江沢 真紀 2021/6/23 8:00

ECサイトのタイプ別にSEO施策を解説していきます。1回目は大規模ECサイトについて、2回にわけて解説します。

「ECサイト」と言っていますが、商品やサービスデータが数千件〜数万件あり、カテゴリで分類しているような大規模サイトを指すため、求人、不動産、美容系のポータルサイトなども含みます。データベースを使っていても、商材が限られたり規模が小さめのサイトは「単品系通販」として次回以降、取り上げます。

DB型の大規模ECサイトとは

データベース型の大規模ECサイトの特徴は、SEOと広告の協業がかなり効率的に行えることです。SEOではサイト構造やカテゴリ、商品データ周りまで手を入れることがあり、マーケティングの環境整備ができます。そして広告ではその整った環境下で自動化を見据えた効率的な広告配信、つまりアセット活用ができるのです。

SEOの最初のステップは、サイトの構造と検索ニーズを俯瞰してみることです。そこはスマホ時代になっても変わらないので、一度サイト構成図を作ってみることをおすすめします。

それなりの商品数がありメーカーやブランド商品も扱っていて、実店舗もあるようなサイトの構造を作ってみました。

サイト構成図の例

DB型の大規模ECサイトに共通しているのは、

  • カテゴリがある
  • 場合によってはカテゴリを複数クロスしたクロスカテゴリがある
  • 特集やコラムがある
  • 末端に商品やサービスがある
  • リアルビジネスがある場合、店舗ページがある

といったことです。ここに「know(知りたい瞬間)」「go(行きたい瞬間)」「do(やりたい瞬間)」「buy(買いたい瞬間)という4つのモーメントを当てはめます(モーメントに関してはこちらの記事を参照)。

サイト構成図の例にモーメントをプラスした状態

このタイプのサイトは、カテゴリや商品ページで「buy」を、特集やコラムで「know」や「do」を、そして店舗があれば「go」、それぞれのモーメントを刈り取っていくことができるはずです。

ここに注力! いま注目すべきSEO施策5つ

SEO施策には内部施策、外部施策、コンテンツ施策、ローカル施策などいろいろな種類があります。さらに、たとえば内部施策にはtitleのチューニング、内部リンクの設置、カテゴリ設計などの作業があります。Googleの順位を決めるアルゴリズムが数百あるわけですから、やるべき作業もたくさんあるのです。

そのなかから、今回は大規模ECサイトが今注力した方が良いポイントを5つに絞って解説します。

前編(今回
後編(次回)
  • ポイント③ 一覧ページのスマホ最適化
  • ポイント④ パフォーマンス改善で速く使いやすく
  • ポイント⑤ ECは指名検索を増やす

ポイント① カテゴリの最適化と“一覧”ページの精査

このタイプのサイトでは、カテゴリは非常に重要です。「buy」モーメントとなるアイテムクエリではここがヒットし、SEOの入り口となるページ群になるからです。

カテゴリはユーザーの検索ニーズに合わせて階層化、細分化すると良いです。ECサイトのスカートのカテゴリを例にあげてみましょう。

cat1:スカート 
cat2:  └ フレアースカート
cat3:    └ フレアースカート ロング
クロス1:      └ フレアースカート ロング 麻
クロス2:       └ フレアースカート ロング 麻 黒
クロス2:       └ フレアースカート ロング 麻 ピンク
クロス1:      └フレアースカート ロング ニット
クロス1:      └ フレアースカート ロング 綿
cat3:    └ フレアースカート ミニ
cat3:    └ フレアースカート マキシ
cat2:  └ プリーツスカート
cat2:  └ タイトスカート
カテゴリの例

上記のように、スカートの形状や長さで分け、さらに素材や色とクロスしたカテゴリも作るとします。URLも「/skirt/flared/」「/skirt/flared/long/」というように、きちんと階層化して作成するとベストです。

このようにさまざまなカテゴリページ群ができることで、SEO的には流入機会が広がることになりますが、実は動的検索広告でも「フレアースカート ロング 麻 黒」と検索された際、自動的に適切なランディングページが表示されるのでパフォーマンスが上がります

何でもかんでもカテゴリ化しない

ただSEO面では1つ重要なポイントがあります。今のSEOでは「質」を重視しますので、人気だからといって何でもかんでもカテゴリ化するのは良くないという点です。必ず紐づく商品やサービスの数をカウントし、1点〜2点しかないカテゴリが大量に生成されないように注意してください。

「フレアースカート ロング 麻 黒」のようなあまりに細かいページはSEO的には意味がないので、noindexを入れてインデックスさせない、もしくはパラメータを利用したURLであればSearch Consoleのパラメータツールで「クロールしない」制御をすると良いでしょう。

検索ニーズと商品数を加味した適切な粒度のカテゴリを整備することは、SEO的にも広告的にも重要です。

「質の悪い」一覧ページに注意

もう1つ、カテゴリと一緒に考えたいのは“一覧ページ”です。一覧ページとは商品が一覧で並んでいるページで、主にカテゴリを指しますが、なかにはタグやサイト内検索結果なども存在します。大規模になればなるほど、ここのコントロールができておらず、1つのキーワードをカテゴリとタグ、カテゴリとサイト内検索で食い合っているケースをよく見かけます。

カテゴリは階層化され、管理されていることが多いですが、タグやサイト内検索は自動で生成されたり、無限に生成されたりするような仕組みも多いため、意味のないワードのページや商品が0件のページが大量にできているケースもよくあります。つまり、質の悪い一覧ページがカテゴリと食い合っているのです。

Search Consoleのインデックスカバレッジの除外「クロール済み - インデックス未登録」にそのようなURLが大量に出てきていませんか?

「クロール済み - インデックス未登録」のレポート画面
「クロール済み - インデックス未登録」のレポート画面

SEOは基本的にカテゴリで行います。構造化して管理もでき、パンくずなどのナビゲーションも「スカート>ロング>麻」というように、しっかり階層化して出すことができるからです。タグやサイト内検索を使うなら、カテゴリを横断するようなワード、季節やトレンドワードのみに限定すると良いでしょう。

カテゴリ名はツールで確認

カテゴリの名称はGoogleの日本語の認識力も向上し、ほとんど気にする必要がなくなっています。ただ、明らかに検索数が違う場合は、人気の言葉を使う方が良いでしょう。たとえば「フラットシューズ」(検索数18,100)と「フラット靴」(検索数170)はどちらを使っても、一応ヒットはしますが、圧倒的に人気度が高い「フラットシューズ」を使う方が良いです。

ちなみにカテゴリ名称は想像でなく、キーワードツールを使って検索ボリュームを調べることをおすすめします。無料であれば「Ubersuggest」がおすすめです。最近Chromeの拡張機能もリリースされ、かなり高機能になりました。

「クロール済み - インデックス未登録」のレポート画面
Ubersuggest」の拡張機能

拡張機能を入れるといちいちツールにアクセスしなくても検索した言葉の検索数や派生語、トラフィック予測が一目でわかり便利です(「Ubersuggest」はGoogleアカウントでのログインが必要なツールです。企業内ポリシーを確認してからご利用ください)。

ポイント② 商品データベースの整備

「buy」モーメントとなるアイテムクエリは、時に商品ページも対象になります。特に型番商品でなく、ユニークでオリジナルな商品であれば、流入獲得できることが多いです。その際に商品ページで重要なSEO要件は以下のとおりです。

  • 高画質な画像
  • 検索結果のサマリーに出るtitle(=わかりやすい商品名)
  • 検索結果のサマリーに出るmeta descriptionの最適化
  • 詳細な商品説明とスペック
  • ユーザーレビュー
  • 所属カテゴリへ戻れること
  • SKUをまとめる

SKUは集約しよう

SKUについて補足します。SKUはSEO的には1商品ページに揃えた方が良いです。

たとえば4色展開でサイズが4種類ある場合、SKUは16ですが、これらをすべて別々の商品ページとして生成してしまうとユーザーも選びにくいですし、SEO的にも大量の類似ページができてしまいます。サイズはともかく、色は1つに集約することをおすすめします。

SKUの集約イメージ
SKUが集約されていない例

商品データベースとフィードデータ

次に商品ページの元となる商品データベースについて考えてみます。titleタグや見出しに出力される商品名、商品説明、所属カテゴリ、価格、送料など、すべての情報は通常、商品データベースに格納されていると思います。前述したSEO要件を最適化する際もこの商品データベースが関係してきます。

そして、商品データベースはGoogleショッピングのフィードデータとも関係します。すでに多くの大規模ECサイトがGoogleショッピングを活用しているのではないでしょうか。特に2020年10月からは無料リスティングも始まったため、新規利用も増えているのではないでしょうか。

このGoogleショッピングで必要となるのがGoogle Merchant Centerに送信するフィードデータです。フィードデータはフィード作成ツールなどで別途設定しているケースを除き、多くの場合、商品データベースを元に作成されているでしょう。

この元となる商品データがどのくらい充実しているか、どのくらい整備されているかは、SEOだけでなく、フィードデータを使うGoogleショッピングや広告活用においても重要なポイントになります。

「クロール済み - インデックス未登録」のレポート画面
商品フィードデータのサンプル例

商品フィードデータには「標準リスティング」と「拡張リスティング」の2種類がありますが、流入を見込むには商品説明、在庫、ブランド、GTIN、色やサイズ、送料など、「拡張リスティング」の細かい属性が必要です。

また、わかりやすく整備されたデータであることも重要です。たとえばフィードデータのタイトルとなる商品名の良くない例と良い例を比べてみてください。

良くない例
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良い例
ワコール レディース 肌着(夏用/冷感)

良くない例は長く、キャッチコピー的な内容が入っているため、SEO的には何が重要なキーワードなのかわからず、検索結果でも長すぎて切れてしまう可能性があります。

広告的にも「ブランド+性別(アパレル)+商品カテゴリ+属性」のようなわかりやすい名づけが推奨されており、タイトルはわかりやすい商品名のみとし、送料無料はフラグで判別できるように、価格は価格のフィールドに入れるなど、商品名の命名規則は重要です。

概要(meta description)も同様にわかりやすい一文にすることがポイントで、タイトルも概要も重要な文言をなるべく先頭に配置することがSEOにも広告にもおすすめです。

商品が属する商品カテゴリはユーザーの細かい検索に応えらえるよう、検索需要のある商品カテゴリへの登録がフィードデータ的に推奨されています。3階層以上が目安とも言われており、前述したスカートの例のように、細分化したカテゴリの作成と商品登録はSEOにも広告にも有効です。

ちなみに更新が課題となるフィードデータですが、商品ページを構造化マークアップしておくことで、Google Merchant Centerのデータの自動更新ができるようになり、価格や在庫状況の不一致が原因で広告が停止してしまうリスクが減るようです。

構造化マークアップはSEO面でも内容の理解、検索結果のリッチ化などメリットがあります。ぜひやっておくといいでしょう。

商品の属性を充実させて整備することは非常に手間のかかる作業です。特に大規模サイトでは最低限の情報しかない、DB化されていない、正規化されていないといった課題を目にします。

  • わかりやすい商品名
  • 適切な商品descriptionの作成
  • 商品説明文やサイズ
  • 色、素材など細かいスペック情報
  • 必要な情報のフラグ化

など、商品データベースの整備は、SEOと広告の両面に効果があります。大変ですが、やる価値は大いにあるのではないでしょうか。

補足:SEOと広告の相乗効果

SEO同様、昨今さまざまな進化を遂げているリスティング広告では、アセット活用が重要なポイントとなってきています。「アセット」(asset)は、一般的には「資産」「経営資源」という意味ですが、Webの世界では「企業がビジネスを行う上で保持する情報やデータベース」を指しています。

アセットと広告の打ち手の関係
アセットと広告の打ち手の関係

この図の左側にあるのがアセット、右側にあるのが主にECサイトにおけるオンライン広告の打ち手の例です。広告に関しては次の回で河野が解説しますが、ここで理解いただきたいのは「アセット」の重要性です。

Googleの広告と言えば「設定した検索キーワードに連動して表示される広告」と認識しがちですが、2021年時点ではキーワードより自社ビジネスの情報がまとまっている「アセット」が重要になってきていると言われています。つまり、今回解説したサイト構造やカテゴリ、商品データをきちんと整備すること、それが効果的な広告にもつながるのではないかと思います。

整備できるのはSEOをやるタイミングです。私も大規模なDB型サイトのSEOをやる際には必ずサイト構造を定義し、カテゴリを最適化し、時には商品データにもリクエストを出します。SEOで「アセット」を整えて広告にも生かす。これが大規模ECサイトの重要なポイントだと考えます

◇◇◇

長くなりましたので、次回は後編として残りの3つのポイントを解説します。

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