中国向け越境EC市場の最新情報+注目すべき現地のプレーヤーまとめ
近年、ますます存在感を増す中国マーケット。特に拡大する中国オンライン市場には、日本国内からも熱い視線が注がれています。2015年、中国における輸入貿易のうち、輸入ECの市場取引規模は9千億元(日本円で約15兆円)にものぼりました。
ヴァリューズで中国のデータ分析を担当している賈 韶蕾(カ ショウライ)さんに、越境ECの最新動向について話してもらいました。
ネット行動分析サービスを提供する株式会社ヴァリューズは、中国でのネット上のユーザー行動データ・サイト閲覧データをもとに、中国人のネット消費の実態や今後の予測、その背景、越境輸入EC業界内の動向などを『中国越境EC業界研究レポート』にまとめました。レポートのお申し込みはこの記事の末尾をご覧ください。
中国の輸入貿易におけるECの浸透率は増加中
―― 中国でECが伸びている要因は何なのでしょうか?
賈:中国のオンライン市場規模は2015年で3兆8,000億元(約62.4兆円)、昨年比37%増を達成しました。商品の充実やサービスの向上、物流システムの発達により拡大し続け、対農村部向けのECと、輸入貿易におけるECが新たな成長ポイントになっています。
特に輸入貿易におけるECが成長しており、EC浸透率は上昇を続けています。2015年には全輸入貿易のうち8.6%を占め、今年2017年は2倍近い15.1%に達すると予測されています。
中国の越境輸入EC市場は、政策に大きく左右されます。特に越境輸入ECに関する施策や規制を実施する「税関総署」の方針によって、新しい業態にプラスになる側面と、規制が強められる側面があるので気を付けなければいけません※。
さらに、現在のECの好調を支えている大きな要因は、中国の中間層人口の増加です。生活水準の向上によって、消費ニーズが拡大し、2015年には中間層に属する人口が1.2億人に達したことが明らかになりました。今後さらに伸びていくでしょう。
また中間層の人口増加による、国内の経済力や消費ニーズの拡大、ニーズの多様化のほか、海外旅行や留学をする人数の増加により、越境消費ニーズが大きくなったということもあげられます。
全体として、消費意識の高まりに加え、商品・品質の多様性が求められるようになりました。特に20代~30代が中心となって、品質そのものや、食品の安全を追求するようになったことが指摘されています。
また、価格に対する感度が下がっていることも近年の特徴とされていますね。
※編集部注:中国の新越境EC制度については下記の記事をご参照ください。
- 5分でわかる中国の新越境EC制度。押さえておくべき重要ポイント【最新版】
https://netshop.impress.co.jp/node/3735
小売型のBtoCのECがさらに成長する
―― 中国のEC業界では、どのようなプレーヤーがいるのでしょうか?
賈:まず、中国における越境輸入ECの産業チェーンの全体像は下図のようになっています。
最も上流に位置するサプライヤーは、メーカーと代理販売(卸し)業者、小売りです。その下に位置するのが越境EC業者です。ビジネスモデルは、大きくプラットフォーム型と小売り型に分けられます。
また商品で分類すると、下図のように、まずプラットフォーム型と小売型に大きく分けられます。さらに取り扱い商品により、専門商品型と総合型に分けられます。
一般的に、プラットフォーム型は総合ECの業態が中心となっており、最近では小売型も専門商品型から総合型にシフトしつつあります。
総合小売型には単一カテゴリから発展してきた会社もあり、専門商品型の商品ジャンルはマタニティ関連と化粧品類、業態はBtoCが多くを占めています。
対して総合プラットフォーム型では、BtoCとCtoCの業態が共存しており、中国内EC大手を中心にアクセス量が多いという強みを持っています。
専門商品プラットフォーム型は、ファッションや化粧品カテゴリの取り扱いが中心で、多くがCtoCモデルです。
これまで中国の消費者向け越境輸入EC市場ではCtoCスタイルが主流でした。しかし2012年から2015年にかけて政府によるルール作りの影響を受け、多くのBtoCサイトが開設されました。
その結果、2015年にはBtoCサイトのシェアが輸入ECの消費者向け市場全体の46%に達しています。BtoCの越境輸入EC市場は拡大の初期段階にあり、今後さらに成長すると考えられています。
消費者向け市場の業態としてはプラットフォーム型が主流で、消費者向けEC市場全体の74.5%を占めています。しかし、近年は小売型企業の数が増加しつつあることも手伝い、今後は小売型ECのシェアが拡大していくと思われます。
注目は、小売型BtoCの「考拉」やコミュニティEC「小紅書」
―― 具体的に、どのようなECサイトが伸びているのでしょうか?
賈:総合プラットフォーム型BtoCの代表的な企業としては「天猫国際(Tmall Global)」があげられます。「天猫国際」は、購買・検索データをもとに掲載商品を選定することで購入率を上げ、企業を誘致しています。
対して小売型のBtoC企業として注目されているのは「考拉(Kaola)」です。サプライチェーンの短縮と商品ラインナップの拡充に力を入れることで、品質、品揃え、低価格を実現し、近年は消費者のライフスタイルをリードするまでに進化してきました。
プラットフォーム型の越境輸入EC アプリでCtoCを主に展開している「洋碼頭(YMT)」も見逃せない存在です。「洋碼頭」は海外でバイヤーが仕入れをおこなう様子をライブストリーミングで配信したり、ユーザー間のSNSを用いた商品シェア機能を充実させたりして、ユーザーを定着させることに成功しています。
さらには、MtoC(Manufacturer to Consumer:生産者から消費者へ)の取り扱いを実現し、個性的な商品を多く取り揃え、多様なニーズに応えられる体制を整えています。
また、印象的なマーケティングと仕入れによって市場における優位性を保っているのが「小紅書(RED)」す。「小紅書」は「レッド」と読み、女性をターゲットに化粧品に強いECサイトです。口コミサイトとして知られていたことを活かし、口コミから得たデータを用いて商品のラインナップを決定していました。
口コミデータは同時にプロモーションにも活用されています。「小紅書」は、ポイント制度やシェアの仕組みも充実させています。これら口コミやシェアに関するデータをもとにしたマーケティングで、高い購入率を実現しています。
「小紅書」はターゲットの若年女性向けに企画された「イケメン配達員」「イケメンモデルショー」「小紅書大バス」などの、新規性の高いプロモーションも行っています。オフラインで開催し、ファンにサプライズ体験を提供することで、話題を集めることに成功しています。
ヴァリューズの『中国越境EC業界研究レポート』を無料進呈中
活況を呈する越境EC市場。商品ラインナップの拡充をはじめ、ライブ配信、SNSによるシェア拡大、検索やクチコミなどのデータを活用したマーケティング、独自性のあるオフラインイベントなど、各社の戦略に注目度が高まっています。
株式会社ヴァリューズでは中国人のネット消費の実態、ECモールや広告出稿の現状がわかる中国ネット分析サービスをスタート。現在、資料請求いただいた方に『中国越境EC業界研究レポート』を無料進呈中です。
越境ECに興味をお持ちの方は必見です。ぜひご活用ください。レポートのお申し込みはこちら。