サブスク解約率過去最低&増収増益を記録したベースフード。成長の秘訣は「コミュニティ活用」「マイルプログラム刷新」にアリ!

完全栄養食「BASE FOOD」を販売するベースフードが好調だ。2025年度2月期業績は売上高が152億4100万円(前期比2.5%増)、営業損益1億3600万円の黒字(前期は9億200万円の赤字)と増収、営業赤字からのV字回復を果たした。サブスク解約率は過去最低の4.2%(各四半期における、当月解約者/前月定期購入者の3か月平均値で算出)となり、LTV(顧客生涯価値)は前期比で86.8%増えた。2025年1月に発売した新シリーズ「BASE YAKISOBA(ベースヤキソバ)」は累計販売数が100万個を突破している。好調の背景をマーケティング部の安原祐貴氏に聞いた。
サブスク会員は21万人超え。多忙で健康志向の人に人気
2016年に創業したベースフードは、1食で1日に必要な栄養素の3分の1を摂ることができる完全栄養※の「BASE PASTA(ベースパスタ)」を2017年2月に、完全栄養のパン「BASE BREAD(ベースブレッド)」を2019年3月に発売開始。2025年6月時点で、「ベースパスタ」(2025年7月中旬で販売終了)「ベースブレッド」「BASE Pancake Mix(ベースパンケーキミックス)」「BASE Cookies(ベースクッキー)」「ベースヤキソバ」の5シリーズを展開する。
※1食分(BASE BREADは2袋、BASE Cookiesは4袋、BASE YAKISOBAは2個、BASE Pancake Mixは1袋と卵Mサイズ1つ、牛乳(成分無調整)100mlを使用して調理した場合)で、栄養素等表示基準値に基づき、脂質・飽和脂肪酸・炭水化物・ナトリウム以外のすべての栄養素で1日分の基準値の1/3以上を含む。

購入者の年齢層は20~60代以降までと幅広い。男女比率は男性:35.6%、女性:56.9%と、やや女性が上回る。購入理由は「ダイエット・健康目的」(45.9%)が最も多く、「食生活の改善」(34.0%)「時短」(10.3%)と続く。継続理由は、「栄養バランス」(33%)「手軽さ」(24%)「おいしさ」(17%)があがっている。
5シリーズのうち「ベースブレッド」が圧倒的な人気で、販売比率の90.7%を占める。全10種類のうち、一番人気は「チョコレート」だ。残りは、パスタとヤキソバを合わせた「BASE FOOD DELI(ベースフード デリ)」が4.7%、クッキーとパンケーキミックスの合計が4.7%となる。
利用シーンは、「朝昼晩の食事」以外に「おやつ」での需要もあります。栄養バランスの良い手軽な食事として、あるいはダイエット中のおやつとして、日常的に食べていただいています。サブスク会員は21万人以上(2024年6月末時点)で、ライフスタイルによって選べるよう少量からの定期購入も可能です。(安原氏)
販売チャネルは「自社EC」「他社EC」「卸」の3チャネルで、卸はコンビニやドラッグストア、スーパーマーケットで販売。最もお得に購入できる「自社EC」の売上高が一番高い。次いで「卸」「他社EC」となる。サブスク会員になった経緯としては、自社ECへの直接訪問の割合が半数弱。コンビニやドラッグストアなどで一度購入して、その後にサブスク会員になるユーザーも少なくないという。
サブスク解約率が過去最低の4.2%に。背景に「3つの理由」
2025年度2月期の通期決算では、サブスク解約率が4.2%と過去最低だった。第4四半期(2024年12月~25年2月)のLTV(平均注文単価×原価利益率÷解約率)は前期比86.8%増と、いずれも好調だった。この背景には3つの要因があるという。
1つ目は、3か月継続すると通常よりも割引率が高くなる「3か月割引プラン」の提供だ。途中解約も可能だが、3か月未満で解約すると通常プランと同様の割引率になる。同プランへの加入者が想定より多く、結果として継続意欲の高い会員の割合が増えているそうだ。
2つ目は「継続的な新商品の投入」。ベースフードでは不定期で新商品を発売したり、既存商品をリニューアルしたりしているが、開発体制の強化によりスピーディな展開が可能になった。2025年度2月期の第3・第4四半期は主力の「ベースブレッド」を4種類(期間限定を含む)、新シリーズの「ベースヤキソバ」3種類を発売した。

(画像提供:ベースフード)
ヤキソバはブレッドとは喫食シーンが異なり、生活のさまざまなシーンで取り入れやすくなったのかもしれません。栄養バランスはもちろん、一般的なカップ焼きそばと遜色ないレベルのおいしさにもこだわりました。2025年1月に発売して4月下旬までにシリーズ累計で100万個を販売していて、予想以上に好調です。特に、より健康への意識が高まる40代以上の方に選ばれています。(安原氏)
3つ目は、2024年9月に実施した「マイルプログラム」のリニューアルで、これが最も解約率低下にインパクトを与えたという。以前のプログラムには4段階の会員ランクがあり、ランクごとに「新商品の割引」や「アウトレット」などの特典があったが、ためたマイル自体の活用は設定していなかった。リニューアル後は、会員ランクごとにマイルの還元率が上がる仕組みを導入したほか、ためたマイルは商品や各種ノベルティに交換できるようにした。

(画像提供:ベースフード)
解約率が低い属性を分析すると、「男性」と「子持ち世帯」でした。あくまで相対的な評価ですが、女性と比較して男性は利用目的が「食生活の改善」に寄っており、逆に女性は「ダイエット」に寄っています。ダイエットは期間が限定されやすいため、男性の解約率低下につながっているのかなと。子持ち世帯については共働きの方が多いと想定され、忙しく働く方のライフスタイルにフィットしているのかもしれません。(安原氏)
ロイヤリティ向上をめざす「コミュニティ」運用も
長期的な視野でのロイヤリティの向上や継続利用につながる施策として、2018年に開始したファンコミュニティ「BASE FOOD Labo(ベースフードラボ、以下ラボ)」の存在も欠かせない。ユーザーは「研究員」として、日々の食事内容を写真付きで投稿したり、商品開発や特典付きのキャンペーンに参加したりできる。
通常、サブスク会員になったタイミングで「ラボ」をご案内して、参加いただく流れです。参加動機になりやすい施策として、1か月集中でダイエットに取り組む「BASE FOOD CAMP(ベースフードキャンプ)」を設けています。管理栄養士やラボメンバーからアドバイスやコメントをもらいながら、「みんなで一緒にがんばろう」という趣旨の企画です。特に、女性の方が多く参加されている印象です。(安原氏)
ベースフードには「ラボ」担当のスタッフがいて、毎日のようにアンケートやキャンペーンのお知らせなどを投稿しているという。ユーザーの投稿頻度も高く、商品を使ったオリジナルレシピやダイエットの経過、新商品のレビューまでさまざまだ。投稿に対しては、SNSのようにリアクションやコメントができ、これもまた活発に動いている。
ベースフードでは、「ラボ」を通じてユーザーの「リアルな声」を聞くことを大事に考えている。時に厳しいフィードバックもあるが、そうした声が「より良い商品作り」につながっている。

たとえば、2021年6月に発売した「ベースクッキー」は、まさにユーザーの声から生まれた商品だ。「デスクワーク中に罪悪感なく食べられるおやつがほしい」というニーズを踏まえ、「糖質が控えめで栄養をバランスよく摂れる」「片手で食べやすいおやつ」として商品化された。
「ラボ」は、同じブランド・商品を共通項にして盛り上がる「推し活」のような感覚で楽しんでいただいているのかなと。心理的なつながりを持つことは、ベースフードへのエンゲージメント(ブランドロイヤリティ)につながっていて、当社の調査では、75%以上のユーザーが「ブランドに愛着を感じている」と回答しました。(安原氏)
取材に対応したベースフード マーケティング部の安原祐貴氏(画像提供:ベースフード)
東アジア展開にも注力。香港、韓国で手応え
ベースフードでは、国内のみならず海外展開にも注力している。2022年5月から香港、2023年5月から中国、2024年1月からシンガポールと台湾、2025年2月から韓国と米国(米国は5月28日で販売終了)で商品を販売開始した。
海外事業における参入検討は、市場規模や成長性、現地の食文化や健康意識、競合環境、規制、コスト構造などを総合的に分析し、当社の強みを生かせる国を選定しています。現時点では、特に東アジア市場に注力しており、なかでも香港、台湾、韓国、および中国を重点市場と位置づけています。(ベースフード グローバルビジネス担当者)

海外展開においては、「越境ECと小売店のオムニチャネルによる効率的な認知拡大」と「現地パートナーとの提携」を戦略の軸としている。現在、香港と韓国で成果が出始めているという。
香港では、日本での成功事例を踏まえ、自社EC、コンビニ、他社ECで販売しています。自社ECでは定期購入者が着実に積み上がっています。小売展開では香港市場で影響力のある「セブン‐イレブン」との連携を強化し、取扱店舗の拡大や販促プロモーションを実施。「セブン‐イレブン」の担当者からは、「継続的に安定した売上実績である」と評価をいただいています。引き続き、販売チャネルの多様化を通じて認知度向上と購入経験率の向上をめざします。
韓国では、同国最大のマーケットプレイス「coupang(クーパン)」でテスト販売を実施しており、ほぼ広告を打っていないにもかかわらず手応えを感じています。今後、香港同様にチャネルの多様化を進めていく見込みです。(グローバルビジネス担当者)
その他、中国では同国最大の越境ECプラットフォーム「Tmall Global(ティーモール グローバル)」で、シンガポールと台湾では東南アジア・台湾最大級のECサイト「Shopee(ショッピー)」で商品を販売中だ。

国内展開においては、今後もスピーディな商品開発体制を維持しつつ、「顧客の裾野を広げたい」と安原氏。
当社の製品は、多忙で健康志向が高い方に最も支持をいただいています。一方で、健康志向や忙しさにはグラデーションがあり、特に健康志向は人によって度合いが大きく異なると思います。今後は、「健康的な食事にそこそこ興味がある」といった方に手に取っていただく、あるいは手に取る頻度を上げていただくための取り組みを実施したいと考えています。(安原氏)
具体的な施策として、これまでも評価が高かった「利用シーンに即したプロモーションや商品開発」を強化したいとのこと。たとえば、朝食でより想起されやすいプロモーションとして、通勤中の人をターゲットに電車や駅ナカで広告を打つなどだ。まだ実施したことがない施策であり、小売店との相性も良いと考えているという。
「完全栄養食」の領域には、麺やご飯、スープなどラインアップが充実した日清食品の「完全メシ」や、完全食をコンセプトとしたパウダーやグミなどを展開する「COMP(コンプ)」など競合が少なくない。ベースフードが事業成長を続けるには、「おいしさ」と「飽きないラインアップ」に加え、「継続しやすい価格帯」も求められそうだ。