吉野 巨人 2021/1/13 8:00
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モール依存の状態から約5年で自社ECが全EC売上の約5割に――。家具・インテリアブランド「LOWYA(ロウヤ)」を運営するベガコーポレーションがここ数年、注力してきたのが、自社ECサイトの強化、「LOWYA」ブランドの確立と浸透である。物流クライシスなどの影響によって2019年3月期の営業損益は赤字に転落。約5年の期間を要した自社EC強化の成果が出始めた1年後の2020年3月期、見事に黒字転換した。

自社ECシフトによって筋肉質な収益体制が築いた「LOWYA」が取り組んだブランド構築、ブランド価値を高めるために活用するSNSをフローコンテンツではなく自社ECサイトの資産として生かす独自のUGCマーケティングなどの施策に迫る。写真:吉田浩章

モール内の競争激化と価格競争を経て、自社ECサイトを再構築

家具の商品企画から販売を一気通貫で行うD2C型の家具ECを手がけるベガコーポレーション。2004年に創業、ドロップシッピングでの家具販売をスタートし、2006年に「LOWYA」を立ち上げた。その後、ビジネスモデルを徐々に、家具の製造小売り(SPA)へと移行していった。

家具の商品企画から販売を一気通貫で行うD2C型の家具ECを手がけるベガコーポレーション
ベガコーポレーションのビジネスモデル(画像はIR資料からキャプチャ)

主戦場は「楽天市場」「Yahoo!ショッピング」などのECモール。トレンド性の高い商品を低価格で販売する「LOWYA」のビジネスモデルは消費者から高い支持を得た。「楽天市場」の「ショップ・オブ・ザ・イヤー2015(インテリア・寝具・収納ジャンル)」、「Yahoo!ショッピング」では「ベスト・ストア・アワード2014(家具・インテリア部門)」を受賞するなど、ECモール内で「LOWYA」の知名度を高めていった。

「LOWYA」のポジションについて
「LOWYA」のポジションについて(画像はIR資料からキャプチャ)

そして、2016年6月には東証マザーズへ株式を上場。2017年3月期には売上高100億円を突破、営業利益は8億2800万円という過去最高業績をたたき出す。

好調に業績を伸ばしているように見えるベガコーポレーションだが、ECサイト運営を取り巻く環境は厳しさを増していた。2000年後半からのECモールへの新規参入企業の増加、そして2010年代に入ってからの価格競争2017年ころからの物流クライシスだ

送料値上げ要請が本格化した2018年3月期。ベガコーポレーションの売上高は前期比18.4%増の129億7700万円だったものの、営業利益は同32.2%減の5億6100万円に。そして翌年の2019年3月期。売上高は2.7%増の133億2200万円、営業損益は2億9600万円の赤字に転落した。

モール内の競争激化と価格競争、送料を含む物流コスト上昇の波が、利益率の高い製造小売り型家具ECであるベガコーポレーションの利益をむしばんでいったのだ。

こうした状況に手をこまねいていたわけではない。物流クライシスの影響が直撃する2年ほど前の2015年、価格競争、競合との競争激化から脱却するための「LOWYA」ブランド構築に着手していた。サービスの見直し、テストプロモーションを経て、ブランディング施策が花開いたのは営業赤字に陥った翌年の2020年3月期。前期の約3億円の営業赤字から、1年での黒字転換を果たすことになる。

ベガコーポレーション 営業利益の推移
営業利益の推移(画像はIR資料からキャプチャ)

自社ECの施策を白紙、その後大躍進を遂げたブランド構築

「LOWYA」のブランド構築の立役者、執行役員マーケティング統括部統括部長の京谷謙吾氏はこう振り返る。

ECモールの新規店舗が増え、価格競争にはまってしまった。経営課題は利益率の改善。原価率を落とすには限界がある。理想的な販売価格で商品を提供するには、ブランド構築をやらなければならなかった

京谷氏は金融、広告代理店を経て、ブランド構築をめざすためのブランディング統括部の立ち上げ期にベガコーポレーションへ入社。自社ECサイト、「LOWYA」ブランド構築の責任者として任務にあたった。

ベガコーポレーション 執行役員マーケティング統括部統括部長の京谷謙吾氏
異業種からEC企業へ転職。その知見をECビジネスに生かしたという執行役員マーケティング統括部統括部長の京谷謙吾氏

ブランドや自社ECサイトの構築で参考にした事例などの1つが「無印良品」。西友のPB(プライベートブランド)としてスタートした「無印良品」は、西友の店舗のない地域に路面店を作り、ブランド価値を向上。合理的な価格で良質な製品を提供するブランドとして、確固たるブランドを築きあげた。

ドラスティックにブランド作り、自社ECサイト構築を進めると失敗する。売り上げの構成比の多くを占めるECモール売上を下げることなくコントロールし、旗艦店(自社ECサイト)の比率を伸ばしていくことを心がけた

京谷氏がブランド、自社ECサイト構築に着手した2015年。当時の自社ECサイトにおけるユニークユーザー(UU)数は月15万UU、月商は2000万円程度。まず手を付けたのが、どんな施策がどのような成果をあげているのか、という売上要因のチェックと見直しだった。

ネット広告、アフィリエイト広告の運用を一旦ストップ。「半年間の見直し期間がほしいと上層部へ交渉し、広告費やこれまでの施策をいったん白紙に戻した」(京谷氏)。同時に、ディレクトリ構造といった基礎的なSEO対策の改善、統一したブランド体験ができるようにするための空間作りといったコンテンツ施策などに着手した

実店舗において、ブランドイメージを最初に感じてもらうのは門構えや内装。しかし、ECで門構えを意識しているところは少ない。ECサイトの場合、検索ワードに応じた入り口が数多くあるどこから入っても同じブランドの体験ができるような空間作りを心がけ、コンテンツを拡充していった。(京谷氏)

自社ECサイトの売り上げはほぼ横ばいが続くこと約半年。SEO対策の改善とECサイトのコンテンツ拡充効果が表れ出したのが7か月目以降のことである。アクセス数が急増し、アフィリエイトやネット広告に頼らなくても自社EC売上が急増した

SEO対策、コンテンツ拡充で重要視したのが「1人あたりのPV数」。現在のCVRはモール店で2~3%、自社ECサイトは1%程度。京谷氏は「CVRはGoogleの検索アルゴリズムの評価対象となっているが、あえてその数値は優先順位の1番にしなかった」と説明。続けて、「その代わりに1人あたりのPV数を伸ばすようにしたいろいろなページを見てもらえるということは、Googleの検索アルゴリズムから“良質なサイト”として評価されやすい」と、その理由を京谷氏は話す。そして、こう付け加える。

CVRの向上を優先順位の1番にしないサイト構成にすると、訪問者はいろいろなページや商品を見る。つまりブランド体験をしてくれるファン度が上がり、購入のきっかけが増え、そしてアクティブ率が伸びる。それが今日の成果につながっている。私は広告代理店を経て、ベガコーポレーションへ入社した。ECビジネスからスタートしていない。私がECサイトに感じていることは、“モノを売ることにフォーカスし過ぎてしまっている”こと大事にしたのは、実店舗で言えば、ウィンドウショッピングの感覚、つまり体験価値だ。(京谷氏)

「ECサイトではモノを売るだけではなくブランド体験などを重視した方が良い」と話す京谷氏
「ECサイトではモノを売るだけではなくブランド体験などを重視した方が良い」と話す京谷氏

一般的に、自社ECサイトで商品を購入する消費者は、ECモールの利用者よりも顧客ロイヤリティが高いとされる。それは「LOWYA」も同様。顧客ロイヤリティの高い自社ECサイトの集客数を伸ばせば、自社EC売上は自然と増えていく――。こうしたサイクルを作りあげ、ブランドと自社ECサイトの構築に着手してから5年後の2020年3月期。売上高は前期比1.9%増の135億700万円、営業損益は1億1600万円へと黒字転換した。

ベガコーポレーション 自社ECサイトの四半期ベースの売上高とアクセス数の推移
自社ECサイトの四半期ベースの売上高とアクセス数の推移(画像はIR資料からキャプチャ)
ベガコーポレーションの売上高推移
ベガコーポレーションの売上高推移(画像はIR資料からキャプチャ)

もちろん、物流コスト上昇に対し、タリフやコスト構造の見直しなどを行ってきたことも営業黒字への転換につながったが、それは一過性ではない。中長期にわたって適正利益を確保できる体制の整備(自社ECサイトとブランディングの構築)が大きな成果をあげたと言えるだろう。

価格競争に巻き込まれずに合理的な売価での販売、ロイヤリティの高い消費者が増えるという土台作りの成果がコロナ禍での決算で顕著に表れた。

このように全社でさまざまなことに取り組んだ数年間。その結果、2020年4~9月期(中間期)の売上高は前年同期比48.0%増の98億8300万円、自社ECサイトの売上高構成比率は49.5%まで拡大。特筆すべきは営業利益である。なんと前年同期比同約40倍となる11億5800万円を計上したのだ。

ベガコーポレーション 旗艦店(自社ECサイト)売上の比率は2020年7~9月期(第2四半期)には49.5%まで拡大した
旗艦店(自社ECサイト)売上の比率は2020年7~9月期(第2四半期)には49.5%まで拡大した(画像はIR資料からキャプチャ)

Instagramのユーザー投稿を自社ECに活用、ブランド価値を高める

「LOWYA」のブランド戦略を進める上で欠かせないのがSNS活用。最も強化しているのがInstagramだ。

ベガコーポレーション 「LOWYA」のInstagram
「LOWYA」のInstagram

まず、ベガコーポレーションのSNS活用の目的から説明していきたい。新規・リピートアクセス促進とファンの獲得を目的としているが、最も重要視しているのが「フリークエンシー(frequency)」、つまりユーザーとの接触頻度である。

SNSは大きな売り上げに直結しにくい側面があるが、一方で、ユーザーとの接触頻度が増え、それがやがてファン化につながっていくという効果がある。そのため、費用対効果(費用対効果)としてSNS経由の売り上げだけを求めるような考えは改めた方がいいのでないかと考えている。「LOWYA」が、SNSのKPIで重要視したのはフリークエンシー。しかし、フリークエンシーをROIとして数値化することは難しかった。

SNSなどの役割について ベガコーポレーション
SNSなどの役割について(画像はIR資料からキャプチャ)

こう話す京谷氏は、どのようにSNSへの積極的な投資を実現したのだろうか?

ブランド戦略を進める「LOWYA」では、商品画像の撮影に多額の撮影コストを投じているが、その投資は商品画像というECサイト上の資産となるその理論をSNSへの投資にも活用しようと考えた。それがUGC(User-generated-content)の活用である

UGCはユーザー生成コンテンツと言われ、商品レビューがその代表例。ベガコーポレーションではInstagramのコラボレーション企画、ユーザーが「#LOWYA」と投稿したコンテンツを自社ECサイトにも活用。「そのコンテンツ経由の売り上げをROIとして数値で示し、投資の改修計画を立ててSNSへの投資を実現した」(京谷氏)と言う。

ベガコーポレーション Instagramで「#LOWYA」をつけて投稿された画像を紹介するページを設けている
Instagramで「#LOWYA」をつけて投稿された画像を紹介するページを設けている

一般的に、SNSの画像やテキストはフローコンテンツとなり、どんどん新しいコンテンツを投稿していかなければ、ユーザーとの接触頻度は増えない。京谷氏はそのフローコンテンツをECサイトに活用。SNSのコンテンツをECサイト上のストックコンテンツとして活用することで、商品購入につなげる導線作りへと応用した

SNSへの投資回収計画を立てる場合、UGCの活用が落とし所になるだろう。SNS上のコンテンツをサイト内に活用することで、投資の回収計画を立てることができる。また、ECサイト内でUGCコンテンツ使うことは、ユーザーの安心感にもつながっていく。(京谷氏)

ベガコーポレーション 「#LOWYA」がつけられた画像を活用したギャラリーページ
「#LOWYA」がつけられた画像を活用したギャラリーページ
ベガコーポレーションのUGC活用
画像をクリックすると「#LOWYA」をつけたユーザー投稿コンテンツに加え、商品価格などの情報を掲載したモーダル画面が表示される

ただ、Instagram上のコンテンツをECサイトに掲載する場合、ユーザーに二次利用の許可をとる必要がある。SNSを通じて投稿者にメッセージを送り、利用目的などを説明して許可を取ることが一般的だが、大量の画像を使用したい場合は手間と時間がかかるのが実情だ。

この申請作業をシステム上で管理し、申請機能を使ってユーザーの二次利用の許可を得た後にECサイトへコンテンツを活用できるようにする「visumo(ビジュモ)」をベガコーポレーションは導入。ユーザーへの申請作業を軽減すると同時に、Instagram上の画像とECサイトの商品詳細ページとを関連付けしてECサイトに写真を掲載できるようにした

<PR>ベガコーポレーションが導入した「visumo」の詳細は画像をクリック

ECサイトに掲載した写真素材から、投稿者であるインスタグラマーのユーザーページに移動することができるため、第三者の情報発信源として透明性を高めることができるようにしている。

ベガコーポレーションのUGC活用
たとえば商品詳細ページ下。レコメンドのように「みんなの投稿写真から探す」から、ユーザー投稿画像から商品を探すことができる

こうしたUGCの導入は、商品の購入率アップに直結すると言われており、ベガコーポレーションでも「商品購入につながっている」(京谷氏)。だが、それ以上に感じているのが「説得力」「価値の向上」といった派生効果だという

UGCには説得力があり、それがユーザーから見た商品の価値、サイト価値が大幅にあがる。そして、安心感の提供ができている。これまではレビューがその役割を担ってきたが、「LOWYA」ではユーザーのInstagram投稿コンテンツがその役割を担う。(京谷氏)

ベガコーポレーション 京谷氏は「UGCはECサイトのカリスマ店員」と話す
京谷氏は「UGCはECサイトのカリスマ店員」と話す

ブランド構築には安心感などの価値提供は欠かせない要素。ベガコーポレーションではUGCを活用したユーザー投稿の画像を通じて、サイトの安心感、価値の向上につなげている。

Instagramでのインフルエンサー企画などを検討している企業は増えているものの、「費用対効果はどうなの?」といった上層部の声で、投資に踏み切れない企業も少なくない。ベガコーポレーションはInstagramのコンテンツを自社ECに活用、それを資産として運用し、商品購入につなげることで投資回収につなげている。そして、UGCを通じて消費者に新たな価値を提供しているのだ。

SNS投資、ブランド構築、自社ECサイトの運営に悩む企業にとって参考にすべき点が多い事例と言えるだろう。

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