通販新聞[転載元] 6/21 7:00

ハルメクは、通販事業で靴カテゴリーを強化しており、とくに自社プライベートブランド(PB)の「ハルメクの靴」を育成中だ。

同社では従来、靴カテゴリーの取り扱い商品のほとんどがナショナルブランド(NB)だったが、他の商品カテゴリーと同様にハルメクの顧客が身につけるモノとして、5年程前から靴も自社開発に舵を切った。

ハルメク 勝谷進氏
ハルメク 勝谷進氏

ハルメクファンの悩みに寄り添う靴を自社開発

陣頭指揮をとったのは、外反母趾にやさしい靴ブランド「フィットフィット」の実店舗開発を担った勝谷進氏で、2019年に入社したハルメクでも店舗事業部部長に就任したほか、オリジナルブランド「ハルメクの靴」の責任者も務める。

最初の1年間はハルメクの顧客にどんな靴を提供すればいいのか、デザイナーと一緒に調査するとともに、外部アドバイザーに医師や理学療法士などを招いて作るべき靴の方向性を固めた。

シニア女性の悩みにアプローチ

同社によると、自分に合う靴が見つからずに悩んでいるシニア女性は多く、加齢とともに筋力が低下すると足裏のアーチが平べったくなり、アーチが崩れるとかかとは次第に内側に傾いていく。かかとが曲がることで外反母趾などの足のトラブルが起きやすくなり、靴が合わないと感じるようになるという。

そこで大事になるのが、加齢による筋力低下をサポートすることや、内倒れするかかとをまっすぐに支え、足指が伸びるように整える靴選びだ。

「ハルメクの靴」は、理学療法士監修のインソールが足裏のアーチに沿ってバネのように足に吸いつき、靴の中で足を正しい位置に導く。かかとがブレないように包んで支える構造で、足の横ブレ、かかとの内倒れを防ぐ。

また、「ハルメクの靴」は靴ひもやベルトなどで甲を押さえる設計で、「甲の中足骨を押さえると足指が伸びる」という原理を用いて、足指を使って歩くことを促す。

コロナ禍突入で初動はふるわず

それでも、PBの靴はすぐには売れなかった。ハルメクとして提案すべき靴を開発したタイミングでコロナ禍に突入し、シニアの外出機会は一気に減った。加えて、同社の顧客層に響くプロモーションを検証するのに時間がかかった。「モノづくりができることに魅力を感じて転職したが、モノづくりとプロモーションは簡単ではなく、2~3年は本当に苦労した」(勝谷氏)と当時を振り返る。

「痛くない!」訴求がヒット

ハルメクは、「人生100年時代 歩くことは、よりよく生きること」というメッセージで靴を開発。世の中には緩くて柔らかくて履きやすい靴があふれ、“楽な靴”が売れやすいが、「ハルメクの靴」はその真逆だ。

「緩くて柔らかい靴は、実は足をどんどん弱くする」(勝谷氏)という考えに沿って、緩くも柔らかくもなく、靴紐をしっかり結ぶことで足指が広がって伸びる構造の靴足を正しい状態にすることをめざした靴ということを前面に出した。

具体的には、新客開拓用の新聞広告で「ゆるい靴を履き続けると、足の健康を損ねます」と発信したが、「きつくて面倒くさい靴」という印象を与えてしまった。靴の構造が理にかなっていても、楽な靴を望んでいる消費者には響かなかった。

「ハルメクの靴」の一例
「ハルメクの靴」の一例

そこで、昨年9月頃に商品の打ち出し方を変えた。自信がある靴の構造、機能は変えずにPRの仕方を変えた。新聞広告では、「『痛くない!』を目指した、ハルメクの靴」というキャッチコピーで打ち出し、甲を締めるという伝え方は控えた。その上で、足が痛くなる理由や、正しい歩行が楽にできる構造上の特徴を説明した結果、売れ始めた。

まずは地方でPRの仕方を変えた新聞広告を小規模にテスト。「最初は250足の販売という勝ち負けのラインを設定して臨んだら333足売れた。その後もテストで勝ち続けたので『いける』と判断し、新聞広告の出稿エリアを広げていった」(勝谷氏)という。

スニーカーを中心にブーツやパンプスも展開

「ハルメクの靴」はデザインのバリエーションがあり、今年3月中旬時点で約25型を展開スニーカー(タウンシューズ)が中心だが、ゴアブーツやパンプスなども手がける。

靴はサイズのバリエーションが多く、在庫の問題も出てくるため、新しいデザインの靴は少しずつ作ってテストして反応が良ければ量産するという“テスト&ロールアウト”のスタイルで展開する。

ナショナルブランドとプライベートブランドの両軸で展開

同社の靴カテゴリーは「ハルメクの靴」のだけでなく、引き続きNBの商品も取り扱っている。各メーカーはそれぞれ工夫を凝らした靴を作っているためで、とくにNBは70歳以上の顧客に向けた靴を、PBは機能での差別化に加え、デザイン面も少し若くして60歳くらいの顧客が買いやすい靴を展開。「60歳から足の歪みを防ぎ、ずっと自分の足で歩ける人生を送るサポートをしたい」(勝谷氏)とする。

顧客の声を商品開発に反映

モニター会員による試し履きを開催

ハルメクの通販は、顧客の声を商品開発や販売後も含めた各段階で吸い上げているのが強みで、これは靴カテゴリーも同様だ。

「ハルメクの靴」では、“シンデレラモニター”と呼ばれるモニター会員を募ってデザインに対する意見を吸い上げたり、販売前に試し履きをしてもらったり、カタログ誌面に登場してもらったりもしている。

靴のPBでは当初、試し履きをしてもらったモニター会員から「かかとの部分が汚れやすい」という意見が出たため原因を調べた結果、靴を作る際の塗装剤の問題だとわかり、量産する前に改良することができた。

店舗顧客には顧客ごとの測定データを基に機能説明

「ハルメクの靴」は現在、カタログ通販とEC、実店舗のすべてのチャネルで販売している。実店舗の「ハルメク おみせ」では来店客の足の体圧バランスを測定。どちらの足に体重がかかっているとか、足の内側に体重がかかっているとか、足の指が地面についていないなどもわかり、測定データをもとに、「ハルメクの靴」の構造や機能を説明して試してもらう。

実店舗「ハルメク おみせ」でも「ハルメクの靴」を販売
実店舗「ハルメク おみせ」でも「ハルメクの靴」を販売

靴は専門的な接客スキルが必要なことから、以前は小型の靴専門店を出店していたが、顧客はアパレルやインナー、コスメ、靴、食品など、さまざまなカテゴリーの商品がそろっている店舗を求めていることがわかったため、全12店舗のうち小田急百貨店町田店の靴専門店を除く11店舗が複数カテゴリーの商品を扱う店として展開中だ。

販売実績は累計5万足

靴は商品の性質上、店舗で試し履きし、サイズを含めて問題ないかを確認してから購入する顧客が多いが、最近では通販チャネルの購入者も増え、チャネルのバランスが取れてきているようで、「ハルメクの靴」の販売実績はシリーズで累計5万足を突破した。

靴カテゴリーは今後も店舗と通販チャネルの両方で伸ばす。同社は「ハルメク おみせ」が好調で、とくに百貨店の顧客層との親和性が高いことから百貨店への出店を強化しており、店舗出店に合わせてリアルの場で足のカウンセリングをしながら販売数量を伸ばす。

カウンセリングや相談会を開催

シューフィッターが店舗に常駐しているわけではないが、たとえば、LINEやメルマガを通じて「足と靴の相談会」の開催を告知し、事前予約制でカウンセリングを実施したりしている。3月6日にオープンしたあべのハルカス近鉄本店の店舗でも、オープン記念イベントとして2日間、上級シューフィッターによる相談会を開いた。

今後はECでのサービスを強化

新聞広告も引き続き活用し、新たな商品をテスト&ロールアウト形式で拡充していく。加えて、ECでのサービスを強化し、靴のEC市場拡大に備える

ハルメクでは靴の返品・交換はいつでも受け付けているほか、LINEを介したオンライン悩み相談を実施し始めているが、今後はオンライン上でのフィッティングサービスなども含めて通販チャネルでも靴が買いやすい環境を整備し、実店舗のないエリアの顧客にも店舗と同様のサービスを提供していきたい考え。

ハルメクらしさを押し出すデザインを追求

一方、MD面については、これまでは靴単体で商品を開発していたが、今年1月にファッション課のメンバーが靴の部門にも加わり、アパレル商材などと靴でMDを合わせていく体制とした。これにより、靴の機能面を変えることなく、デザイン面を含めてハルメクらしさを出していく方針だ。

この半年でPBの靴が本格的に売れ始めた同社。「緩い靴は楽だけど、将来、あなたの足を悪くするというムーブメントを広げていきたい。業界の中では変わった靴屋と見られてもいい。靴はかかとをまっすぐに固定することが大事ということを発信し続けたい」(勝谷進店舗事業部部長)とする。

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