ゾゾの主力事業「ゾゾタウン」で営業の責任者を務める松田健EC事業本部ディレクターに、成長要因や有料会員サービスを巡る状況などについて聞いた。

松田健ディレクターに聞く ZOZOTOWN事業の戦略は?

――ファッションECの事業環境は。

「これまではゾゾらしいこと、好きなことをやって伸びてきたが、プレーヤーが増えたことで当社として考えるべきことも多い。いい刺激になっているし、何よりも消費者の選択肢が広がった。メルカリさんのようなCtoCのプレーヤーも含めて消費者との向き合い方が大きく変化してきており、いい意味で面白くなっている」

――初めての3カ年計画の初年度となる。

「これまでも高い目標を掲げてきたが、ファッションECの事業環境が変化する中で流通量を一気に拡大させ、より存在感を高めていきたいという思いもあって3カ年計画を立てた。ブランドさんのECに対する考え方が変わってきており、営業部隊としても従来はすべてのブランドさんに同じ姿勢で臨んでいたが、いまは各社の考え方に合わせながら提案の仕方を変えたり、ひとつの言語で話さないように気をつけている」

「ZOZOTOWN」で営業の責任者を務める松田健EC事業本部ディレクター
「ZOZOTOWN」で営業の責任者を務める松田健EC事業本部ディレクター

――新規ショップを誘致する際の基本的な考え方は。

「顧客ニーズに合わせて誘致を進めている。とくにこの数年間はゾゾタウンの平均商品単価が下がったが、総合ECモールなどを主戦場にしてきたEC発ブランドが新規ショップとして増えたことが大きく、それも顧客ニーズに合わせて対応してきた結果だ。ただ、ファッション好きな当社スタッフが取り扱いたいと思うかどうかのフィルターは必ず通している」

――ゾゾタウンに新規出店したいショップも多いと思うが。

「当社なりのフィルターを通すこともあって、結果的に当社からお声がけして出店頂くショップが8割~9割だ。最近は地方に面白いショップがたくさんあり、そうしたショップの出店も多い。ゾゾタウンがマス化している部分はあるが、『そのブランドよく見つけたね』と言ってもらえるような尖ったブランドさんにも出店して頂いている」

――強化しているカテゴリーは。

品ぞろえとしては全方位型で、ターゲットを絞ることはないが、顧客層のピークである20歳前後のユーザーは実物を見なくてもECで上手に買い物をすることから、EC発のブランドが増えた部分もある。また、当社社員とゾゾのお客様の平均年齢はほぼ一緒の33歳くらいで、お子さんができ始める年齢のため、子供服のショップが増えていたりもする

――アパレル店頭は服以外も増えている。

「当社としてもシューズやバッグ、アクセサリー、インテリア、コスメといった専門カテゴリーの営業チームをスタートしている。また、ファッションのくくりだけでは取り込めない層にリーチするために『音楽×ファッション』といった取り組みも強化している」

――ブランドクーポンの取り組み状況は。

「ブランドクーポンは昨年、出し方を変えた。それまでは1日1クーポンで、例えば2000円の割引クーポンにエントリーしているブランドさんの中から1回だけクーポンを使えたが、いまは1日に1000円や2000円、3000円と割引額の異なるクーポンを出し、ショップAで1000円クーポンを、ショップBで2000円クーポンを使えるといった具合にクーポンを『おかわり』できるようにした

――ブランド側のメリットは。

「ブランドさんにとってもスケジュールや回数のしばりをなくしたことで、このタイミングでプロパー(正価)品の初速をつけたいとか、最終セールに合わせて消化率を高めたいなど、ブランドさんごとの戦略に合わせて利用でき、自由度が高まった参加ブランド数が増え、クーポン経由の取扱高もけっこう増えている

――クーポン以外のプロモーションは。

パーソナライズしたプライスプロモーション『あなただけのタイムセール』を実施している。これは、お気に入り登録商品やカートに入れて購入しなかったアイテムなどを対象に、当社のロジックでベストだと思うタイミングにブランドさんが値引きできる機能で、ユーザーにはメールなどで案内する。何もしなければ買わずに忘れられていた商品に期間限定で10%オフというアクションを起こすことで購買につなげる施策だ」

――正価販売比率を高める取り組みは。

「対前年比の欠品率を重視しており、『上位10%の売り上げを作る品番』や『入荷後10日以内の商品』などを指標にブランドさんとのコミュニケーションを高めている。欠品商品に対するアクションはもちろん、初速を見て欠品しそうな商品は独自のロジックでアラートが出るようにしている。どうしてもクーポンやセールが目立ってしまうが、地道な取り組みで正価販売比率は上がってきており、客単価も下げ止まりつつある」

ZOZOの2018年4~12月期(第3四半期)における商品取扱高 過去1年以内に1回以上購入した「年間購入者」
「年間購入者」の会員1人あたりの年間購入金額(画像は2018年4月~12月期の決算説明会資料から編集部がキャプチャして追加)

――広告事業をスタートした。

「昨年9~10月に『ゾゾアド』という広告メニューをスタートした。検索系の広告で、例えばゾゾタウンで『シャツ・カットソー』と検索すると対象商品が一覧表示されるが、一番上と真ん中、一番下の部分にPRと表示されて出る商品が広告だ。ブランドさんが売りたい商品を打ち出せる上に、ユーザーの検索に合わせて表示されるため、他モールと比べて費用対効果が高いと好評だ」

――正価販売にもつながる。

「プロパー商品との相性がいい。ゾゾタウンは商品数が多く、埋もれてしまっていたブランド、商品をPRすることで売れるようになるとか、プロパーの販売が伸びるというケースが出てきている。クーポンと合わせたり、予約商品やセールで打ち出す場合もある。ブランドさんの戦略が多様化している中で、彼らが利用できる手数を増やしている」

ZOZOは昨年秋に広告事業をスタートした
検索広告「ゾゾアド」の検索広告。赤枠が広告部分(画像は編集部がキャプチャし追加)

「ZOZOARIGATOメンバーシップ」の影響は?

――有料会員制度「ゾゾアリガトーメンバーシップ」を巡って一部のブランドが退店した。サービス開始の経緯は。

「創業20周年に合わせてゾゾらしいことをしたいという思いがあった。買い物を通じて誰かを応援したり、感謝の気持ちを伝えられるようなサービスを模索する中で、他のECモールではやらないような寄付やブランドさんへの還元をユーザー自身が選択でき、選べるからこそ寄付について考えるきっかけになると思いサービス化した。具体的な数字は言えないが、『ゾゾアリガトー』を始めなければ集まらないような額の寄付が集まっていて、社会的な意義はあると思う」

――商業的な意味合いももちろんある。

「良いお客様を集めることでブランドさんに新しいユーザーとの接点を作るというモールとしての責任がある。集客面の責任と社会的意義を同時に果たすことができるサービスが『ゾゾアリガトー』と言える」

――寄付ではなく常時10%割引の部分ばかりが話題となった。

「本当に反省すべきところだ。当社としても、コンバージョンにつながりやすい割引価格表示の部分に重きを置くという、一番分かりやすい形でユーザーとのコミュニケーションをとってしまった」

――ブランドとの意思疎通を大事にしていたはずだが。

「『ゾゾアリガトー』に限らず、サービス開発のスピード感を大事にしているが、ブランドさんに対してサービス説明の十分な時間がとれなかったこと、アプローチの部分で不足があったことは反省している。退店という決断をされたブランドさんを出してしまったのは当社としては本望ではないし悔しい。あるブランドさんからは『もうベンチャー企業ではないだろ』と言われた。社会的責任であるとか、ご説明すべきタイミングなど、これまで以上に責任感を持って臨みたい」

――割引表示の部分を修正する。

「ご意見を頂いているショップさんの大半が『割引表示は何とかならないのか』という内容のため、2月26日から割引価格の表示パターンをショップさんが選べるようにした。また、『この施策に参加するかしないかの権限はないのか』というご意見も頂いており、検討しなければいけないと思っている

ZOZOは、ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」の有料会員制割引サービス「ZOZOARIGATOメンバーシップ」の会員特典価格の表示方法を一部変更
価格の表示パターンを出店者が選択できるようにした(編集部が追加)

――デザイナーズブランドの退店が顕著だ。

「価格や見せ方、ブランディングを非常に大事にされているブランドさんにとって、割引価格の見せ方は非常に雑になってしまった。これから継続的にコミュニケーションがとれるよう努力していく」

――一方で、「ゾゾアリガトー」は取扱高の底上げに貢献している。

「10%割引の原資は当社が負担しているため、コスト面でもかなりの覚悟を決めて取り組んでいる。今年1月から2月は、『ゾゾアリガトー』の押上げ効果は想定内で順調に推移しており、来期のゾゾタウン事業にとっても重要な施策のひとつになる

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