商品価格はどう決めたら良い? 「カスタマーバリュー向上」「3段階価格」などポイントを解説【価格検討・設定フェーズ】
ECサイトで販売する商品の価格設定で重要となる「カスタマーバリューの上げ方」「新商品価格の設定方法」など、商品価格を決めるポイントを解説します。
- カスタマーバリューを上げる方法
- 丁寧な商品説明
- 顔が見える
- 利用シーンを容易に想像できる商品写真
- 付帯機能の充実
- 新商品価格設定
- スキミングプライシング
- ペネトレーションプライシング
- 価格設定の上限と下限
- 価格帯
- 値入ミックス
カスタマーバリューを上げる方法
丁寧な商品説明を掲載
自社製造の商品であれば、原材料へのこだわり、製造工程、製造している人の写真やコメントなどを掲載し、「これでもか」と言うくらい詳しく説明します。同業他社の同じような商品と比べてどんなメリットがあるのか、差別化ポイントをお客さまに理解してもらいましょう。
注意するポイントは、ただの自己満足のこだわりではなく「お客さまにとってどんなメリットがあるのか」に軸を置いて説明することです。
運営者(店長)の顔が見える
ECサイトは、購入までの手続きが機械的で人気を感じにくい傾向があります。そこで、店長挨拶では文章だけではなく顔写真を載せると良いでしょう。
挨拶文も堅苦しい感じではなく、商品の開発秘話や商品に対する思いなどストーリー性を持たせます。お客さまに「この店長から買いたい」と思ってもらえるような、読んでいて面白いコンテンツをめざしましょう。
店長の顔写真だけではなく、商品開発担当者の写真やコメントも載せるとさらに魅力がアップします。
利用シーンを容易に想像できる商品写真
商品単体の写真を掲載するのではなく、実際に商品を使用している写真や使い方の動画などを載せましょう。実際に商品に触れることができないECだからこそ、サイズ感や使用感などを視覚に訴えることが大切です。
写真は「多いかな」と感じるくらいでちょうど良いです。衣料品のECサイトを見ると、スタッフが商品を試着した写真、購入者が実際に着ている写真が多数掲載されています。
付帯機能を充実させる
複数の決済方法を導入する、配送日時の指定、返品や返金・交換保証制度を拡充するなど、初めてのお客さまでも安心して買い物できる機能を充実させましょう。
新商品価格設定
ここからは、新商品の価格設定についてお話します。ここでいう新商品とは「現在、市場に存在しない商品」のことで、自社で新たに取り扱いを始める既存商品のことではありません。
市場になかった商品だと、お客さまは商品の価値やカスタマーバリューの基準を持っておらず、一般的な商品に比べて価格設定は難しいでしょう。
そのため、より戦略を明確にした上で価格設定は慎重に検討しましょう。新商品の価格設定には大きくわけて2つあるので、それぞれの特徴やターゲット層について説明します。
スキミングプライシング
スキミング(skimming)とは、「上澄みをすくい取ること」という意味です。
ターゲット
富裕層や新しい価値に対して敏感、新しいものが好きな人。一般大衆向けではなくブランドに価値を感じる人や、「新しい価値=今までにない機能性やデザイン」などに共感し、「いち早く手に入れて試してみたい」という人がターゲットです。
価格
ブランドイメージや開発費、こだわりの材料を使うことで、必然的に高くなり高価格帯になります。
商品の特徴
高級素材を使用する、開発の難易度が高い、専門的で圧倒的な機能性や性能を持っているなどの特徴があります。
効果
利益をいち早く確保し、商品開発への投資を早期に回収できるというメリットがあります。一方、最初は富裕層、流行や価値に対して敏感な人に支持されますが、ある程度商品が行きわたると売れにくくなるため、市場に商品が広まりにくいというデメリットがあります。また、競合が参入しやすいため低価格化していきます。
パソコンのパーツなども、発売時点で史上最高の性能であることを打ち出すため、YouTubeのレビュアーや高性能な商品を欲しい人がこぞって購入します。しかし、更に高性能な商品が比較的すぐに出てくるため価格が下がっていき、一般大衆も手に入れることが可能になります。
高級ブランドの場合、あえて規模を拡大せずに希少性を維持することで、価格が下がるどころか上昇し続ける場合もあります。特に高級腕時計の限定モデルなどは、どれだけ高価でも手に入れたい人も多く、発売時点の10倍以上の高値で取引される場合もあります。
ペネトレーションプライシング
ペネトレーション(penetration)とは、「浸透すること」という意味です。
ターゲット
一気に市場シェアを拡大することが目的のため、ターゲットが広くなり一般大衆が対象です。
価格
競合企業よりどれだけ低価格で商品を提供できるかが重要になるため、低価格帯となります。
商品の特徴
高級感はなく機能性も中程度以下ですが、低価格なので試しに使う分には充分な商品であることが多いです。
効果
一気に市場を席巻し、市場規模を拡大することで開発費などの投資を回収できるメリットがあります。一方で販売当初は赤字になりやすいというデメリットも。
スキミングプライシングとペネトレーションプライシングを同時に扱う場合もあります。たとえば、同じブランドのパソコンでも、普段使いするには充分な性能で価格を抑えた入門モデルから、3Dなど専門的かつ高性能なパーツを搭載していないとできない用途向きのハイグレードモデルまでを一気に新発売する場合です。
ペネトレーションプライシングの商品を試しに使ってみたら良かったので、次はスキミングプライスの商品を購入してみようというお客さまも多いでしょう。
価格設定の上限と下限
価格は製造コストや仕入れコストとカスタマーバリューの間で設定しますが、製造コストや仕入れコスト以下では、商品が売れるほど赤字幅が拡大してしまいます。
前述の通り、カスタマーバリューを上げる施策によって価格設定の上限を上げることができ、利益も最大化することができます。
価格帯
「見せる価格」「販売したい価格」「下限価格」の3種類、松竹梅の価格帯を用意することで、意図的に「販売したい価格帯」の商品が売れるようにすることができます。
人間には極端な選択を避けるという心理があり、一番高いもの、一番安いものは無意識に避ける傾向があります。その心理から、3つの価格帯を用意して中間価格を売れるようするという仕掛けです。
たとえば、商品Aは9800円、Bは4980円、Cは2980円という3つの価格帯のシャツを用意します。Aは見せ筋、Bは一番売りたい商品、Cは下限の商品です。
価格を設定する際、AとBの価格差は大きく取り、それと比べてBとCの価格差は小さくします。BとCの2つだけだとCが売れますが、Bより上位のAを用意することでBが売れるようになります。
用意する価格は3つがベスト、多くても4つまでが良いでしょう。多すぎると、今度は選択する際の心理的負荷が大きくなり、結果、購入を辞めてしまうことが実証されています。
スキミングプライシングとペネトレーションプライシングを組み合わせ、松竹梅の価格に分けて出す場合もあります。
値入ミックス
価格に関しては、できる限りカスタマーバリューを上げて利益が出る値付けをオススメします。しかし、「集客のために、価格をフックにした目玉商品を多く用意したい」という場合もあると思います。
その時は、異なる値入の商品を組み合わせて、トータルで利益を出す値入ミックスという方法を用います。
各商品のSKU(サイズや色違いなど商品の最小単位)ごとの粗利率に、各SKUの構成比をかけて出てきた数字(相乗積)をすべて足すと全体の粗利率が出てきます。なお、粗利率は「(売価-商品の仕入れ値)÷売価」または「売上原価÷売上」で算出できます。
実際に計算してみます。一番右下の数値がトータルの粗利率となります。
パターン1:高付加価値商品Aと通常商品Bの構成比を上げ、目玉商品Cは低めに設定した場合
商品 | 粗利率 | 構成比 | 相乗積 |
---|---|---|---|
A(高付加価値商品) | 50.0% | 30.0% | 15.0% |
B(通常商品) | 40.0% | 60.0% | 24.0% |
C(目玉商品) | 10.0% | 10.0% | 1.0% |
100.0% | 40.0% |
パターン2:目玉商品Cの構成比を上げた場合
商品 | 粗利率 | 構成比 | 相乗積 |
---|---|---|---|
A(高付加価値商品) | 50.0% | 10.0% | 5.0% |
B(通常商品) | 40.0% | 30.0% | 12.0 % |
C(目玉商品) | 10.0% | 60.0% | 6.0% |
100% | 23.0% |
いかがでしょうか、商品の構成を変えるだけでこれだけ粗利率に影響してきます。戦略的に商品構成を考えることがどれほど重要かわかるでしょう。
2回にわたり、商品戦略と価格戦略について解説しました。ECのノウハウというと、サイトのデザインや機能に関しては面白く、早く知りたいと思う方も多いかもしれません。しかし、そういった内容は、まず会社としての戦略、戦術、計画書などの基礎を固めた上で初めて意味を持ってきますので、もうしばらくデザインなどのお話までお待ち下さい。