公文 紫都, 藤田遥 2020/7/22 9:00

新型コロナウイルスの影響による営業自粛や営業時間の短縮などで、売り上げが減少している飲食店も多い。減少した売り上げを補填するため、テイクアウトや通販を始める飲食店もあるが、「ECサイトの運営ノウハウがない」「商品の魅力を伝える方法がない」などの課題を抱えている店舗も少なくない。

SNSの活用支援などを行うアジャイルメディア・ネットワーク(AMN)が運営するオンラインセレクトショップ「STAMP WORKS」では、こうした飲食店を支援するために「#お店の味を自宅で楽しもう」プロジェクトを行っている。10年来築き上げてきたブロガーなどのネットワークを駆使し、思わず食べてみたくなる“しずる感”のある「ストーリー」とともに商品を紹介。オンライン上での販売支援、また飲食店のファン作りなどリアル店舗への来店促進を支援する。

ブロガーたちが”消費者目線”で商品の魅力を伝える

AMNが運営する「STAMP WORKS」は、ストーリーコマース(※編注:商品のバックグラウンドなど、ストーリーを語ることで購買意欲をかきたてる手法)様式を採用したオンラインセレクトショップ。

クライアント企業の商品概要を、ブロガー、インスタグラマー、ユーチューバーなどAMNが選定した「AUTHOR(オーサー)」と呼ばれる書き手が、自身のライフスタイルでどう活用していくか、“消費者目線”のレビューを紹介。そのレビューから読者をAMNが運営するECサイト「STAMP WORKS STORE」に誘導し、購入を促す。いわゆる記事広告だが、「STAMP WORKS」の特徴は、書き手(AUTHOR)主導で進むところにある。

STAMP WORKS スタンプワークス アジャイルメディア・ネットワーク
「STAMP WORKS」のサイト(画像は編集部がキャプチャ)

良い点も悪い点も記載するレビュー

「STAMP WORKS」では、クライアント企業から発注があった場合、基本的にはAUTHORコミュニティ内で商品のレビュアーを募集し、手をあげたAUTHORにレビューを依頼する。その際、AUTHORが実生活のなかで各商品を利用できるよう、必ず「試用期間」を設けている

試用期間を経て、「自身のイメージと違った」「商品に共感できなかった」といった点がある場合には、レビューを書かなくても良い。書き手の思いがこもっていなければレビューの熱量が下がり、結果として読者の心に響かないものになってしまうからだ。

試用期間中に商品を気に入れば、自身のライフスタイルでどう商品を活用していったかをレビューしてもらう。その際、良いレビューに限定する必要はなく、悪いレビューも受け付ける。そうした「透明性」こそが、読者やクライアント企業からの信頼につながるからだ。

現在、この仕組みをコロナ禍で影響を受けている飲食店にも応用。初期投資を抑えながらスピーディーにECへ参入できるよう、完全成果報酬型のサービスとしている。

STAMP WORKS スタンプワークス #お店の味を自宅で楽しもう 新型コロナ 飲食店支援 アジャイルメディア・ネットワーク
「#お店の味を自宅で楽しもう」プロジェクトの概要(画像は編集部がキャプチャ)

あえてチャレンジする、商品とAUTHORのマッチング提案

「STAMP WORKS」ではクライアント企業から依頼を受けた際、基本的にはAUTHORコミュニティ内でレビュアーを募集するが、AMNの運営陣で商品に合いそうなAUTHORを選定するケースもある。その際、メーカーの意向にマッチする書き手にレビューを依頼することもあれば、あえて要望とは異なるAUTHORを提案する「チャレンジ」に踏み切ることもある。

岩手製鉄が制作しているフライパン「ダグタイルパン」は、チャレンジの結果、読者からの支持を得た好例だ。クライアント企業からは「主婦にレビューしてもらいたい」という依頼を受けたが、AMNでは主婦に限定せず、男性のAUTHORもアサイン。その理由を、担当したAMNの事業開発部 シニアプロデューサー 中野敦史氏はこう語る。

STAMP WORKS スタンプワークス ダグタイルパン 岩手製鉄 アジャイルメディア・ネットワーク STAMP WORKS STORE
岩鉄鉄器のダグタイルパンの商品ページ(画像は編集部がキャプチャ)

鉄製のフライパンは手入れに手間がかかる上に、重い。もしかしたら、料理が好きで調理器具にこだわりがある男性の方が受けるかも、と考えた。(中野氏)

レビュー依頼を受けた男性AUTHORは、料理記事を書くことは少ない。しかしAMNの運営チームは日頃からAUTHORとコミュニケーションを取り、その男性が自身のSNSで、手料理写真を定期的に掲載しているなど料理に関心があることを認識していた。

そこでダグタイルパンのレビューを依頼。実際、男性AUTHORは日頃から他社製の鉄のフライパンを使用していたこともあり、「これまで他のフライパンを使っていたが、ダグタイルパンを使ってからイメージが変わった。鉄のフライパンなのに、こげつかない」という高評価につながり、そのレビューが読者の共感を生んだ。

ネット販売を通じてタッチポイント作り

味のファンになった客の来店を促すきっかけに

現在進めている飲食店支援プロジェクト「#お店の味を自宅で楽しもう」は、商品を購入するだけではなく、「いつかそのお店に行きたい」と思えるような新たなタッチポイント作りにも挑戦している。AMNの事業開発部 統括 井上貴史氏はいう。

東京・虎ノ門にあるフレンチレストラン「sanmi Lab」の「完全栄養食カレー」を販売している。もしECで購入した地方のユーザーが商品を気に入ってくれたら、東京に来る機会があったときに、実際にお店に行ってみたいと思うかもしれない。「ここがあのカレーのお店か」と、お客さまに感動してもらえるような流れを作っていきたい。(井上氏)

店舗単位だけでなく自治体単位の支援を目指す

「STAMP WORKS」では、島根県大田市が運営している飲食店応援サイト「maina! 美味な大田」のチケット購入システムのサポートを行っている。このサイトでは大田市内の飲食店を応援したいユーザーが、参加店舗で使用できるチケットを購入できる仕組みになっている。現在は参加している店舗数の多さや、サイトの立ち上げ時期の問題などでレビュー掲載には至っていないが、今後はAUTHORが店舗に行きレビューを書く取り組みも行っていきたいという。

STAMP WORKS スタンプワークス 島根県大田市 支援例 maina!美味な大田 飲食店支援 サポート
島根県大田市が運営している「maina! 美味な大田」サイト(画像は編集部がキャプチャ)

今後の展開について、「新型コロナウイルスの影響の受けた飲食店1つ1つを支援していきながら、地域全体としても盛り上げていきたい」と井上氏と中野氏は意気込む。

日本中から支援が生まれることをめざしている。遠方に住むお客さまが、「このお店の商品試しに食べてみたら美味しいから、近くに行くときは寄ってみます」というように、その地域を訪れるきっかけも作っていきたい。(井上氏)

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