Digital Commerce 360 2017/1/26 8:00

1-800 Flowers.com(編集部追記:ナスダック上場企業で花のネット通販などを手がける企業、インターネットリテイラー社発行「全米EC事業 トップ500社」第57位)のクリス・マッキャンCEOは、EC事業者など小売業の未来は、メッセージ機能やその他の自然言語インターフェイスの活用にかかっていると考えています。なぜそのように考えるのか、その理由を話しました。

Watson、AlexaなどAIに投資する理由

消費者が人口知能(AI)に話しかけると、商品をオーダーできたりチャットボットにメッセージを送るだけで、人が関与することなく、お客様相談室宛の問い合わせが解決できてしまう時代を想像してみてください。そんな時代はすぐにやってきます

会話型コマースの革命により、言語認識能力のあるコンピューターシステムやAIを使って消費者との自然なコミュニケーション実現するECサイトを次々と立ち上がりました。私たちは、1-800 Flowers.com(花の通販サイト)Harry & David(グルメ関連のECサイト)、Frannie May(ギフト関連のECサイト)、The Popcorn Factory(ポップコーンのECサイト)などのブランドをAI活用サイトとして立ち上げています。

会話型コマースとは、メッセージ機能や自然言語インターフェイスを活用して、人、ブランド、チャッボット間のコミュニケーションをより自然に、スムーズにするための機能を意味します。

1-800 Flowers.comは、会話型コマースの可能性を高く評価し、IBMが開発したAIを搭載したオンラインのAIコンシェルジュサービス「Gwyn(グウィン)」(編集部追記:「Gifts When You Need」(必要なときに贈り物を)の略で、IBMのワトソンを活用している)などをいち早く取り入れてきました(編集部追記:Facebookが2016年4月に開催した「F8」カンファレンスでMessenger向けボットを発表した際、デモに例をあげたのが「1-800 Flowers.com 」だった)。

会話型コマースをやるべき5つの理由。Alexa、WatsonなどのAIはECをどう変える? 「1-800 Flowers.com」のAI活用例
「1-800 Flowers.com」に搭載したAIコンシェルジュサービス「Gwyn(グウィン)

IBMの「Watson(ワトソン)」やFacebookのメッセンジャーアプリで使われているボットも活用して、全自動の取引チャネルとカスタマーサービスを提供しています。また、アマゾンの音声認識技術「Alexa(アレクサ)」を利用し、声で花のギフトを注文できるようにしました。これは小売業界で初の試みです。

次世代コマースにおいて、消費者と密接な関係を構築するために、これから出てきそうな新しいチャネルに投資すれば、進化し続ける小売の環境の中でも競争力を保つことができます

「Amazon Alexa」に関する動画(編集部が追加)

会話型コマースが重要な5つの理由

新技術のアーリーアダブターとして、企業が会話型コマースに投資すべき5つの理由をあげます。

① 会話の技術

デジタル時代になった今でも、会話によって気軽にアイデアを共有するのが、他人に意思などを表現するための一番早い方法です。実店舗のショッピング体験は、モバイルやWebのECに移っていった部分も多いです。その中で失われたものの1つに「人間味」があります。消費者は専門家と会話をし、オススメの製品を聞くことで、理解した上で商品を購入するわけです。

現在、アマゾンの「Alexa」のような会話型コマースのツールによって、会話に慣れているお客さまのショッピング体験を、より自然に体現することが可能になりました。ニーズに即したギフトを選ぶのに、いくつものタブを使って商品を探す必要がなくなります。

質の高い質問を投げかけ、すぐにオススメ製品を教えてくれるチャットボットに話しかければ買い物は済むわけです。Facebookのメッセンジャーのようなメッセージアプリも、自然言語を使った情報交換を可能にしました。家族や友達以外のブランドとも、より自然に交流できる環境になってきています。

② ユビキタス(遍在)が重要

目の肥えた消費者の要望に応えるには、企業は消費者のすべてのタッチポイントで存在感を発揮する必要があります。私たちが会話型コマースに興味を持ったのは、各プラットフォームに存在するまだアプローチできていない消費者にリーチできる機会があるからです。

以前は、モバイルやソーシャルメディアで存在感を増すことが重要でした。この2つのチャネルは、私たちの日常生活に入り込み、ブランドのビジネスを革命的に変えてしまいました。Facebookのメッセンジャーや「WhatsApp」(編集部追記:Facebook傘下のWhatsAppが提供する人気メッセージングアプリ)などの人気メッセージアプリは月間アクティブユーザー(MAU)が10億人を超えました。

また、「WhatsApp」のダウンロード数は、Facebookなどのソーシャルメディアアプリを超えています。競争力を保ち、消費者との密接な関係を構築するためには、このようなチャネルの中で存在感を高めることが必要なのです。

多様なチャネルに遍在するマーケティング手法を採用することで、ミレニアル世代(1980年代から2000年初頭までに生まれた世代)やZ世代(ミレニアル世代以降に生まれた層)といった、新しいプラットフォームの隆盛に大きく関与している世代の関心を引くことができます。

「1-800-Flowers.com」においてFacebookメッセンジャーのチャットボット経由で注文する70%以上の消費者は、新規顧客です。そして、既存のお客さまよりも年齢が若いのが特徴です。この点を見ても、なぜ私たちが会話型コマースに社運を賭けているか、また、ギフトを贈る習慣のある若い層を取り込むための重要なツールと考えているがおわかりになると思います。

③ スムーズなカスタマーエクスペリエンス

私たちが最も重要視しているのは、カスタマーエクスペリエンスです。ソーシャルメディアを通じた質の高いカスタマーサービスの提供が、消費者との関係を強固にします。

会話型コマースに対する考え方も同様で、メッセンジャー用のチャットボットも単なる1対1のマーケティング手法や取引手段と考えるのではなく、それ以上の可能性をすぐに見出しました。ですから、一歩先を進んで、メッセンジャーをカスタマーサービスチャネルとして構築したのです。

メッセンジャーチャットボットの使い方としては、これが一番効果的。チャットボットをカスタマーサポートとシームレスにつないで、メッセンジャー内で必要なサポートが受けられるようにしています。

④ ただ頑張るのではなく、スマートに働く

コンピュータが自ら考え、学習し、自分なりの答えを導き出す「コグニティブ・コンピューターシステム」は、消費者のよりシームレスな買い物に寄与すると同時に、企業のより効率的な働き方にも影響を及ぼします。

メッセンジャーのチャットボットを使ったリアルタイムなカスタマーサービスで、当社のサポート担当スタッフはより集中して、より効率的にお客さまのニーズに応えられるようになりました。技術がより洗練されれば、メッセンジャーや他のメッセージアプリでも全自動のカスタマーサービスが実装できるようになり、消費者から見れば実際の会話のようにしか感じられないようなサービスを提供できるようになるでしょう。

さらに、「Gwyn」を使って会話型コマース上の過去の会話履歴を全て蓄積・分析することで、個々の消費者のニーズを理解し、今後のやり取りをよりスムーズにすることも可能です。そうすれば、社員が日々行っているモニタリングが必要なルーティーン作業を軽減することもできるのです。

⑤ 未来は明るい

技術分野で、全ての巨大企業を巻き込んだコラボレーションがいまだかつてあったでしょうか? ビジネスの未来には、AIを搭載した会話型コマースがあることは疑いようがありません。しかしながら、現在の技術では足りない部分がありますので、それを改善していく必要があります。

今は、最も賢いAIでさえ、理解できる言語は95%に留まっています。95%でも素晴らしい数字ではありますが、残り5%が改善されないと全自動にできません。残り5%が改善されれば、AIがコマースツールを使う際の障害は一切なくなるでしょう。

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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