれないが、日本はCMでこちらが送りたいメッセージを送りたいタイミングで送れるという手法がまだ使えるので、これを活かしていく。誰を起用するかでリーチする層や残せるメッセージも変わってくるので、しっかりとやりたい」

イーベイジャパン3月に「Qoo10」の認知度向上などを目的としたテレビCMをスタート
イーベイジャパン3月に「Qoo10」の認知度向上などを目的としたテレビCMをスタート。家政婦に扮した仲里依紗さんと戸田恵子さんを起用した(画像は編集部が追加)

――日本はEC化率でも他国と大きく異なる。

「日本のEC化率は一桁とまだまだ低いので、考え方からも変えないといけないし、Qoo10が得意な若い層を取っていくということだけでなく、年配や日本在住の外国の人なども取り込んでいかないといけない。考えることなく物をウェブで買えるという環境をプラットフォーマーだけでなくデバイス側の人達なども取り組むことで全体的に広がってくると思う。私たちはそのマーケット自体が広がってくる部分をうまく捉えなくてはいけない」

――今後の目標は。

22年には流通総額で5000億円を目指している。高い目標だとは認識しているが、全く非現実的ではなくて、これまで言った通り、まだまだ直せるところがたくさんあり、そこを1つでも2つでもチューニングすることで一気に加速できることが見えている。私自身、イーベイ・ジャパンをはじめ他の仮想モールにも長く居たが、その時のようにセラーのモチベーションをいかにして上げながらビジネスを確立していくかという作業は今も昔も全く変わりない。

より国内にフォーカスしたビジネスを伸ばすという意味では、やりたいこと、やれることがたくさんある。これまでのグローバルで培った知見なども生かしながらQoo10のビジネスを加速させたい」

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