藤田遥 2021/3/31 8:00

エアークローゼットが実施した「airCloset Mall 1周年トークセッション」(3月18日)で、天沼聰代表取締役社長兼CEOが「airCloset Mall(エアクロモール)」の役割や「購入前に試せるニーズ」について分析。また、寝具メーカー西川の西川八一行代表取締役社長をゲストに迎え、コロナ禍における消費、両社の展望について語った。そのトークセッションをお伝えする。

ライフスタイルに適した商品との出会いを提供

「エアクロモール」は、マットレスや美顔器など購入ハードルが高い商品を月額料金でレンタルし、ユーザーが納得するまで継続利用できるサービス。使用して気に入った商品は購入できる。

「商品の返却期限なし、いつでも購入・返品可能」「オンラインで簡単に注文、コンビニで返却できる」「メーカー公式の体験サービス、メンテナンスと商品補償」という3つの特徴がある。

エアークローゼット airClosetMall エアクロモール 西川 対談 エアクロモールの特徴
「airCloset Mall(エアクロモール)」の特徴

「返却期限なし」「簡単注文・返却」はエアークローゼットの月額制ファッションレンタルサービス「airCloset(エアークローゼット)」と共通するが、「エアクロモール」は「メーカー公式」という異なる点がある。天沼社長は「メーカー公式であることで、メンテナンス面も含めてユーザーに安心した体験を提供できる」と考える。

「エアクロモール」のユーザーは約7割が女性で、平均年齢は30代後半~40代前半。人気商品の1位は「寝具・マットレス」、「美顔器」「脱毛器」「一眼レフカメラ」と続く。「使用することで価値が伝わる商品が人気」という。

エアークローゼット airClosetMall エアクロモール 西川 対談 エアクロモールの人気商品ランキング
「エアクロモール」の人気商品ランキング

コロナ禍で進む「お試し消費」

天沼社長と西川社長の対談では、コロナ禍で加速している「お試し消費」を中心にディスカッション。「エアクロモール」連携でメーカーが得るメリットについても語った。

選択肢が広がるのは必然だった

「お試し消費」が進む状況について、天沼社長は「選択肢が広がるのは必然だった」と説明。従来までの消費行動は「必ず来店して自分で購入する商品を探して決める」というものだった。しかし、「Eコマースの登場などにより、新しい選択肢が増えるのではないか」と天沼社長は予想する。

コロナ禍により、家での体験を見直す機会が増え、マットレスなどもどうするか検討するようになる。そのとき、「家で試して買う」という体験は納得感が増すため、どんどん広がっていき、「お試し消費」が新しい選択肢になるのは必然ではないだろうか。(天沼社長)

体験することでブランドに安心感を持ってもらえる

創業455年目となる西川は、寝具の販売だけでなく、40年ほど前から日本睡眠科学研究所をスタート。「良い睡眠をとる環境はどのようなものか」など「睡眠科学」の研究を行い、寝具においても科学的・物理的面からアプローチしているという。

研究成果を反映した商品を「エアクロモール」を通じてユーザーに体験してもらうことで、西川社長は「『良い物は良い』と理解してもらう良い機会を得た。商品を体験してもらうことで、ブランドに対する安心感を持ってもらえる」と語る。

「エアクロモール」での体験をきっかけに、店舗での販売につながるケースも出ている。店舗ではマットレスだけでも幅広いバリエーションがある。さらに枕など寝具全般を含め、睡眠環境作りから提案でき、長期顧客につながったという。

ブランド価値の向上と複合的に商品を購入してもらえる、最終的に購入単価が上がることにつながり、生涯購入額が上がるという結果が出ている。(西川社長)

一般的に店舗とレンタルはトレードオフの関係にあると言われているが、西川の「エアー」シリーズは順調に売り上げを伸ばしているという。西川社長は「体験の感想が口コミとして広がり、そこから安心を得て商品の購入につながる流れができているのではないか」と分析する。

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「エアクロモール」出レンタルできる西川の商品(画像は「エアクロモール」サイトからキャプチャ)

メーカーにとって「新しい販売チャネル」になる

エアークローゼットの原点には、「多くの情報や物が溢れるなか、どうしたら人々が限られた時間の中で自分のライフスタイルに適した物、本当に気に入る物に出会えるか」という考えがある。

原点を踏まえ、ユーザー、メーカー、エアークローゼット全員が良い関係を構築できるサービスを考えるなかで「エアクロモール」は生まれた。天沼社長は「メーカーにとって、『エアクロモール』はシンプルで新しい販売チャネルだと捉えてもらいたい」と言う。

「エアクロモール」は「商品のレンタル」という新たなチャネルとして、既に商品やブランドを知っている顕在層(顧客)、テレビや雑誌、SNSなどでメーカーの商品を知る潜在層それぞれに対し、販売促進が行えるという。

顕在層に対しては、「知っている商品を購入する以外の方法=レンタルがある」という情報の提供につながる。潜在層に対しては、これまで認知できていなかった層への商品やブランドのアプローチが可能だ。(天沼社長)

エアークローゼット airClosetMall エアクロモール 西川 対談 エアークローゼットの代表取締役社長 兼 CEO天沼 聰氏
エアークローゼットの代表取締役社長兼CEO 天沼聰氏
エアークローゼット airClosetMall エアクロモール 西川 対談 エアクロモールの活用法
顕在層(顧客)へは「お試し消費向け」、潜在層へは「お任せ消費向け」として「エアクロモール」を活用できるという

「体験してから買う」という新しい判断基準を創造

従来の購入方法はCMや口コミを見る、店頭で見て購入するといったものだ。しかし、CMでは商品の良い面が取りあげられ、口コミでは「良い」と思う判断基準が人によって異なるため、失敗リスクがある。また、店頭で見てから購入する場合も、商品を実際に見て店頭で試すことはできるが、自宅などで実際に使うと「予想と違った」というギャップが発生する可能性がある。

「エアクロモール」は、実際に商品の使い心地や機能を体験してから購入することで、実体験に基づいた購入判断が可能になるという。

消費行動が多岐に渡るなか、所有経験をしてから商品を購入するという新しい選択肢を提供したい。購入のきっかけ作りに貢献し、メーカーのファンになるという体験を「エアクロモール」を通じて提供したい。(天沼社長)

「継続して利用することで価値を感じられる商品は、店頭だけの訴求では本質的な価値がわかりにくい」と天沼社長。そのため、「エアクロモール」のキーポイントは、マットレスや美顔器など、「店頭では見るが、なかなか試せない商品がラインナップにあること」だ。

「エアクロモール」は「体験を届けるプラットフォーマー」

「エアクロモール」はサービス開始以降、四半期ベースで前年同期比50%増の売り上げ成長を続けているという。達成要因について、天沼社長は「『エアクロモール』はあくまでも体験を届けるプラットフォーマーに過ぎない。価値ある商品を提供しているメーカーのおかげだ」と言う。

毎月追加している商品は全て「メーカー公式の商品」として提供している。「体験したユーザーがメーカーのファンになってもらうことを、一番の価値として提供している」と強調する。

商品体験で上位商品の購入につながるケースも

エアークローゼットは「エアクロモール」会員にアンケートを実施。調査の結果、96%が「買う前に試すECは初めてだった」と回答し、77%が「まずはレンタルして使ってみたかった」と回答した。

良かった点については、「試してみないと効果がわからない商品が試せること」が1位で、2位は「メーカー公認なので安心できること」だった。この結果を受け、天沼社長は「メーカーは商品を使用することで『ファンになること』を意識するが、ユーザーも長い付き合いを意識しているのだと感じた」と分析する。

エアークローゼット airClosetMall エアクロモール 西川 対談 エアクロモールの良かった点
「エアクロモール」の良かった点ランキング

「購入せず、試せて良かった点」についてのコメントでは、「試した上で価格帯が上の別のモデルを購入した」「管理面も含めて多面的に検討できる」といった意見があったという。

エアークローゼット airClosetMall エアクロモール 西川 対談 エアクロモールの良かった点
「エアクロモール」で使用し「商品を購入して良かった」意見と、「購入せず、試せて良かった」意見

こうしたコメントは「エアクロモール」のサービスに生かすとともに、メーカーに対するフィードバックとして、商品提案にもつなげられるという。「試して納得してもらう、納得したからこそ長くメーカーのファンになる場を提供していきたい」(天沼社長)。

サービスを横断した取り組みやファン同士の交流を検討したい

今後の展望について、西川社長は「『エアクロモール』と連携している各ブランドのファン同士が交流していくことが大事」と言う。また、サービスを横断して、マットレスのように長期的に体験する商品と、短期的にレンタルで切り替えていく商品を連結していくことで、「非常に面白い取り組みになるのではないか」と考えている。

エアークローゼット airClosetMall エアクロモール 西川 対談
エアークローゼットの代表取締役社長 兼 CEO天沼 聰氏(左)と西川の代表取締役社長 西川八一行氏(右)

たとえば、現在弊社が取り組んでいるIoT寝具でユーザーの体調や気分を読み取り、それにマッチする洋服やアイテムを提案する。そうしたことができれば、新しいワクワクする感動をユーザーに提供できるのはもちろん、ユーザーの強い味方になってくれるのではないか。(西川社長)

天沼社長は「メーカーと一緒に公認で、という点に一番こだわりを持っている」とし、今後商品数を増やしていくと述べる。また、それ以上に「現在連携しているメーカーの商品体験や魅力の伝え方を改善し、よりファン作りを強化したい」と語る。

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