Digital Commerce 360 2020/3/12 9:00

Amazonと競合する小売事業者は、勢いも規模も大きく引き離されているため、まるでダビデとゴリアテ(※編注:聖書の中に登場する、巨人兵ゴリアテに少年ダビデが立ち向かうエピソード)のように、とてつもない巨人と戦っているように感じるでしょう。しかし、Amazonにも弱点があることが最新の調査でわかりました。競合他社はその弱点を突くことで売り上げを伸ばし、ロイヤルティを獲得することができるのです。

Amazonの強みと弱点とは

消費者にとって圧倒的な魅力を持つAmazonは、今や全オンライン小売事業の半分近くの流通総額を占めています。EC支援企業のConvey社がアメリカの消費者2,000人を対象に行った調査によると、回答者の47%が少なくとも3か月に1回はAmazonで買い物をすると答え、23%が買い物の半分以上をAmazonで行うと回答しました。

回答者の64%は、送料無料サービスがない場合、Amazon以外の場所での購入を検討。25%以上がAmazonの利用そのものをやめると答えました。

早い&無料配送はAmazon最大の魅力で、調査回答者の80%がAmazonで買い物をする理由として選びました。また、回答者の5人中4人が「Amazonプライム」を利用していると答えました。プライム会員は、すべての注文で1日配送を無料で利用することができ、アメリカには1億5000万人以上の会員がいます。

Amazonはフルフィルメントの優位性を維持するために、独自の配送ネットワークを構築しています。直近のホリデーシーズンのピーク時には、プライム会員向けの配送に、競合となりうる配送業者やリクエストに応えられない配送業者の利用を禁じるなど、前例のない措置を取りました。

この分野におけるAmazonの投資レベルを見れば、競争力においていかにフルフィルメントに依存しているかがわかります。調査によると、回答者の64%は送料無料サービスがない場合、Amazon以外の場所での購入を検討、25%以上がAmazonの利用そのものをやめると答えました。

その理由は、プライム会員であるにもかかわらず、調査回答者の多く、特に若い消費者がAmazonに懸念を抱いているからです。競合他社は以下のような戦略によって、消費者の矛盾する感情を利用して優位に立つことができるでしょう。

米国の消費者2,000人を対象に実施したConvey社による米・Amazon利用実態調査結果
米国の消費者2,000人を対象に実施したConvey社による米・Amazon利用実態調査結果(DigitalCommerce360「Agility and authenticity can win the day in the fight against Amazon」より編集部が作成)

Amazonに勝つフルフィルメントは「透明性」と「柔軟性」

もちろん、Amazonは引き続きフルフィルメントに注力するでしょうし、Amazonが業界基準となるでしょう。調査回答者の40%近くがAmazonの迅速な無料配送に、他の小売事業者が遅れを取らないことを期待すると答えています

Amazonのフルフィルメントの規模には敵わないかもしれませんが、どんな規模の小売事業者でも、送料やスケジュールについて同じように透明性を保つことはできます事前にオプションを伝えることが重要なのです

Convey社が毎年行っている消費者調査では、50%以上がチェックアウト時に確実な配達日時を確認したいと答えています。商品レベルで配送業社とデータを統合することで、販売事業者はこの情報を早く、頻繁に表示することが可能です。

消費者は配送情報のアップデートも期待しており、87%以上が配送遅延の場合はメールやテキストメッセージで事前に知らせてほしいと回答していることが、Convey社の消費者調査でわかりました。

しかし、最新の調査によると、配送情報のアップデートを理由にAmazonで買い物すると回答した消費者はわずか18%。そのため、配送や通知を効率的に管理できる小売事業者は有利になる可能性があります。

Convey社による米・Amazon利用実態調査結果&消費者調査結果
Convey社による米・Amazon利用実態調査結果&消費者調査結果(DigitalCommerce360「Agility and authenticity can win the day in the fight against Amazon」より編集部が作成)

地道で持続可能なビジネスで競争に勝つ

消費者は持続可能性について2つの考えを持っています。Convey社の調査によると、消費者の約27%がAmazonの環境への影響を否定的に考えており、特にミレニアル世代は、Amazonのエコロジカル・フットプリント(※編集部注:人間が自然環境にどれほど依存しているかを伝える指標)に対する不満が平均より50%高いという結果でした。

しかし、今のところ彼らの行動は変わっていません。Amazonが環境に害を与えていると信じる消費者の4分の1は、買い物の少なくとも半分を今もAmazonで購入しているからです。

小売事業者は、調達と製造において持続可能性を追求していると示すことで、消費者のこの相反する感情に訴えることができるでしょう。商品ページの詳細で素材や原材料の産地を強調することができますし、サイト内検索で持続可能性を特徴に持つ商品のフィルタリングすることも可能です。また、ソーシャルメディアのキャンペーンでは、持続可能性に関するメッセージに親和性の高いインフルエンサーへリーチできるのです。

フルフィルメントに関して言えば、「早い」よりも「無料」でエコロジカルな利点を得られることを強調できます。Amazonの買い物客の79%以上が、無料配送を最大7日間待つ用意があると回答しており、特に環境に利益をもたらすのであれば、配送が遅くなっても構わないと答えています。

Convey社による米・Amazon利用実態調査結果
Convey社による米・Amazon利用実態調査結果(DigitalCommerce360「Agility and authenticity can win the day in the fight against Amazon」より編集部が作成)

独自性と自社開発を強調する

他のブランドに対するAmazonの脅威も、消費者がAmazonに対して相反する感情を抱くもう1つの理由です。4人に1人が、Amazonは小売業界全体にマイナスの影響を与えていると言っていますが、だからと言って環境への悪影響と同様、Amazonの利用をやめるまでの理由にはなっていません。

実質的には、消費者はAmazonを単なる買い物の場所と見なしているのです。彼らはAmazonの品ぞえの充実さを高く評価しており、69%が豊富な品ぞろえを理由にAmazonを利用しています。

しかし、ユニークで、年代物の、見つけにくいアイテムを購入するためにAmazonを利用していると答えたのはわずか22%だったことが、Convey社の調査でわかりました。現在は、限定品や幅広い商品を探せることが、消費者がWebで買い物をする主な理由であり、小売事業者のマスカスタマイゼーションの向上がさらなる魅力を生み出しています。

さらにAmazonは、サードパーティーマーケットプレイスで販売されている偽造品に対する監視の強化に直面しており、2018年の調査では、オンラインマーケットプレイスで購入された商品の40%以上が偽造品であったことが連邦政府説明責任局の調査で明らかになりました。

競合他社は、本物の商品であることの認定や保証のほか、さまざまな商品の品揃えを紹介することで一歩先を行くことができるのです。

Convey社による米・Amazon利用実態調査結果
Convey社による米・Amazon利用実態調査結果(DigitalCommerce360「Agility and authenticity can win the day in the fight against Amazon」より編集部が作成)
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機敏なブランドは成長を維持できる

Amazonの便利さ、豊富な選択肢、送料無料の組み合わせは、無敵のように思えるかもしれません。しかし、配送の透明性と柔軟性に対する消費者のニーズを満たし、商品の質と品ぞろえに関してAmazonが埋められていない溝に入り込むことで、小売事業者はオンラインでの成功を勝ち取ることができるのです。

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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