楽天が取り組む「優良店の露出強化」「送料無料ライン統一」「RMS再構築」など2020年上期施策まとめ
楽天が1月29日に行ったメディア向けの戦略説明会。送料無料ライン統一化の導入に注目が集まる中、執行役員の野原彰人氏は今後、取り組むこととして「RMSの再構築」、楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー受賞店などの露出を強化する「優良店舗施策」などを説明した。野原氏が語った2020年上期の施策、2019年の振り返りなどをまとめた。
2020年上期の施策は、優良店舗施策、送料無料ラインの導入など
2020年上期の施策について、「RMSの再構築」「デバイス対応」「店舗意見への対応」の3つを大きな柱にあげた。
RMS再構築
店舗からの要望を受けRMSを改善。店舗の業務負担軽減をめざしたという改善内容は以下の通り。
- 住所不備注文削減のため、注文画面に「番地なし」のチェック項目を追加
- 項目選択肢機能にフリーテキスト機能を導入
- RMS受注画面に、注文の詳細情報を一覧で確認できる「詳細一覧」形式の追加(2020年上期予定)
- ユーザーが購入履歴から自分で領収書を発行できるシステムの導入(2020年上期予定)
デバイス対応
75%のユーザーがスマートフォンで買い物をしている。スマートフォンはページ間の移動が多く、買い物中でのわかりにくさは致命的。ユーザーの嫌な体験が「楽天市場」からのユーザー離れにつながる可能性がある。送料がわかりやすくなることで、買い物がしやすくなる。より多くのユーザーに買い物を楽しんでもらい、ファンになってもらう。ユーザーに選ばれなければ「楽天市場」の持続的な成長はない。
こう話す野原氏は、約7割のユーザーが「送料が原因で購入を諦めた経験がある」という調査資料や、一部ユーザーから送料の表示に関する低レビューがあると説明。ユーザーへの調査や競合サービスの調査、比較のための実証実験を行い、今回の送料無料ラインを制定したと話した。
店舗への理解に関して、RUX(出店店舗が視聴できる無料動画コンテンツ)での動画配信、販売状況や価格設定の指標を設定できるデータ確認ツールの提供により、送料無料施策への協力を求めていくとしている。
「優良店舗施策」など店舗意見への対応
「タウンミーティングで寄せられた店舗からの意見を反映した」(野原氏)という内容の1つ目が「楽天ペイ補償サービスの拡充」。商品発送後の金額修正時にクレジットカードのオーソリや後払い決済の審査が通らないなどユーザー起因のトラブルが起きた場合、1か月10万円まで「楽天市場」が代金を補償する制度を導入する。
2つ目は「不審ユーザーの取り締まり強化」。ユーザーの決済状況をモニタリングし、リスクのあるユーザーからの購入を防ぐ取り組みを強化するという。高頻度でのキャンセル、後払い決済の不履行を行うユーザーなどが対象となる。
3つ目は露出を強化することができる「優良店舗施策」で、中堅、中小規模やスタートアップの店舗が前向きに店舗運営に取り組める機会を作るのが目的。具体的な要件は語られなかったものの、楽天SOY(楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー)受賞、それ以外のアワード受賞などが対象店舗の要件になるもよう。この施策によって「中小規模の店舗から購入するときに一抹の不安がある」というユーザーの不安払拭にもつながるとしている。
2019年の成長要因
2019年は国内ECの流通総額が4兆円規模に拡大したという楽天。野原氏は「楽天市場の成長には3つの要因がある」と2019年を振り返った。
ユーザーへのベネフィット還元
楽天グループが2019年に発行したポイント発行数は3200億ポイントにのぼり、ポイント還元で「楽天市場」のファン作り施策を推進したという。「今後はSPU(スーパーポイントアップ)プログラムと、今後本格的に稼働する楽天モバイルのシナジーでさらにユーザーへのベネフィットを拡大する」(野原氏)
多様性と統一性の両立
「楽天の一番のユニークネスは多様性」(野原氏)。多様性をさらに広げるため「カテゴリページのリニューアル、ジャンルごとのマーケティング強化を行い、ユーザーのニーズに合った商品を提供する」と説明。一方、統一性は改善の余地があるとし、まずは「3月18日に送料無料ラインを導入する」(野原氏)とした。
ブランド認知
今後も大規模セールの実施、集客ソーシャルの強化、楽天グループや外部の広告によりさらにユーザーの裾野を拡大すると強調した。
準備を進めるワンデリバリー構想
物流面について「ワンデリバリー構想を着々と進めている」と野原氏は説明。2000億円を投じ、物流倉庫やラストワンマイルの整備を進めているという。
サービスの向上や集荷持ち込みサービスの展開、楽天ロジスティクスパックの価格、優位性のあるサービスで店舗により良いサービスを提供していきたい。(野原氏)