瀧川 正実 2016/11/4 9:00

大統領選の討論会が進む中、米国民や評論家が勝敗をめぐって熱い議論を交わす一方、小売業者は大統領選を商機として活用しています

大統領候補と同じようにトップへ上り詰める為には、販売方法やマーケティングに最新の注意を払い、全力で売り上げを伸ばしていく準備が不可欠です。

シカゴ大学でマーケティングを教えているダール教授は、大統領候補のメッセージは変わったり、発展したりするため、小売業者も変化に合わせていく必要があると指摘。商品販売について、「政治のサイクルは短く、ものすごいスピードで変わっていくということを小売業者は理解する必要がある」とダール教授は説明します。

たとえば、注文が入ってから商品を製作するカスタムギフトのECサイト運営のカフェプレス社(インターネットリテイラー社発行「全米EC事業 トップ500社」第249位)。消費者が使いたいデザインを、マグカップやTシャツ、車のステッカーなどの商品にするので、大きな変化にもすぐに対応できます。その1つの具体例としてあげられるのが、民主党候補のヒラリー氏が共和党候補のトランプ氏の支持者を表現する為に使った”嘆かわしい人々”という言葉。カフェプレス社はその言葉が使用されてから数日以内に、同じ言葉を載せた約100商品の販売を開始しました。

小売業者は実店舗を管理するのと同じように、ECサイトも管理しなければいけません。政治ニュースで盛り上がっている話題に関する商品は、消費者の注意を引きつける為に最も目立つ場所に配置する必要があります。そうすることによって、消費者にサイト内を回遊してもらったり、興味のある商品を探してもらうことができるのです。

シカゴ大学のダール教授はこう話します。

EC専業企業Bobbleheads.comの創設者、ウォーレン・ロイヤル氏によると、最初の討論会後、黒のパンツスーツを着たクリントン氏の首ふり人形と、スーツに赤いネクタイをしたトランプ氏の首ふり人形の売り上げは、あまり変化は見られなかったそうです。

しかし、黒白ストライプの囚人服を着た大統領候補になる前のクリントン氏の首ふり人形は飛ぶように売れました。「ベストセラー商品の1つ。生産が追いつきません」と、ロイヤル氏は語ります。ただ、詳しい売上高は明かしていません。

Bobbleheads.comのトップページには、ダークスーツを着たクリントン氏とトランプ氏が頭を突き合わせているイメージが掲載されていますが(下画像)、大統領選討論会に特化したマーケティングは行っていないそうです。

大統領選も商機にする米EC企業のユニークなプロモーション手法
編集部がBobbleheads.comからキャプチャ

トップページのカルーセル部分には、他にも「トランプ氏、宇宙へ」と題したプロモーションの写真が掲載されています。トランプ氏の首ふり人形を高度10万3339フィート、ほぼ20マイルの高さまでゴム気球を使って飛ばし、その様子をサイトに載せてプロモーションを展開しています。

トランプ氏の首ふり人形を使ったプロモーション

カフェプレス社の広報によると、9月26日に行われた1回目の大統領選討論会後、選挙関連の商品売上が急激にアップ。特に、クリントン氏の商品が売れ、選挙関連ページのPVも急増しました。

討論会後の週は、ベストセラー5商品中4商品が、「クリントン氏を支持」と書かれた商品で、残りの1商品は「2016年の選挙はどちらも応援しない」と書かれた商品でした。

カフェプレス社の共同創設者でCMOのマヒー・ジャイン氏によると、選挙関連のグッズ売り上げは、2016年の総売上高の10%を占めるそうです。検索マーケティングやSEO対策、パーソナルメール、リターゲティングを駆使し、政治関連商品を販売。大統領選挙や討論会に関し、どのようなキーワードを活用しているかについては明かしていません。

カフェプレス社は9月、「支持する候補を宣言しよう」と書かれたメッセージを初めてトップページに掲載。画像をクリックすると「2016年選挙本部」と題したページに飛び、消費者は政党別、候補別、商品別で商品を購入することができると同時に、売れ筋商品のコーナーもチェックできます。

9月26日に行われた討論会後のcafepress.comの大きな動きは以下の通りです(数字は全て前週比)。

  • クリントン氏関連の商品は、トランプ氏関連の商品よりも43%多く販売
  • 前週比で、トランプ氏関連の商品売り上げは変化なし、もしくは微減
  • クリントン氏関連の商品売り上げは36.6%増
  • 両氏の商品売り上げは全体で16.4%増
  • 「2016年選挙本部」のPVは155.9%増
  • cafepress.comの選挙向けランディングページのUUは129.8%増

ECと政治に関するより深い調査結果は、インターネットリテイラーマガジンの10月号内「選挙とEC」という記事で確認できます。

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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