江沢 真紀 2015/12/18 9:00

以前、お客様目線のSEOで成功されている石けん百貨さんの事例を紹介しましたが、今回はカタログ通販の「セシール(cecile)」さんを紹介します。セシールさんと言えばフランス語の特徴的なテレビCMを覚えている方も多いと思います。現在では、婦人服、婦人下着を中心に、紳士服、子供服、家具、インテリア、コスメ、美容器具、食品まで、さまざまな商材をカタログとネットで販売しています。そんなセシールさんはSEOについて、とても興味深い取り組みをされているのです。

なんと2003年からSEO施策を開始

会社としては1972年創業と歴史のあるセシールさんですが、Webに関しては非常に先進的で、SEO施策に関しても早くからいろいろな取り組みを実施されてきました。最初にSEOを実施されたのはなんと2003年!まだSEOが一般に知られていない時代でした。

その後、雨後の筍のように出てきた外部リンクには一切目を向けず、継続的な内部施策でサイトを最適化し、検索流入を伸ばしてきました

2003年〜2005年…リニューアル。全ページ静的生成(SEOページ)/Yahoo!ディレクトリ登録。SEO社内セミナー実施 2008年…フロントのSEO(SEOページ移行・消滅) 2009年…サイト内検索活用(みんなの人気キーワードサイトオープン) 2011年…リニューアル時のSEO支援 2014年…コンテンツ支援
セシールサイトのSEOの歴史

その時代時代において、これだけたくさんの施策を行うことができた一因は、Web部門の担当の方がSEOに非常に熱心だったこと。一緒に施策を計画、実行、検証しながら10年以上取り組むことができたのです。

もう1つセシールさんが先進的だったのは、2005年頃からアクセス解析を重視していたということです。その頃はまだGoogleアナリティクスもなく、順位にこだわるサイトが多い中、生ログを解析して検索流入を深堀し、SEOの効果をしっかり分析されていました。

2014年、コンテンツSEOに着手

そんなセシールさんがコンテンツSEO、つまり記事の発信に着手されたのは2014年から。コンテンツSEOはそれより少し前からかなり話題になっていましたが、決してただトレンドに乗ったわけではなく(笑)、次のような背景がありました。

背景① EC以外の表示枠を獲得する必要が出てきた

この連載でも何度か説明していますが、ここ数年、Googleのアルゴリズムと検索結果は非常に大きく変化しています。確実に購入目的だと判断できないワードは、EC表示枠が以前に比べて減少してきており、特にECサイトにとっては流入機会の減少につながりつつあるように思います。例えば「花粉症」を例にとっても「花粉症 メガネ」のように、アイテム検索や購入目的クエリでないとECサイトがヒットしません(→参考)。

そこで、セシールさんもブログや情報枠での表示を狙って、ハウツー系など新たなキーワードを開拓することにしました。

背景② カテゴリワードの順位向上を目指す

ただ記事を作るのではなく、アイテムカテゴリの下に配置して構造化認識させ、記事を継続的に増やしていくことでカテゴリワードのテーマ性向上を目指しました。

ここは語ると長くなるので今回深くは触れませんが、例えば「ブラジャー」のアイテムカテゴリの順位は、コンテンツSEO実施前は15位でしたが、実施後は6位に上昇しました。

背景③オウンドメディアが重要になってきた

もともとセシールさんはSNSに積極的に取り組まれていて、Facebookページも6万以上のいいねが集まっています。

ただし、Facebook、Twitter、外部ブログなどの外部メディアにコンテンツを配信しても、フロー的に流れていくだけでSEO的にはもったいない。そこで、自ドメイン内にストックコンテンツとして記事を蓄積することにしたのです。

2014年の10月、「おとなの暮らし新常識」スタート

そんな背景からコンテンツを企画し、2014年の10月に「おとなの暮らし新常識」というコーナーをリリースしました。

セシールの「おとなの暮らし新常識」
セシールの「おとなの暮らし新常識」

このときに徹底的にこだわったのは、やはりユーザーニーズとキーワード。「どんな記事があればセシールサイトの潜在層へリーチできるか」「読んだときに満足してもらえるか」ということです。

セシールさんはカテゴリが多岐に渡るため、SEO的に強化したいカテゴリ、セシールさんが売りたいカテゴリからキーワード調査を行い、テーマを選定していきました。

そして2014年10月から秋冬をテーマに44本の記事をリリース、しばらく休止して2015年6月には夏をテーマに28本の記事をリリースしました。おそらく他のサイトのコンテンツ施策に比べると記事本数自体は少ないのではないかと思います。ただ、今のSEOのトレンド的にも大切なのは数より質なので、記事数にこだわらず1つ1つの質にこだわって作りました。実際、記事本数の割にかなりの検索流入が獲得できるようになりました。

コンテンツSEOの検索ニーズを探る4つのポイント

記事コンテンツのキーワードは、特集のキーワードと似ています。以前こちらの回で説明したように、季節テーマを意識して主にハウツー系ワードを洗い出しました。ポイントは「季節性」「トレンド性」「ハウツー系」「ユーザーの意図」の4つです。 

①季節性

その月に検索ピークになるような季節キーワードの洗い出しです。例えば10月だと、次のようなワードがありました。

  • 七五三 同伴者の衣装(6,763)
  • 七五三 親 服装(4,127)
  • 七五三 服装(2,963)

※カッコ内の数字はキーワードウォッチャー、2014年10月の人気度

七五三に同伴するご両親などがどんな服装をすればいいのか?という検索ですね。確かに私もその時になったら検索してしまうかもしれません(笑)。

一見セシールさんとは無関係のように見えますが、フォーマルウェアやバッグなどを販売していますので、記事から関連アイテムへつなげることができます。

今年の6月にはこんなキーワードも対策しました。

  • 洗濯物 臭い(6,600)
  • 生乾き(2,400)
  • 洗濯物 部屋干し(1,000)
  • 梅雨 洗濯物(6,600)

※カッコ内の数字はキーワードウォッチャー、2015年6月の人気度

毎年梅雨時には洗濯に頭を悩ませるものです。生乾きの臭い、部屋干しの際に気を付けることなど、上記の検索ニーズをもとに対処法を解説し、洗濯しながら除菌できる便利なアイテムと、洗濯槽の除菌グッズを紹介するリンクを設置しました。結果、そのリンクのCTRは全リンク中50%! 2人に1人がクリックしてくれました。

1つ気を付けなくてはいけないのは季節テーマの記事のリリース時期です。直前に出してもうまく検索トレンドに乗れば一時的に上位に来ることもありますが、やはり、オンシーズンの1か月前にはリリースしていると安定して上位に来るように感じています。

②トレンド性

これは主にファッション系です。昨年流行った「ミモレ丈スカート」や「ビジューネックレス」はアイテムワードですが、一過性の人気である可能性があり、「+ コーデ」というように、コーディネートの解説を求める派生語が人気だったので記事で対策することにしました。

③ハウツー系

これも特集キーワードのポイントで解説しましたが、今のGoogleは検索結果の1ページ目は基本的に1つのドメインから1ページしかヒットさせないことがほとんどです。一部を除いて極力アイテムキーワードは選ばないようにしました。

アイテムキーワードはアイテムカテゴリで対策しているので、キーワードが重複しないよう、ハウツー系やお悩み系のワードを選ぶようにしました。

④ユーザーの意図

キーワードを選んだらGoogleの検索結果を確認します。例えば先ほどの「七五三 同伴者の衣装」というクエリの検索結果を見ると、上位の10件中8件が解説する「記事」ページです。

「七五三 同伴者の衣装」の検索結果
「七五三 同伴者の衣装」の検索結果

つまり、ユーザーが求めているのは「何を着ていったらいいか」というハウツーであり、それに対するアンサーは解説記事だとGoogleは理解しているということです。ですから、記事で対策するとヒットしやすいということになります。

逆に、検索結果にECサイトばかりが並ぶようなクエリは、記事を作ってもなかなか上位に来ない可能性が高いと思います。

以上のポイントに注意して、調査した結果をExcelで下記のような表にしていきました。

Excelにまとめた調査結果の例

GoogleアナリティクスでコンテンツSEOの効果を確認

実際、コンテンツSEOの効果はどの程度あったのでしょうか? まずはGoogleアナリティクスで今回リリースした記事ページへの流入を出してみます。

記事ページへの流入の推移(2014年10月〜2015年8月)
記事ページへの流入の推移(2014年10月〜2015年8月)

リリースしてから右肩上がりで記事ページへの流入が増えています。流入の8割以上は検索エンジン、残りはソーシャルです。

1月から6月までは休止期間でしたが、検索ニーズから記事を作っているため減ることなく増え続けています

デバイス別に見るとスマホが7割弱、新規率も7割と、今までリーチできていなかった新規のスマホユーザーを集客できていることがわかりました。

デバイス別の内訳
デバイス別の内訳

記事に設定したキーワードの順位を確認したところ、下記のようになっていました。

記事に設定したキーワードの順位
キーワード人気度順位
ブラジャー きつくなる1,2011位
お受験スーツ1,3545位
子供服 サイズ2,2874位
大掃除 チェックリスト5,0454位
押入れ収納術2,2256位
フローリング カビ1,0974位
梅雨 コーデ3,6004位
バーベキュー ファッション1,3002位

コンバージョンへの貢献度を確認する

さて、コンテンツSEOが話題になり、「とりあえず何か記事を作ってみた!」という方も多いと思いますが、記事からコンバージョンにつながり大きく売り上げがアップした……そんな成功体験をされた方はどのくらいいるのでしょうか?

あまり商品を推しても読者は引いてしまいますし、まったく商品に触れなければ本当に読んで終わり。直帰率90%以上のページになってしまうことも多いと思います。そのさじ加減は非常に難しいところです。

そして、記事のコンバージョンを普通に計測してみても、ほとんど売り上げにつながっていないケースが多いと思います。例えばGoogleアナリティクスを使っている場合、ランディングページを記事に指定して、そこからコンバージョンを見たとしても、通常のレポートではラストクリック、つまり記事を見てそこからセッション内で買い物をした数値となりますので非常に少ないです。

セシールさんでも記事からダイレクトに購入につながるケースはほぼないので、「本当に継続する意味があるのか?」という議論もありました。

そこで、別の観点から記事の効果を分析することにしました。それが間接コンバージョン効果です。つまり「コンバージョンが発生したセッションにおいて、記事がどのくらい見られているか」その間接効果を分析するのです。

通常のコンバージョンと間接コンバージョンの違い
通常のコンバージョンと間接コンバージョンの違い

Googleアナリティクスの場合、通常のレポートではなく、「マルチチャネル」というレポートを確認します。コンバージョン(購入)に至った訪問の経路を確認することができます

左メニューの コンバージョン > マルチチャネル > アシストコンバージョンをクリック
左メニューの コンバージョン > マルチチャネル > アシストコンバージョンをクリック

デフォルトでは既定のチャネルが並んでいるので「カスタムチャネル」を作ります。

チャネルグループから「MCF チャネルグループテンプレートをコピー」をクリック
チャネルグループから「MCF チャネルグループテンプレートをコピー」をクリック。
編集画面で「記事」というグループを作り、記事のURLを含めるように定義
編集画面で「記事」というグループを作り、記事のURLを含めるように定義する。
このチャネルを最上位に配置して、名前を付けて保存する
このチャネルを最上位に配置して、名前を付けて保存する。

すると、このように「記事」がチャネルの1つとして表示されます。

「記事」がチャネルの1つとして表示される

ここで注目していただきたいのは右端の数値です。アシストコンバージョンの価値を表す数値ですが、通常のチャネルは1桁のところ、「記事」は21と非常に高い数値になりましたつまり、記事経由でダイレクトに購入につながらなくても、記事を1回でも見て購入するユーザーはそれなりに存在するということになります。

マルチチャネルレポートで意外な貢献効果を発見

次に「コンバージョン経路」というレポートを見てみます。レポートを変更すると、デフォルトのチャネルグループに戻っているので、先ほど作った「記事を含むカスタムチャネル」に変更します。

「記事を含むカスタムチャネル」に変更

そしてフィルタで記事チャネルを含む経路のみに絞ってみます。

フィルタで記事チャネルを含む経路のみに絞る

すると次のように記事を含むコンバージョン経路のみ表示されます。

記事を含むコンバージョン経路のみ表示される

このように、記事を見て次に検索で来てコンバージョンする人、記事を見て検索で来て、さらにアフィリエイトで来てコンバージョンする人など、さまざまな経路が見られます。

記事はハウツー系やお悩み系のキーワードが多いので、想像以上に記事が最初の接点として機能していると見受けられます。

このようにコンテンツ記事のコンバージョンについては、マルチチャネルレポートを見て間接効果を分析すると意外な貢献効果が発見できるかもしれません。

広告にも活用可能

また、記事を広告に活用するのも一案です。記事経由で集めた新規のユーザーを、Googleアナリティクスのリマーケティングのユーザーリストに格納しておいて、ある程度蓄積したら関連のあるディスプレイ広告などに活用するのです。

セシールさんでも「2ページ以上記事を閲覧したユーザー」「記事を見たけどまだ購入に至ってないユーザー」「レディースファッションの記事を見たユーザー」など、さまざまなユーザーリストを作っています。

広告を利用しているネットショップの方はぜひ活用していただき、単なる読み物で終わらないSEO+広告の一気通貫施策を計画していただければと思います。

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