「ハッピーなカスタマーは最高のマーケター」CX向上とOMO推進のカギを握るレビュー活用のポイントとは?
ZETAが提供するレビュー・口コミ・Q&Aエンジン「ZETA VOICE」は、アパレルをはじめ、化粧品や家具、スポーツなど幅広い業界で導入が進んでおり、導入サイトにおけるクチコミ及びQ&Aの投稿数は500万件を超えている。
ネガティブなクチコミを懸念するあまり、レビュー機能の導入に踏み切れない企業が少なくない中、こうした企業はなぜレビュー機能を導入し、積極的に活用しているのだろうか。そこには、消費者による情報発信が活発化した今、「よい購買体験をした顧客の発信するクチコミは最強のマーケティングになる」という裏付けがあった。
「ネットショップ担当者フォーラム 2022 春」に登壇したZETA代表の山崎氏はCX向上と、店舗も含めたOMO(Online Merges with Offline)施策の推進で重要となるレビュー活用のポイントについて解説した。
個人による情報発信が活発化し、マーケティング手段も変化
マーケティングは年々進化しており、80~90年代と今では手法が全く様変わりしている。大きな違いの1つが「カスタマー自体がマーケターになる」という点だ。(山崎氏)
レビュー・口コミ・Q&Aエンジン「ZETA VOICE」を提供するZETA代表の山崎氏はこう解説する。
インターネットの歴史を遡ると、2000年過ぎ頃までは下りの伝送速度が速く、上りの速度が遅いADSLが用いられていたこともあり、「企業が情報を発信して個人が受け取る」という一方向なコミュニケーションが一般的だった。しかし、2000年代後半になるとWeb2.0の時代を迎え、以降は個人による情報発信が活発化する一方となり、今やネット上の情報発信源の多くが、企業ではなく個人になっているほどだ。
かつてはテレビ、ラジオ、新聞、雑誌といったマスメディアが主要なマーケティング手段だったが、「ネット+個人発信の情報」がトレンドになった中で、マーケティングも変化してきているという。
消費者は、企業よりも他のユーザーから発信された情報を信頼する
個人が情報を発信する時代。だからこそ、製品や購入プロセス、購入後のサポート、周囲からの評価などでよい買い物体験ができた顧客は「最高のマーケター」になるのだ。「最高のマーケター」となってもらうためには、買い物に対する消費者の悩みを解決してCXを高めなければならないが、そこで役立つのがレビューやクチコミだという。
米国で行われた調査(※)によると、「ポジティブな体験は最高の広告より勝る」と回答した人が65%を占めたという。これは、よい買い物体験をした人から発信される肯定的な意見やレビューは、他の消費者に対してもよいマーケティング効果を発揮することを意味している。
※出典:How brands can effectively engage Gen Z consumers? Just ask!
また、主要購買層がZ世代へと移り変わる中、国内の調査ではZ世代の半数近くが「購買意欲の創出に最も影響するものはレビューやクチコミ」と回答。企業が発信する製品の詳細情報や正確な知見を持った情報も重要だが、他のユーザーが発信するレビューやクチコミは、購買を後押しする大きな要因になっていることを意味している。
ここで山崎氏は「レビューやクチコミをマーケティングに活用する上で、よい製品を作ることが大前提となる」という。レビューやクチコミは、企業の思惑ではなくユーザーの正直な感想であるからこそ価値が高いもの。このため、まずはよい製品・サービスでユーザーの満足度を高めて「ハッピーなカスタマー」を創出しなければいけない。
満足度の高いユーザーがクチコミを発信すると、他のユーザーがその情報を見て購入し、さらにクチコミが増えて、また別のユーザーがその情報を見て購入する――という、スパイラルができてくるという。
デジタル化する以前は、ユーザーが製品やサービスに対して何か思うことがあってもその情報を発信する手段がなかったため、他のユーザーがどう思っているのかを受け止めることもできなかった。しかし今は、スマートフォンの普及により情報発信がしやすく、他のユーザーの意見も見やすくなっている。ユーザーが発信する情報の中には、役に立つ情報も隠れている。そうした情報をいかに汲み取っていけるかが重要になってくるだろう。(山崎氏)
米国で出されたある統計では、「消費者は企業が発信する情報の3倍、他の消費者が発信する情報を信頼する」と報告されている。消費者は企業が発信する情報を参考にしながらも、実際に購入をした他の消費者が「この製品は本当にいい」と発信する意見の方がはるかに信用できると思っているようだ。
「UBERの利用が普及した背景も、テクノロジーの面だけではなく、クチコミによるマーケティングを初期段階から活用してシェアリングエコノミーを広げた面も大きいのではないだろうか」と山崎氏は話す。
「検索」と「レビュー/クチコミ」の相互補完性がCX向上のカギを握る
では、よい製品を作ることを大前提とした上で、どのように満足度の高い買い物ができるようにすればいいのだろうか。
マスメディアが主要なマーケティング手段だった頃は、できるだけ万人にマッチするような製品を作る「ワン・フィッツ・オール」が主流だった。しかし、今やパーソナライズが重視される時代となり、それぞれのユーザーに細かくフィットした製品をいかにして作っていけるかが企業の課題となっている。
しかし個々にフィットするように、豊富なバラエティーを取り揃えたよい製品をせっかく作っても、製品Aが合うはずの消費者が製品Bを購入してしまうと不満足につながってしまう。企業としては、そうした事態は避けたいところだ。
満足度の高い買い物体験を提供するには、ユーザーには自分に合いそうな製品や求める製品を的確に見つけてもらわなければいけない。そして、見つけた製品を他のユーザーがどう評価しているのかを見られるようにしなければいけない。このため、「検索」と「レビュー/クチコミ」の2つの機能が、CX向上のカギを握るという。
レビュー/クチコミへの取り組み①
レビューやクチコミはCVにつながる「コンテンツ」
日本企業の現状を見ると、管理職や決裁者には比較的年配の層が多いように思われる。しかし、デジタルネイティブのZ世代が主要購買層になってきたように、今やユーザーの方が企業よりもデジタルに詳しい時代といっても過言ではない。
その中で、リアルの場だけでなく、デジタル上でもユーザーの声を聞き、ユーザーから学ぼうとする企業の姿勢が大事になっているという。ユーザーからの学びを得るためにも、レビューやクチコミのコンテンツは重要だ。
さらに、米国で行われた調査によると、レビューがある商品はレビューがない商品に比べて、270%購入確率が高くなるという結果も出ている。レビューやクチコミはコンバージョンに与える影響が大きい「コンテンツ」であることを認識しておかなければならない。
レビュー/クチコミへの取り組み②
他のユーザーの意見を正しく判断できるよう、レビュー機能は進化し続けている
レビューやクチコミといえば多くの場合、「5点満点中3.7点」といった総合点だけが表示されていて、評価を付けたユーザーのコメントが書かれているような形式がイメージされるだろう。しかし、今はユーザーが正しく判断しやすいレビューの形へと進化を続けているという。
レビュー機能の進化①
「何についての点数なのか」が明白にされている
「配送が遅かったから1点」という評価では、製品自体の良し悪しが判断できない。飲食店のクチコミサイトで、味、コストパフォーマンス、ホスピタリティーなどの各項目で点数がわかるように、ショッピングでも何に対する点数であるかを把握できる形が一般化してきている。
レビュー機能の進化②
どんな人によるレビューなのかがわかる
たとえばアパレルであれば、性別、年代、身長、体型などが似ているレビュアーの意見を求めるだろう。評価項目が複数設けられていても、自分と全く違うタイプの人によるレビューでは有用な評価になる可能性は低い。そのため、多くのクチコミの中から自分と似たタイプの人のクチコミを絞り込める機能のニーズが高まっている。
レビュー/クチコミへの取り組み③
ネガティブなクチコミも企業とユーザーの双方にとって有用な情報
レビューやクチコミの機能を導入しない理由として、「ネガティブなクチコミを避けたい」という声が多いという。これに対して山崎氏は「悪い意見を書かれたくないという気持ちもわかるが、それは短期的な視野であり、長期的なCX向上の機会を損失してしまっている」と話す。
ネガティブなクチコミは、「誹謗中傷・攻撃」と「企業にとって耳が痛い意見」の2種類に分けて取り扱うことが大事だという。誹謗中傷や他のユーザーのミスリードを誘うような誤った内容のクチコミは取り除くべきものだが、一方の「耳が痛い意見」は、企業にとって改善点を知るための貴重な意見になると捉えなければいけない。
また、一見すると「サイズが合わなかった」などのネガティブなクチコミも、そのクチコミが他のユーザーとのミスマッチを防ぐことに役立つため重要な情報になるという。「ZETA VOICE」の導入企業からも、「クチコミによって商品の返品率が大幅に減少し、オペレーションコストが削減できた」という声が寄せられている。返品をするとなるとユーザーにとっても大きなストレスになるため、意義のあるネガティブなクチコミは企業とユーザーの双方にとって有用な情報だと言える。
このほか、「買いたい/利用したいと思うクチコミ」を問うユーザーアンケートでも、「よいことも悪いことも書いている」(9.8%)や、「許容できる範囲のネガティブな内容の書き込みがある」(4.1%)とあるように、ユーザーはポジティブに評価している側面もある。ネガティブなクチコミをよい情報だと捉えられる意識改革が必要だ。
レビュー/クチコミへの取り組み④
レビュー/クチコミの進化系、インタラクティブなQ&Aも登場
レビューやクチコミの進化系としてQ&Aも登場している。これまでQ&Aは「よくある質問」やFAQのような企業からの一方的な発信が多かったが、最近ではレビューに対して他のユーザーが質問したり、それに対してユーザーや企業が回答したりするような、双方向のコミュニケーションを図る形が見られるようになった。
特に若年層は日常的にSNS上で自己表現をしているように、クチコミに自身の体験を書くことが楽しいと感じる人が多い傾向にあるため、Q&A上のコミュニケーションは活発化している。インタラクティブなQ&Aは購入の後押しにつながるだけでなく、これまでネット上では難しかった“ワイガヤ感”の創出にも寄与しているという。
「ZETA VOICE」は、複数の評価項目(何についての点数なのか)とレビュアーの軸(どんな人によるレビューなのか)の設定・絞り込みができるほか、インタラクティブなコミュニケーションが図れるQ&Aも実装できるシステムとなっている。
導入したアダストリアの「.st(ドットエスティ)」では、1商品あたり約数十件~数百件のコメントが投稿されるほどQ&Aで活発なやり取りが行われており、ファッションの買い物に関するソーシャルネットワーキングのような使い方もされているという。
消費者は店頭でもクチコミを重視、OMO施策が購入の後押しに
クチコミが購買に影響を与えるシーンはECに限らない。ユーザーは店頭でもクチコミを積極的に見ており、購入の最後の後押しに大きな影響を与えているようだ。
コロナ禍でEC化率がより高まったが、やはり店頭で買い物をすることも楽しい行為なので、今後収束に向かっていけば消費者はまた街に出るようになると思われる。毎回買うものが決まっているような商品はネットで買う傾向が続くだろうが、家具やアパレルなどのように実際にいろいろなものを見ながら買いたいような商品もあることを考えると、今後も店頭での購入が5~7割程度残り続けるのではないだろうか。
ただ、「ECではクチコミを見るが、店頭では見ない」ということではないので、消費者の行動に企業は協力していかなければいけない。(山崎氏)
こうした消費者の行動から、店頭での購買にECのデジタルマーケティングが役立つ「OMO(Online Merges with Offline)」の概念が広がった。山崎氏は「OMOで重視すべき取り組みの1つが、店頭でスマートフォンを使って情報を収集するユーザーを、いかに自社のECサイトに誘導するかだ」と話す。
店頭で商品を見たユーザーがネットでクチコミを閲覧し、店頭や自社の運営するECサイトで購買に至れるように誘導すべきところ、他社のECサイトで購入されてしまっては販売機会の損失となってしまう。つまり、自社のECサイトにクチコミが充実していなければ、参考になる情報が得られずCXの低下につながりかねないほか、他社のECサイトに流れる可能性も高まるということだ。
OMO・DXソリューションも展開する「ZETA CXシリーズ」
ZETAは「ZETA CXシリーズ」として6製品を展開。中でも、EC商品検索・サイト内検索エンジン「ZETA SEARCH」、レビュー・口コミ・Q&Aエンジン「ZETA VOICE」、OMO・DXソリューション「ZETA CLICK」が主力製品となっている。
コロナ禍では店頭のデジタルマーケティングへの投資を手控える企業が多かったが、徐々に街の人出が戻りつつある中で「ZETA CLICK」の導入が増加しているようだ。クチコミとOMOが連携した事例が今後ますます活況を帯びるとみている。
「ZETA CXシリーズ」は、中堅~大手企業を中心に幅広いジャンルで導入されている。アパレル業界を中心に、特に先進的なデジタルマーケティングの取り組みに力を入れる企業からの引き合いが強い傾向にあるという。