瀧川 正実 2022/1/28 9:00

2021年度(2021年1-12月)の国内EC流通総額が5兆円を突破した楽天グループ。「次は10兆円」。1月27日にオンライン配信とオフラインのハイブリッド形式で行われた「新春カンファレンス」で三木谷浩史会長兼社長は、国内EC流通総額10兆円の目標を公表した。三木谷社長が語った2021年の振り返り、今後の戦略などをまとめた。

楽天グループ 三木谷浩史会長兼社長
楽天グループ 三木谷浩史会長兼社長

2020年代に国内EC流通総額10兆円超えを

新型コロナウィルス感染症拡大の影響で、楽天グループの国内EC流通総額は加速度的に拡大した。

2020年度(2020年1~12月期)の国内EC流通総額は前の期比19.9%増の4兆4510億円。「楽天市場」単体でEC流通総額は3兆円を突破した。2021年度の国内EC流通総額は目標としていた5兆円を超えたと公表している。

楽天グループの国内EC流通総額は2021年に5兆円を超えた
国内EC流通総額は2021年に5兆円を超えた

国内EC流通総額は「楽天市場」の流通総額に加え、トラベル(宿泊流通)、ブックス、ゴルフ、ファッション、ドリームビジネス、ビューティ、デリバリー、楽天24(ダイレクト)、オートビジネス、ラクマ、Rebates、楽天西友ネットスーパーなどの流通額を合算した数値。2021年10-12月期に、ブックスネットワーク、クロスボーダートレーディング、Kobo(国内)を追加している。

成長速度はどんどん加速している。2030年を待たずに国内EC流通総額10兆円を実現できるのではないか

楽天グループ 次の目標は国内EC流通総額10兆円
次の目標は国内EC流通総額10兆円

新たな目標を公表した三木谷社長は、国内EC流通総額10兆円超えの早期実現の根拠として、世界と日本のEC化率を説明した。eMarketerによると、2020年の世界の平均EC化率は17.8%。2025年には24.5%まで拡大すると予測している。

一方の日本は2020年で8.1%。「水は低い方に流れるように、インターネットショッピングの利便性は都心部だけではなく、地方で働く人にも浸透していく。EC化率はいずれ20%に到達するだろうと考えている」(三木谷社長)

新規ユーザーやロイヤリティ向上などモバイルとのシナジー

国内EC流通総額10兆円超えに向けて重要視しているのが、モバイル・エコシステムからの環流だ。楽天モバイルの契約者数(MNOとMVNO)は2021年12月末時点で約540万。「この規模が2000万、3000万、4000万と拡大していけば、流通総額は爆発的に伸びていく」(三木谷社長)

楽天モバイルの利用者増加で国内EC流通総額が拡大する――。実際、楽天モバイルユーザーの「楽天市場」における流通総額、ロイヤリティ、クロスユースなどは顕著に向上している。

「楽天市場」における楽天モバイルユーザー1人あたりの平均月間流通総額について、加入者のそれは非加入者を大きく上回る。楽天モバイル加入前(2019年-2020年4月)と、加入後(2020年5月-2021年4月)の平均月間流通総額を比べると、加入後は約1.7倍も伸びている

「楽天市場」における楽天モバイルユーザー1人あたりの平均月間流通総額
「楽天市場」における楽天モバイルユーザー1人あたりの平均月間流通総額

初めて楽天グループのサービスを使う楽天モバイルユーザーも拡大。楽天モバイル契約者における新規楽天ユーザー比率は19.5%に。「楽天市場」におけるロイヤリティ向上も顕著で、2020年3-11月に楽天モバイル(MNO)を新規契約した「楽天市場」既存ユーザーの年間流通総額は、契約前と比べて契約後は74%増加しているという。

楽天の新規ユーザー拡大と「楽天市場」におけるロイヤリティ向上
楽天の新規ユーザー拡大と「楽天市場」におけるロイヤリティ向上

また、契約キャリア別のECサービスとのクロスユース状況を見てみると、「楽天市場」が59.8%で断トツのトップ。「楽天モバイルユーザーの60%近くが、『楽天市場』で恒常的にモノを買っている。他社に比べて圧倒的にクロスユース率が高い」(三木谷社長)

契約キャリア別のECサービスとのクロスユース状況
契約キャリア別のECサービスとのクロスユース状況

楽天モバイルユーザーの拡大で「楽天市場」の新規ユーザー、リピート利用が増加。そのユーザーが楽天ファッション、ネットスーパーなど他のEC系サービスを利用する好循環が生まれ、「エコシステムがどんどん拡大している」(三木谷社長)

ECサービスに加え、フィンテック領域のサービス拡充も国内EC流通総額10兆円超えで重要な役割を担う。楽天証券、楽天カード、楽天生命、楽天ペイなどのフィンテックサービスから「楽天市場」を使うユーザーも増加。楽天カードや楽天ペイといったペイメントサービスにより、オフラインから「楽天市場」への環流も増えているという。

楽天グループ クロスユースの拡大について
クロスユースの拡大について

進む行動変容、「Shopping is Entertainment!」の原点に戻る

Shopping is Entertainment!。原点にまた戻ってきたい。先を読んでお客さまに買い物を楽しんでもらう。楽天、何やってるんだよ! 楽天はいらないことをやらなくていいんだよ!(そんな声があがった取り組みが)振り返ったら大きなプラスになり、その連続だったと思う。

三木谷社長は「楽天市場」で実施してきた施策などを振り返り、常に先を読み、新しい取り組みをしてきたと回想。批判の声もあったが、その取り組みがユーザーへネットショッピングでのワクワク感の提供につながったといった主旨を改めて説明した。

スーパーポイントアッププログラム(SPU)の利用は年々増加し、年平均成長率は28%増。2021年のポイント総発行数は53000億ポイントに達し、2022年は6000億ポイントを超える見通しだ。

楽天モバイルのユーザー数拡大による「楽天市場」利用増などで、2021年10-12月期に「楽天市場」における流通の約8割がモバイル端末経由に。2022年元旦のモバイル比率は88.4%に達した

こうしたデバイスのシフトによる行動変容により、「楽天市場」ではスマートフォン向けショッピングSNS「ROOM」を通じた商品購入が増加。「ROOM」経由の購入者数は、2019年と比べて2021年は2.5倍に増えたという。

新型コロナウィルス感染症拡大によりEC業界で浸透したライブコマース。楽天グループもライブコマースに力を入れていく

「楽天市場」出店店舗向けに、ライブコマースによる商品販売支援を本格スタートしたのは2021年11月。出店者の店舗ページでライブ動画を配信できる機能の提供スタート、各店舗のライブ配信を紹介するページ「楽天市場ショッピングチャンネル」を開設し、最大30分間のライブ動画配信できるようにした。

ユーザーは、パソコンやスマートフォンから配信動画を視聴し、リアルタイムでコメントや商品に関する質問を投稿することが可能。出店店舗や動画出演者と双方向でのコミュニケーションを取りながら、商品を検討し、購入できる。

米国では2024年までに約4兆円のマーケットに成長すると言われている。(三木谷社長)

購入者の送料負担を0円とするラインを3980円以上に設定した「送料込みライン」の導入店舗数は2021年12月時点で約92%。「送料込みライン」導入店舗と未導入店舗の成長率を比較すると、導入店舗は未導入店舗と比べて約18ポイント高くなっているという。

ラストワンマイルでは、日本郵便と商品受け取りの利便性向上と配送の効率化に向けた共同の取り組みをスタート。日本郵便で配送する荷物を対象に、「楽天市場」の複数店舗の商品のまとめ配送を指定できる「おまとめアプリ」を提供を始めた

「楽天市場」の複数店舗で購入された商品のまとめ配送を指定できるスマートフォン向けアプリ「おまとめアプリ」を開発。まとめ配送の日時設定機能に加え、置き配や再配達を依頼する機能など、「楽天市場」で購入した商品の受け取りに関する機能を集約した。

将来的には、この機能を「楽天市場」以外のECサイト運営事業者にも提供する。商品受け取りの利便性向上とEC業界全体の配送の効率化を実現する、オープンなプラットフォームの構築をめざす。

これから力を入れていくこと

楽天グループのビッグデータを活用した需要予測の技術が組み込んだ価格と在庫の最適化プラットフォーム「Price and Inventory Optimization Platform(PIOP)」。価格設定や適正在庫のシミュレーション、事業者が自ら定める運営戦略に基づいた予測やシミュレーションを行うことができるシステムだ。

現在、約1000店舗が申し込み、約200店舗で稼働している。導入店舗では、売上向上、利益向上、在庫削減といった効果が出ているという

楽天グループの「Price and Inventory Optimization Platform(PIOP)」
「PIOP」の導入効果について

この「PIOP」の仕組みをポイント運用にも活用した「運用型ポイント変倍」サービスも「楽天市場」出店者へ導入を進める。AIが商品ごとに最適化したポイント倍率を算出し、削減したポイントコストを自動再投資する仕組みで、費用対効果が2割アップした事例もあるという。

楽天グループ 「運用型ポイント変倍」サービス
「運用型ポイント変倍」サービスについて

サステナブル(持続可能)消費への対応にも力を入れていく。

「未来を変える買い物を。」というスローガンのもと、未来の環境、社会、経済に配慮して製造された「サステナブル(持続可能)」な商品を販売する「EARTH MALL with Rakuten」を立ち上げたのは2018年。

2021年1-11月の流通総額は前年同期比で290%増。サイトアクセス数は約4.5倍に増えたという。

楽天グループ 「EARTH MALL with Rakuten」
「EARTH MALL with Rakuten」について

楽天グループは、国際環境NGO「The Climate Group」が、気候変動の情報開示を推進するNGO「CDP」とのパートナーシップのもと運営する国際的な環境イニシアチブ「RE100」へ加盟。2025年までに楽天グループの事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーにすることをめざしていたが、それを前倒しで2021年に達成。今後は連結子会社含む楽天グループ全体で再エネ利用率100%に向けて取り組みを進めるとしている。

2022年2月7日に会社設立25周年を迎える楽天グループ。グリーン環境をめざす所信表明の意味を込めて、専用のロゴには緑を用いた
2022年2月7日に会社設立25周年を迎える楽天グループ。グリーン環境をめざす所信表明の意味を込めて、専用のロゴには緑を用いている
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