竹内 謙礼[執筆] 2023/2/13 7:00

「楽天市場」「Amazon.co.jp」に次ぐ流通規模の「Yahoo!ショッピング」。他のモールに比べて具体的に公開されている攻略法が多くないせいか、本腰を入れて運営しているネットショップが少ないのが現状である。

そのようななか、「Yahoo!ショッピング」を専門にコンサルティングサービスを提供するアルドの佐藤英介氏が、1月に『Yahoo!ショッピング完全攻略ガイド』(技術評論社)を刊行。本書では佐藤氏の抱負なコンサルティング経験をもとに、「Yahoo!ショッピング」の攻略法をわかりやすく解説している。

今回、佐藤氏にインタビュー取材を行い、「Yahoo!ショッピング」の運営ノウハウについて語ってもらった。

佐藤氏が執筆した「Yahoo!ショッピング完全攻略ガイド」(技術評論社)
佐藤氏が執筆した『Yahoo!ショッピング完全攻略ガイド』(技術評論社)

「Yahoo!ショッピング」のほうが売り上げを伸ばしやすい⁉

――「楽天市場」やAmazonと比べて、「Yahoo!ショッピング」に力を入れているネットショップは少ないのが現状です。

佐藤氏:「Yahoo!ショッピング」の規模感に気づいていない人が多いからだと思います。正式な数字は公表されていませんが、「楽天市場」とAmazonの総流通額がそれぞれ4兆円ぐらい。対して「Yahoo!ショッピング」は1兆円ほどあります。

それを「たった4分の1」と捉えるのか、それとも「4分の1もあるんだ」と捉えるかが、「Yahoo!ショッピング」への本気度の差になってくると思います。

――他のモールと同様、「Yahoo!ショッピング」も店舗同士の競争が激しいのでしょうか。

佐藤氏:「Yahoo!ショッピング」は公称で約100万店舗ありますが、実質、稼働しているのはそのうちの約10万店舗と言われています。本気で取り組んでいるネットショップはさらに絞られてくるので、おそらく「楽天市場」やAmazonよりは競争は緩い状況だと思います。

――つまり、本気で運営している「楽天市場」の約5万5000店舗と、中途半端に運営している「Yahoo!ショッピング」の10万店舗の、どちらでネットショップを運営するかということですね。

佐藤氏:商材にもよりますが、「楽天市場」よりも「Yahoo!ショッピング」の方が、売り上げが伸ばしやすい事例は多いです。他のモールに比べて攻略するノウハウがシンプルな点も、お勧めの理由の1つだったりします。

「Yahoo!ショッピング」を専門にコンサルティングサービスを提供するアルドの佐藤英介氏
「Yahoo!ショッピング」を専門にコンサルティングサービスを提供するアルドの佐藤英介氏

輸入販売企業が「Yahoo!ショッピング」でモール運営を学ぶ例も

――「Yahoo!ショッピング」にはどのような運営スタイルの店舗が多いのでしょうか。

佐藤氏:大きく分けて2つあります。1つは「楽天市場」をメインにして、「Yahoo!ショッピング」を片手間で運営している店舗。もう1つが、中国からの輸入販売の会社で、Amazonの次の市場として、「Yahoo!ショッピング」に出店しているケースです

――輸入業者は「楽天市場」ではなく、「Yahoo!ショッピング」に移行していくんですね。

佐藤氏:「楽天市場」は思いのほかランニングコストがかかりますからね。「Yahoo!ショッピング」を挟んでモール運営の基礎を学んでから、「楽天市場」に行くケースが多いです。

“ちゃんとやれば”売り上げは伸びる! まずはキーワードの見直しを

――ネットショップの運営者からは「『Yahoo!ショッピング』の売り上げの伸ばし方がよくわからない」という声をよく聞きます。

佐藤氏:「わからない」というよりも、「手が回らない」というのが実情ではないでしょうか。「楽天市場」をメインにしている店舗は、どうしても「Yahoo!ショッピング」の運営は後回しになってしまいますし、Amazonで成功した中国輸入の人たちも、モールの運営方法の経験がないから、「Yahoo!ショッピング」の運営が雑になってしまいます。ちゃんと手を加えれば、まだまだ売り上げを伸ばすチャンスはあると思います。

――まずは、どこから改善していけばいいでしょうか。

佐藤氏:キーワードの見直しです。「Yahoo!ショッピング」の売り上げの約8割は検索経由で売れています。他のモールと違い、検索対策が露骨に売り上げに影響するところがあるんです。

「キャッチコピー」の項目にキャッチコピーを書いてはいけない⁉

――どのようにキーワードを見直していけばいいのでしょうか。

佐藤氏:1つは検索対策そのものの改善です。たとえば「Yahoo!ショッピング」の商品登録の際、「キャッチコピー」の項目には、検索に引っ掛かりやすいキーワードを挿入するのが鉄則です。

しかし、多くのネットショップが「キャッチコピー」という言葉の通りに、その項目にセールストークを書き込んでしまい、検索キーワードとは無関係な言葉を挿入してしまうのです。

――たとえば?

佐藤氏:「今なら30%オフ! 送料無料!」とか。

――検索キーワードとは無関係ですね。

佐藤氏:これは確かに“キャッチコピー”ではあるのですが、検索に引っ掛かる言葉ではありません。

指針にすべきはSEO

――でも、このキャッチコピーが表示されることで、購入意欲をそそられるという一面もあるのではないでしょうか。

佐藤氏:「Yahoo!ショッピング」のアプリだと、そもそもこの「キャッチコピー」に入力した言葉は表示されないのです。さらにPCだと文字も小さいので、キャッチコピーとしての役割を果たしていません。

この項目は「検索対策のために必要なキーワードを挿入するところ」と割り切って、SEOを重視した言葉を入れる必要があります。

「キャッチコピー」の入力欄は「検索対策のために必要なキーワードを挿入するところ」と考える(画像は「Yahoo!ショッピング」から編集部がキャプチャして追加)
「キャッチコピー」の入力欄は「検索対策のために必要なキーワードを挿入するところ」と考える(画像は「Yahoo!ショッピング」から編集部がキャプチャして追加)

楽天市場やAmazonと差別化したワード選定が求められる理由とは

――他にもキーワードに関する改善策はありますか。

佐藤氏:「Yahoo!ショッピング」は調べられている言葉が独特なので、「楽天市場」やAmazonとは違うキーワードを選定する必要があります。

たとえば、「楽天市場」で「水着」と検索窓に入力すると、「水着 レディース」「水着 メンズ」と、直接、購入に結びつく候補キーワードが表示されます。

一方、「Yahoo!ショッピング」の検索窓に「水着」と入力すると、「水着 50代」「水着 40代」と、年代が候補キーワードとして表示されるようになります。

「Yahoo!ショッピング」では、たとえば「水着」と入力すると、年代が候補キーワードとして表示される(画像は「Yahoo!ショッピング」から編集部がキャプチャして追加)
「Yahoo!ショッピング」では、たとえば「水着」と入力すると、年代が候補キーワードとして表示される(画像は「Yahoo!ショッピング」から編集部がキャプチャして追加)

――物販の検索キーワードで『年代』を入れるなんて聞いたことがありません。非常に変わっていますね。

佐藤氏:他にもあります。たとえば、「楽天市場」で「肝臓」と検索すると、候補キーワードに「肝臓エキス」「肝臓サプリ」が上がってきますが、「Yahoo!ショッピング」だと「肝臓に良いお茶」「肝臓の数値が高い原因」と、文章化された候補キーワードが上がってきます。

――なぜ、そのような独特の候補キーワードになるのでしょうか。

佐藤氏:ポータルサイトの「Yahoo!」の影響を大きく受けるからです。

先ほどの事例でいえば、ユーザーが「50代で似合う水着って何だろう?」と、まずはポータルサイトのYahoo!で「水着 50代」で検索します。

その後、検索結果に「Yahoo!ショッピング」のサムネイルの写真が表示されて、「この水着かわいい!」と、そのまま「Yahoo!ショッピング」に入ってきてしまうので、結果、候補キーワードが「水着 50代」という、ちょっとクセのあるキーワードになってしまうんです。

まずは検索キーワードの掘り起こしを

――「楽天市場」やAmazonとは“別物”のキーワードと考えたほうが良さそうですね。

佐藤氏:まずはポータルサイトのYahoo!で検索してみて、どのような候補キーワードがあるのか調査してから、「Yahoo!ショッピング」の検索キーワードの掘り起こしを行ったほうがいいと思います。

もしかしたら、今まで予想もしていなかった穴場のキーワードが出てくるかもしれないですし、「楽天市場」やAmazonでは売れなかった商品が売れ始める可能性も十分にあると思います。

訴求力のあるページを作り出すための打ち手とは?

――ページの具体的な改善策はありますか。

佐藤氏:「Yahoo!ショッピング」はアプリのページが独特です。たとえば、「楽天市場」のスマホページだとスクロールしていけば画像コンテンツを見せることが可能ですが、「Yahoo!ショッピング」だと、ページで一旦、テキスト文を読ませたあとに、その下にある「すべて見る」をクリックさせなければ、画像コンテンツを見せることができません。

――画像で作られた訴求力のあるページを見せるためには、ワンクッション挟むことになるのですね。

佐藤氏:商品ページを作る際、テキストの説明文をしっかり作り込んで、「すべてを見る」をクリックしてもらうようにしなければいけません。あと、商品ページには20枚まで写真を挿入することができるので、できるだけ多くの写真や画像を入れて、商品の訴求力を上げていく必要があります。

――「楽天市場」で作った商品ページを、「Yahoo!ショッピング」で流用してもいいのでしょうか。

佐藤氏:問題ありません。ただ、先述したように流入してくる検索キーワードが「楽天市場」と違います。ページを流用した後、Yahoo!で検索キーワードを調査して、商品名やキャッチコピーなどの微調整を行う必要があります。

佐藤氏は「できるだけ多くの写真や画像を入れて、商品の訴求力を上げる必要がある」と提唱(画像は「Yahoo!ショッピング」から編集部がキャプチャして追加)
佐藤氏は「できるだけ多くの写真や画像を入れて、商品の訴求力を上げる必要がある」と提唱(画像は「Yahoo!ショッピング」から編集部がキャプチャして追加)

「Yahoo!ショッピング」で優位な広告とは?

――広告運用の改善点はありますか。

佐藤氏:広告は大きく分けてキーワード系の広告と、サムネイルなどの画像系の広告の2つがあります。「Yahoo!ショッピング」は検索経由の顧客が多いので、キーワード系の広告のほうが費用対効果はいいと思います。

――父の日やお歳暮などの画像系の広告はどうでしょうか。

佐藤氏:悪くありません。「楽天市場」と同じように売れてくれます。ただ、「楽天市場」の画像系の広告は費用対効果などのデータを測定することができるのですが、「Yahoo!ショッピング」の画像系の広告は、いまだにクリック数などの基本的な数値の測定しかできません。

しっかりした広告の効果測定ができないので、広告運用の実績が乏しい店舗は、「Yahoo!ショッピング」ではキーワード系の広告に投資したほうが戦略は組み立てやすいと思います。

ポイントは“売れる”キーワードをいかに見い出すか

――キーワード系の広告もたくさんあります。お勧めのものはありますか。

佐藤氏:「アイテムマッチ」と呼ばれる広告がお勧めです。Yahoo!の検索結果で上位表示されるものです。この広告枠が一番使い勝手が良く、高いレスポンスが取れると思います。

「アイテムマッチ広告」は高いレスポンスが期待できるという(画像は「Yahoo!ショッピング」から編集部がキャプチャして追加)
「アイテムマッチ広告」は高いレスポンスが期待できるという(画像は「Yahoo!ショッピング」から編集部がキャプチャして追加)

――運用のコツを教えて下さい。

佐藤氏:アイテムマッチの広告は、「キーワードの入札単価」×「売り上げ」×「Yahoo!ショッピング内のSEO」の指標で表示順位が決まります。つまり、できるだけ単価が安く、売れるキーワードを掘り起こして、検索の上位を確保していれば、必然的にアイテムマッチは費用対効果の高い広告として運用することが可能になります。

――すべては、売れるキーワードを見つけることにかかっているのですね。

佐藤氏:「Yahoo!ショッピング」内のSEOで上位が取れるのなら、その分、アイテムマッチの広告でも上位に表示されやすくなりますからね。

要は自分の店舗が、どのようなキーワードで売り上げを作っていくのか方向性さえ決まれば、非常にシンプルな方法でネットショップを運営することが可能になります。

広告投資は強気な費用感で!

――広告費は最初から強気に投資していったほうがいいのでしょうか。

佐藤氏:そのほうがいいと思います。少しずつ広告費を増やしていくやり方だと、費用対効果が分かりにくくなります。これは「Yahoo!ショッピング」に限った話ではなく、ネット広告は最初から大きな金額を投資したほうが、広告の質を掴みやすくなります。

日頃の検索順位のチェックは欠かさずに

――データの検証方法で改善すべき点はありますか。

佐藤氏:よほど売れている店舗でなければ、週に1回程度の検証で十分だと思います。アクセス数と売り上げを見た上で、あとはアイテムマッチの費用対効果をチェックするぐらいで問題ないと思います。

――そこまで神経質にデータを検証する必要はないんですね。

佐藤氏:ただ、「Yahoo!ショッピング」内の検索順位はマメにチェックしたほうがいいと思います。競合店舗が力を入れてきたり、商品が入れ替わったりして順位が変わると、それがアイテムマッチの費用対効果に直接影響を与えます。

検索順位の調査ツールは「Yahoo!ショッピング」には標準装備されていないので、うちの会社でわざわざ独自のツールを作りました。それだけ日頃の検索順位のチェックは必要だと思います。

売り上げが跳ねやすい日をうまく利用するために

――「Yahoo!ショッピング」は昨年の10月にPayPayモールと合併しました。それに合わせて、ポイント還元セールが「毎週日曜日」から「毎日」に変更されました。

佐藤氏:日曜日にセールを集中していた頃のほうが、月を通して売り上げが高かった印象があります。ただ、ポイントが還元される「5」のつく日と日曜日が重なった時は、大きく売り上げが跳ね上がっています。

佐藤氏は、「Yahoo!ショッピング」の売り上げを伸ばしやすいタイミングがあると指摘
佐藤氏は、「Yahoo!ショッピング」の売り上げを伸ばしやすいタイミングがあると指摘

――その特異日に売り上げを伸ばす方法はあるのですか。

佐藤氏:ポイント還元率を上げて「倍倍ストア」に申し込むのがお勧めです。PRオプションも設定しなくてはいけないので、手数料が多く取られますが、利益率が高く、リピートしてくれる商品であれば、思い切って5のつく日曜日にセールをぶつけてみるのも面白いと思います。

――「Yahoo!ショッピング」の売り上げを伸ばすためには、専属のスタッフは必要でしょうか。

佐藤氏:理想は専属スタッフがいたほうがいいと思います。最近はプロモーションパッケージに申し込むと、キーワードごとの売れ行きをはじめ、シェア率や成長率も分かるようになりました。専属のスタッフにまめに検索キーワードを調査してもらうようにすれば、さらに「Yahoo!ショッピング」の売り上げは伸びていくと思います。

――小規模なネットショップだと、なかなか専属の担当者がつけられないのが現状です。

佐藤氏:その場合は、「月に3日は『Yahoo!ショッピング』に集中する日」と決めて、限られた日数で運営に集中するやり方がいいと思います。毎日べたつきになるほどの仕事量はありませんから、担当制よりも取り組む日数で仕事量を振り分けたほうがいいと思います。

初心者は商品点数を絞った運用を

――初心者が「Yahoo!ショッピング」に取り組む際の注意点を教えて下さい。

佐藤氏:商品点数を広げないことです。広げ過ぎるとキーワードの調査も雑になって、広告やSEOの管理ができなくなります。キーワード探しが効率よくできるようになるまでは、商品点数を絞って運用したほうがいいと思います。

――他に「Yahoo!ショッピング」を運営する際の注意点はありますか。

佐藤氏:2日以内に商品が届く「優良配送」に対応しなければ、そもそも「Yahoo!ショッピング」内の検索で上位に表示させることができません。優良配送の対応は“マスト”と思って取り組んだほうがいいと思います。

検索で上位に表示させるためには「優良配送」の対応が欠かせない(画像は「Yahoo!ショッピング」から編集部がキャプチャして追加)
検索で上位に表示させるためには「優良配送」の対応が欠かせない(画像は「Yahoo!ショッピング」から編集部がキャプチャして追加)

週末だけ上位表示を勝ち取れる“裏技”とは

――出荷量が少ないネットショップだと、外部のロジスティクスのサービスが使えないので、優良配送の対応が難しくなりそうですね。

佐藤氏:優良配送の仕組みを逆手に取る方法もあります。たとえば、土日に配送を休んでいるネットショップが多いので、土日だけ優良配送に対応すれば、週末だけ「Yahoo!ショッピング」内の検索で上位表示されるようになって、売り上げを伸ばすことが可能になります。

――面白い裏技ですね。

佐藤氏:「Yahoo!ショッピング」は「楽天市場」やAmazonと比べてコロコロと売り方が変わります。いち早く情報を掴んで、いち早く変化ができるネットショップが勝ち残るロジックになっています。

私もTwitterを通じて「Yahoo!ショッピング」の運営ノウハウや最新の情報をタイムリーに発信しています。よろしければフォローしてもらえればと思います。

【筆者からのお知らせ】

ネット通販、人材教育、企画立案、キャッチコピーのつけ方等、斬新な切り口で「ナマのノウハウ」をメールマガジンでお届けしています!

筆者出版情報

SDGsアイデア大全 ~「利益を増やす」と「社会を良くする」を両立させる~

SDGsアイデア大全 ~「利益を増やす」と「社会を良くする」を両立させる~

竹内 謙礼 著
技術評論社 刊
発売日 2023年4月23日
価格 2,000円+税

この連載の筆者 竹内謙礼氏の著書が技術評論社から発売されました。小さなお店・中小企業でもできる、手間がかからない、人手がかからない、続けられそうな取り組みを考える64の視点と103の事例を集大成。SDGsに取り組むための64の視点と104の事例をまとめています。

この本をAmazonで購入
この記事が役に立ったらシェア!
これは広告です

ネットショップ担当者フォーラムを応援して支えてくださっている企業さま [各サービス/製品の紹介はこちらから]

[ゴールドスポンサー]
ecbeing.
[スポンサー]