石居 岳 2020/11/26 10:00

慶應義塾大学大学院経営管理研究科の岩本隆特任教授は、試算レポート「対デジタルプラットフォーマー規制強化に伴う地方企業への悪影響」を発表した。それによると、デジタルプラットフォーマーへの規制強化によって地方企業の売り上げ(デジタル広告経由)が、5年間で最大6.47兆円が毀損される可能性を指摘している。

GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)に代表される大規模なデジタルプラットフォーマーへの規制を検討する動きが国際的に加速している。日本でも2020年5月、巨大IT企業に取引の透明性向上や情報開示を求める「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」が成立。現在、要件の詳細が議論されている。

一方、規制対象となるプラットフォーマーを中心としたIT業界からは、「過度な規制は、技術革新(イノベーション)や新たな挑戦を阻害する」「経済にも悪影響をもたらしうる」と懸念する声があがっている。

慶應義塾大学大学院経営管理研究科の岩本隆特任教授が発表した試算レポート「対デジタルプラットフォーマー規制強化に伴う地方企業への悪影響」
規制強化に伴い市場が減速・縮小したと見られる事例(画像は試算レポートから編集部がキャプチャ)

特に大きな懸念の1つとしてあげられているのが「プラットフォーマーへの広告出稿によって商圏を広げ、売り上げを獲得している地方企業への悪影響」だ。デジタル広告は、テレビ・新聞・雑誌といったマス広告と異なり、少額からでも出稿・運用できるため広告予算に限りがある中堅以下の企業に大きな恩恵をもたらしているとされる。

今後、プラットフォーマーに規制がかかった場合、現在デジタル広告を活用している地方企業の売り上げにどの程度のネガティブ影響が生まれうるのか、いくつかの前提を置いた上で、慶應義塾大学大学院経営管理研究科の岩本隆特任教授が試算を行った。

その結果、規制強化によって毀損される可能性がある地方企業の売り上げ(デジタル広告経由)は、5年間で計0.98兆円~最大6.47兆円となった。

慶應義塾大学大学院経営管理研究科の岩本隆特任教授が発表した試算レポート「対デジタルプラットフォーマー規制強化に伴う地方企業への悪影響」
地方企業のデジタル広告経由売上の推移(シミュレーション、画像は試算レポートから編集部がキャプチャ)

コロナ禍で多くの中小・地方企業が苦境を強いられている現状下、こうした企業にとっての選択肢が狭まることで、最悪の場合、再興への道が阻まれるような事態にもなりかねないとしている。

2021年春施行予定の新法の詳細は検討段階。岩本教授は、プラットフォーマーへの過度な規制はむしろデジタル広告出稿市場の萎縮を招き、ひいては地方企業等の売上毀損につながりかねないため、慎重な検討が求められるとしている。

「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」は、デジタルプラットフォームのうち、特に取引の透明性や公正性を高める必要性が高いサービスを提供している事業者を「特定デジタルプラットフォーム提供者」に指定し、情報開示などの新たなルールを設けるもの。

規制対象は大規模なオンラインモールやアプリストアを想定している。また、独占禁止法違反の恐れがある事案は、公正取引委員会が対処する仕組みを設ける。

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