「TikTok」などライブ配信&ショート動画プラットフォームの台頭で変わる中国の消費行動とマーケティング
日本で話題になっている動画共有コミュニティと言えば「抖音(TikTok)」。日本でも若年層を中心にユーザーが広がっていますが、中国ではライブ配信とショート動画を配信するプラットフォームの利用が急拡大し、ビジネスに活用する事業者が増えています。
編集した最大15秒のオリジナルビデオを友人にシェアできる「TikTok」のほか、ビデオ編集・共有アプリの「快手(KUAISHOU)」はショート動画プラットフォーム、「一直播(YI)」「斗魚直播(DOUYU)」「花椒直播(HUAJIAO)」などはライブ配信プラットフォームとして分類され、多くのユーザーが利用しています。新しいメディアとして注目されているライブ配信とショート動画のプラットフォームについて解説していきます。
ライブ配信プラットフォーム
中国ではこの2年で、ライブ配信市場が急速に成長し、新しいインターネット文化が形成され始めています。そして、多くの個人や企業がライブ配信事業に参入し、多くのインフルエンサーが出現しています。
多くのライブ配信プラットフォームではユーザー登録が非常に簡単。18歳以上であれば誰でもキャスター(配信者)になることができます。一定数以上のファンを集めれば、ライブ配信プラットフォームと契約し、それなりの所得を得ることも可能です。専門知識、プロフェッショナリズム、クリエイティビティ、スター性が高ければなお良しです。
ライブ配信に関しては、「一直播(YI)」「斗魚直播(DOUYU)」「花椒直播(HUAJIAO)」といったプラットフォームが代表サービスになります。
ショート動画プラットフォーム
誰でも簡単にコンテンツを制作できるようになったことで、ショート動画市場は急速に成長しています。コンテンツがまねしやすくなっていること、ソーシャルメディアとの親和性が高いことも、発展の大きな要因と言えるでしょう。
「TikTok」「快手(KUAISHOU)」が代表的なサービスになります。
ショート動画は高いインタラクティブ性があるのも人気を集めている点の1つ。新しい世代のエンターテイメントに対するニーズを満たしながら、自由に感想を表せる空間を与えていることが多くのユーザーを引き付けているのでしょう。
ショート動画の台頭でインフルエンサーマーケットが誕生
ショート動画の台頭により、オウンドメディア、EC事業の境界線がなくなってきています。多くのインフルエンサーが、ショート動画とライブ配信を通じて、商品を解説・販売し、プロダクトプレイスメント手法によるマーケティングを行っています。これにより、インフルエンサーマーケットが急成長を遂げました。
インフルエンサーマーケティングの本質は、実際にはコンテンツECであり、ソーシャルECでもあります。中国では、インフルエンサーが主にショート動画やライブ配信プラットフォームなどを利用し、ファンたちと交流を図っています。交流を重ねていくと、ファンはインフルエンサーのコーディネートやライフスタイルなどを自身の生活に取り入れていきます。
インフルエンサーが意図的に推奨しているわけではなく、ファンとの日常的な交流の中で、自然に影響を与えているのです。その結果、ユーザーエクスペリエンスは向上し、インフルエンサーはファンに品質の良いプレミアム商品をオススメすることができます。
“類は友を呼ぶ”ということわざがあります。社会心理学の観点から見ると、インフルエンサーのファンは、本質的に言えばインフルエンサーと「同じ趣味」を持っていると言われます。そうでなければ、インフルエンサーの動向を常にフォローすることなどしません。
インフルエンサーとファンは、食べ物、飲み物、遊び、衣食住などについて似た嗜好を持っているため、新しい服、新しいコスメなどをインフルエンサーが推薦することで、キーオピニオンリーダー(KOL)の役割を果たしているのです。
インフルエンサーがファンに個性的な趣味、ライフスタイルを伝え、ファンがそれを認め、推奨された商品を購入するのがインフルエンサーマーケティングのサイクルです。言い換えれば、インフルエンサーは、“共通の趣味”を販売していることになります。
インフルエンサーは多くのファンを持っているため、1つの動画を配信したら、プラットフォーム上でたくさんシェアされ、あっという間にプラットフォーム全体、ひいてはネットワーク全体に広がっていきます。
具体的な数字を紹介しましょう。2017年の「独身の日(ダブル11)」では、スタートから10分もたたないうちに、動画プラットフォーム「梨視頻(Pear Video)」の親会社である宸帆(Chen Fan)の取引額が1億元を突破しました。宸帆(Chen Fan)は多くのインフルエンサーを抱えているECプラットフォームで、そのうち、6軒のインフルエンサーの店舗が女性向けファッションの上位30位にランクイン。取引額は2016年に比べて50%増加しました。
また、2軒のインフルエンサーの店舗が初めてダブル11期間の取引額のトップ10に入り、4軒のインフルエンサーの店舗において、ダブル11当日の取引額が1億元を超えました。
注目プラットフォームは「TikTok」、Canonの活用事例を解説
ライブ配信、ショート動画プラットフォームの発展で、多くの企業がこの分野に注力し始めています。企業イメージの向上を図るために、視覚的な訴求力、拡散性、強力なインタラクティブ性、インフルエンサーの強い影響力などの特長を持つライブ配信、ショート動画プラットフォームの活用に乗り出しているのです。
2017年10月には、「Canon TMALL公式旗艦店」が、インフルエンサーのライブ配信イベントを行いました。イベントでは2名のインフルエンサーによるトークショー、イベント会場の来場者の実体験の様子、撮影方法の講座などを行いました。ライブ配信の総視聴回数は27万7900回、「いいね!」総数は58万8,700件を達成。イベント終了後には、キャンペーン商品の訪問者数、「お気に入り」総数も着実な成長を達成し、キャンペーン商品の売り上げも増加したようです。
ライブ配信プラットフォームにおける商品のプロモーション活動に加え、ショート動画プラットフォームを活用した取り組みを始めています。もっとも人気を集めているのは「TikTok」です。
「TikTok」は、音楽に合わせて15秒間のオリジナル動画が作れるアプリです。「TikTok」には、「もっとちゃんとした生活を送ってください」といったテーマがあり、ユーザーはこのテーマに沿ったオリジナル動画の制作に挑戦できるといった機能もあります。
Canonは2018年4月、新規デジタルカメラ製品「EOS M」の発売キャンペーンとして、「TikTok」で「M Dance募集」というテーマを設定し、大きな反響を集めました。
「いいね!」数の1位には、旅行用のスーツケース1つ、2~4位には男優「陳坤(Chen Kun)」氏のサインブック3本を贈呈しました。
このキャンペーンでは、有名なインフルエンサーが「TikTok」を利用してCanonの専属音楽「M-Dance」に合わせてダンスするといったショート動画を制作しました。インフルエンサーがファンたちとの交流を行い「いいね!」を獲得すると同時に、「テーマへの挑戦に参加して賞品を獲得してください」とファンたちにアピールすることで、ブランドの宣伝にもつなげています。
中国におけるショート動画、ライブ配信プラットフォーム市場は、今後、利用シーンごとのセグメンテーション、動画パターンの変化・多様化が進むでしょう。また、技術革新によって、将来的にはユーザーのニーズを満たすための多様な新サービス、プラットフォームが出現するはずです。
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