音声認識デバイスの急速な普及により、2020年までに音声検索が検索全体の半分を占めるようになると予測されるなか、小売事業者は音声検索で確実に勝つための対策が将来的に必要となるでしょう。

コンピュータ、私に300ドル以下で最も高いレビューがついている水中カメラを見つけて。

この会話は、1960年代のSF映画に登場する人物が、休暇中に楽しむスキューバダイビング用の新しいカメラを購入しようとしているシーンです。20年前にこんな光景があったとしても、実現は不可能だと思うでしょう。10年前でも無理だと考える人がほとんどです。

2~3年前でも、会話からネット上で何かを探すことは難しいと思われていました。しかし、現在は異なります。音声を通じて何かを探すユーザー行動は現実のものとなり、消費者の利用が進んでいます。

Siri(アップルのiOS端末に搭載されている音声アシスタント機能)、Alexa(Amazonの音声認識機能)、Bixby(サムスンの音声AIアシスタント)、Cortana(マイクロソフトの音声AIアシスタント)などが猛烈なスピードで市場に浸透。 Alexa対応デバイスはAmazonの「Prime Day」でベストセラーになり、Bixbyはサムスンの新しいOSに標準装備されています。

「Amazon Alexa」に関する動画(編集部が追加)

ユーザーの検索行動はオンライン音声による検索に移行しています。それは、デスクトップコンピュータからモバイルデバイス移行したのと同等のスピードで起こると予想されているのです。

調査会社ComScore社は、音声検索は2020年までにすべてのインターネット検索の半分を占めるようになると予測。市場調査・コンサルティングサービスのTractica社は2021年までに、18億の人々がデジタルアシスタントを活用するようになると考えています。

音声検索の利便性は消費者に浸透していますが、“声の時代”に生き残りをかける小売事業者にとっては、複雑な課題が新たに浮き彫りになっています。

検索の半分は2020年に音声検索へ――米国の専門家が語るEC企業の音声ショッピング戦略
セグメント別ヴァーチャルデジタルアシスタントのユニーク・アクティブ・ユーザー数 世界市場 2015-2021(出典はTracticaの公表資料)
青:一般ユーザー
赤:企業ユーザー
縦軸:百万人

文字入力と音声の違い

消費者は、検索エンジンにヒットしそうなキーワードを理解しています。そのため、関連性の高い結果を表示しそうなキーワードを使用し、インターネットで検索します。

デスクトップを使用して、300ドル以下の高評価の水中カメラを探している人は、「水中 カメラ」と入力して検索。その検索結果をもとにWebサイトをさらにフィルタリングします。たとえば、レビューや価格にポイントを絞ってさらに探すでしょう。

しかし、音声検索を使用している消費者は、文章で話し、人と話すのと同じ方法で検索エンジンに話しかける傾向があります。

音声検索の世界では、銀メダルや銅メダルは存在しません。

これは、従来の検索マーケティングやSEM戦略を考える時との大きな違いです。音声検索には金メダル(編注:音声による検索結果の案内は、音声が読み上げられるのは1位となっている検索結果の情報のみという意味)しか存在しないのです。

現在、小売事業者はランキングの上位表示を巡って、競うようにキーワード広告を購入し、落札価格の高騰は止まることを知りません。同時に、無限に存在するキーワードのバリエーションに頭を悩ませています。

音声検索では、消費者が商品を検索する際に使用する特定フレーズや、ロングテールの文章を押さえておくことが重要です。また、検索結果には、関連性の高い特定のランディングページを表示する必要があります。水中カメラを音声検索で探し、500ドルのカメラやひどいレビューがある商品を表示したら、消費者はもうそのサイトには戻っては来ないでしょう。

消費者は従来の検索とは異なる方法で、音声による検索結果を求めます。持っているデバイスに完全な注意を払うことができない場合、画面のないものを使用している時、消費者は「Amazon Echo」(編注:アマゾンのデジタルアシスト機能「Alexa」を搭載した、声に反応して動くデバイス)のような音声検索を利用します。

多忙な消費者は、一般的に1つ目または2つ目の検索結果しか見ません。画面のないデバイスの場合、音声によって検索結果が伝えられますが、音声が読み上げられるのは最初の検索結果のみ。音声検索の世界では、銀メダルや銅メダルが存在しないのです。そのため、適切な音声検索条件を予測することが非常に重要となります。

音声検索は、実店舗の活力を呼び戻す

多くの小売事業者は、「オンラインで購入し、リアルのお店で商品を受け取る店舗ピックアップサービス」で大きな成功を収めています。逆に、実店舗の在庫をオンラインで探すのは面倒なケースが多々ありますよね。

そのため、モバイルデバイス上の音声検索のほぼ半分は、「私の近くに」というフレーズを含んでいます。多くの消費者は、商品の到着までに数日の期間を要するネット通販ではなく、すぐに購入できる店舗と商品を探すのです。

モバイルデバイスは正確に位置情報を取得します。「私の近くに」といった検索ニーズの増加に関心のある小売事業者は、各地域でどのような商品が購入できるのかを検索エンジンに知らせることで、実店舗の売り上げを伸ばすことができるようになります

SEM戦略と在庫管理の方法にも変化が起こるでしょう。ECで成功している小売事業者は、在庫をリアルタイムで更新すると、在庫切れの商品も表示され、商品を購入できない消費者が不満を感じると知っています。

忙しい消費者が、音声検索を使い「私の近くで」128ギガバイトのマイクロSDカードを購入できる場所を探した場合、検索結果として提示されたお店にはその商品の在庫があると消費者は考えてしまいます。

実際に足を運んで、商品が売り切れてしまっていた場合、消費者は不満を感じ、二度とお店には戻ってこない可能性があります。ですから、お店には常に在庫を保管しておきましょう商品が売り切れた場合はサイトから削除するか、在庫を補充するまで検索エンジンにクロールされないようにページを非表示にしましょう

顧客がどのように話すか想像しよう

消費者は、購買行動のすべての段階で音声検索を使用するようになっていくでしょう。

特定のクエリで検索結果の一番上を獲得するには、多額の投資が必要です。そのため、どの検索キーワードが売り上げにつながる可能性が高いのかを見極めることが重要です。

消費者が音声検索する際に使う質問に答えていくことが大切なのではなく、消費者の購入意欲が高い重要なフレーズに焦点を当てるのです。

「どこで」で始まる検索は、一般的に購入意欲の高い消費者が使用します。消費者がショッピングの最終段階でどのような特定の単語やフレーズを使用するのかを理解している小売事業者は、購入する可能性の低い消費者の検索に労力を割くことなく、売り上げを伸ばすことができるでしょう。

いくつかのテストを行い、どのような検索ワードで自社のECサイト、そして競合他社のECサイトに消費者が流入しているのかを確認してください。

検索クエリレポートは、実際の顧客がどのように音声検索を使用しているかを示す素晴らしい情報源です。現在の自社の立ち位置を深く理解している小売事業者は、音声検索の改善を最優先するべきか、または段階的にテストを重ね慎重に戦略を組み立てていくのかを見極めることができます。

音声検索における自社の立ち位置がどこであったとしても、後追いになることなく、先んじて対策を取れば、他社をリードすることができます。

検索エンジンは音声クエリの処理方法を変えていくので、勝てる“SEM戦略”を見つけるプロセスは、流動的で反復的な作業になります。ただ、競合他社に急いで追いつく必要がないよう、早めに準備を始めておきましょう

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア「Internet RETAILER」の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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