LINEを活用したOne to Oneマーケティングはどうすれば実現できる? 課題を解決する方法は?

LINEを活用したCRMの課題には、自社EC会員とLINE@アカウントユーザーのコネクト率(ひも付けされるユーザ数)がある

瀧川 正実

2018年3月27日 10:00

LINEを活用したCRMの課題としてあがっている自社EC会員とLINE@アカウントユーザーのコネクト率(ひも付けされるユーザ数)。通称「IDのひも付け問題」。LINE@や公式アカウントで多くの友だちを抱えていながら、ユーザーごとに適したメッセージを配信できているEC事業者はそんなに多くはない。LINE@や公式アカウントでOne to Oneマーケティングを行うにはどうすればいいのか?

LINE@で1to1マーケティングを行う上での課題

企業のデータベースとLINEのAPIを連携してパーソナライズなやり取りを実現する「LINEビジネスコネクト」によって、ユーザーごとに最適化したメッセージを配信できる機能を提供するシステムが増加している。ただ、課題がある。複数のEC事業者はこう話す。

LINEを活用したCRMの課題は、自社のLINE公式アカウント、あるいはLINE@アカウントのユーザーと、自社EC会員のコネクト率(紐づけされるユーザ数)が上がらない

LINEを活用したOne to OneのCRMを実現するためには、自社ECサイトの会員にアカウント連携をしてもらうといった消費者側の手間が必要になる。そのため、連携を承認する心理的なハードルが高く、効果的なCRMを実現できないケースは少なくない

LINE ID連携の承認を求めるECサイトのフロント画面イメージ
LINE@のEC活用でハードルになるのがLINE ID連携という

LINE@で多くの友だちを抱え、販促に活用するEC企業は多い。先を見据える企業は、One to Oneマーケティングを実施しようと検討するが、そこでネックになるのがID連携。CRMに精通しているプラスアルファ・コンサルティングの山崎雄司執行役員はこう言う。

LINEにはプロフィールIDがあるが、それは友だち同士をひも付けるためのID。企業側はそれを知っても何もできない。LINEをビジネスで活用するには、システムの裏側でログインしてもらわなければ取得できない仕組みになっている。LINEをECビジネスに活用するには、こうしたことを実現できるECシステム、ショッピングカート選びなどが重要になる。

プラスアルファ・コンサルティングの山崎雄司執行役員
プラスアルファ・コンサルティングの山崎雄司執行役員

利用者がLINE ID連携に承諾しなければ、One to Oneマーケティングの実現は絵に描いた餅になる。このハードルを下げるためには何が必要なのか。ECプラットフォーム側から見た課題解決方法を、フューチャーショップの安原貴之氏(事業戦略部長)はこう解説する。

LINE ID連携を行うとどんなメリットや価値があるのか。EC事業者はそれをまずは伝える必要がある。たとえば、最もテンションが高くなっている購入直後にID連携を提案し、ポイントやクーポンなどの提供を行う。そして、関連したステップの中で、メリットや価値を伝えていくことが重要になる。

フューチャーショップの安原貴之氏
フューチャーショップの安原貴之氏

安原氏がLINE ID連携の好事例としてあげたのがヤマト運輸のLINE活用。LINEとクロネコメンバーズの連携によって、荷物のお届け予定や不在連絡の通知をLINEで受け取ることができるようになるというもの。

「ヤマト運輸のコネクト率は高い」と話す安原氏。その理由は、利用者の「簡単に荷物を受け取りたい」「自分の予定に合わせて荷物を受け取りたい」といったニーズに対して、適切な課題解決方法としてLINE活用を提案しているからという。

ヤマト運輸が提供しているLINE連携サービスのイメージ
ヤマト運輸が提供しているLINE連携サービス

こうしたLINEを活用した個別メッセージの配信は「大手だからできるというわけではなく、システムとツールを組み合わせることで中小規模のEC事業者でも実現することができる」と安原氏は話す。

たとえば、抹茶スイーツなどのECを手がける伊藤久右衛門では、LINEと自社データベースを連携し、ターゲットを絞り込んだLINEメッセージを配信。すると、メッセージ経由からECサイトにアクセスしたユーザーの割合(送客率)は45.6%を記録した。LINE@の一斉配信でも送客率は平均30%という伊藤久右衛門だが、ターゲットにあったセグメント配信ではそれを大きく上回る成果をあげた。

誕生月限定メッセージ、クーポン、ポイントの期限前アラートメッセージなども実施。いずれも送客率は40%を超えてきているという。

ID連携~CRMを手間なくシステム面から解決する方法

システム面に関する連携課題は、「LINEビジネスコネクト」を活用したソーシャルログインサービスなどで解決できる。だが、システム側の改修などが必要となり、EC企業側には相応の改修費用や手間・時間が必要になる。

「もっと手軽にLINEを使ったOne to Oneマーケティングを行いたい」。こんなEC事業者の声に対応できるようにしたのがフューチャーショップとプラスアルファ・コンサルティング。

LINE@の認定開発パートナーであるEコマースプラットフォーム「FutureShop2」(フューチャーショップが開発・提供)が実装しているLINEログインによって、利用店舗はLINEアカウントと自社EC会員のIDをひも付けした状態で、CRM/マーケティングオートメーションシステム「カスタマーリングス」と連携できる仕組みを実現した。

LINE連携イメージ
連携サービスの利用イメージ

ECプラットフォーム側にログイン機能を組み込んでいるため、EC事業者にはシステムやUI(ユーザーインターフェース)の改修といったコストや手間はかからない。CRMシステムとの連携はオプションで提供しているため、接続に関する開発も必要ない。

機能面では、消費者がLINE ID連携を承諾するか否かを決めるステップ時(アカウント連携時)に、インセンティブとしてポイントを自動付与できる機能などを設け、連携を承諾するか否かといった消費者が抱える心理的なハードルを下げるようにしている。

ECプラットフォーム、LINE、CRMの連携イメージ
ECプラットフォーム、LINE、CRMの連携イメージ

安原氏はLINEを活用したマーケティングの利点やメリットについてこう話し、EC事業者へLINEのEC活用を提案する。

多くのEC企業がまだまだ、メルマガだけで販促活動をしている状況。LINEには即時性や反応の良さといったメリットがあり、活用しないのはもったいない。LINEを使った個別マーケティングは一部の大企業だけのものではなく、システムとツールを組み合わせることによって手軽に実現できることを知ってほしい。今後、EC企業はLINEを使ったマーケティング手法も検討すべき段階に入っている。

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