卒塔婆のECサイト「卒塔婆屋さん」で実践してきたリスティング広告、SNS、プレスリリース、マスメディア(テレビ・ラジオ)などの宣伝手法をご紹介しながら、宣伝戦略についてお伝えします。

1.リサーチより、まずは少額でも始める

宣伝手法はさまざまなものがあり、ターゲットや商材によって向き不向きがあります。「卒塔婆屋さん」で効果が出たからといって、その手法が他のお店にそのまま横展できるかと言えば、実践してみなければわかりません。

「どんな宣伝手法を採用すればコンバージョンにつながるのか」とまずは考えましょう。私は、リサーチに時間をかけるよりも、まずは少額の予算でさまざまな手法を試してPDCAを回し、最終的に効果が上がった方法に広告宣伝費をかける方が効率的だと考えています。

これはただやみくもに宣伝をするという意味ではなく、きちんと仮説を立てた上でさまざまな手法を試していくことが重要です。

「広告宣伝費にお金をかけない」という方法ももちろんあります。しかし、ECサイトを立ち上げた直後はSEO的に上位表示することは厳しく、サイトへの流入は見込めません。

初速をつけるためにも、最初は広告宣伝費に予算をつけて、サイト流入が増えてきたら宣伝費を削っていくというやり方が良いでしょう。最終的には宣伝をしなくてもブランドが確立し、SEOも強くなればサイト流入は増え続けていきます。

2.宣伝する目的を明確にする

宣伝をする目的は何でしょうか? 「ECサイトの認知を獲得する」「流入を増やす」「売り上げを伸ばす」などが真っ先にあがるでしょう。しかし、これらは目標であり、目的はその先にある利益を伸ばすことです。認知・流入・売り上げは利益を伸ばすための通過点に過ぎません。

投資に対する利益(ROI:Return On Investment)を計測できるような仕組みを整えておく必要があります。

たとえば、売り上げが100万円、原価が30万円、投資額が20万円だった場合、利益は100万円-30万円-20万円=50万円で、ROIは50万円÷20万円×100=250%となります。ROIが高ければ高いほどより、少ない投資で大きな利益を計上したことになります。

この場合は投資全体ですが、宣伝費を投資額ととらえれば同じように計算できます。

ただし、ROIという指標は短期的な効果に目が向いてしまいがちです。長期的なブランドの確立、見込み客の獲得など数字に表れない部分の効果測定には向いていないことに注意してください

ブランドの確立や見込み客の獲得といったことは宣伝ではなく、コンテンツの充実など別の方法を検討するのが良いでしょう。

大手企業は商品の広告ではなくイメージ広告をよく打ちますが、中小零細企業ましてや立ち上げたばかりのECサイトでは、まずは「いかに売り上げと利益を増やしていくか」に集中することが得策です。ブランドやイメージはコンテンツを作りこんで確立していきましょう。

3.宣伝の手法と「卒塔婆屋さん」の実例

それでは、「卒塔婆屋さん」で実際に行ってきた宣伝手法をどんな仮説をもとに行ってきたのか、結果とあわせて紹介します。ここでのメリット・デメリットは実際に運用してみた感想です。

リスティング広告の運用

リスティング広告とは

リスティング広告とはユーザーが検索したキーワードに連動して掲載される広告で、次のようなものがあります。

  • 検索結果一覧に、テキストで表示される検索広告
  • ニュースサイトなどにバナーで表示されるディスプレイ広告
  • 検索結果一覧に、商品が表示されるショッピング広告
  • YouTubeに表示される動画広告

これらの広告は表示されただけでは課金されず、クリックされた時に課金されます。費用はキーワードによって変動し、ビックワードと呼ばれる検索ボリュームの大きいものは単価が高くなります。

また、表示される場所も入札形式で、予算が高い方が画面トップなど人の目に留まりやすい場所に表示されます。

メリット

  • 少額から始められ、すぐに停止できる
  • 確実に表示される
  • PDCAが回しやすい
  • クリックして初めて課金されるので、費用対効果が優れている

デメリット

  • 運用には知識と手間がかかる

「卒塔婆屋さん」のリスティング広告

ECサイトを開設したばかりの頃は、砂漠にポツンとお店をオープンしたような状態です。そのためまったく流入がなく、検索しても下位表示しかされない状況でした。

リスティング広告を知り、リスティング広告の入門書を購入、悪銭苦闘しながら運用をスタートしました。

検索すると1ページ目に表示されるようになり、広告経由の流入も増えてきましたが、キーワードの設定などが稚拙だったため、たとえば「卒塔婆立て」で検索したユーザーも流入してしまい、広告費ばかりかさんで利益どころか売り上げすら伸びない状況でした。

動的広告検索を活用し、作業削減&コンバージョンアップ

Googleの場合、広告を出稿すると専任のコンサルタントがついて年に何回かアドバイスをしてくれます。そのアドバイスをもとに、キーワードを整理したり広告文を見直したり、トライアンドエラーを繰り返して、徐々に広告経由の売り上げと利益が確保できるようになりました。

しばらくは、手動でキーワードや広告文を試しながら、より効果的な広告を模索していました。しかし、手動では限界があったので、途中から検索広告は動的広告検索というものを使うようになりました。

これは、検索キーワードから最適なページの広告文章を自動で生成、表示するというもので、ほとんど何もせずにAIによってより精度の高い広告を出すことができるというものです。ただし、除外キーワードは小まめに設定する必要があります。それでも手動に比べて手間は大幅に削減、コンバージョンも10%以上向上しました。

費用対効果が良かった「ショッピング広告」

同時に、ショッピング広告も運用するようになりました。これは、検索すると商品が画像付きで表示される広告で、文字だけと比べてより目立ち、まだ利用しているところも少ないので検索広告よりもクリック単価も非常に安く、チャンスだと考えました。

Googleショッピング広告の利用者が少ない最大の要因は、商品を登録するのが難しく、つまずく人が多そうなところだと考えられます。

検索広告であればGoogle広告の管理画面上で完結できますが、ショッピング広告は「Google Merchant Center(グーグルマーチャントセンター)」に商品情報をアップロードしてGoogle広告と紐づけする必要があり、慣れないとかなり難解です。

一度理解してしまえばそこまで難しくはないのですが、はじめの一歩のハードルが高いので、時間があるときにじっくり取り組むことをオススメします。

卒塔婆屋さん リスティング広告 ショッピング広告の事例
「卒塔婆屋さん」のショッピング広告事例

費用対効果は抜群なので、ショッピング広告は大変ですが必ず出稿した方が良いでしょう。

最近、ASPによっては簡単に商品情報を「Google Merchant Center」に連携できるシステムも提供されていますので、ぜひチャレンジしてみてください。

リスティング広告は、購買意欲の高い人にピンポイントで広告を出せるので、特にECサイトを立ち上げた直後のショップにとっては必ず実施すべき宣伝手法だと考えています。

SNSの運用

ここでのSNSはメディアとして考えます。Facebook、Instagram、Twitter、LINEオフィシャル、Pinterest、YouTubeなどを指します。

メリット

  • 基本無料ですぐに始められる
  • スマートフォンからも簡単に投稿できる

デメリット

  • SNSの使い分けが難しい
  • フォロワーを増やすのが大変
  • 商売っ気を出しにくい

「卒塔婆屋さん」のSNSでの宣伝

Facebook

オフィシャルな要素が一番強いと考えています。新商品、新機能についての情報やレビューアプリと連携し、お客さまからレビューがあるとタイムラインにも投稿されるようにしています。また、Instagramとも連携しています。

卒塔婆屋さん Facebookの事例
「卒塔婆屋さん」のFacebookページ(画像は「卒塔婆屋さん」Facebookからキャプチャ)

SNSのなかでは一番流入経路として多く、購入率が高くなっています。リンクを貼れたりショッピング機能があったりと、ECと最も相性が良いSNSだと感じています。

Instagram

写真に特化しているので、フィード投稿では特注品や新商品の写真を投稿、商品をタグ付けしてサイトの商品ページに誘導しています。

また、製造工程の短い動画は一番目立つストーリーズに投稿しています。投稿一覧の写真に統一感が出るよう、写真を撮影するときから意識しています

卒塔婆屋さん Instagram 活用事例
「卒塔婆屋さん」のInstagramページ(画像は「卒塔婆屋さん」Instagramからキャプチャ)

Twitter

Instagramと連携しているだけで、個別に投稿はしていません。「卒塔婆屋さん」のターゲット層では使っている人が少ないので、効果はありません。商材によっては「一番効果がある」というECサイト運営者もいます。

LINEオフィシャル

あまりタイムライン投稿はせず、お客さまと個別のやり取りに使っています。

Pinterest

アイディアを得るための素材集的なものなので、卒塔婆の写真を投稿していますが、効果はほとんどありません。

YouTube

主に製造工程の動画を投稿しています。宣伝ではなく、どちらかというと購入を検討中のお客さまに対して、動画で情報を提供することで購入の後押しとして使っています。

「卒塔婆屋さん」のYouTubeチャンネル

SNSはショップの世界観を伝える、ブランドイメージ向上に活用する

SNSはあまり商売っ気を出してしまうと、フォロワーが増えていきません。ショップの世界観を伝え、店主やスタッフの人柄が伝わるような投稿をして、ブランドイメージを向上させる方向で使った方が良いと考えています。

リアル店舗でも「この店員さんがいるからこの店で買物をする」ということは決して少なくないと思います。ECも同様で、どんな人が売っているのかは、お客さまにとって購入を左右する有益な情報となります。恥ずかしがらずに顔出しでSNSに投稿してみましょう。

プレスリリース

プレスリリース配信を代行するサービスに登録し、広くメディアに新商品や新サービスを拡散することができる手法です。

メリット

  • さまざまなニュースサイトやオウンドメディアに転載、拡散される
  • 検索一覧に自社サイトの他、自社サイトについての記事が掲載される
  • 取材依頼が来やすくなる

デメリット

  • コストがそれなりにかかる
  • 古い情報も検索結果に出てしまう
  • 書き方に慣れが必要

「卒塔婆屋さん」のプレスリリース

新商品や新サービスを始めた際は、必ずプレスリリースを出すようにしています。プレスリリースから購入につながることより、プレスリリースを通じて新聞記事、ラジオ、TVでの紹介につながることが多く、認知度向上に役立ちました。

テレビ・ラジオ

視聴者数は多く、インパクトは健在です。

メリット

  • インパクトの瞬間最大値は絶大

デメリット

  • 放送中や放送直後しかサイト流入は増えない
  • ネットとは違い、後から拡散することがほとんどなく、放送中に視聴していた人にしか宣伝効果がない

「卒塔婆屋さん」のTV・ラジオ出演

BSの経済番組やラジオ番組で紹介されました。放送中のサイト流入は他の時間帯と比べ、10倍以上に跳ね上がりました。しかし、ターゲット層ではなく不特定多数への放送なので、購入につながることはありませんでした。

卒塔婆のように極めてニッチな商材ではなく、コモディティ商材のように一般大衆向けの商材であれば、購入につながる可能性が高いかもしれません。

「卒塔婆屋さん」の宣伝手法について、感じたメリットとデメリット、実際の効果についてご紹介しました。卒塔婆という商材の特性上、爆発的に売れるということはありませんが、根気よくコツコツとさまざまな手法で宣伝することで、確実に成長を遂げてきました。

4.まとめ

商材によってはバズって一気に世間の注目を集め、爆発的に売り上げが上がることもあります。ただ、こういった商品やお店はその場限りで終わってしまうことも多く、私が知っている成功しているECサイトは、コツコツとブランド価値を高めて「気がついたら高みに来ていた」というところが多い印象です。

広告宣伝にはお金がかかります。私も最初の頃は、無駄な広告も数多く打ち、多いときで月50万円程度使っていたこともありました。今では、多い月でも10万円にも達しません。

特にリスティング広告は初めに予算を決めてしまうと、いくら自由に変えられるとしても、そのままの予算を放置してしまうといったことがあります。宣伝費もメリハリを付けて、結果を検証し、より効率よくROIを高めていくことを意識することが大切です。

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谷治 大典

谷治新太郎商店 代表取締役、「卒塔婆屋さん」店長

卒塔婆通販サイト「卒塔婆屋さん」店長。明治15年、東京都日の出町で創業した谷治新太郎商店の代表取締役。

まったく畑違いの業界でサラリーマンとして働き、結婚を機に配偶者の実家が営む卒塔婆製造業というニッチな業界に転職。2012年に先代からバトンを受け継ぎ、代表として6代目に就任。

2013年ECサイト「卒塔婆屋さん」開設。2019年にGMOペパボ主催の「カラーミーショップ大賞」で地域賞、2020年に優秀賞を授賞。

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