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昨今の社会情勢もあいまって、重要度がますます増しているEC。企業はオンライン・オフライン、国内外の垣根を超えた視点で「コマース」全体を捉え、顧客に価値提供をすることが急務となっています。

電通デジタルでは「コマース」領域を事業の大きな柱の1つとし、クライアント企業のデジタルマーケティングを支援しています。この連載では、「コマース」領域における知見やノウハウを生かし、トレンドや戦略について解説します。今回のテーマは欧米や中国を席巻し、日本でも勢いを増している「D2C(ディーツーシー)」です。

いくつものD2Cベンチャーが誕生し、さまざまなメーカーが既存のバリューチェーンを変革し、D2C領域に挑戦しています。これはまさに「D2C時代」と言っても過言ではありません。一方で、この時代の潮流に乗って「D2Cブランドを立ち上げよう」「既存ブランドをD2C化しよう」と取り組もうとしても一筋縄ではいかないのが現実です。「D2C時代におけるブランドの作り方」をお伝えします。

なぜ今「D2C」なのか?

「D2C」という言葉は各種メディアでさまざまな捉えられ方で紹介されています。「D2C」は「Direct to Consumer」の略称で、顧客に直接モノやサービスを届けるビジネスモデルのことを意味します。

ただ、それだけなら従来からある「通信販売による直販」と同じです。「顧客に直接モノやサービスを届ける」だけでなく、製造からマーケティング、販売までバリューチェーンのすべてを自社でコントロールすることで、顧客との接点において一気通貫のブランド体験を提供することが「D2C」の本質であると考えています。

今なぜ「D2C」が注目されているのか。それには、いわゆるミレニアル世代・Z世代を中心とする若者の消費行動において、ブランドに求める価値観の変化が関係していると考えています。では、その変化を少し深堀りします。

生活者が長い間ブランドに対して求めていたのは、そのブランドが持つ機能的価値であり、ブランドを所有することによる他者との差別化や優位性に価値を感じるいわゆる「モノ消費」でした。

ところが時代が進み、経済が成熟化すると共にモノ・サービスが増え、欲しいものを簡単に購入できるようになると、機能的な価値を提供するだけでは生活者に選ばれにくくなりました。そこで登場したのが「コト消費」です。生活者はブランドの持つ機能的な体験を享受するだけでなく、そのブランドを通して得られる体験に価値を感じるようになりました。体験型のサービスだけでなく、購買体験そのものやその前後の体験も含めてモノやサービスを選択するようになったのです。

共感や自分ごと化してもらうための「D2C」

さらに経済が進み、デジタル化が加速し、先進技術や莫大な情報が享受できる一方で、環境や社会課題による未来への懸念が顕在化した現代に生まれたのが「ミレニアル世代・Z世代」です。

「ミレニアル世代・Z世代」は莫大な情報の海の中で、世界を知り自分に合った情報を取捨選択したことで、消費行動も変化しました。作られた広告を好まず、テクノロジーの発展により創出されるブランドの透明性やリアルな物語に共感し、ブランドとの接点から享受する顧客体験を自分ごと化できるかという点に重きを置いています。これを「イミ消費」と言います。

ミレニアル世代・Z世代の価値観
  1. 高い社会意識から来る、作られた広告に対する嫌悪感
  2. ユーザー起点の製品や顧客体験(CX)による自分ごと化
  3. テクノロジーの発展により増す、透明性やリアルな物語への共感

しかし、現代におけるモノやサービスはコモディティ化しているうえに、小売中心の販売ビジネスのため顧客接点が分断され、消費者が求める自分ごと化や共感を得ることが難しい状況にあります。

そこで生まれたのが「D2C」です。ブランド自体が顧客接点のすべてを網羅することで、顧客のニーズやインサイトを捉えたブランドアイデンティティを確立し、デジタルを活用したテーラーメイドな顧客体験を提供します。そうすることで、顧客に共感・自分ごと化してもらい、ブランド選択へとつなげることができます。

欧米ではすでに、この変革に対応できないブランドや企業の淘汰が起こっており、消費行動の変化に対応できなかった伝統的な老舗ブランドが業績を悪化させたり、倒産を余儀なくされたりしています。近い将来、日本でも起こり得るでしょう。

ブランド構築に欠かせない「ブランドアイデンティティ」

「では、できるだけ早くD2Cブランドを立ち上げて変化に対応しよう!」と思っても、立ち上げ自体や、立ち上げた後のグロースに苦心することが多いはずです。それは、従来の多くのブランド事業の構造に以下のような課題があるからです。

D2C事業構造
現状の事業構造

ブランド戦略を策定しているものの、ブランドを顧客に提供するための大きな3つの柱である「製造」「マーケティング」「販売」は、各専門の部署がそれぞれで戦略を立て、顧客にブランドを提供しているケースがよく見られます。しかし、この構造では部署間での協力や連携が取りづらく、各部署が個別最適化を目指して動いてしまうため、結果的にそれぞれが別々のブランド体験を顧客に提供してしまいます。

D2Cブランドの構築にあたり、顧客に一気通貫した顧客体験を提供し、顧客の自分ごと化や共感を生むには、従来の事業構造ではなく、以下の図のような構造の変革が必要です。

D2Cブランドの事業構造
D2Cブランドの事業構造

中核となるのが「ブランドアイデンティティ」です。「ブランドアイデンティティ」は、複数の要素で構成されます。

ブランドアイデンティティの構成要素
  • ブランドパーパス……ブランドの目的
  • ターゲット……ブランドのターゲット
  • プロダクト提供価値……ブランドが世の中に提供している価値は?
  • 機能価値……ブランド提供価値を機能で因数分解
  • 情緒価値……ブランド提供価値を情緒で因数分解
  • RTB(Reason to Believe)……なぜ、このブランドはそれが実現できるの?
  • ブランドパーソナリティ……このブランドはどんな性格?
  • CXコンセプト……このブランドの顧客体験のコンセプトを言語化すると?
  • Who We Are……1分でこのブランドを説明すると?

「ターゲット」や「提供価値」、「RTB(Reason to Believe)」など、ブランドを唯一無二のブランドにさせる要素と共に、特に重要なのが「CX(顧客体験)コンセプト」です。ブランドが提供する顧客体験のコンセプトをきちんと言語化することで、各部署がそれを元に協力・連携を図り、一気通貫の顧客体験を提供することが可能となります

また、「製造」「マーケティング」「販売」の中身のプロセスも従来とは異なります。ユーザーヒアリングからインサイトを抽出し、プロトタイピングを重ねたモノ・サービスの製造・開発や、顧客個人レベルを見つめたマーケティング立案、D2Cを体現するオンライン販売チャネル構築、ユーザーデータを活用した日単位の改善など、デジタルを活用したユーザー起点でのブランド構築・運営が重要です。

「ブランドアイデンティティ」を核に事業構造やプロセスの変革を遂げ、接点のすべてにおいて一気通貫の顧客体験を提供することで、顧客の自分ごと化・共感を生むことができ、次の時代も選ばれ続けるブランドになることができるのではないかと考えます。

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奥野 平太郎

株式会社電通デジタル

株式会社電通デジタル コマースデザイン事業部 プランナー

電通デジタル入社以来、コマース領域にて事業/サービス開発からUI/UX設計、サイト/ アプリ開発・運用、フルフィルメント開発、CRM設計・運用まで幅広くデジタルマーケティング全般を担当。D2C時代に対応する新規ブランドの立ち上げ・既存ブランドの再創造をワンストップで支援するサービス「ブランド デジタルトランスフォーメーション」をNEW STANDARD株式会社と共同開発。

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