CO2を5.1トン、輸送台数を205台削減。アスクルが花王、コクヨと「発注量の平準化に関する実証実験」で得た成果とは?

実証実験を行うにあたり、EC事業者起点でAIを活用したシステムを開発。発注量の平準化で物流センターの庫内作業効率化なども成果も得られた

藤田遥

2023年8月31日 7:30

アスクルは、花王、コクヨと共同で「発注量の平準化に関する実証実験」を実施した。独自のAI(人工知能)を活用し、サプライヤーへの発注量の検証でCO2を5.1トン、輸送台数を205台削減するなどの成果を得た。

EC事業者起点でAIを活用したシステムを開発

アスクルは「ホワイト物流」推進運動に賛同し、2019年に持続可能な物流の実現に向けた「自主行動宣言」を提出している。「発注量の平準化に関する実証実験」は自主行動宣言の項目の1つ。アスクルからサプライヤーへの発注量を平準化することで、輸送車両台数とCO2排出量の削減をめざすものだ。

発注量の平準化を実現するにあたり、アスクルはEC事業者起点でAIを活用した「発注量平準化のシステム」を開発した。サプライヤーが使用する4トン車、10トン車などの輸送車格と、各車格で輸送できる物量(積載可能才数)をシステムに取り込み、1週間分の需要予測・需要変動のデータと突き合わせてアスクルからサプライヤーに発注。発注量を「輸送車両の車格単位での発注量」としたことで、発注時点で高積載となる仕組みを確立し、発注量の平準化を検証した。

実証実験期間は、2022年4月~2023年1月まで。アスクルが発注者、花王とコクヨが出荷サプライヤーとなり実験を行った。

アスクル 花王 コクヨ 物流 発注量の平準化に関する実証実験 AI活用 実証実験における発注量標準化フロー
「発注量の平準化に関する実証実験」における発注量標準化フロー

実証実験を通じて発注量の平準化を図ったことで、輸送に用いる車両数の削減、同一の物量に対する排出CO2を削減する成果を得たという。

また、輸送する物量の平準化でトラック積載率が向上。サプライヤー、アスクル物流センターの庫内作業も効率化した。結果の詳細については次の通り。

年間試算結果

  • 期間:2022年5月21日~2023年4月20日
  • 対象のアスクル物流センター:名古屋センター、DCMセンター
  1. CO2排出量を5.1トン削減
  2. 4トントラック158台、10トントラック47台を削減
  3. トラック積載率が68.0%から69.7%に向上(1.7%改善)
    (対象品が重量物ではないため、容積で積載率を算出)
  4. サプライヤー、アスクル物流センターでの庫内作業の効率化
    • 花王、コクヨ(サプライヤー):出庫、仕分け作業の効率化
    • アスクル(荷主):物流センター内での入庫、在庫化作業の効率化

実証実験の結果を受け、アスクルは2023年2月から実証実験を他サプライヤーにも展開し、取り組みを拡大している。

「物流2024年問題」や生産性向上、CO2削減などの課題が背景に

EC物量拡大に伴い、「物流2024年問題」で注目を集める人手不足のみだけでなく、トラック輸送急増によるCO2排出量が増加。生産効率の向上、CO2排出量削減への取り組みが企業の課題になっている。

アスクルは、消費者の需要変動に応じて「必要なモノを・必要な時に・その都度発注する」という一般的な小売業と同様の発注方法を採用していた。ただ、この方法は需要に応じて発注量が変動する。そのため、日々の発注量が一定ではなく、サプライヤーは発注量に合わせて庫内作業を行うという課題があった。

また、車両を都度手配するため、トラックの増台対応、低積載となりトラックの空きスペースの多い日の発生など、サプライヤー側の出荷・輸送工程の非効率が大きな課題となっていた。

また、アスクルも日々変動する入荷量に対する受け入れ作業を行う必要があり、サプライチェーン全体の生産性低下につながっていたという。さらに、こうした低積載の輸送を行うことで無駄なCO2排出も起きていた。

こうした状況を受け、物量平準化による輸送車両、CO2排出量削減を目的として、アスクルからサプライヤーへの発注量を平準化する取り組みを開始した。

アスクル 花王 コクヨ 物流 発注量の平準化に関する実証実験 AI活用 実証実験前後の輸送について
実証実験前と実証実験後の輸送について
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