森野 誠之[執筆] 2023/2/14 8:00

佐川急便に続いてヤマト運輸も値上げを発表しました。全体的なインフレ、労働力減少などが原因です。2024年問題も抱える物流業界を2016年ごろから振り返ります。

宅配便取扱個数は2015年から急増。2030年前後まではこの傾向が続く

ニュースまとめ 宅配便取扱個数 国土交通省の調査 宅配便取扱実績
(画像は国土交通省の資料から編集部がキャプチャ)

国土交通省が発表した令和3年度の宅配便取扱実績から引用したグラフです。平成27年(2015年)から取り扱い個数が急増しているのがわかります。いったんは落ち着いたもののコロナによってまたも急増していますので、業界の流れとして取り扱い個数が増えていることを把握しておきましょう。

こちらの記事によると、2030年前後まではEC市場が伸びることが予測されていますので、そこまでは宅配便の個数も増加を続けるでしょう。

配送料の値上げ自体は2014年ごろから

配送料がまた値上げかも! の前に通販・ECに携わる皆さんは知っておきたい物流問題 | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/3868

数年、通販・EC市場の拡大などにともなう物流関連の慢性的な労働力不足が、業界内で問題にあがっていました。2016年末に起きた佐川急便さんの配送遅延や荷物の取り扱い問題などによって、物流業界でいま起きていることが少しずつ広まってきたのではないでしょうか。

2017年の記事です。このころは配送費が安くて当たり前、業者を競争させればさらに下がるというイメージを持っていた人も多いのではないでしょうか? それが2016年末の佐川急便さんの遅延をきっかけに変わっていくことになります。

今後、物量は右肩上がりで増えると予想されます。

  • 荷物が消費者の希望した日時に届かなくなる
  • 配送業者からの取り扱い数量の制限
  • 配送料金の引き上げ

将来、こういったことが起きる可能性はゼロではありません。

瀧川編集長の予想は的中しています。母の日やクリスマスなど配送が集中する日は遅れたりパンクしたりするようになり、ヤマト運輸さんは2017年に総量規制を発表配送料金の値上げを発表しました。

消費者は送料無料を求め続ける

ネット通販の激増で日本の宅配便は崩壊する | 東洋経済オンライン
https://toyokeizai.net/articles/-/158973

負担が重くなっているのは、宅配便会社だけではない。「アマゾン」や「楽天市場」など、最近のネット通販では”送料無料”のサービスが増えている。が、これは販売業者が送料を負担するので、利用者は負担しなくてもよい、という意味だ。結局はどこかが被らなくてはならない。利用者は送料込みの値段で、高いか安いかを判断する。1回分の送料は販売価格に含まれ、販売価格が高くなれば、競争上不利にならざるをえない。

こちらも2017年の記事から引用です。「ECは送料が無料になる」このイメージはずっと変わりません。「『送料当社負担』が良いのでは?」という意見があっても、消費者には「無料」が響くとなれば事業者側が表現を変えることは少ないでしょう。

全国の20歳~69歳の男女1000人に聞いた「送料設定や画像、ユーザーが求めるECとは」 | ネオマーケティング
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000271.000003149.html

ニュースまとめ ユーザーが求めるEC 嬉しいと感じる送料設定 調査
(画像はネオマーケティングのプレスリリースより)

一番嬉しいのは「全品送料無料」。同じものならポイントがついたり送料が無料になったりするのが良い。それはそうですよね、私も同じですから。こちらもずっと変わらない。

楽天・三木谷社長が語った「送料無料ラインの全店舗統一」「ワンデリバリー」など2019年以降の戦略まとめ | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/6175

(楽天市場は)送料がそれぞれの店舗で異なる。約8割の店舗が●●●●円以上で送料無料としているが、店舗ごとでバラバラのためお客さまの印象では、(送料が)高くなってしまっている。印象で他社に負けてしまう。消費者は統一した送料体系を要望している。

楽天出店者に激震が走った「送料無料ラインの全店舗統一」。今までの流れを見れば当然といえます。3980円がそのラインになり、2023年1月の新春カンファレンスでは「配送認定ラベル」の導入も発表され、品質も求められるようになってます。この動きは止まらないでしょう。

置き配、宅配ロッカーが普及し、配達員への気遣いも進んでいる

「置き配」で再配達削減へ――国交省と経産省が検討会立ち上げ | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/6326

置き配バッグを玄関に置いたら…再配達率43%削減に成功 | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/5753

ヤマト、オープン型宅配ロッカー「PUDO」を提供開始 ー 2022年度中に5000台の設置を目指す | ST
http://shopping-tribe.com/news/29192/

置き配に関して、当初は安全面を気にする人がいましたが、今では当たり前になっていますね。宅配ロッカーも駅やドラッグストアなどいたるところで見かけます。こちらはコロナの影響で普及が一気に進みました。

【「置き配」に関するアンケート調査】「置き配」魅力1位は、「配達員の負担が減るから」ヒトと環境に配慮した“サステナブルな物流”に意識が高まる | コマースピック
https://www.commercepick.com/archives/16908

ニュースまとめ 置き配 推奨するポイント 配達員の負担軽減 再配達不要 調査 サステナブルな物流
(画像はLOCCOのサイトから編集部がキャプチャ)

置き配をオススメする理由の1位は「配達員の負担が減る」。消費者は送料無料を求めるものの、配達員には負担をかけたくないという意識になっています。

今度は2024年問題と世界的なインフレ

物流業界の「2024年問題」で「自社も取引先も影響を受ける」は5割、卸売・小売業の課題は「サービス・商品の値上げ」 | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/9933

「2024年問題」とは、働き方改革関連法の施行に伴う「時間外労働時間の上限規制」などが2024年4月から「自動車運転の業務」にも適用されることで、運送会社では収入減少によるドライバーの離職や売上減、荷主企業は運賃値上げの可能性などが危惧されている物流業界の諸問題を指す。

物流業界に新たに生まれた2024年問題。配達員へ配慮するのであればトラックのドライバーに配慮するのも当然です。業界の健全化が配送費に影響を及ぼしてきそうです。

ヤマト運輸「年度ごとに運賃を見直す」。「宅急便」「EAZY」「宅急便コンパクト」「国際宅急便」は10%値上げへ | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/10616

【佐川急便とヤマト運輸】法人向け宅配料金の値上げ示唆 すでに10%上昇を通告された事業者も | 日本ネット経済新聞
https://netkeizai.com/articles/detail/8064

資源・エネルギー価格や原材料価格の上昇に伴うインフレ傾向、労働力減少による賃金や時給単価の上昇、2024年問題を控えた物流事業者を取り巻く外部環境などの変化・対応のため、値上げに踏み切る。

送料に限らずあらゆるものの価格が上昇しています。ドライバーを確保するためには労働条件を良くしたいけれど、物価が上がってしまって送料の値上げ分では追いつかない可能性もあります。自社独自の物流網を確保するなど工夫をしても限界がありそうです。

早さと安さを求めるユーザー、売り上げを伸ばしたいモールや事業者、外部環境に苦しむ配送業界。2023年は物流に頭を悩ませる年になりそうです。

今週の要チェック記事

【ステマ規制】消費者庁が公表した運用基準案とは?判断基準は第三者の「自主的な意思」の有無 | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/10610

規制はしたいけれど具体的な事例を出すと抜け道も生まれる。どこが落としどころになるのでしょうか。

Shopifyの手数料はどれくらいかかるの? | アプロ総研スタッフコラム
https://www.apro-soken.co.jp/column/shopify/shopify-commission.html

アプリをたくさん入れたらそれぞれで従量課金…ということにならないように注意しましょう。

「これが欲しかった」とBondeeに感じる理由 Z世代VCが語る、次世代SNSの魅力とつながりに求めるもの | CreatorZine
https://creatorzine.jp/article/detail/3958

今はあまり話題になってないですが流行りそうな「Bondee」。早めに使っておくとよさそう。

「PayPayチラシ」提供開始 チラシで「誰が・どこで購入したか」が分かる時代に:8000店舗以上で導入 | ITmedia ビジネスオンライン
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2302/07/news157.html

「誰」といってしまうと個人情報が気になってしまいますね。こういった表現は考えもの。

アマゾン日本事業の売上高は約3.2兆円、ドルベースは243億ドル(前期比5.7%増)【Amazonの2022年実績まとめ】 | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/10620

この伸び率でも世界で見たら低いほう。Amazonは常に大きく成長しています。

創業90年以上 BtoB向けニット工場ノグチニットが自社ブランドを立ち上げたワケ | ECzine
https://eczine.jp/article/detail/12289

身の丈にあった運営を続けている事例。今の時代はこういったショップが増えています。

楽天新春カンファレンス2023まとめ | コマースデザイン
https://www.commerce-design.net/blog-staff/230209-rakuten-conference-2023/

SKUに対応して配送にも対応しないといけないですね。あわせてシステムもアップデート。

今週の名言

本当にその会議はムダですか?目的を忘れて効率化しても意味がない | パワー・インタラクティブ
https://www.powerweb.co.jp/blog/entry/2023/02/03/100000

会議の効率化をはかるなら、どこを効率化して、どこに「自由な余白」を残しておくのか。その見極めが大事だということです。

配送を効率化するときも同じでしょうし、自社の業務の効率化をするときも同じでしょう。適度な余白がないと息苦しくなってパンクします。

筆者出版情報

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