国内EC市場活性化に向けた“4つのシナリオパターン”とは? 日本のBtoC-EC市場「2024年にはEC化率が10%に到達する」
オンラインマーケットプレイスの構築・運用支援サービスのMirakl(ミラクル)は、レポート「国内BtoC-EC市場の近未来予想と活性化への期待」を公開した。
レポートは経営者層、新規事業開発者、DX推進者、新規事業開発者、EC責任者向けの内容で、デジタルコマース総合研究所の協力の下、国内EC市場活性化に向けた4つのシナリオパターンなどを提示している。
“国内EC化率10%”の未来が間近に
Miraklが実施した記者発表会には、ゲストとしてデジタルコマース総合研究所代表取締役の本谷知彦氏が登壇。「国内BtoC-EC市場の近未来予想と活性化への期待」を踏まえながら、EC市場の概観、国内EC市場の見直し、国内EC市場活性化のシナリオパターンなどを解説した。
物販系のBtoC-EC市場について、本谷氏は「コロナによるEC市場規模の押し上げ効果は1兆3676億円」(※デジタルコマース総合研究所推計)と説明。「このままのペースだと2024年にはEC化率が10%に到達する」(本谷氏)と分析している。
また、EC化率はカテゴリーごとに偏りが大きいことを指摘。事前探索で製品の特性が理解できる家電などの「探索材」はネットとの親和性が高く、EC化率が高いようだ。
プラットフォーマーへの依存度は依然高く
国内EC市場の特性については、主要ECプラットフォームが市場規模全体に占める比率は7割に達すると説明。EC売上高の上位500社であっても、プラットフォーマーへの依存度が高いことを指摘した。
やがてくるピークアウトをいかに乗り切るか?
本谷氏は、ECはコンビニより参入障壁が低いことから「コンビニ市場よりも早くピークを迎える」と想定。EC市場は成熟期へと変化しているとし、「市場に大きな変革が生じなければ2030年前後に20兆円で第1次ピークアウトが到来する」と予想している。
それを踏まえ、「これまでの延長線上ではない新たなステージへ切り替えるために、より大胆な施策が重要な時代になった」(本谷氏)と提唱している。
市場活性化に向けた4つのシナリオとは?
本谷氏が予想する国内EC市場活性化のシナリオパターンは次の4つ。
- シナリオ1:既存大手ECプラットフォームのさらなる流通総額拡大による市場規模拡大
- シナリオ2:新たな大型プラットフォームの出現による市場規模拡大
- シナリオ3:DtoC-ECの隆盛による市場規模拡大
- シナリオ4:ミディアムサイズプラットフォームの台頭による市場規模拡大
シナリオ1は大手プラットフォームの存在感が今後も継続するイメージ。「楽天市場」、Amazon、「Yahoo!ショッピング」などの既存大手プラットフォームの流通総額がさらに拡大し、EC市場全体が活性化する想定だ。
シナリオ2は、大手プラットフォームを超えるような新たな大手プラットフォームが出現し、大型ECプラットフォーム同士の競争が激化するイメージ。既存のECプラットフォームが大型化し、新たな巨大勢力として台頭する場合もこのシナリオに含まれる。
シナリオ3は、大手を含むECプラットフォームへの出店・出品から、DtoCによる独自路線へ切り替えるメーカーが続出するイメージ。このシナリオの背景には、スマートフォンやSNSの普及によって、メーカー自身が消費者と直接的につながることができるようになってきたことがある。
シナリオ4は、従来にない商材を新たに加えることで、プラットフォーム化を推進し、販売力を向上するイメージ。“目利き”の力が重要になることや、全体的なブランディングをどのように構築するかが課題要素としてあげられる。
本谷氏は、シナリオ1とシナリオ4について実現性が高いと指摘。特に、「ミディアムサイズプラットフォームの台頭は商材の提供側、販売側双方にとってメリットがあると想定され、仕組みやソリューションが整備されれば現実的な選択肢になり得る可能性が高い」(本谷氏)と話している。