「医薬品等適正広告基準」が改定されたのは2017年9月。医療品や化粧品などの広告表現において徐々に浸透してきている印象ですが、今一度、どのような変更がされたのか振り返ってみましょう。

今回「医薬品等適正広告基準」が改定されたきっかけは、2016年6月2日に閣議決定された「規制改革実施計画」です。この中で下記の点が問題視されました。

  1. 国として推進したい「セルフメディケーション」を広める上で、メディアの活用が不可欠
  2. 「医薬品等適正広告基準」自体が古くて現状にそぐわず、行政の指導内容に地域差が出てきている

「医薬品等適正広告基準」自体が古いとありますが、旧広告基準の全面改正が行われたのは1980年10月。当時の薬事法の施行に合わせての改正でしたが、次に一部改正が行われたのは2002年3月。実に15年ぶりの改定なのです。

改正にあたり重要視されたポイントは、「不適正な広告表現に関する基準」です。

不適切な広告表現に関する基準

  • 効能効果等を誤認させるもの
  • 過量消費・乱用助長につながるもの
  • 品位を損なう内容のもの
  • 科学的根拠に乏しいもの

これは2016年に設置された「医薬品等の広告監視の適正化を図るための研究班」(厚生労働科学研究費補助金による研究班)が策定したものです。

今回の改正は規制改革の一環なので、上記4点を禁止する内容のものは変更されず、基準に沿わないものや足りないものについては強化されることになりました。

研究班では2016年度の1年間を使って検討を行い、2017年5月に厚労省に報告。厚労省では、この報告書を受けて基準を改正し、9月29日に即時施行されました。

理念・概念を含む基準本体は「医薬品等適正広告基準の改正について」(通称「局長通知」と呼ばれています)にまとめられています。

それぞれの具体的な事例の紹介や解説は「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項について」(通称「課長通知」)として発表されています。

医薬品等適正広告基準の改定のポイント

「医薬品等適正広告基準の改定」において、覚えておきたい14の変更を下記にまとめます。特に重要な点には[重要]マークを付けましたので、ここだけも覚えておいてください。

① アルファベットの名称併記も可能に

名称について、これまでは漢字の名称はひらがな、カタカナで読み仮名をふる必要がありましたが、インバウンドを意識し、アルファベットも認められることになりました。

② 医薬品・再生医療等製品の愛称は不可に

医薬品や化粧品等において、届け出た販売名とは別のキャッチーな愛称を使って販売する場合、これまでは、一定の条件を満たせば認められていましたが、そもそも医薬品については愛称を認める必要性が乏しい点や、医療現場での取り違えのリスクを加味し、医薬品・再生医療等製品については愛称を用いる事が不可となりました。

ただし、消費者に誤認を与えない限り、ブランド名の使用は認められます(販売名の併記が必要にはなります)。医薬品・再生医療等製品以外の指定医薬部外品・医薬部外品・化粧品・医療機器は、従来通り愛称を使用できますが、他の製品と誤認をさせるような名称、製品としての同一性に誤認を与えるような名称、販売名に使用できない名称は、そもそも使用できないことに変更ありません。

③ 効能効果を1つだけ表示することが可能に[重要]

専門薬的表現の制限について、従来は複数の効能効果を有する場合、少なくとも2つ以上の効能効果を表示する必要がありましたが、専門薬的表現を行っても消費者に不利益を与えるものではないとの観点から規定自体が削除され、1つだけの表示が可能となりました。

例えば「月経痛(生理痛)・頭痛・腰痛・肩こり痛・筋肉痛・関節痛……」と複数の効能を持つ製品の場合、従来は「生理痛」だけを表示することは「専門薬的な表現となるため不可」とされていましたが、今回の改定により差し支えないと判断されるようになりました。

④ しばりの表現の省略は漢方のみ可能に

医薬品、化粧品、医療機器等では、「この範囲でしか効果がありません」という条件付けをして承認を与えるケースがあります。これを「しばり表現」といいますが、これまでこの「しばり表現」は「“原則として”省略不可」とされていました。この“原則として”という言葉は含みのある表現であり、解釈の違いによって行政の指導内容に差が出てしまうため、削除扱いとなりました。

その代わりに除外規定が明確に規定されました。省略が認められるのは「しばり表現」が非常に長い傾向にある漢方のみで、中でもテレビ、ラジオにおけるものと限られます。

⑤ 併用表現の除外規定が明確に[重要]

併用に関する表現が認められないことは従来通りですが、「原則として認められない」ではなく、除外規定が明確にされることとなりました。

化粧品基準及び医薬部外品の製造販売承認申請に関する質疑応答集(Q&A)について」のQ31とQ32に基づき、

  • 併用を承認されているもの
  • 「使用時に混合して用いる用法」の化粧品であり、製造販売業者の責任のもとに安全性が担保されているもの

であれば「混ぜて使用する」といった併用の表現が認められます。「化粧水の次に乳液を使い、その次に美容液を使う」というように、順次使用することを示す表現は差し支えありません。

⑥ 特定の年齢性別が表示可能に[重要]

従来は、医薬品等の適正年齢や性別に制限がある場合を除き、特定の年齢性別の使用表現を不可としていました。

しかし、どの年齢、性別でも使えるものを、「ある特定の年齢や性別にのみ使える」としたところで、消費者に不利益を与えるものではないため、他社誹謗や優位性の強調にならない限り可能となりました。ただし、

  • 「小児専門薬」「婦人専門薬」は承認名称の場合を除き不可
  • 「小児用」「婦人用」は用法用量から判断して特定の年齢層、 性別等が対象だと推定できる医薬品等の場合は可

としています。

⑦ 使用前後のイラストや写真が可能に[重要]

これまで、使用前・使用後の写真は医薬品等の効能効果、あるいは安全性の保証表現となるため不可とされていました。しかし、「使用前・使用後のものは不可」という点が重視されるあまり、「使用中」や「使用方法」のイメージを使用することによって保証表現につながっているケースについて、行政として指導ができないという矛盾が生じていました。よって、今回の改正では、

  • 効能効果を逸脱するもの
  • 発現時間、効果持続時間の保証
  • 安全性の保証表現

にあたらない限り、使用前・使用後の写真やイラストの使用は可能となりました。

「使用中」に留める必要なし。「使用前」「使用後」もOK
シワやクマを消すことは効果効能の逸脱になるため不可。「1か月」という期間を示すことも不可

⑧ 使用感を過剰に強調する表現は不可

医薬品等の使用目的を誤らせるおそれがあるため、使用感をことさら強調する広告は不可とされました。

例えば目薬の広告において、「爽快感が非常に気持ち良いので眠気覚ましに使っています!」というように、使用感を過剰に強調すると、目薬本来の使用目的を誤認させるおそれがあるため、たとえ使用感の説明だとしても不可と判断されます。

⑨ 炎症部分の炎症が消える場面の表現について[重要]

医薬品等の使用により、炎症等の症状や病原菌などが完全に消えるかのような印象を与えることは不可とされていましたが、消費者の視点では「完全に消失するか否かのみをもって、ただちに誤認を与えるものではない」という判断に基づき、改正後は、「効能効果の保証にあたらないように留意すること」のみが求められるようになりました。

ただし、事実であるかどうかを問う景品表示法については、別途確認が必要です。

⑩「眠くなりにくい」「低刺激」は表示可能に

化粧品については「低刺激」の表現を認めていましたが、化粧品に限定する必要がないため、化粧品以外のものに対しても「低刺激」や「眠くなりにくい」といった表現が可能となりました。ただし、根拠があり、かつ安全性の強調にならない場合に限ります。

⑪ 医薬品で「売上No.1」が不可に[重要]

医薬品や指定医薬部外品、再生医療等製品で認められない表現として「売上No.1」が追加されました。医薬品の場合「売上No.1」が消費者個人にとってもっとも良い製品であるとは限らず、誤った製品選択につながる可能性があるためです。

医薬部外品、薬用化粧品や化粧品などは、合理的根拠があれば従来通り「売上No.1」の表現は認められますが、同じ最大級表現でも、効能効果や安全性の保証にあたるものは不可と判断されますので、今まで同様に注意が必要です。

医薬品や指定医薬部外品、再生医療等製品の場合は、事実かつ出典情報を記載していたとしても、「売上No.1」といった表記は不可

⑫「新発売」「新しい」は12か月使用可能に[重要]

今までは「新発売」「新しい」などの表現は、「製品発売後6か月を目安」とされてきましたが、「製品発売後12か月間を目安」に使用できるようになりました。

⑬ 医薬品の過量購入を促す表現は不可[重要]

医薬品について、「2個買うと通常よりもお値引きします」「沢山の金額を買っていただくと、お値引きします」などの表現は、消費者に不必要な購入を促すおそれがあるため不可となりました。対象は医薬品のみであり、化粧品や医薬部外品等は従来通り可能です。

なお、製品1つの値段に対する値引きは、医薬品であっても従来通り認められます。

⑭ 「薬局」「学会」の推薦も不可

医薬関係者の推薦について、薬局や学会による推せんについても適切ではないため、例示に「薬局」「学会」の言葉が追加されました。

◇◇◇

化粧品や薬用化粧品の広告作成の現場では、⑦の使用前・使用後の図面や写真についての変更が特に大きいと思います。わざわざ「使用方法の説明に基づき、使用中の画像をもって構成する」という配慮をしなくても良いためです。ルールをしっかりと把握し、より魅力的な広告を作成しましょう。

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稲留 万希子

薬事法広告研究所 代表

東京理科大学卒業後、大手医薬品卸会社にて医療従事者向けポータルサイトの企画運営に従事。東洋医学に興味を抱いたことをきっかけに、中医学専門学校にて3年間薬膳料理や漢方について学ぶ。その間、ヘルスケア分野でのビジネス展開には薬事法を避けて通れない事から、薬事法と広告についても並行して学び、その後、国際中医専門員、漢方薬膳療術師、反射療法士、薬事法管理者、コスメ薬事法管理者の資格を取得し独立。2008年3月、薬事法広告研究所の設立に参画、副代表を経て代表へ就任。現在、一般社団法人 通販エキスパート協会 代表理事を兼任。

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