グローバルEC・越境ECで売り上げを伸ばす6つの重要ステップ
グローバル展開、越境ECでは国ごとに最適化したワーディング、適切なリンクの設置、受け入れられやすいカラーをECサイトに使うといった施策で、小売事業者は海外向けECでも効果的に売り上げを伸ばすことができます。
「英語を他の言語に変換するだけ」ではダメ
英語を話すことができる人でも、その75%は母国語が用いられたECサイトでなければ商品を購入しません(編集部編注:出所はCommon Sense Advisoryの報告書)。考えてみてください。理解できない商品を購入する人はいないのです。
2017年版「Web Globalization Report Card」(編集部編注:Byte Level Research社がリリースした、150社のグローバルWebサイトをランク付けしているレポート)の中で、ビジネス戦略家のジョン・ユンカー氏は企業が運営する150サイトをランク付けしています。全米を含め、世界中のサイトが対象です。
ユンカー氏が公表したランキングにおいて、小売業界で第1位に輝いたのは「Nivea.com」で、103の言語と方言に対応しています。全体ではGoogle(グーグル)、Wikipedia(ウィキペディア)、Facebook(フェイスブック)に次いで、Nivea.comは世界4位の多言語サイトです。
もちろん、他のサイトが全て「Nivea.com」のまねをする必要はありません。たとえば、Tiffany & Co.のサイトが対応しているのは21の言語。幾つの言語に対応するのが良いか、その正解は企業ごとに異なります。しかし、グローバル展開をする企業にとって、ローカライゼーションは避けては通れなくなっています。
ただ1つ問題があります。ローカライゼーションを正しく行わないと、翻訳も時間とお金を無駄にしてしまう可能性があります。「英語を他の言語に変換するだけ」というわけにはいかないのです。
アメリカでは、赤は停止や危険を表しますが、中国では幸運の証、ロシアでは共産主義、タイでは日曜日を表します。
ECサイトで採用するカラーによって各国の消費者が受ける印象は異なってきます。そう、正しい努力をすればローカライゼーションは利益を生み出してくれるのです。
ローカライゼーションを進める際に注力すべき6つのポイントは次の通りです。
① 方言への対応
ビーチサンダルは、アメリカでは「flip-flops」、オーストラリアでは「thongs」と呼ばれます。アメリカの靴屋で「thongsをください」と言ったら、近くの下着屋を紹介されるでしょう(編集部編注:アメリカでは、「thongs」はTバックを意味する)。
英語同様、他の言語にも方言があります。ですから、サイトを翻訳する際は的確に訳しましょう。どの国で話されているスペイン語を訳しますか? 方言などを踏まえて国ごとの違いに配慮した正しい翻訳を心がけてください。
下着を探している人が、ビーチサンダルのサイトに飛ばされることがないように。
② リンク先
ほとんどの小売事業者が、国ごとのドメインを使っていますが、自社サイトから外部サイトなどに移動させるリンク先の設置には気を付けましょう。
Sears.com(編集部編注:米国の百貨店)がスペイン語サイトをスタートした時、スペイン語を母国語にしている人たちにとって、便利なサイトではありませんでした。
サイトの内のリンクをクリックすると、英語のFacebookページに移動するなど、使い勝手が悪かったのです。しかも、スペイン語のFacebookがあったにも関わらず、誰もリンクを変えようとしませんでした。
Sears.comのような例は、簡単に回避することができます。以前は、コードを使って翻訳したい言語をエクセルに抽出。一連のテキストを訳した後、翻訳言語を再度エクセルに貼り付けて、サイトにアップするというプロセスでした。
近年の翻訳ソフトフェアを使えば、コピー・ペーストのプロセスを自動化し、適切な翻訳になっていることを確認できます。そして、外部リンクも国ごとのドメインで表示されるようにすることが可能なのです。
③ サイトレイアウト
言語によっては、同じことを表現するために多くの単語を必要とする場合があります。たとえば、英語はオランダ語よりも15%長く、スペイン語は30%長くなります。
小売業者のECサイトは、より良いオンライン体験やブランディングのために、効果的にレイアウトされています。エクセルを使ったコピー・ペーストを用いた昔ながらの翻訳プロセスでは単語が収まりきらず、レイアウトを変更する必要が出てくるためサイトの見た目が崩れてしまうことがあります。
このような事態を避けるためには、Webサイトでどのように表示されるのかをリアルタイムで確認しながら翻訳を進めることができるツールを、翻訳者に使ってもらいましょう。
そのようなツールは、デバイスごとの表示確認だけでなく、アラビア語のように右から左に読むような言語を訳す際にも役立ちます。
④ ECサイトの色調
色が持つ意味は、国によって異なります。アメリカでは赤は停止や危険を表しますが、中国では幸運の証、ロシアでは共産主義、タイでは日曜日を表します。
レイアウト同様、サイトやロゴの色も、世界中の消費者のことを考慮して選ばなければなりません。新しい国向けにローカライゼーションする際、色調に関しても同じように配慮が必要です。
⑤ 画像イメージ
色調と同様、画像も国によって特定の意味を持つことがあります。
サイト内画像の人物はどんないでたちですか? どのような洋服を着ていますか? アラビア語に翻訳しているとしたら、女性の頭が隠れているか確認していますか?
サイト内の画像がどんな意味を持つのか考えましょう。売り上げにつながる画像になっているでしょうか?
たとえば、John Deere社(ディア・アンド・カンパニー、編集部編注:農業機械や建設機械のメーカー)が運営するフランス向けサイト(Deere.fr)のトップページには、トラクターと一緒にF1ドライバーを掲載しています。John Deereは“カッコ良くて速い”という印象を与えているのです。
同じメッセージを伝える場合、アメリカではNASCAR(編集部編注:米国最大のモータースポーツ統括団体)のドライバーを起用した方が効果的でしょう。
⑥ カートとチェックアウト
最後はやはりクロージング部分の確認です。素晴らしい情報がECサイトに掲載されていても、消費者が最終的に必要としているのは簡単な購入方法なのです。
まず、カートやチェックアウトのプロセスが最適化されていることを確認しましょう。展開先の国の通貨で決済できるか、クレジットカードのロゴは正しいか(フランスでは、銀行カードCartes Bancairesのロゴがあれば、ビザカード利用OKという意味になります)。
住所の記載方法が異なる国では、注文フォームの住所入力欄も変更する必要があります。郵便番号が存在しない国では、郵便番号記入欄のせいで消費者が買い物をやめることもあるのです。
郵便番号が使われている国でも、都市名の前に持ってくる場合や、カナダのように英数字が混在している場合もあります。
このように、国ごとの違いに注意を払うことで、よりよい他言語サイトを作ることができ、将来的にブランド価値を高めることになります。それによって、新しい市場でのユーザーが増え、ビジネス価値がより高まっていくのです。