エコ包装とスロー配送で優れたCXとサステナブルなフルフィルメントを実現する方法
年末の繁忙期を控えた今だからこそ考えたい、「サステナブルなフルフィルメントを実現する方法」を探っていきます。環境への配慮はもちろん、事業者側のメリットも大きいその理由とは?
「より優れたCX」として小売事業者が選択するようになってきたコト
オンライン小売事業者は、無料で迅速な配送を提供し消費者の好みに応えるべく、長い間努力してきました。しかし、一部の事業者はより優れたカスタマーエクスペリエンス(CX)として、持続可能性に配慮したフルフィルメントを優先させています。
実際、このような調査データも明らかになっています。
- 消費者の約30%は「環境に配慮した配送や梱包にもっとお金を払いたい」と考えている
- 消費者の9%は「持続可能な配送をサポートするため、より長い配送期間を選択している」
小売事業者が環境への影響を考慮したフルフィルメントを消費者に提供するためには、以下のような方法があります。
- 商品に合わせた適切なサイズの箱を使用する
- リサイクル材を使用したパッケージを提供する
- 1つの箱で発送されるように商品をまとめる
箱の軽量化はエコ&出荷コスト削減に
上記のような取り組みは、消費が地球にどのような影響を与えるかに関心の高い顧客にアピールできるだけでなく、ビジネスの観点から言うと、「小売事業者が箱を小さく軽量化すればするほど、出荷時のコストが安くなる」と、eコマース・ソフトウェア・プロバイダーであるCommerceHubのCEOフランク・プーレ氏は述べています。
調査会社の「Bizrate Insights」と『Digital Commerce360』が2020年3月に989人の消費者を対象に行った調査によると、「商品の大きさに見合った包装に満足している、もしくは期待を超えた包装がされている」と答えた消費者は48%でした。
とは言え、小売事業者が小さな商品を大きな箱に入れて出荷したとしたら、消費者は怒り狂ってその事業者からの購入をやめるでしょうか? 「やめるかもしれないし、やめないかもしれない」とプーレ氏は言います。
フルフィルメントの経験が消費者にとってどれほど重要なのか、また将来の購入にどのような影響を与えるのかを定量化することは難しいのです。さらに難しいのは、包装が環境に優しいと消費者が理解した場合、その小売事業者でしか買い物をしなくなるのかどうかを知ることです。
これを判断する1つの方法は、消費者が実際に環境に配慮した配送や梱包に多くのお金を支払うかどうかを確認することです。8月に『Digital Commerce360』とBizrate Insightsが1,141人を対象に行った消費者調査では、37%が「環境に配慮した配送や梱包に多くのお金を払いたくない」と考えている一方で、30%は「多くのお金を払っても良い」と考えていることがわかりました。
環境への配慮は「ブランド価値に合致させること」が大切
スノーボードブランド「Burton Snowboards」(北米EC事業 トップ1000社データベース 2020年版で784位)で、グローバル消費者向け直販オペレーションマネージャーを務めるブライアン・マカリスター氏は、「環境に配慮したフルフィルメントは、新規顧客獲得のためではなく、ブランド価値に合致させることが大切だ」と言います。そして、そのブランド価値の1つが持続可能性です。
正しいことをする、という当社のコアとなる価値観に基づいています。私たちは、当社が環境に与える影響について深く考え、パッケージを改善すべきという結論に至りました。繰り返しになりますが、ここでも私たちが求めているのはリターン(投資対効果)ではありません。地球を大切にすることです。(ブライアン・マカリスター氏)
「Burton Snowboards」は「包装に使っているプラスチック製のポリエチレン袋を、100%リサイクル可能な材料で作られたエコバッグに置き換えようとしている」と同氏は話します。
また、エコバッグの内側が紙素材のため、消費者はリサイクルのために何か特別なことをする必要はなく、内側の紙の部分を捨てるだけでよくなります。
9%の消費者は持続可能な慣行をサポートするため「スロー配送を選択」
よりスローな配送(注文後すぐに発送するのではなく、トラックが満杯になるまで待つなど)を消費者が選択できるようにするのも、環境に配慮するための1つの方法です。
3月の消費者調査では、2019年10月から2020年3月の間に、9%の消費者が「持続可能な慣行をサポートするために、よりスローな配送を選択したことがある」とわかりました。
労働力や商品供給能力へのストレスを緩和するというメリット
よりスローな配送は小売事業者にとって、環境への配慮だけでなく、労働力や商品供給能力へのストレスを緩和するというメリットもあります。この方法は、2019年のホリデーシーズン、感謝祭の週末にオンラインでの注文量が急増した際、多くの小売事業者が採用しました。消費者にスローな配送を選択するよう、積極的に促していた小売事業者もいました。
何年もの間、「GAP」(北米EC事業 トップ1000社データベース 2020年版で23位)は感謝祭の週末にギフトカードの抽選プレゼントを実施してきました。
消費者がよりスローな配送を選択すると200ドルのギフトカードが当たるチャンスを提供するいうもので、1時間ごとにギフトカードの当選者を発表します。
この抽選プレゼントは、最も忙しい時期に注文しても、すぐに商品を必要としないお客さまのためのものです。お客さまには大変喜ばれていると同時に、最も忙しい週の配送センターの需要を分散させることができます。(GAPの広報担当者)
新型コロナウイルス感染が拡大する中、『Digital Commerce360』の調査チームは、複数の小売事業者を対象にフルフィルメントのオプションを調査しました。調査チームは、GAP社傘下のファッションブランド「BANANA REPUBLIC」がオンライン売上が急増しているコロナ禍において、消費者がよりスローな配送を選択できるようにしていることを発見しました。
「BANANA REPUBLIC」はコロナ禍でオペレーションを拡張した際、消費者がスローな配送を選択できるサービスを提供しました。
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コロナ禍でオンライン注文が急増し、小売事業者のフルフィルメント業務がすでに滞っているため、「2020年のホリデーシーズンには、より多くの小売事業者が発送を遅くするための特典を検討する可能性が高い」とプーレ氏は話します。