ECで最適な接客を実現するために必要なことは「マッチング」と「タイミング」の2つです。ここで質問。ECと店舗のマッチングで、劣っているのはどちらでしょうか?それはECがはるかに劣っています。ECでマッチングの精度をあげるために利用されるのが、「良い商品を見つける」という意味での「商品検索」です。ECの売り上げをアップさせるには、「マッチング」で店舗よりも劣っている部分を改善することが重要になるのです。

「消費者」と「商品」のマッチングは購入に至るか否かの勝負の分かれ目

消費者が良い商品と出会う場を作るために、メーカーや販社は日々新しい商品を開発し、広告にたくさんのお金を使っています。

実際に消費者と商品が接触する場は店舗かECです。買い物の「現場」であり「最前線」なのです

ここでの「消費者」と「商品」のマッチングこそが、商品開発、広告、マーチャンダイジングの流れが“結実”するかどうかの勝負の分かれ目となるのです。

店舗におけるマッチングは、商品陳列と接客がその役割を担っています。それぞれの役割を説明すると、「陳列は万人向けのマッチング」、接客は店員によって異なりますが、おおむね「パーソナライズされたマッチング」です。

ECに置き換えると、「ナビゲーション」「検索」「レコメンド」がそれにあたります。

  • ナビゲーション
    店舗でいうと陳列に近いといえます。ただECのナビゲーションはパーソナライズされるケースもあるので、同じとまでは言えません。
     
  • 検索とレコメンド
    店舗では接客によって行われています。「この商品を探しているんですが」と聞けば教えてくれますし、「お客さまにはこちらの商品もいかがでしょうか」というお薦めもしてくれます。

店舗とECのマッチング要素は「同じなのか?」というと、少なくとも現状ではECは店舗に劣ります。ただ、いろいろな要素はありますが。

この「劣っている部分」を改善することこそが、いまのECに最も必要な要素の1つなのです。

ECが店舗よりも劣っていることを克服することがマッチングのカギ

ではなぜECは店舗に「劣って」いるのでしょうか。

それは簡単。店舗はECと違って「人」が対応しているから。そこに尽きます。

ECの検索とレコメンドは店舗だと接客に該当しますが、リアルの接客は、ECにおける検索とレコメンドをはるかに上回っています。店舗は接客によって、検索とレコメンドのほか、「それだけではない商品検索機能」を持っているのです。

ここで、たとえを用いて説明してみます。

ECが店舗に「劣っている」ケース

ECサイトの検索で「水」と入力した場合、ほぼ「飲料水」を探していると考えられます。お店で「水はどこにありますか?」と聞けば、飲料水コーナーを案内してくれることでしょう。

ところがECでは、「化粧水」や飲料水に近いジュース、水産加工品が表示されるケースがあります。ほんの一例ですが、こうした「キーワードに対して適切でない商品が表示されるケース」は枚挙にいとまがありません。

また、商品名を微妙に間違えている場合でも、店舗であればほぼ正しい商品の陳列場所を教えてくれますが、ECでは「お探しの商品は0件です」と一刀両断にされるケースがたくさんありますよね。ひらがなとカタカナを違えただけでも商品が検索結果に出ないECサイトもあります。

店舗がECより「優れている」ケース

店舗ならではの高度な接客という意味のケースを考えてみます。たとえば、「今度釣りに行くので必要な道具を教えてほしい」「自転車を始めてみようと思うのでどんなモデルがいいか相談に乗ってほしい」など、目的に対して、何を買えばいいのかわからない状態とは結構ありますよね。

店舗ではこうした相談こそ「待っていました」といわんばかりに、丁寧な接客が行われますが、ECの場合はそもそもこうした相談の窓口すらほとんどありません。

お客さんが「この製品を探しているんですが」と相談した場合、たとえば後継機種が発売されていたり、他社製品が人気だった場合などに、「その製品もありますし、こうした新商品などもあります」という提案を受けるケースがある。

これは「Aを買っている人はBも買っている」という、いわゆるレコメンドのパターンとは少し異なってきます。お客さんのニーズと、店員の商品知識のマッチング。ユーザー情報と商品情報がそろったところでのマッチングであるのです。

「ECサイトにそこまで求めるのは酷だ」「理想が高すぎる」――確かにこうした声があがってきそうですし、そういう面も否めません。

実際のところ、店舗よりもECの方が「失敗した買い物」の率が高いのではないでしょうか。もちろん実物が見れないというのもその一因ですが、店員に相談できないというのも大きな要素ではないでしょう。

ECは商売なのですから、お客さんには満足度の高い買い物をしてもらいたいと運営者も考えるはずです。

マッチングロジックの積み重ねが重要、だけどそれを個別に行うのは難しい現状

「どうやってそんなマッチングを実現するのか」というと、それは「こういう場合にはこう」というマッチングロジックを積み重ねていくしかありません

これは面倒な地道な作業です。そのため、「どんな場合にもうまくいくようなロジック」を探してしまいますが、ECの流通量が拡大するにつれてロングテールの比率は上がっていくので、それは難しいでしょう。柔軟なマッチングロジックを実装できるシステムを使用する必要などが出てきます。

そうしたシステムは単純な検索やレコメンドしかできないシステムに比べ、高価格になり、導入を躊躇するケースも多くなります。

ただ、ECにおけるマッチングの向上というのは、店舗における接客の向上と本質的には同じ。正確にいえば、「接客のなかの商品検索を実現している部分と同じ」です。

たとえば先ほどの、「水」で検索すると飲料水が表示されないケース。化粧水が表示されるのは、単に機械的に商品名を検索対象にしているのが原因です。本来であれば、「水」というカテゴリを指すキーワードは、カテゴリ検索用の辞書登録などをしておき、そちらに先にヒットするようにすれば、「飲料水」から結果が表示されます。

また、カテゴリが「飲料水」ではなく「水・ジュース」というカテゴリだった場合で、かつカテゴリ内が人気順表示の場合には、飲料水ではなくてジュースが先に表示されてしまうということが起こり得ます。

この場合はカテゴリ内に「水」というサブカテゴリを作るといった対策が必要となってきます。もしくは商品にタグ情報を付けていくという方法でも実現できます。

こうしたパターンが増えていくうちに、「一般的にAというケースはBというロジックの追加でカバーできるのではないか」という、マッチングロジックの汎用化ともいえるケースが増えてきます。

私がECサイトの検索とレコメンドに注力しているのは、ECサイトの事例を増やすことで、こうした「ECサイトの接客」ともいえるパターンを蓄積し、それを提供してきたいと考えているためです。

店舗の接客でも、汎用化できないケースが多々あります。それでも「どの店舗においても通用するノウハウ」はあり、商売という長い歴史のなかで蓄積され、いまでは当たり前のように使われているものもまた多いでしょう。

ECはまだまだ歴史が浅いため、こうしたノウハウはまだ非常に少ないのが現状です。こうしたノウハウやロジックをECサイトが個別に蓄積しようとすると、大変効率が悪くなってしまいます。

ECサイトにおける「商品検索=マッチングロジック」は、まだまだ黎明期であり、「餅は餅屋」ともいえるような部分が大きいのです。

次回も引き続きマッチングと、今回触れなかったタイミングについて考えてみます。

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山崎 徳之

ZETA株式会社

山崎 徳之(やまざき・のりゆき)
株式会社ゼロスタート 代表取締役社長

青山学院大学卒業後、アスキー、So-netなどでネットワーク・サーバエンジニアを経験。オン・ザ・エッヂ(現ライブドア)のデータホテルを構築・運営の後、海外においてVoIPベンチャーを創業。2006年6月に株式会社ゼロスタートコミュニケーションズ(現株式会社ゼロスタート)を設立、代表取締役就任(現任)。ECソリューションの「ZERO ZONE」シリーズとして検索エンジンやレコメンドエンジンを開発・販売している。

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