ペットフード、ペット用品の販売で知っておくべき規制と法律
今やペットは大切な家族の一員。ペット用の商品はいわゆるペットフードにとどまらず、洋服、小物、おもちゃ、お手入れ用の商品等、多岐にわたり販売されています。人間以上に高待遇のワンちゃんやネコちゃんも珍しくないご時世ですが、このペット関連商品の広告においても、薬機法は無視できません。
「薬機法の世界に入り込む」と薬機法違反
ペットフードやペット用雑貨というものは、動物用のものとして薬機法で規定されている「医薬品」「医薬部外品」「医療機器」ではありません。よって、
- 医薬品や医療機器のような効能を標ぼうする
- 医薬品専用成分を配合する
等、いわゆる“薬機法の世界に入り込むこと(効果効能の標ぼうなど)”をすると薬機法違反になると考えられます。
ペットフードも動物用雑貨も、人間の健康食品や雑貨と同様、直接薬機法の規制は受けず、医薬品もしくは医療機器的効能効果を標ぼうする等、無許可で医薬品あるいは医療機器であるかのように振る舞うことそのものが禁止となります。
ペットフードは「食品」ではない
薬機法で規定されるペット用の商品には「医薬品」「医薬部外品」「医療機器」はあっても、「化粧品」はありません。
例えば、ペット用シャンプーという商品がありますが、人間のような「化粧品」というカテゴリはありませんので、おのずと「雑貨」か「医薬部外品」「医薬品」になるということになります。
- 一般品(動物用雑貨のこと)…… 清潔にすることだけを目的にした通常の成分で構成されたもの。
- 医薬部外品や医薬……ノミ取りを効果として謳ったり、湿疹の治療や外部寄生虫の駆除等、薬効のある成分が入っていたりするもの。
ここは人間のものと大きく違うポイントです。そしてもう1つ異なる点は、同じ薬機法でも人間の場合は「厚生労働省」が管轄ですが、動物の場合は「農林水産省」となります。
またもうひとつの特徴として、ペットフードはいわゆる「食品」ではありません。人間の食品関連の法令(食品衛生法、JAS法、食品表示法、健康増進法等)による規制は原則、受けないとされています(ただし食品衛生法の中の「食品、添加物等の規格基準」は適用)。
栄養に関するものは「ペットフード安全法」の対象
2008年6月18日に「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律」(ペットフード安全法)が、環境省及び農林水産省が共管する法律として制定され、2009年6月1日から施行(義務化は2010年12月)されています。
「愛がん動物」とは犬または猫のことで、「愛がん動物用飼料」とは愛がん動物の栄養に供することを目的として使用される物を指します。
栄養に供することを目的として使用される場合は、ミネラルウォーター、生肉、スナック、ガム、サプリメント等も、この法律の対象となる「愛がん用動物飼料」に含まれます。
一方で、愛がん動物が口にする可能性があっても、おもちゃや食器などは、栄養に供するものではないことから、この法律の対象となりません。また、犬・猫以外の動物の飼料もこの法律の対象外ということになります。
例えば、猫用にマタタビ製品がありますが、
- マタタビの他にビタミン、ミネラルなどの微量栄養成分を配合し、これらの微量成分を摂取することを目的としたもの →ペットフード安全法の対象内
- 香り付けや遊具として使用することを目的としたもの →ペットフード安全法の対象外
という考え方になります。
この省令により、ドッグフードやキャットフードは、パッケージに「名称」「賞味期限」「原材料名」「原産国名」「製造業者、輸入業者または販売業者の名称と住所」を表示することが義務付けられました。
そして、もちろんペットフードや動物用雑貨の表示においても、商品の品質や規格などが実際のものよりも著しく優良であると消費者が誤認するような表示等は不当表示として「景品表示法」で禁止されます。
また、ネット通販やカタログ通販の場合は、通信販売等の広告規制等が含まれる「特定商取引法」の対象となります。この部分は人間のものと同様です。
広告表現でNGになる6つのポイント
人間の食品と同様、ペットフードと医薬品を判別するポイントは、成分本質、形状、用法用量、効能効果の4つのファクターによります。
ペットフードである以上、この4つのファクターについて医薬品と区別を付けていないと、無承認無許可医薬品であると見なされ、薬機法違反と判断されてしまう可能性が生じます。
特に問題とされるのがペットフードによる「医薬品的効能効果」です。医薬品的な効能効果と判断されるポイントを、例と共に6つにまとめます。
①
「○○病の治療に」
「○○病の改善に」
「○○病に」
「症状に応じて、使用してください」
→主に動物の疾病の治療に使用されることが目的と判断される表示と言えるため、使用できません。
②
「病気・老化予防に」
「疾病予防に効果があるといわれている○○が豊富に含まれています」
→主に動物の疾病の予防に使用されることが目的と判断される表示と言えるため、使用できません。
③
「その著しい効果は、動物の関節強化、保護に、十分に発揮されます」
→主に動物の身体の構造に影響を及ぼすことが目的と判断される表示と言えるため、使用できません。
④
「歯・歯周の消臭に効果のあるサプリメントです」
「犬独特の体臭が和らぎます」
「胃腸が丈夫になります」
→主に動物の身体の機能に影響を及ぼすことが目的と判断される表示と言えるため、使用できません。
⑤
「○○の漢方薬剤をベースに開発されました」
「動物医療用」
→医薬品であることを暗示させる表示と言えるため、使用できません。
⑥
飼育者の経験談:
「○○を与えたところ、体調も良くなり今も元気です」
→新聞、雑誌等の記事、獣医師、学者等の談話、学説、経験談等を引用または掲載することにより、医薬品であることを暗示させる表示は使用できません。
医薬品的効能効果とそれ以外の表現を区別するポイントとは?
これらを踏まえ、ペットフードにおける医薬品的効能効果とそれ以外の表現を区別する注意点を、ジャンルに分けてそれぞれ解説していきます。
①栄養補給
特定部位への「栄養補給」は標ぼう可能!
「○○(特定部位名)の健康維持のために○○(成分名)を配合」等、特定部位の改善、増強等を標ぼうしない場合には、直ちに医薬品的な効能効果とは判断されません。
人間が食する健康食品の場合、特定部位への栄養補給を標ぼうすることは、医薬品的効能効果と解釈され、不可となりますので混同しないようにしましょう。
②療法食
ペットフードと認識される物は疾病名が使える場合がある!
栄養成分の量や比率などを調節することによって、特定の疾病等に対し、いわゆる食事療法として使用されることを意図して作られたものについては、栄養成分の量や比率などがどのように調節されているのかを具体的に明示した上で、疾病名や動物の身体の構造または機能について表示することは、直ちに医薬品的な効能効果とは判断されません。
ただし、当該製品が一般に犬用・猫用のペットフードとして認識されるものであることが明確な場合に限ります。
例えば「ペット用サプリメント」と呼ばれるもののように、錠剤や粉末状など、その製品自体がフードとして認識されがたい形態・使用方法のものについては、医薬品との誤認を招く可能性があることから不可とされています。
「減量・ダイエットを必要とする犬、猫のために、カロリーを低く抑えて調整した療法食です」という表現であれば、直ちに医薬品的な効能効果とは判断されません。
③糞や尿の臭い
着香や臭いの吸着等、フードや腸内容物への作用の場合は標ぼう可能!
口臭または体臭の防止や殺菌作用を持つ成分を含有するものによる消臭効果は、医薬部外品の効能効果と解釈されますが、「配合されている○○(成分名)が糞の臭いを軽減します」といった、着香や臭いの吸着等の、フードや腸内容物への作用によるもの等の場合は、医薬品的な効能効果とは判断されません。
④免疫
健康維持の範囲内で本来備わっている「免疫」は標ぼう可能!
「健康を維持することにより動物が本来持っている免疫力を保ちます」等、全体的な健康維持の範囲内で本来備わっている「免疫」「抵抗力」または「体力」を維持する範囲の表現については、直ちに医薬品的な効能効果とは判断されません。
しかし、「抵抗力のある身体を作る」といった表現を用いる事により、それらを増強・改善するものは医薬品的な効能効果と判断されます。
⑤毛玉
食物繊維由来で、物理的に毛玉の形成を抑えたり除去したりする場合は可能!
「毛玉の除去」については医薬部外品として承認されている製品があるため、医薬品的な効能効果に該当すると判断されますが、「本製品は食物繊維が豊富なため、毛玉の形成を抑えます」等、食物繊維が豊富に含まれることにより、物理的に毛玉の形成を抑えたり除去することについて、その旨明示している場合には、直ちに医薬品的な効能効果とは判断されません。
⑥歯垢・歯石
物理的に歯垢・歯石の沈着を抑えることは標ぼう可能!
製品の物理的特性として、「口腔内で消化されやすい旨」および「噛むことが促される旨」を明記した上で、「歯垢もしくは歯石の沈着を抑える」または「歯垢が付きにくくなる」ということを標ぼうすることは、直ちに医薬品的な効能効果とは判断されません。
例:「かめばかむほど配合の植物パルプが歯垢ポケットにブラッシング効果をもたらし、愛犬の歯垢の蓄積を抑える手助けをします」
⑦口臭
噛む事で物理的に歯垢や歯石がつきにくくなった結果の「口臭」は可能!
口臭の防止は医薬品的な効能効果と判断されますが、「噛むことで歯垢の沈着を押さえることにより口臭を軽減します」等、噛むことで物理的に歯垢または歯石が沈着しにくくなることにより口臭を軽減するという表現は、その旨を明示していることを条件に、直ちに医薬品的な表現とは判断されません。
⑧アレルギー
アレルゲンとなる物質を含まないことからの標ぼうは可能!
アレルゲンとなる物質を含まないことにより、アレルギーを持った動物に対して与えることができるという場合に、含まない物質等を明記した上で「アレルギーに配慮」「アレルギーに悩む動物のために」のような表現を行うことは、直ちに医薬品的な表現とは判断されません。
⑨サポート
健康維持の範囲は標ぼう可能!
「サポート」という表現は、健康維持の範囲で使用されるのであれば、直ちに医薬品的な効能効果とは判断されません。
一方で、「疾病名や身体の機能を直接的にサポートする」という表現は、動物の身体または機能の改善または増強を暗示していると解釈されることから医薬品的な効能効果と判断されます。
人間の食品とは似て非なるルールになっていますので、整理しておくことをおすすめします。