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佐川急便が2018年4月以降、一部の法人向け宅配便料金の値上げに踏み切ることがわかった。複数の物流代行企業に取材したところ、「佐川急便から送料値上げ要請があった」「今後交渉に入る」といった回答が寄せられた。

佐川急便など主要配送キャリアは2017年秋頃までに、大口顧客となる通販・EC企業、物流代行企業に対して送料の値上げを実施。送料値上げ要請を受けた物流代行企業は「2017年の値上げから、1年もたたずに2回目の運賃値上げになる」と話した。

EC事業者が押さえておくべきポイント

① 2018年以降も送料の値上げ環境が続く
② 送料値上げを前提とした事業計画・戦略の立案を

複数の物流代行企業に値上げ要請

佐川急便に問い合わせをしたところ、「個別の交渉については回答を差し控える。佐川急便では2012年から適正運賃の検討を進めており、環境の変化などを鑑みて、常に適正運賃に向けた交渉をしている」(広報)とコメントした。

佐川急便のデリバリー事業の取扱個数と単価の推移
佐川急便のデリバリー事業の取扱個数と単価の推移(編集部が決算資料からキャプチャ)

運賃値上げの具体的提案を受けたのは数社の物流代行企業。関西に本社を置く物流代行企業A社は、2018年4月以降に適用される値上げアップの提示を2017年末までに受けた。

2017年7月適用時の値上げ幅は60サイズ300円台だったが、2018年4月以降に適用される見通しの料金体系は大幅に上昇。60サイズ400円以上の提案となった。サイズによって値上げ幅は異なるものの、A社の責任者によると「全体的に1個あたり平均100円前後の値上げになる」と話す。

西日本で活動する物流代行企業B社は2017年6月、佐川急便からの送料値上げ要請を受け入れ、現在適用されている運賃は2018年春までに満期日を迎える。B社の経営者は、「2017年の値上げ交渉時に、運賃適用期日の条件が付された。6月くらいには値上げになるだろう」と言う。

佐川急便のデリバリー事業の取扱個数と単価の推移
B社が佐川急便から2017年春に提案されたタリフ(運賃表)。2018年春までの運賃適用となっており、以降の運賃体系は価格交渉になるという

東京都内で物流代行サービスを展開するEC支援会社C社は、2017年秋に行った佐川急便との交渉で、2018年春までの値上げ要請を受け入れた。値上げ幅は明らかにしていないが、上昇分は「クライアントの利用料金に転嫁しなければならない」(C社の責任者)と話す。

ネット通販や物流代行事業などを手がけるEC関連グループのD社では、「今のところ値上げの話しはない」(D社の責任者)と言う。ただ、2017年8月の送料値上げ時に「1月に再交渉することは決まっている」(同)。

物流代行事業を手がけるE社では2017年末までに送料値上げ要請を受け入れた。新料金の適用は2018年4月以降。クライアントに価格転嫁しなければならない状況で、顧客への送料値上げ要請を始めた。

ただ、すべての物流代行企業に値上げ要請があったわけではない。地方に拠点を置く小規模の物流代行企業からは「値上げ要請はない」といった声もあった。

一方、先の物流代行サービスを展開するEC支援会社B社の経営者は、佐川急便を含めた配送キャリアとの交渉時、「今後3年間(2017年の交渉時から)は送料が上がることを前提に考えてもらいたい」との要請があったと明かす。

多くの物流代行企業はコスト上昇分を自社で吸収することは難しく、クライアントであるネット通販企業のサービス利用料金へ一部転嫁するものと考えられる。

中小のEC企業が押さえておくべきこと

2017年、ヤマト運輸や佐川急便など配送キャリアによる送料値上げが実施された後、「今後も送料値上げ基調は続く」と予想する通販・EC関係者は多かった。段ボールの原材料高騰、人材不足など送料値下げにつながる市場環境ではないためだ。

粗利率など商品特性によってビジネスへの影響は異なるものの、EC事業者は今後数年間、送料値上げが続くことを前提に、事業計画の策定や戦略を立てる必要がある

今回、2018年春からの送料値上げを受け入れたアパレル系のEC企業が取材に応じ、「商品特性によって異なる」と前置きしつつ、中小企業のEC事業者に向けて次のような対策を提言した。

送料値上げを前提とした事業計画を

送料値上げは、確実に運営コストの上昇につながる。結果的に、前年の実績を踏襲した経営計画だと減益になることはほぼ間違いない。多くのEC企業がコツコツと粗利を積み上げ、苦労しながら経常利益を伸ばす努力をしてきだろう。

経営的に、送料が上がるなかで今後も経常利益を伸ばしていきにはどうしたらいいのか。「どのくらいの経常利益をめざすのか?」「それを実現するための客単価は?」「受注するは?」「必要なコストは?」などなど、さまざまな点からKPI(重要業績評価指標)や業務を見直す必要がある。当分の間、送料が下がることはない、上がり続けることを前提として考えなければならない。

「餅は餅屋」の考えを

コストだけを考えれば、自社物流は有効な手段だろう。しかし、昨今の採用事情では物流スタッフの雇用を自社で行い、維持していくことは多大な労力と時間を有する。そこは「餅は餅屋」の考えを持って、物流はアウトソーシングするのがベストだろう。商品を売るスペシャリストとして、EC事業者は利益向上のために自分たちでしかできないことを戦略的に考えていかなければならない。

送料値上げを前提とした販売戦略を

ECビジネスは競争が激しくなっているので、今後、大幅に受注数を伸ばすのは難しい。販売単価(上下のミックス)・在庫・運営コストなどあらゆる面で見直すことが必要になる。逆に、こうしたことに取り組むいい時期だと捉えるべきだろう。基本的には、価格競争に挑みながら利益を出していくことは厳しい市場環境だと思う。

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瀧川 正実

ネットショップ担当者フォーラム編集部 編集長

通販・ECに関する業界新聞の編集記者、EC支援会社で新規事業の立ち上げなどに携わり、現在に至る。EC業界に関わること約13年。日々勉強中。

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