Amazon急拡大のワケ。プライム会員は1.5倍、マケプレの販売個数は4割UPしていた
Amazonは2015年、追加費用なしで映画やTV番組が見放題となる「プライム・ビデオ」、国内外の音楽が聴き放題となる「Prime Music」を始めるなど、プライム会員向けサービスの拡充を進めてきた。プライム会員限定のタイムセール企画「プライムデー」を実施するなど、EC面でもサービスを充実。こうした取り組みがAmazonにどのような影響を与えているのか。セラーサービス事業本部の星健一事業本部長に2016年の取り組みを含め聞いてみた。
マーケットプレイスからの販売個数が前年比40%増に
――販売事業者数が2015年12月時点で18万3000社になるなど、順調に増えています。どういった商品カテゴリの事業者による出品が多くなっているのでしょうか。
1年間で1万2000~3000社増えたのですが、消費財やファッションジャンルが大きく伸びています。この分野は、Amazonが強化を進めているところ。積極的に事業者へアプローチしています。
海外からの出品も確実に増え、商品のセレクションも豊富になってきています。
――先日、米アマゾンが発表したAmazon.co.jpの売上高は約20%の成長となっていましたが(記事参照)、マーケットプレイス事業はどれくらい成長していますか。
2015年3~6月の日本におけるアマゾンのマーケットプレイスの販売個数は2014年同期比で40%の伸びを示していると発表(2015年9月)しましたが、その後も同様の伸びを維持しています。年間を通じて40%前後の伸びを達成することができました。これは、より多くの販売事業者に参加いただき、セレクションが豊富になったことで商品が多くのお客さまの目に留まるようになった結果だと思っています。
言いかえると、今のAmazon.co.jpの成長を支えていただけているのは販売事業者のおかげだと思っています。
プライム会員の急増でFBAによる売上向上効果がさらに高まる
――2015年はプライム会員向けのサービスを拡充させてきました。プライム会員数は大きく伸びたと思うのですが、これによるマーケットプレイス事業への影響は。
「Amazonプライム」は2007年から提供を開始しているのですが、積極的にサービスを拡充させた2015年は、会員数が1.5倍に拡大しました。
プライム会員なら無料で利用できる「当日お急ぎ便」や「お届け日時指定便」の対象商品には、プライムマークが付くようになっています。このプライムマークが付くのはAmazonによる直販商品か、Amazonの物流代行サービス「フルフィルメントby Amazon(FBA)」を利用している商品。プライム会員が大きく増えたことで、“プライムマークがあるから購入する”というお客さまが増えました。FBAを利用している商品は以前より販売しやすくなっています。
2015年2月に販売事業者に対して実施したアンケートでは、83.6%がFBAの利用を開始する前と比較し、利用後に「売り上げが向上した」と回答しています。改めて調査をするとさらに数字は高くなり、FBAを導入したことで得られる効果もさらに上がると思います。
実際、FBAの効果を実感し、さらに多くの商品でFBAを利用する販売事業者はこの1年で大きく増えています。
――FBAでは商品の回転率が高ければ高いほど、料金面でお得になるシステムとなっています。Amazon以外のECサイトで販売する商品も、FBAを使っているケースが増えてきているのではないでしょうか。
Amazonでは「マルチチャネルサービス」と呼んでいますが、とても増えていますね。利用も簡単で、出品管理ツール「セラーセントラル」のボタンを1つ押すだけで対応できます。多くの販売事業者から、「FBAに一括してアウトソーシングしたら物流費用が安くなった」という声をいただいています。
FBAはAmazonのお客さまに対して“在庫切れ”という状態をなくすためにサービスを提供しているので、このサービスで儲けようとは思っていません。そのため、使ってみると思った以上に割安だったという感想が多いんです。
――2014年から始まった「Amazonスポンサープロダクト」の利用状況はどうですか。
「Amazonスポンサープロダクト」は世界各国のAmazonで展開していますが、日本の利用販売事業者数は世界最速のスピードで伸びています。こうした背景には、多くの販売事業者がモール内広告や検索連動型広告などに慣れているということがあるのでしょう。
「Amazonスポンサープロダクト」を利用して売り上げを大きく伸ばした事例も出てきていますが、まだまだこれから。販売事業者が満足できるサービスでなければリピートして使っていただけないことは分かっています。さらに改善を進め、何度も利用していただけるサービスにしていかなければならないですね。
販売事業者との対話を強化し、売りやすい環境を提供へ
――2016年から新たに販売事業者向けの無料eラーニング「Amazon出品大学」を始めました。
これまでも販売事業者向けに無料のeラーニングサービスを行っていました。しかし、これまではニーズがあると思われる講座を私たちで設定し、セミナーと同じように時間限定で受講する形で展開していました。
最近では出品を始めたばかりの方から、すでにAmazonでかなり販売されている方まで、販売事業者の知識の差は大きくなっていますし、求める情報も大きく変わってきています。「Amazon出品大学」はAmazonで売り上げを促進する方法を、初級編から上級編まで体系化し、どのタイミングでも受けられるようにしました。初心者でも売り上げを伸ばす方法を、いちから学ぶことができます。海外販売を検討中の販売事業者にはその講座を選んで学ぶことができるようになりました。
以前であれば販売事業者がAmazon内で実施できる施策は少なかったのですが、今では売り上げを伸ばすためにさまざまな施策を打てることがが増えてきたので、こうした講座が必要になったという面もあります。
――2016年については。
「FBA」や「Amazonスポンサープロダクト」、「Amazonレンディング」などすでに提供しているサービスに関しては、さらに販売事業者に使いやすいように改善を進めていきます。
「Amazon出品大学」もまだすべての講座が用意されているわけではありません。特に、日本の販売事業者が海外で成功するための講座が不足していると思っていますので、こうした講座を充実させていきます。
販売事業者とのコミュニケーションも深めていきます。すでに10~20社ほどに集まっていただく「密林会」という会合を東京、大阪、仙台、札幌で設けました。販売事業者から改善要望を受けたり、Amazonから情報提供を行うといった動きを始めています。こうした、コミュニティーを作ることで、販売事業者の悩みや要望を理解しながら、販売事業者にとってさらに売りやすい環境を作っていきたいです。
▼アマゾンセラーサービス事業の戦略に関する昨年実施したインタビューはこちら「売上アップを実現するために押さえておきたいアマゾンが考える2015年のEC戦略」