メルカリの2020年事業戦略まとめーーリアル店舗、物流代行、丸井との業務提携、自社ECへの送客協力など
メルカリは2月20日に開いた事業戦略発表会「Mercari Conference 2020」で、「パートナー企業との連携を通じた出品施策の拡大」「データ連携を通じた一次流通と二次流通の融合」といった新たな取り組みや今後の戦略を発表した。
パートナー企業との連携で出品施策を拡大
メルカリは、自社が行った調査から「出品意向があるのにまだ出品を経験したことがない」潜在出品顧客は3610万人存在すると推計。「不要な物をメルカリで売るという経験を、より多くの顧客に提供していくことが成長につながる」として、パートナー企業との連携を通じた3つの施策を行う。
① メルカリ初のリアル店舗「メルカリステーション」
出品経験のない潜在顧客層へのタッチポイント拡大を目的に、出品体験をワンストップで提供するメルカリ初のリアル店舗「メルカリステーション」を開設。第1号店として丸井の新宿マルイ本館に旗艦店を2020年春に出店する。
「メルカリステーション」では、メルカリの使い方を学べる「メルカリ教室」、出品商品の撮影、不明点をカスタマーサポートにライブチャットで質問できる場を設ける。また、商品を投函するだけで発送できる「メルカリポスト」も設置する。
今後、全国のショッピングモールや商業施設内への出店を予定しており、2021年夏までに全国主要10都市での展開をめざす。
② 梱包・発送を提携倉庫が行う「あとよろメルカリ便」
ユーザーがメルカリに出品した商品を提携倉庫に発送すると、商品保管、売れた後の梱包・発送を代行する「あとよろメルカリ便」の試験運用を2020年2月から始める。「商品が売れるまで家の中で場所をとって困る」「売れた後の梱包・発送が面倒」といったユーザーの課題を解決するのが目的。
「あとよろメルカリ便」はオープンロジとメルカリAPIを連携し、オープンロジの提携倉庫で商品管理から発送までを行う。利用方法や料金体系などは正式運用開始時に発表する。
③ 無人発送の投函ボックス「メルカリポスト」
アプリに表示されるQRコードをかざすと自動で発送ラベルが印刷され、ラベルを貼り付けた商品を投函するだけで発送が完了する「メルカリポスト」を展開。ヤマト運輸が集荷パートナーとなる。
2020年春、新宿マルイ本館にオープン予定の「メルカリステーション」で展開。2020年夏から全国のドコモショップをはじめ、2023年までに全国5000か所への設置を目標として掲げた。
また、「メルカリポスト」の進化版として次世代型ワンストップ端末「メルカリポストプラス」の開発・展開をパナソニックと共同で進めていくと発表。2020年春の実用化をめざしており、詳細は運用時に発表する。
連携パートナー企業
丸井が運営するマルイ実店舗「マルイウェブチャンネル」
丸井と業務提携を締結。「メルカリステーション」の展開のほか、新宿マルイ本館など数店舗で「メルペイ」を導入。今後はマルイ全店、マルイECサイト「マルイウェブチャンネル」での導入をめざす。
「STAFF START」を通じたアパレルEC
アパレルメーカーの持つコーディネート画像データとの連係、メルカリからアパレルECへの送客を2020年春から開始する。初期パートナーとして、アダストリア、パル、ベイクルーズとの連携を予定。なお、ベイクルーズ内の連携対象ブランドについては検討中とのこと。
この取り組みは、バニッシュ・スタンダードの「STAFF START」と連携。メルカリ内にコーディネートから服を探す「コーデ機能」の提供で実現する。コーディネート画像から直接アパレル企業の自社ECサイトに移動できるようにする。
アイスタイルが運営する「@cosme」
アイスタイルと包括業務提携を締結し、「@cosme」の商品データとメルカリのデータを連携。「@cosme」が保有する一次流通での化粧品購買データに加え、メルカリの持つ二次流通市場の商品別取引数や平均価格などの統計情報を、化粧品メーカーに対して可視化することをめざす。
一次流通と二次流通のデータ連係を展開
メルカリは「2013年7月のサービス開始から約6年半で累計出品数15億品を突破し、国内最大のフリマアプリとして成長する中で、二次流通市場に関する膨大なデータを蓄積した」と説明。データの中には数十億規模の商品データ、月間1500万人を超えるユーザーの属性データ、行動データなど小売りや一次流通企業単独では把握が難しかった内容も含まれる。
一次流通企業とのデータ連携に取り組む背景について、メルカリは次のように述べた。
一次流通企業が保有する商品データや顧客データとメルカリが保有する二次流通データを連携し、二次流通も含めた商品のライフサイクルやお客さまのカスタマージャーニーを可視化することで、企業のマーケティングや商品企画、新たなソリューション開発など、一次流通市場の活性化と新たな購買体験・顧客体験の創造をめざしていきます。
顧客データ連携
小売り、メーカーなどの一次流通企業が保有する顧客データ(ID)とメルカリの顧客データ(ID)を連携。両社のアカウントが保有する購入履歴などのデータ共有を可能にする。
データ連携で、一次流通企業は自社が保有するデータに加え、メルカリ上の購入や検索、閲覧などのアクションデータも把握することが可能になり、自社ECや店舗などで顧客にあわせた商品提案などができるようになる。また、メルカリとのID連携で、自社製品の購入履歴がメルカリに自動で反映されるようになり、ユーザーが商品を出品する際に説明文などの入力が不要となる。
地域データ連携
「メルカリステーション」や「メルカリポスト」において、メルカリ利用者の発送エリアや利用時間など、オフラインでのアクションデータをもとに、近隣の店舗への来店や利用を促す。
商品の発送に訪れたユーザーに対して「メルペイ」で使用できるクーポンなどを発行し、店舗での購入を促進させ、データの蓄積やマーケティングの精度向上を図る。
商品データ連携
一次流通企業が保有する商品のカタログデータをメルカリと連携し、メルカリに出品されている商品をカタログデータと紐付ける。商品ごとにメルカリ内における地域や属性別の出品、購入数、閲覧数などの動向データを、一次流通企業はダッシュボード形式で閲覧できるようになる。一次流通企業は取得したデータをマーケティングや商品企画などに活用できる。
メルカリのユーザーは、商品単位で出品物の検索や閲覧、比較などが可能になる。また、バーコード読み取りやAI画像認識などで出品したい商品がカタログデータを紐付けることで、出品時の価格サジェストや情報入力などが簡易化する。
また、メルカリ内で個別の商品ページから自社ECへの新品購入導線を設置することが可能になる。書籍やCDなど一部カテゴリーにおいてはすでに展開しており、今後は化粧品や衣料品などにも拡大する。出品物の売り切れ、中古品と比較検討して新品を購入したい場合に、シームレスに新品を購入できるという。