Digital Commerce 360[転載元] 7/18 8:00

時計ブランド「G-SHOCK」などを販売するCasio UKのECサイト改善事例を解説します。Casio UKは、消費者が適切な商品を素早く見つけられるようにするため商品レコメンド機能を利用。また、サイト全体のどこにお勧め商品を表示するのが最も効果的なのかをA/Bテストするなどして、サイトの最適化を進めています。

直販を進めるCasio UKのEC改善施策

Casioは卸売りも手がけ行っていますが、CasioのECサイトや「G-SHOCK」のブランド公式サイトからの直販に注力。次の地域において、時計、電卓、楽器を販売するECサイトを運営しています。

  • 北米
  • ラテンアメリカ
  • ヨーロッパ(英国およびアイルランド向けの別サイトを含む)
  • 中東・アフリカ
  • アジア・オセアニア

英国とアイルランドのCasioの顧客のうち、約75%はスマホ版ECサイトで買い物をしています。しかし、画面サイズが小さいスマートフォンで商品を探すのは難しいため、Casio UKのECサイトと「G-SHOCK」のブランド公式サイトでは、コンバージョン率を高めるためにコンテンツのパーソナライゼーション、人工知能(AI)を活用した検索を取り入れています。現在のところ、この取り組みはうまく機能しているようです。

「G-SHOCK」のブランド公式サイト(画像はサイトから編集部がキャプチャ)
「G-SHOCK」のブランド公式サイト(画像はサイトから編集部がキャプチャ)

「在庫表示」などの切迫感メッセージでCVR18%

コンバージョン率を高める1つの方法は、切迫感を作り出すことです。Casio UKは、自社のWebサイトでFOMO(顧客が買い逃ししている恐れがあること)メッセージを表示するテストを実施しました。

Casio UKのeコマースマネージャー、モニーク・グリーン氏は、米国のEC専門誌『Digital Commerce 360』に対して、在庫数10個以下のSKUには「ラストチャンス」「在庫は残り5個」といったメッセージを表示すると話します。この方法によりコンバージョン率が18%に上昇したそうです。

ECサイトからの離脱前に割引コードのポップアップを表示

Nosto社の機能を使い、英国で運営するCasioと「G-SHOCK」のECサイトで割引コードを提供するポップアップメッセージを表示するキャンペーンを実施したところ、コンバージョン率40%を達成しました。

このキャンペーンは、消費者が商品名などをコピー&ペーストし、他のサイトで同じ商品を購入することを目的にオンライン検索する可能性が生じた際、割引コードのポップアップメッセージを表示するというものです。

買い物客が製品SKUをコピーすると、割引コードを提供するポップアップを表示する(画像はNosto社のWebサイトからキャプチャ)
買い物客が製品SKUをコピーすると、割引コードを提供するポップアップを表示する(画像はNosto社のWebサイトからキャプチャ)

Casio UKのデジタル部門責任者であるダニー・パワー氏は『Digital Commerce 360』に対し、「より消費者を深く理解して、求められるコンテンツを提供するために、過去5年間はとにかくDTC(直販)の改善に力を入れてきました」と説明しています。

パワー氏は「コロナ禍の時期には、Casio UKのECサイトで直接買い物をする消費者がたくさんいましたが、ここ数年でその数は減少。ピーク時のレベルに戻りつつあります」と付け加えます。

コロナ禍では倉庫が閉鎖されたため、在庫を小売店の棚に並べたり補充したりすることが難しく、消費者はコロナ禍の間、商品をオンラインで購入するしかありませんでした。(パワー氏)

Casio UKのECサイトでは、Nosto社のツールを使ってポップアップを表示し、再度サイトを訪れたユーザーに対して前回の続きからショッピングを再開することを提案。このポップアップによって、ユーザーをすでに訪れたことのあるページに誘導し、コンバージョンを促しています

ECサイトにバナーを貼る場合は、自動ではなく自分で手を動かしてバナーをアップしますよね。しかし、PLP(ユーザーがキーワード検索した際、優先的にユーザーに見せたいページ)の管理によって、在庫が切れた商品は最後の方に表示できます。それは、買うことのできない品切れの商品を見たいとは思わないからです。サイト内のユーザー行動の90%程度はバックヤード側で操作できているのです。(パワー氏)

AIを活用して商品リストを自動的に並べ替え、クリックスルー率とコンバージョン率の高い商品を優先し、在庫切れの商品を降格させる(画像はNosto社のWebサイトからキャプチャ)
AIを活用して商品リストを自動的に並べ替え、クリックスルー率とコンバージョン率の高い商品を優先し、在庫切れの商品を降格させる(画像はNosto社のWebサイトからキャプチャ)

レコメンデーションで売上アップ

Nosto社のレコメンド機能を利用し、さらにA/Bテストを通じてレコメンドの表示される場所を最適化しています。このほかにも、商品一覧ページで、特定の商品の新モデルが発売されたことを通知することもあります。このようなサイトの最適化は売上アップに寄与しており、「G-Shock」の英国サイトでは売り上げのうち26%、Casio UKのECサイトでは売り上げのうち11%に貢献しています。

Casio UKのECサイトには、商品を後で見るために保存したり、他の商品と比較したりする機能はありませんが、消費者がサイトを閲覧しているときに、ページ下部に最近見た商品を表示しています。

商品詳細ページにも工夫があります。たとえば「G-Shock」でベストセラーの“GA 2100”は4色展開です。従来は商品をクリックすると、クリックされた色の商品だけが表示されていました。今は商品をクリックすると、商品詳細ページ上でさまざまなカラーバリエーションが表示されます(グリーン氏)

1つの商品をクリックすると、クリックした商品以外のカラーバリエーションが表示される(画像は「G-Shock」のブランド公式サイトから編集部がキャプチャ)
1つの商品をクリックすると、クリックした商品以外のカラーバリエーションが表示される(画像は「G-Shock」のブランド公式サイトから編集部がキャプチャ)

AIを活用した検索機能の改善

Casioでは、検索機能を改善する前は、商品データの処理が充分でなく、各商品の属性をスタッフが時間をかけて手作業でリンクさせない限り、複雑な検索クエリに対して適切な検索結果を表示させることができませんでした。

Nosto社のAIを活用した検索機能によって、消費者――特にモバイルユーザーは、色、形、商品名などの属性を入力することで、ECサイトで商品を簡単に見つけることができるようになりました。CasioのECサイトと「G-SHOCK UK」のサイト訪問者のうち12%は、購入までの過程で検索バーを利用しています。

ユーザー行動の可視化によるトラブルの特定

Casio UKはユーザー生成コンテンツに、イスラエルのYOTPO社が提供するECサイト向けレビューマーケティングツール「Yotpo」も利用しています。「Yotpo」を導入する企業は、レビュー、テキストメッセージ、Eメール、サブスクリプションプログラムなどを作成できます。

Casio UKはこのほか、サイト訪問者のページ内の動きを、動画やヒートマップで確認できるサイト分析ツール「Hotjar」も利用しています。「Hotjar」は仏Contentsquare社が手がけています。

サイトユーザーのヒートマップは、何がユーザーを困らせているのか、あるいはサイト内にバグがあるのかを確認するとき、特に役に立ちます。また、Webサイト上で何度クリックしても機能しないボタンがある場合、トラブルの原因を特定するのにも役立ちます。しかし、マニュアルで確認する必要があるため、特定にはかなり時間がかかります。(グリーン氏)

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

この記事が役に立ったらシェア!
これは広告です

ネットショップ担当者フォーラムを応援して支えてくださっている企業さま [各サービス/製品の紹介はこちらから]

[ゴールドスポンサー]
ecbeing.
[スポンサー]