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「本当に店がなくなったら、生活するのに困るんじゃないか」

このような心配をする人もいるだろう。

しかし、店がなくなって大変なことは、実は限定的だと考えられる。生活するのに困るどころか、むしろ今より便利になって、われわれ消費者には有益であることのほうが多くなるだろう。リアル店舗がなくなっても、「買う場所」がなくなるわけではない。むしろ「どこでも買える」時代になるのだ。

ネットを介して「情報につながる」

20世紀生まれの多くの人間にとって、テレビは今も重要な情報源だ。テレビのCMや情報番組を見て、「これが欲しい」と思って実際に店舗に行き、それと同じものを買うということは、これまで当たり前のようにあっただろう。

ネットが普及してこれがどうなったか。テレビを見て欲しいものがあったら、わざわざ後日、店に行くのではなく、その場で「ポチる(ECサイトで購入ボタンを押す)」ことが可能になったのだ。

ECサイトのイメージ

今後は、さらに「その次のステップ」に進むと考えられる。

具体的にいえば、テレビが起点となるのではなく、インフルエンサーのSNSや友人からの口コミ、自分の情報源が起点となり、モノを買うようになるのだ。

ネットはもう20年も前から普及してきている。これまでと何が違うんだ?

そう思う方もいるかもしれない。

確かに、1990年代に、世界中で多くの人々がインターネットにつながった。しかし、そのつながりは「パソコンを使っているとき」に限られていた。私たちがまだ「リアル」と「ネット」を区別しながら生活をしていた時代だ。

しかし、2010年代に入って、スマートフォンが普及したことは、大きな時代の転換点といえる。それは「ネットにつながる」時代から「情報につながる」時代へとシフトしたことを意味するからだ。ネットにつながった状態というのは、家の前に新しい道路ができた状態に過ぎないが、これからは、その道路を行き交う人々とのつながりが始まるのである。たとえば、SNSで友人からのこんな情報がタイムラインに流れてくる。

ネット販売限定のこのシャンプー、ものすごくおすすめだよ。

この中古車、欲しい人を探しています。

そんな情報が、目の前を行き来して、いつでもどこでも瞬時にアクセスができる。つまり、情報が起点となって直接的に消費行動が生まれることが、これからますます増えていくのだ。

実際、TwitterやInstagram上には、商品の話やそれを使ってみた感想が驚くほどあふれている。もはや店舗では消費は生み出されていないようにさえ見える。そして店舗の閉鎖が進んで全体的には店舗数が減る中で、チェーン店舗が増えて同質化が進むと、一層ネットショッピングが加速していくのである。

そんな時代になると、店舗は人々から忘れ去られてしまうかもしれない。日用品を除き、「消費者が本当に欲しいもの」は、店舗にはない可能性も高いからである。

「品揃えのよさ」に価値はない

仮に「店に欲しいものがない」となれば、消費者にとって店舗はもはや“用なし”である。

しかし、すべての店舗がある日、突然に消えることはない。時代遅れになり客足が減っていく店舗と、新たな役割を見つけて生き延びていく店舗に分かれるだろう。

先に、「時代遅れになりやすい店舗」から話をしよう。

時代遅れになりやすいのは、都市部の百貨店や地方の大型スーパー、ショッピングモール、大型専門店だと考えられる。こうした大型商業施設は、20世紀型経済の発展の象徴ともいえるが、その役目をもう終えつつある。

週末に百貨店やショッピングモールに出かけているけれど、駐車場に車を停めるのにも時間がかかるし、ランチどきはレストランの行列に並ばないといけない。潰れるなんて想像できないが……。

確かにその通りかもしれない。しかし、にぎわっているのは一部店舗だけで、全体としては苦戦を強いられており、運営企業は経営計画の大きな見直しを迫られているのだ。

百貨店大手の三越伊勢丹ホールディングスは、2017年に三越千葉店、三越多摩センター店、18年3月に伊勢丹松戸店、そして19年9月に伊勢丹の相模原店と府中店の営業を終了。さらに20年3月には新潟三越を閉店することとなった。

郊外型のショッピング施設に顧客を奪われたことがその原因と言われているが、実は郊外型のショッピングモールも、消費者からすれば時代遅れなのだ。最近ではチェーン店ばかりで似たモールも多いため、消費者から見ると魅力が薄くなっており、テナントがなかなか埋まらないショッピングモールも数知れないという状況なのだ。週末こそ家族連れでにぎわってはいるが、平日昼間は「フロアにいる客数より店員の数のほうが多い」という光景に出くわすこともあるだろう。

ショッピングモールの閉店イメージ

これまで大型商業施設が消費者に支持されてきた理由は、「品揃えのよさ」にほかならない。「そこに行けば、探しているものが必ずある」という安心感は、消費者にとって大きなメリットだった。
しかし、今はそれがメリットになっていない。わざわざ店舗に行かなくても、Amazonや楽天などのECサイトで、あらかたのものは入手できるようになったからだ。

消費者にとって面倒なことが、「行くこと」だけなら、まだ話は簡単だったかもしれない。商品ラインナップがいくら豊富でも、そしてそれがたとえECサイトであっても、消費者が面倒だと感じていることがある。それは、「商品を選ぶ」ということだ。たくさんの中から一つの商品を選ぶことも、実は面倒くさい作業の連続なのである。

価格を比べ、機能を比べて、店員に意見を求めることもある。その一連の流れは、時間もかかるし、頭も使う。モノによっては数日間、悩みっぱなしということもあるかもしれない。

「一カ所に多くの商品が集まっている」ことは、現代の忙しい消費者にとって魅力的ではなくなっているのだ。大型商業施設の苦境は、人口減少という問題も大きいが、「たくさんの中から選ぶのが面倒になってきた」という消費者心理の変化にも要因があるだろう。

この記事は『2025年、人は「買い物」をしなくなる 次の10年を変えるデジタルシェルフの衝撃』(望月智之 著/クロスメディア・パブリッシング 刊)の一部を特別に公開しているものです。

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デジタル先進国である米国、中国を定期的に訪れ、最前線の情報を収集している筆者が、近い未来の消費行動や求められるECのあり方を予測する。

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望月 智之

株式会社いつも.

1977年生まれ。株式会社いつも.取締役副社長。

自らデジタル先進国である米国・中国を定期的に訪れ、最前線の情報を収集。デジタル消費トレンドの第一人者として、消費財・ファッション・食品・化粧品のライフスタイル領域を中心に、デジタルシフトやEコマース戦略などのコンサルティングを手掛ける。

ニッポン放送でナビゲーターをつとめる「望月智之 イノベーターズ・クロス」他、「J-WAVE」「東洋経済オンライン」等メディアへの出演・寄稿やセミナー登壇など多数。

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