森岡 健太郎 2022/6/15 10:00

Amazonは、「Amazonプライム」の配送特典をAmazon以外のECサイトでも使えるようになるサービス「Buy With Prime」を発表しました。このサービスの誕生で、ECの未来はどのように変化するのでしょうか?

自社ECサイトでもプライム会員特典が使える

Amazonで頻繁に買い物をするユーザーであれば、「Amazonプライム」を利用している人は多いのではないでしょうか。

送料無料で最短翌日に届くという利便性の高さから、一度利用すると離れられなくなるユーザーも多く、Amazon以外で買い物をしなくなるユーザーが増える要因の1つだと考えられます。

「Buy With Prime」はAmazonのスピード配送、プライム会員向けの無料配送、「Amazon Pay」を活用したシームレスなチェックアウト体験、無料返品などを、自社ECサイトを運営する事業者に提供する新しい機能です。

「Buy With Prime」の登場で、Amazonのサードパーティマーケットプレイスで販売する小売業者は、自社ECサイトに「Amazon プライム」を実装できるようになります。(参照元:https://www.aboutamazon.com/news/retail/prime-shopping-expands-beyond-amazon-com

プライム会員のユーザーは、プライムのロゴが付いたECサイトでAmazonプライムでの購買と同じ体験を受けられるようになります。

プライム会員の配送特典を自社ECサイトで提供できるAmazonの「Buy with Prime」とは
「Buy with Prime」の表示イメージ

決済から配送までAmazonのサービスを活用できる

これまでも、Amazonの決済サービス「Amazon Pay」はAmazon以外のECサイトに提供されていました。

「Buy With Prime」の登場によって、決済だけでなくフルフィルメントサービス(通信販売やECサイトにおいて発生する受注、決済、ピッキング、配送などの一連の業務を行うサービス)もAmazonのプラットフォームを活用できるようになり、EC事業者は自社で配送サービスを保有することなく、自社ECサイトの運営が可能になります。

「Buy with Prime」のイメージ動画

「Shopify」の登場によって、数百万円のサイト制作費をかけなくても自社ECサイトの開設・運営が可能になったように、「Buy With Prime」の導入で、自社で発送担当のスタッフを雇わなくても、自社ECサイトが運営できるようになるのです。

これらはユーザーの利便性向上だけでなく、EC事業者の負担が減らせるというメリットがあります。(参考:「Buy With Prime」について

「Buy With Prime」で“ECの覇者”の立場をより強固に

Amazonは、物流の各機能を統合・高度化し、需要と供給の適正化をはかったロジスティクスおよびフルフィルメントサービスによって大きく成長し、他社を圧倒しています。

2020年と2021年、Amazonは「アマゾンロジスティクス」の品質改善のため、800億ドルを費やしました。「Buy With Prime」によって、その投資が報われることになります。

また、「Buy With Prime」は「Amazon Pay」のシェア率に大きな影響を与え、「Amazon Pay」を利用した決済の増加にもつながります。また、プライム会員の継続性向上や、新規会員の増加にもつながると考えられます。

「Buy With Prime」はAmazonの“ECの覇者”としての立場を、より強固なものにする可能性が高いのです。

AmazonとShopifyの対立構図が鮮明に

Amazonの「Buy With Prime」開始を受け、AmazonとShopifyの対立構図がより鮮明になっています。

ここ数年Shopifyはフルフィルメント部門とロジスティクス部門の強化をめざしており、投資を強化しています。直近でも、EC向けロジスティクスプラットフォームを提供するDeliverrの買収を決定したばかりです。

ShopifyのCEOはツイッターで「Amazonは帝国を築こうとしており、Shopifyはそれに立ち向かうべく強化している」と語るほど、Amazonを意識した動きを見せています。

現時点で、「Shopify」で構築したECサイトで「Buy With Prime」が利用可能かどうかShopifyは言及していません。しかし、Shopifyにとって「Buy With Prime」は多くのメリットがあるのも事実です。

2億人を超えるAmazonプライム会員が、「Shopify」で構築したECサイトで商品を購入するようになれば、Shopifyの流通総額を増やす契機になるからです。

Amazon依存のリスク

一方で「Buy With Prime」をShopifyに導入することは、Amazon側に「Shopify」利用企業の情報や、販売している商品に関するデータを提供してしまうという懸念事項もあります。

また、Amazonが「Shopify」を利用しているECサイトのデータを用いて、自社サービスの改善に活用する可能性もあります。

まとめ

現在、「Buy with Prime」のプログラムは招待制となっており、フルフィルメント by Amazon(FBA)を利用していること、「Amazon Pay」に登録していることが導入条件です。

すぐに導入できる事業者は少ないですが、EC事業者、顧客の双方にとって利便性が高まるサービスであることは間違いありません。

これからのEC業界は、モール出品に依存しない小規模のECブランドが増え、個人や副業者でも物流コストをかけずにブランド運営が可能になる未来が訪れるかもしれません。

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