渡部 和章 2018/3/14 6:00

中国EC市場で直販ビジネスでは1位、流通額では2位の京東商城(JD.com)。ECをスタートしたのは2004年で、わずか12年で年間流通額は15兆円以上、過去12年間の平均成長率は152%という驚異のスピードで成長している。

この事業拡大を支えるのが、中国各地に張り巡らされた自前の物流拠点と配送網。そしてそれを作るテクノロジーへの積極的な投資だ。驚異の事業拡大を進めるJD.comの秘訣(ひけつ)を、JD.com京東日本の日本事業最高責任者・荒井伸二氏が語った。写真◎Lab

徹底した自前主義がアリババグループと異なる点

人口約13億人、国土面積は日本の約26倍という広大な中国において、注文の約85%を受注翌日までに配送するというJD.com。近年はラストワンマイルにドローンや無人配送車など、最新のテクノロジーを活用する取り組みも進めている。

ジンドン(JD.com)は物流会社と表現しても過言ではないほど、物流や配送に力を入れている。それは、より良い買い物体験をお客さまに提供するためだ。(荒井氏)

JD.com京東日本の日本事業最高責任者・荒井伸二氏
JD.com京東日本の日本事業最高責任者・荒井伸二氏

荒井氏は、JD.comが提供するサービスの根幹を支えているのが自前の物流・配送ネットワークであることを強調する。中国EC市場で流通総額トップのアリババグループが、物流会社への出資や、配送会社との提携などで物流面をカバーしている点とは大きく異なる。

2017年11月時点で主要物流拠点は中国国内7か所で展開、主要な倉庫は合計405棟にのぼる。倉庫の延床面積は900万平方メートルで、東京ドーム190個分の広さに相当する。さらに、配送拠点は6906か所、集荷は2691拠点で展開。郵便サイズの荷物から大型荷物、コールドチェーン物流、越境EC物流の体制まで整えている。

商品を顧客に届ける「ラストワンマイル」を担うのは、JD.comが地域ごとに雇用した約6万7000人の社員たち。ほぼ中国全域の配送を自前の配送ネットワークでまかない、「自社配送の人口カバー率は約99%」(荒井氏)と言う。

ちなみに、日本の大手配送キャリアであるヤマト運輸の従業員数は約16万人(2017年3月時点、同社ホームページより)、佐川急便は約4万7000人(同)であることを踏まえると、通販会社1社で約6万7000人の物流部隊を抱えるJD.comが、いかに配送に力を入れているかがわかる。

JD.comは自前の配送ネットワークを基盤に、国土の広い中国で驚くほどのスピード配送サービスを実現している。一部地域を除き、午前11時までの注文は当日中に配達午後11時までに受けた注文は翌日15時までに届ける。荒井氏によると、「注文全体の85%は当日または翌日に配送し、平均配達時間は1.3日」と言う。

最速の物流インフラで最適な顧客体験を実現85%の注文は当日か翌日配達 平均配達時間は物流システムを持つ(コールドチェーン、B2B、越境物流、crowdsourcing)
自前の配送ネットワークを駆使し、注文全体の85%は当日または翌日に配送する

顧客満足度を高めるには物流や配送の品質がカギになる

日本では近年、ネット通販市場の拡大に伴い宅配便の取扱量が急増し、大手配送業者の人手不足問題が顕在化した。EC業界では、配送キャリアに依存したスピード配送競争が限界を迎えつつある。こうしたなか、楽天が自社配送の構想を打ち出すなど、各社が対応に乗り出している。

JD.comは、2007年から自前の配送ネットワークの構築に着手。約10年かけて現在の配送ネットワークを構築し、年間流通額約1350億4000万ドル(約15兆円、2016年実績)、年間アクティブユーザーは2億5800万人という膨大な顧客からの注文に対応している。

物流や配送を重視するのは、JD.comの創業者である劉強東氏の信念に基づく。劉氏は1998年6月にJD.comの前身である「JD Multimedia」を創業。当時は電器部品を販売する路面店で、店舗面積はわずか4平方メートルだったという。

ECの可能性を感じて2004年1月に店舗販売からネット通販へと業態転換し、「JD.com」の前身となるECサイト「Jdlaser.com」をオープンした。2008年1月に現在の「JD.com」に近いECサイトへとリニューアル。2010年には出店型のマーケットプレイス事業を始めた。

ECに参入してから数年間で、最もクレームが多かったのはデリバリーだったという。その経験から劉氏は、顧客満足度を高めるには物流や配送の品質がカギになると判断。自前の配送ネットワークの構築に着手した。

ジンドンのビジョンは「品質とサービスの卓越性に対する確固たる追求を通じて、世界で最も信頼される企業になります」というもの。それを具体化する取り組みの1つが、注文を受けたらすぐに商品を届けるデリバリーサービスだ。(荒井氏)

無人配送車やドローンによる配送も

JD.comはさらなる配送の迅速化と効率化に向け、倉庫の無人化や、ラストワンマイルに無人配送車を活用する取り組みも進めている。

JD.com(京東商城)が2017年に江蘇省昆山でスタートした無人化物流倉庫(動画はJD.com提供)

たとえば、2017年にリリースした無人配送車は、中国人民大学の構内などで運用している。商品を積んだ無人配送車が指定場所へと自走し、到着すると顧客のスマホにメッセージを送信。顧客はメッセージに記載されたパスワードを車両に入力し、保管ボックスから商品を取り出す。

JD.comの無人配送車

また、ドローンを活用した配送の実証実験も進めており、西安や宿遷といった一部地域でドローンを試験的に運用しているという。

2017年4月に先進的な物流技術の研究開発などを行う「JD Logistics」を設立したほか、9月には中国の大手自動車企業SAIC Maxus、東風自動車と無人貨物軽トラックを共同開発したことを発表した。

JD.comはドローン配送の実証実験も進めている
ドローン配送の実証実験も進めている

荒井氏は、ドローンや無人倉庫といったテクノロジーを活用すると同時に、配送員たちの“気持ち”がJD.comの配送網を支えていると強調する。

JD.comはテクノロジーとパッションの融合を重視している。テクノロジーでは解決できないことは、最後はマンパワーで乗り越える。橋がない地域や、砂漠の地域でも、弊社の社員が商品を運ぶ。いざとなったら徹夜してでも、道が塞がれていたら歩いて乗り越えてでも届ける。(荒井氏)

JD.comはテクノロジーとパッションの融合を重視し、荷物の配送を行う
橋がない地域にも荷物を届ける

直販中心に年間流通額は約15兆円

JD.comが運営するECサイト「JD.com」は、直販と、外部企業が出店するマーケットプレイスによって構成されている。2015年には、日本企業を含む海外企業が中国向けに商品を販売する越境ECサイト「京東全球購(JD worldwide)」を開設した。

2016年における流通額は前年比54.3%増の1354億ドル(約15兆円)、過去12年間の平均成長率は152%だった。年間アクティブユーザーは2017年4-6月期時点で前年同期比37.3%増の2億5830万人となっている(JD.comの公表値)。

JD.comは中国最大の小売業者
JD.com 中国で売り上げが一番大きい小売り売業者(オンラインとオフラインともに)です。中国最速の成長率を誇るJD.comは2億6000万人のアクティブユーザーに良質な買い物体験を提供しています
2016年の年間流通額は約15兆円、過去12年間の平均成長率は152%

中国EC市場における流通額のシェアは、アリババグループに次ぐ2位とされる。ただ、主にマーケットプレイス型のアリババグループに対し、JD.comは直販事業が事業の柱であるため、「直販の売上高では、オフラインの企業を含めてJD.comは中国の小売業界で最大手。小売額2位と3位の企業の合計売上高よりも大きい」(荒井氏)と言う。

JD.comは設立記念日の6月18日に合わせ、毎年大型セールを開催している。2017年は6月1日から18日までのセール期間中の売上高が約2兆円、出荷個数は合計7億個だったという。また、ライバルのアリババグループが始めた「独身の日(11月11日)」のセールでも、2017年11月1日~11日のセール期間中、売上高が2兆円を超えた。

「WeChat」のデータをマーケティングに活用

JD.comは2014年、中国IT大手のテンセントホールディングスから出資を受けた。テンセントは中国最大のメッセージアプリ「WeChat」や大手SNS「Weixin」をはじめ、デジタル広告配信事業やオンラインゲームプラットフォーム、動画配信事業などを手がけている。

テンセントが提供するサービスの月間アクティブユーザー数は合計9億6300万人(2017年6月時点)。テンセントが持つ膨大なユーザーの「シェア」「いいね」といった行動データや各種ビッグデータと、JD.comが持つ検索履歴や購買履歴などを組み合わせて、マーケティング活動に活用しているという。

テンセントと連携し、エンドユーザーに関するビッグデータをマーケティングに活用できることがJD.comの強みになっている。(荒井氏)

世界最大のモバイルネットユーザーへアクセスJD.com とTencentは独占的パートナーシップを組み、WechatにJDチャンネルをいれ、より効率よくお客様にリーチできるようになりました
テンセントの顧客データをマーケティングに活用する

大手スーパーと提携、「JD.com」リアル店舗も

JD.com はリアル店舗事業にも進出している。自社ブランドのリアル店舗「JD Retail Experience Shop」を運営。直営店ではない。フランチャイズチェーン展開だ。

「JD Retail Experience Shop」はECサイトで販売している商品を販売。取扱商品は家電や日用品、化粧品など。ECサイトの販売データから地域ごとに売れ筋や購買単価、男女比などを分析し、店頭の品ぞろえを決めるという。店頭で得られた購買データや顧客の行動データを収集し、既存事業にも生かしている。

また、2015年8月には、中国大手スーパーの永輝超市に出資した。生鮮食料品などを販売しており、注文が入るとデリバリー担当者がスーパーの棚から商品をピックアップして配送する。「生鮮食料品などのECにおいては、永輝超市の店舗が倉庫のような役割を果たしている」(荒井氏)。

永輝スーパーと提携しオムニチャネルを構築。JDは中国の永輝スーパーの株を10%取得し、O2Oビジネスモードにチャレンジ。2020年にオンラインとオフラインともにNo.1の生鮮商品プラットフォームをめざす
中国の大手スーパー「永輝超市」に出資した

越境サイト「JD.worldwide」で日本企業の売上が拡大

越境ECサイト「京東全球購(JD worldwide)」は2015年4月にオープンし、同年6月には日本ブランドを集めた「日本館」が開設された。

「日本館」の流通額は明らかにしていないが、2016年における日本製品の総売上高は前年比3ケタ成長だったという。2017年6月の創業記念セール期間中は、コーセーの製品の売り上げが前年実績比11倍、資生堂の製品は同21倍、楽天(JD worldwideの旗艦店)は同10倍となるなど、日本製品の売り上げが大きく伸びた。

JD.comは日本事業を強化するため、2017年7月に日本法人を設立。同月にはヤマトホールディングスと越境EC物流において提携することを発表した。

日本事業を統括する荒井氏は講演の最後、JD.comが企業理念に掲げる「顧客第一主義」や「偽物の排除の徹底」について説明。そして、「JD.comは物作りに理解が深く、消費者、サプライヤー、販売店を含めてお客さまの気持ちを重視する会社。品質にこだわる日本のメーカーや、物づくりを一生懸命やっている企業の中国進出をサポートしていく」と訴えかけた。

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