産直品市場、2027年までに3兆6900億円を予想。コロナ禍で産直EC活況、アフターコロナでも継続なるか
矢野経済研究所が実施した国内の産直ビジネス市場調査によると、2022年の産直農産品の市場規模は3兆3177億円(事業者による流通総額ベース)だった。将来的には、2027年までに3兆6900億円に拡大すると予測している。
その背景には、仕入れ価格の安定させやすさといった産直農産品ならではのメリット、販売事業者による普及活動、ECでの流通拡大などがあるようだ。
2022年の卸売市場を含む農産品市場規模全体は前年比100.2%の9兆4484億円(事業者による流通総額ベース)。このうち、産直農産品の市場規模は、全体の伸びを上回る前年比100.7%の3兆3177億円と推計している。
矢野経済研究所は、産直農産品は2027年には、2022年比111.2%の3兆6900億円になると予測。卸売市場を含む農産品市場規模全体は2022年比100.5%の9兆4945億円を予測している。
調査における「産直ビジネス」は、従来の卸売市場を経由せず、直接、産地から小売事業者や消費者などに流通させる事業と定義。産直農産品は、こうして流通した国産の青果物(米、果実含む)を対象としている。
市場活況の背景には農業への参入規制緩和も
インターネット通販で生産者から消費者に野菜を届ける、いわゆるオンラインマルシェの利用が拡大している。
国内での高齢化や担い手不足による離農の進行を食い止めるため、2009年に実施された農地法の改正では、農業への参入規制が緩和。また、2015年の同法の改正では、農地を所有できる法人の要件が見直された。
オンラインマルシェは2020年に大きく拡大した。その背景の1つには「国産農林水産物等販路多様化緊急対策事業」(農林水産省)がある。新型コロナウイルス感染症拡大の影響で販路を失った農林漁業者や加工業者の販売促進を支援する取り組みだ。
「コロナ禍前に比べ、販売額が2割以上低下する」などの条件を満たす流通事業者が同事業の支援対象となり、消費者(利用者)への配送料や広告宣伝費などの支援が受けられる。
メリットは、支援によって配送料を負担せずにEC市場に参入できること。これまでEC利用をためらっていた消費者の利用を促進できたほか、産直宅配の利便性や、魅力ある商品の消費体験がリピーターの獲得にもつながっている。
アフターコロナに向けて、矢野経済研究所は次のように指摘している。
コロナ禍の収束とともに、こうした販路開拓支援が終了するなか、今後、産直宅配に取り組む事業者が、商品力や利便性の高さなど、配送料をかけたとしてもあまりあるメリットをいかに消費者に訴求していけるかが重要と見る。
調査概要
- 調査期間:2022年9⽉~2023年1⽉
- 調査対象:農業生産法人(⾃社・契約型農場、CSA)、農産品流通事業者(オーガニック農産品流通、産直プラットフォーム)、農産品販売事業者(農産品直売所、フードロス関連ビジネス、体験型農業テーマパーク〈観光農園〉、産直宅配、需給マッチングビジネス)など
- 調査方法 :矢野経済研究所の専⾨研究員による面談取材、電話、質問紙などによる間接ヒアリング、および文献調査併用