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春は始まりの季節です。小売事業者はビジネスにおける重要な部分を中心に、さまざまなポイントを見直す必要があります。『Digital Commerce 360』のシニアコンシューマーインサイトアナリストであるローレン・フリードマン氏が、小売事業上位50社がカスタマーエクスペリエンス(CX)向上のために、どのようなポイントに着目しているのかを調べました。

「2021年中のCX向上」は9割以上の企業が目標に

2020年は、多くの企業のKPIが好調でした。しかし、『Digital Commerce 360』が毎年実施している「パフォーマンスとコンバージョン」の調査結果によると、2021年も同じ数字を達成し、それを上回ることは難しいかもしれません。

ECサイトの平均コンバージョン率は、依然として2~3%の範囲で推移しています。カスタマーエクスペリエンスを継続的にモニタリングすることが大切です。現在、自社のカスタマーエクスペリエンスを8~10点と評価している小売企業は37%で、92%の企業が2021年中に高レベルに到達したいという高い目標を掲げています。それらの企業はゴール達成のために、やるべきことがたくさんあることを理解しています。

「最適なCXを10点とした場合、現在の点数と2021年の目標点」に対する小売事業者103社の回答
「最適なCXを10点とした場合、現在の点数と2021年の目標点」に対する小売事業者103社の回答(画像:『Digital Commerce 360』の調査「パフォーマンスとコンバージョン 2021年」より編集部が作成)

企業のCX、デジマへの投資額が増える

これらの小売企業は、2021年のカスタマーエクスペリエンスへの投資額が2020年に比べて増加すると予測しています。他に投資額が大幅に増える分野は、76%が投資増を見込んだデジタルマーケティングです。

「2020年と比較し、2021年は各分野でどの程度の投資を行うか?」に対する小売事業者103社の回答
「2020年と比較し、2021年は各分野でどの程度の投資を行うか?」に対する小売事業者103社の回答(画像:『Digital Commerce 360』の調査「パフォーマンスとコンバージョン 2021年」より編集部が作成)

CVRの最適化で重要な役割を果たすCX

小売企業がEC分野に投資していることは非常に喜ばしいことですが、その中でもカスタマーエクスペリエンスは投資の観点で最も重要だと言われています。小売企業は、コンバージョン率を向上させるためには、優れたカスタマーエクスペリエンスが重要であることを強く認識しています。実際、64%の小売企業がコンバージョン率の最適化においてカスタマーエクスペリエンスが重要な役割を果たしていると考えています

「2021年、コンバージョンを最適化するためには、どの投資がどの程度重要になると思うか?」に対する小売事業者103社の回答
「2021年、コンバージョンを最適化するためには、どの投資がどの程度重要になると思うか?」に対する小売事業者103社の回答(画像:『Digital Commerce 360』の調査「パフォーマンスとコンバージョン 2021年」より編集部が作成)

CVR向上に重要なこと1位は「主要ページのアップグレード」

今回の調査で、小売事業者がコンバージョン率を向上させるためには何が重要と考えているのかが明らかになりました。回答者の59%が「主要なページのアップグレード」を第1位にあげており、56%の「Webデザイン」と僅差であることがわかりました。

効率向上に関しては「サイト内検索」が50%、「チェックアウトにおけるステップ数の削減」が43%となっています。

コンテンツ面では、「より詳しい商品情報とサイズガイド」が47%の事業者にとって非常に重要であり、43%が「より洗練された商品画像が重要」であると考えていることがわかりました。

これらの点について、小売事業者がどのようにカスタマーエクスペリエンス最適化を実践しているか、ネット上で検証してみました。

始まりの季節である春、すべての小売事業者に自社の主要ページを含む、さまざまなポイントを見直すことをおススメします。今回の調査では、主要なポイントを見直すとともに、小売事業トップ50社がどんな取り組みが行っているのかを確認してみました。

「オンラインでのCVR向上のために、各取り組みがどの程度重要だったか?」に対する小売事業者103社の回答(画像:『Digital Commerce 360』の調査「パフォーマンスとコンバージョン 2021年」より編集部が作成)

私は、「自信を持って買い物をする」という考え方が大好きです。家庭用電化製品などを販売する「Newegg」の顧客や見込み客は、たくさんのカテゴリーの中から、品揃えの規模やブランド数、信頼できるレビュー、配送量などを容易に理解できるサイト上の表現手法に喜んでいることでしょう。このようにサイト上で情報を適切に伝えることで、注目を集めることができます。

サスティナビリティへの取り組みを進める「American Eagle」

市場測定会社のNeilsenによると、米国のサステナビリティ市場は、2021年までに1,500億ドルに達すると予測されています。この問題に真剣に取り組む企業が増えていることに、感心します。

カジュアル系ファッションブランドの「American Eagle Outfitters」は、持続可能な方法で生産されたコットンを使用していることを強調し、さらに一歩進んで、「AE for Surfrider」のTシャツを販売するごとに、1ドルを「Surfrider Foundation」(「日本の海岸環境の保護」を目的とした環境保護活動を行なっている国際環境NGO、市民組織)に寄付しています。

「American Eagle Outfitters」の「AE for Surfrider」紹介ページ
「American Eagle Outfitters」の「AE for Surfrider」紹介ページ(画像:『Digital Commerce 360』「The Shopper Speaks: Who is paying attention to the user experience?」よりキャプチャ)

限定キャンペーンやロイヤルティプログラムがファンを動かす

消費者は常にアンテナを張って、割引キャンペーンを探しています。スポーツアパレルの「Fanatics」は、割引重視のファン層をターゲットにしています。サイトで採用しているバナーデザインは、巷を賑わしているスポーツくじの広告を彷彿とさせます。

1,137人のEC利用者を対象とした「ホリデーシーズン後の調査」では、36%が魅力的なプロモーションを理由にホリデーシーズン中に購入店舗を選んでおり、20%が店舗限定商品に惹かれています。

「Fanatics」が採用しているバナーデザイン
「Fanatics」が採用しているバナーデザイン(画像:『Digital Commerce 360』「The Shopper Speaks: Who is paying attention to the user experience?」よりキャプチャ)

コンバージョン促進には洗練された画像が重要

103社の小売事業者を対象に実施した「パフォーマンスとコンバージョン 2021年」の調査では、43%の小売事業者が、より洗練された画像がコンバージョンを促進すると考えていました。ノートパソコンなどのHewlett Packard(HP)はモニターの美しく魅力的な要素を、大きな吹き出しデザインで強調しています。

また、「魅力的なデザイン」という見出しとそれに続く説明文が、美しい画像を引き立てています。ルック&フィール(※「見ため・感じ」の意味。コンピューターやOSなどのデザインと操作感の総称)がうまく機能しており、ありふれたカテゴリーでありながら、カスタマーエクスペリエンスを向上させています。

モニターの美しく魅力的な要素を、大きな吹き出しデザインで強調している「HP」
モニターの美しく魅力的な要素を、大きな吹き出しデザインで強調している「HP」(画像:『Digital Commerce 360』「The Shopper Speaks: Who is paying attention to the user experience?」よりキャプチャ)

ワンストップの商品ページ

商品ページには、必要な情報をすべて盛り込むと同時に、ブランドと商品の両方を紹介することで、消費者の意思決定を助けることができます。家具や雑貨の「Crate&Barrel」は、美しい画像やビデオでブランドを紹介したり、商品を使用している様子を見せたりすることで、カスタマーエクスペリエンスを高めています。

さらに、配送と車中受け取りの両方のオプションと、キックバックキャンペーン情報をまとめて紹介しています。当社の調査によると、このような動画の35%が、コンバージョンを促進する上で非常に重要な役割を果たしています。

美しい画像やビデオでブランドを紹介している「Crate&Barrel」
美しい画像やビデオでブランドを紹介している「Crate&Barrel」(画像:『Digital Commerce 360』「The Shopper Speaks: Who is paying attention to the user experience?」よりキャプチャ)

「プロジェクトツール」のようなツールは、消費者が「Build.com」上でプロジェクトを組むのに役立ちます。非常に便利な機能で、複数の部屋を管理することができます。消費者はサイトを見てアイデアを探し、プロジェクトやカートに入れられます。このツールを使えば、選択した商品を忘れることもなく、買い物を予算内に収めることも簡単です。

「Build.com」で利用できるプロジェクトツール
「Build.com」で利用できるプロジェクトツール(画像:『Digital Commerce 360』「The Shopper Speaks: Who is paying attention to the user experience?」よりキャプチャ)

「プロファイラー」(自己診断ツール)も重要な役割を果たしています。「Stitch Fix」のようなサブスクリプションモデルでは、買い物体験をカスタマイズしたり、商品選択を容易にするために、以下のようなクイズを導入しています。

クイズ内容は多岐にわたり、現在のスタイリング、買い物をする店、性別、予算、体型の悩み、「Stitch Fix」に求めるものなど、さまざまな質問を投げかけます。クイズを進めていくと、アルゴリズムによっていくつかのスタイルが表示され、消費者は次にどんな商品が届くのかを予想することができます。

「Stitch Fix」が導入しているプロファイラー
「Stitch Fix」が導入しているプロファイラー(画像:『Digital Commerce 360』「The Shopper Speaks: Who is paying attention to the user experience?」よりキャプチャ)

体験をカスタマイズする

インフルエンサーの世界ではパーソナリティが重要な役割を果たすため、小売事業者はインフルエンサーと提携し、自社のストーリーを新鮮な方法で伝えています。「J.Crew」は、カタログの世界で以前からこのアプローチを採用していますが、オンラインの「New Stories」では、4人のインフルエンサーを紹介しています。

それぞれのコーナーで、インフルエンサーが「春に着たい服」など特定のルックに身を包み、「J.Crew」の春のコレクションを紹介しています。多様な人物が登場することで、消費者は同じ服を着た自分を想像することができ、「J.Crew」はブランド戦略を強化することが可能です。

インフルエンサーを起用した「J.Crew」の商品コーナー
インフルエンサーを起用した「J.Crew」の商品コーナー(画像:『Digital Commerce 360』「The Shopper Speaks: Who is paying attention to the user experience?」よりキャプチャ)

アウトドア用品の「Bass Pro」のようなブランドにとって、体験を感じられる機会が、アウトドア愛好家の心に響くことは間違いありません。このようなマーケティングツールは、消費者を刺激し、同じようなアクティビティをサポートするために必要な商品が売れるはずです。今回の調査では、EC利用者の35%が動画を重要視していましたが、「Bass Pro」は「Bass Pro TV」という動画サービスを取り入れて、さらにレベルアップしています。

「Bass Pro TV」を取り入れているアウトドア用品の「Bass Pro」
「Bass Pro TV」を取り入れているアウトドア用品の「Bass Pro」(画像:『Digital Commerce 360』「The Shopper Speaks: Who is paying attention to the user experience?」よりキャプチャ)

スピードの重要性

検索機能は年々高度化していますが、消費者を適切な商品に導くために、依然として重要な機能です。商品情報だけでなく、指定した店舗での在庫の有無も確認できるようになりました。

在庫のある商品を共有したり、在庫のない商品の検索結果を制限したりすることで、より効率的なショッピングを実現しています。このように、消費者の立場に立った編集を行うことが可能です。

住宅リフォーム・建築資材の「The Home Depot」の検索画面
住宅リフォーム・建築資材の「The Home Depot」の検索画面(画像:『Digital Commerce 360』「The Shopper Speaks: Who is paying attention to the user experience?」よりキャプチャ)

また、家具や家庭用品を販売する「Wayfair」は、ビジュアルイメージを使って検索効果を高めています。これにより、消費者は検索条件をすばやく確認することができ、より簡単に、より楽しく商品を探すことができます。また、2日以内の発送が可能なので、急いでいる人も安心して利用できます。

ビジュアルイメージを使って検索効果を高めている「Wayfair」
ビジュアルイメージを使って検索効果を高めている「Wayfair」(画像:『Digital Commerce 360』「The Shopper Speaks: Who is paying attention to the user experience?」よりキャプチャ)

ワンストップショッピングカートは、消費者が商品ページや配送情報のページに戻ることなく、同じページ内で配送の選択肢、料金、手数料を確認できるため、大変便利です。大手ディスカウントチェーンの「Target」のように、「チェックアウトまでのステップ数が少ない方がコンバージョンの可能性が高まる」と43%が回答していることから、チェックアウト方法もコンバージョンに起因すると考えられます。

チェックアウトまでのステップ数が少ない「Target」
チェックアウトまでのステップ数が少ない「Target」(画像:『Digital Commerce 360』「The Shopper Speaks: Who is paying attention to the user experience?」よりキャプチャ)

保証を活用してリスクのない配送を実現

『Digital Commerce 360』と調査会社の「Bizrate Insights」が1,047人のEC利用者を対象に行った「コンバージョン 2021年」調査によると、対象者の63%が「返品送料無料」がオンラインでの注文につながる可能性が最も高いと報告しています。

これは、68%の「迅速な配送」に次いで高い数値で、靴を中心としたアパレルチェーンの「Footlocker」が行っている、「FIT Guarantee」(※購入商品のサイズが合わなかった場合、無料で返品/交換に応じるサービス)が消費者にとって魅力的であることが理解できます。

靴のサイズ調整は常に難しいものですが、消費者にとってリスクのない方法を導入し、サイト上で大胆に紹介することで、サイズに関する懸念を払拭しているのです。

購入商品のサイズが合わなかった場合、無料で返品/交換に応じるサービス「FIT Guarantee」を導入している「Footlocker」
購入商品のサイズが合わなかった場合、無料で返品/交換に応じるサービス「FIT Guarantee」を導入している「Footlocker」(画像:『Digital Commerce 360』「The Shopper Speaks: Who is paying attention to the user experience?」よりキャプチャ)

オムニチャネル機能の推進

オンラインショッピングでは、在庫状況の確認から、店舗でのピックアップや車中受け取りまで、オムニチャネルの取り組みが導入されています。『Digital Commerce 360』とBizrate Insights が1,052人のEC利用者を対象に行った「オムニチャネル 2021年」調査では、58%の回答者が近くの店舗での在庫状況をオンラインで確認し、43%が店舗での受け取りを利用。35%がドライブスルーや車中受け取りを利用していることがわかりました。

ペット用品を販売する「PetSmart」は、オムニチャネルへの取り組みを強調している事例です。1時間以内の無料受け取りサービスを提供し、オムニチャネルに注力していることを伝えています。

オムニチャネルへの取り組みを強調している「PetSmart」
オムニチャネルへの取り組みを強調している「PetSmart」(画像:『Digital Commerce 360』「The Shopper Speaks: Who is paying attention to the user experience?」よりキャプチャ)

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これからもずっと、カスタマーエクスペリエンスに注意を払う必要があるでしょう。小売企業は毎年改善案を作成し、1年を通して影響を計測し、結果に基づいて微調整を行う必要があります。

創造性と効率性を組み合わせることで最適化したショッピング体験は、コンバージョン率の向上をもたらし、消費者に受け入れられることでしょう。

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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