顧客視点で見た中国EC市場の変遷&新潮流「ライブコマース」を攻略するポイントとは
中国EC市場は爆発的な成長を続けています。多くのユーザー、商品、取引、サプライチェーンがデジタル・オンラインにシフト。同時に、マーケティング手法も消費者のリテラシー向上といった変化に合わせて大きく変わっています。中国EC市場は今どのような状況にあり、次のステージではどのように発展していくのでしょうか。
顧客ニーズから見た中国EC成長の歴史(EC1.0~4.0)
中国EC市場のこれまでの発展は、顧客ニーズという視点から次のように分類できます。
- EC1.0――顧客ニーズを満たす
- EC2.0――リレーションと効率重視
- EC3.0――ブランドによる潜在ニーズの顕在化
- EC4.0――データ・AI活用
EC1.0――顧客ニーズを満たす
価格競争が特徴的な時代。アリババ傘下のタオバオがサービス提供をスタートしたことで、ユーザーは「どんな商品でもECプラットフォームを通して購入できる」という買い物環境になりました。消費者はタオバオ、JDなどのECプラットフォームでリアル店舗では手に入らない商品を購入。ブランドは自社商品を惜しみなくプラットフォームを通じて販売しました。プラットフォームを通じて膨大な商品が供給された一方、消費者の需要拡大に伴い価格競争が起き始めました。
EC2.0――リレーションと効率改善
ECプラットフォームの継続的な発展、一方で事業者間による競争が激化し、EC事業者は顧客ニーズを把握、加えて、新商品販売の効率化、物流効率などを高めることに注力しました。
EC3.0――ブランドによる潜在ニーズの顕在化
Eコマースの本質は、インターネットを通じて多くの商品を消費者に紹介し、潜在化している消費者ニーズを顕在化することです。たとえば、モバイルインターネットでは、ブランドがさまざまな場所、シーンで商品を展示することで、ユーザーが商品を出会える場を演出、ニーズの顕在化につなげています。ライブショッピングは消費者ニーズの顕在化でという点では、新たなECマーケティングの潮流の1つです。ライブコマースに登場するインフルエンサーは顧客ニーズを深く理解したうえでライブ配信、ニーズを可視化し商品販売につなげています。市場を取り巻く環境が絶え間なく変化し続けるなか、EC業界や企業も常に革新を続けていくのです。
EC4.0――データ・AI活用
顧客のビッグデータ分析、AIなどによるきめ細かい分析を通じ、商品の生産や販売の最適化を行う段階です。製品軸で得たビッグデータは、顧客の潜在的なニーズを満たすという重要な価値を持ち、それを武器にすることはEC市場において大きな競争力を獲得することになります。
中国EC市場の新潮流はライブコマース、「商品」「人」「トラフィック」がカギ
ショートムービーやライブ配信は近年の中国EC市場で最も成長している販売モデルです。「Taobao live」「Douyin」「快手」の3大ショートムービープラットフォームが市場拡大をけん引。特に、「Taobao live」のトランザクションは、3年連続で150%以上の成長を遂げています。その成長を支えているのが、「商品」「人」「トラフィック」であり、その理解が攻略の基礎となります。
商品
ライブコマースやショートムービーで商品を売るには、商品選択の重要性がカギになります。事業者に加え、インフルエンサーもサプライチェーンに深く入り込み、生産プロセス、品質、製品特性などを深く理解しようとしています。
たとえば、タオバオの「Taobao live」では、人気インフルエンサーが顧客ニーズを正確に把握し、リアルタイムで特典を提供できるように専門の商品選定チームを設置。WeChat上ではファンコミュニティを作ってファンと継続的にコミュニケーションを実施、商品に関する調査を行う環境を整えています。
ただ、ライブ配信で使用する商品選定はとても厳しく設定しています。そのため、インフルエンサーと調査チームの双方が商品の質、消費者のレビューなどを繰り返し確認し、ライブストリーミングで使用するか決めています。
ヒト
トップインフルエンサーはスター化・ブランド化していっています。そのため、トップインフルエンサー自身がブランドとなり、ユーザーから信頼される存在になってきています。そのトップインフルエンサーと人気芸能人が持つ膨大なトラフィックの活用には、サプライチェーンのサポートが必要になります。ライブコマースやショートムービーでは膨大な注文が入りますので、強力なサプライチェーンとチームを組織することが重要になります。
トラフィック
膨大なフォロワーを持っているウェブタレントやインフルエンサーたちがライブコマース進出しし始めています。フォロワー数が多い彼らのライブストリーミングは、ブランド認知を一気に高めることができるためです。SNS上のトラフィックもユーザーデータの蓄積や長期的運営が可能になるので、ブランドにとってはより多くの消費者との接点を得られることから、幅広い関心を集めています。
中国のEC市場は次のステージに入っていますが、顧客ニーズの考察、マーケット理解を常に行うことが、市場で生き残るカギになるでしょう。顧客の声に耳を傾けて絶えず購買体験を改善することがが、顧客満足度の向上、コンバーション率やGMVのアップにつながります。
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