売上回復に向けて小売・EC事業者が取り組むべき「マーケティング」「EC」「フルフィルメント」の3対策
世界のさらなる変化に備えながら、現在の状況を最大限に活用しようとする努力は、膨大な作業で、ストレスも溜まります。ですが、消費者のリアルタイムのニーズを無視して、社内の目標だけに焦点を当てている小売事業者やブランドは、長期的な影響を受ける可能性があります。
適切なアプローチを採れば、小売り・EC事業者は柔軟性と機敏性を備えた計画を作成し、あらゆる混乱や変化に備えることができます。そのためのタスクは、マーケティング、EC、フルフィルメントの3つの大きなカテゴリーに分けることができます。
消費者の7割以上が非常時にブランドに期待することは?
Twitterが実施した調査では、77%の消費者が、世界的な危機に直面した際、コミュニティを支援するために努力しているブランドをより肯定的に感じると答えています。
80%はブランドが従業員をどのようにサポートしているかを知りたいと答え、89%は信頼できる情報を伝えるべきだと回答。70%は迅速なカスタマーサービスを期待しています。
ブランドは、このような消費者の期待と企業を存続する間でバランスを取る必要がありますが、それは思慮深く、透明性の高いやり方で行うことができます。マーケティング、EC、フルフィルメントの3つの側面から見ていきましょう。
1.【マーケティング】個人のニーズに対応したパーソナライゼーションと、消費者の感情変化に注目
リサーチ&アドバイザリー企業のGartnerのアナリストであるオーギー・レイ氏は、次のように話します。
新型コロナウイルス危機の最中のマーケティングにおいては、小売事業者は慎重になって、購買行動や消費者ニーズの突然で潜在的な変化を戦略的に考える必要がある。(レイ氏)
また、小売事業者は「シナリオプランを立てる」と同時に、消費者の感情の変化にも注目する必要があります。
アメリカの各都市や州が、現在それぞれ異なる状況にあるように、消費者や各家庭は皆それぞれ違うことを理解しなければなりません。多くの消費者は財政難に直面していて、高額な新商品よりも、セールになる新商品を知りたいと考えています。都会の中心部に住む人々は、今後数週間、「夜のデート」や職場に着ていく洋服を購入することはないでしょう。
一方、親は家族を楽しませるために、本やゲームを買い足す可能性が高いです。不確実性の高い時代には、価格と商品ニーズの両方の観点からこれらの動きを理解することが非常に重要になります。
パーソナライゼーションにより、ブランドはセグメントや個人ごとのニーズに対応することができ、信じられないほど関連性の高いタイムリーな商品を提供することができます。
最近の調査では、「パーソナライズされた販売」を提供しているブランドは、最高レベルのROI(投資回収率)を達成する可能性が高いことが示されています。さらに、消費者のライフサイクルのすべての要素にわたってパーソナライゼーション戦略を活用している企業は、ROIが高い(300%以上)だけでなく、変化する消費者の行動に迅速に対応するためにビジネスを変えていける、最高の立ち位置にいるのです。
2.【EC戦略】時期を考慮した価格設定と、有益で顧客目線に立ったメッセージを発信
『Digital Commerce 360』の調査で、売上上位100社のうち75%の小売業事者がWebサイト上でパンデミックへの対応について明確で安心感のあるメッセージを掲載しています。しかし、新型コロナの影響が変化し続ける中、あるいは将来的な混乱が発生した場合は、消費者に向けた一般的な企業メッセージだけではなく、より深いメッセージを発信しなければなりません。
一般的なメッセージは、結局のところ、しばらくするとどれも同じように聞こえてしまうからです。小売事業者は、ECサイト上での信頼性の高い有益なメッセージを優先させつつ、新しいアプローチ方法の可能性がないか、すべてのタッチポイントを見直す必要があります。
たとえば、女性服を販売するFrancescaがホームページに「ブティック再開について」のバナーを設けたように、店舗の営業開始のお知らせや営業時間変更に関する案内など、地域に特化したメッセージを利用して、デジタルと物理的な店舗の隔たりを埋めることができます。
メッセージで、近隣の店舗の在庫状況をリアルタイムで伝えることもできます。在庫切れで困っている消費者には、そのような透明性が重宝されるでしょう。またブランドは、商品の在庫状況や出荷の遅れについても率直に伝えなければなりません。
現在のような大規模な変化は、四半期ごとの売上目標に大きなダメージを与えます。しかし消費者への慎重な配慮なしに、デジタル上の活動を増やすのは今は良い時期ではありません。
eコマースの分野では、従来から希少性の高いメッセージが用いられてきましたが、緊急性や必要性の高い時期には、無神経な、あるいは意味不明なものになってしまう可能性があります。プロモーション活動であっても迅速に対応しながら、思慮深い方法で伝え、そしてパーソナライゼーションを重要視するべきです。
3.【フルフィルメント】非接触を重視したフルフィルメント・デリバリー方式
コンサルティング会社のBCG(ボストン・コンサルティング・グループ)が指摘しているように、この時期にサプライチェーンで最も被害を受けやすい分野の1つがラストマイル配送です。
小売事業者は、自社のフルフィルメントネットワーク全体の柔軟性を見直すことを余儀なくされています。規制のなかで店舗を開けていたとしても、新たな形のフルフィルメントの採用を迫られています。そのため小売事業者は、道端での商品受け取り(カーブサイドピックアップ)や店員と接触しないで済む店頭ピックアップなどのサービスに対応しています。
ステイホームが長引くにつれ、EC利用は増加してきましたが、その結果、発送までの時間が長くなっています。たとえば、保管や整理用品を多数取り扱うチェーン店「The Container Store」は、出荷の遅延が最大2週間に及ぶ可能性があるため、注文商品を受け取るための最も便利な方法として、道端での受け取り(カーブサイドピックアップ)を推奨しています。
また、すべての商品ページに、赤と緑のチェックマークが付いていて、商品が店舗で受け取れるかどうかが明確に表示されています。
現在の嵐を乗り切り、今後数か月の間に変化する購買習慣に対応するために、ブランドは様々なフルフィルメントオプションの利用率を追跡し、状況の変化に応じて最も理想的な方法に迅速に切り替える必要があります。迅速に切り替えて別のフルフィルメントの注文を増やすことがでれば、フルフィルメントの変更による痛みを軽減することができます。
2020年初頭に起きたことを見れば、未来の予測は不可能で、最善を尽くした計画でさえも脱線する可能性があることがわかります。迅速に対応しなければ、巨大な変化が、ビジネスに壊滅的な影響を与える可能性があります。
その中でも最も成功している組織は、計画を立て、それを実行に移すことに熱心に取り組んでいます。小売事業者がマーケティング、EC、フルフィルメントをどのように優先させるにしても、巨大な変化の裏側で消費者は、個人の期待に応えながら、生活に真の価値をもたらしてくれるブランドを思い出すことでしょう。