「当たり前なことほど重要だが、見落とされがち」というのは世の常です。広告でどんなに新規顧客を集めても、コンバージョンしなければお金をドブに捨てているようなもの。新規、新規、新規を集める……これって正しいの? たとえば、広告を投じる前にコンバージョンを上げるための内部施策を行ったら、広告効果は飛躍的に上がる可能性がありますよね。そう、新規、新規、新規……新規を集めることに投資する前にやるべきことがあるはずです。今回はそんなお話です。

あらゆる”集客施策”に手を出すEC事業者が多い、という現実

各種ネット広告やSEO対策、最近ではコンテンツマーケティングやオムニチャネルマーケティングなど、新規顧客を獲得するための取り組みに継続的な投資が行われています。その一方で、多くのEC事業者は口を揃えて「新規顧客獲得」を事業運営上の一番の課題としてあげ続けています

実際に、EC事業者は広告代理店などから提案される「新規顧客獲得」のための集客施策を吟味し、一番効果が見込めるプランを採用しています。集客施策のパフォーマンスをチェックするために、複数のKPIを設定して日々社内でレポートを行っていることでしょう。

しかし、多くのサイトでは「新規顧客獲得」に苦戦しています。注力しているはずの施策の成果がなかなか見えてこない……はたして本質的な問題はどこにあるのでしょうか?

新規顧客の開拓に苦労しているEC事業者が多いのはなぜ? UTOを解説①
理想は新規顧客アップで、売り上げも拡大だけど……

「ROAS」改善施策における致命的な落とし穴

ECサイトを運営する担当者にとって、今までの集客施策を続けることは容易なことかもしれません。実はそこに、どんなにお金を突っ込んでも売り上げの拡大策を阻害する“落とし穴”が存在しているのです。

この事実を直視せずに、集客偏重の施策にばかり手をつけているといつまでたっても本質的な問題解決はできません。

「広告に頼るのは悪だ」と言いたいのではありません。“集客施策だけに注力する“のではROAS(投資対獲得売上率)の最大化はできないと指摘したいのです。

新規顧客の開拓に苦労しているEC事業者が多いのはなぜ? UTOを解説② ROAS(広告費用対効果)の正しい捉え方 施策 露出 流入 検索 閲覧 比較 カゴ 購入

ROASは、「集客施策効果で得た売上金額/施策に投資したお金」で算出されます。「施策」と「購入」の間には、露出 → 流入 → 検索 → 閲覧 → 比較 → カート投入の各ステップがあり、この各ステップのスループットを上げることで、ROASを伸ばしていくことができます。

しかし、多くの担当者は流入した後の、「検索 → 閲覧 → 比較 → カート投入」のステップを見落とした上で「ROAS」を捉えがち。その場合、「ROAS」を最大化させる際の指標になるのは、「いかに効率よく流入させるか」ということになってしまいますよね?

改善の方向性は“露出先(媒体)選び”と“クリエイティブの最適化”になってしまいます。「あの媒体はよくなかった」「今回はクリエイティブが悪かった」。こんな言葉が貴社で飛び交っていませんか?

ちなみに、この改善の方向性は広告代理店などの王道の提案パターン。売り上げを伸ばせない元凶が、広告代理店の提案にあるとまでは言いませんが、ここに落とし穴があることに、現場担当者は気付くべきです。

新規顧客の開拓に苦労しているEC事業者が多いのはなぜ? UTOを解説③ ROAS(広告費用対効果)の正しい捉え方 施策 露出 流入 検索 閲覧 比較 カゴ 購入

最近はGoogleのユニバーサルアナリティクスの登場で、商品詳細ページの到達率やカート投入率が可視化できるようになりました。ユーザの流入後のスループットを改善できる環境は整いつつあります。

「ROAS」を最大化させるために、「どれだけ多くの訪問者数があるのか」といった流入に関するKPIだけではなく、サイト流入後に存在する商品購入までの長いステップを総合的に捉え、売り上げを伸ばすための施策を実行することこそがEC事業者のやるべきことなんです。

「バケツの穴」問題は、新規だけの問題にあらず

当社ではよく、バケツを例にして説明しています。まず、サイトがバケツだと仮定しましょう。そこに水(訪問者)を流し込んでも、バケツに穴が開いていたらせっかくの水(訪問者)は流れ出してしまいます。さて、結果的にどうなるか。少しの水しか残りませんよね。

実はこれ、広告経由の新規訪問者に限った問題ではありません。リピーターもサイトの使い勝手が悪ければ再購入率が下がりますし、再訪問した見込み顧客も前回チェックした商品が見つけにくければ、途中で嫌になってしまい離脱してしまうでしょう。

サイトの全訪問者に対し、流入後のパフォーマンス(直帰率、離脱率、商品詳細到達率、カート投入率、PV/UU、滞在時間、CVRなど)を改善することで売り上げを最大化させるのは非常に重要です。

当社では、この流入後のパフォーマンス改善を「ユーザスループット最適化(UTO)」と呼んでいます。

まずはひとつずつバケツの穴(訪問者がサイトから離脱してしまう問題となる箇所)を探し、穴を塞ぐために適切なUTO対策を一つひとつ実施していく。「ユーザスループット最適化(UTO)」の考え方は決して目新しいことでも難しいことではありません。小さな改善を積み重ねることでサイトに実力が付き、大きな成果につながります。

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「売り上げを伸ばす方法が知りたい!」。ECサイトを運営しているみなさんは、そんな思いで日々情報収集をし、今もこうして記事を読んでいることでしょう。

売り上げを伸ばすための3要素は、「商品力(品質/価格/ブランド)」「運用力(システム/オペレーション/物流)」「販売力(集客/接客/育客)」。その中でも、①現状の認識と実態の乖離が大きく改善余地が大きい②大きな投資をすることなく確実な成果を得られる可能性が高い――という2つの観点から「販売力」に焦点を当て、この連載では「ECの販売力を高める方法」を解説していきます。

次回は、「なぜ今ユーザスループット最適化(UTO)なのか?」をテーマに、ユーザスループット最適化(UTO)の各社取り組み状況の実態やマーケットのトレンド、さらにはユーザスループット最適化(UTO)を進める上で見るべき3つのKPIについて説明します。

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高橋 敏郎

ナビプラス株式会社

高橋 敏郎(たかはし・としろう)

ナビプラス株式会社 執行役員 セールス&マーケティング部 部長

大学卒業後、インターネット広告代理店にてIT関連メディアやリスティング広告、サイト構築の営業に従事。その後、人材紹介会社におけるインターネット関連企業の採用支援業務などを経て、2010年の会社設立とともにナビプラス株式会社に参画。

現在は、大手EC事業者への営業のほかマーケティングやアライアンス関連業務などを担当している。

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