E-Commerce Magazine[転載元] 2023/12/7 7:00

ECサイトのCVRは利益に関係する指標のため「平均値」や「CVRを改善させる方法」などが気になるものです。ECサイトを成功に導くには、効果的なマーケティング戦略を構築させる必要があります。本記事では、ECサイトのCVRについて概要や改善のコツなどを紹介します。

ECサイトにおけるCVR(コンバージョン率)とは?

ECサイトにおけるCVR(コンバージョン率)とは、ECサイトの運営上の成果を測定する指標です。コンバージョンとは「ユーザー行動のなかでも、目標数値にしているもの」を指します。

ECサイトのコンバージョンは主に「購入」ですが、場合によっては「会員登録」にする事業者もいます。つまり、ECサイトの利益につながるものに設定しているのです。そして、ECサイトに訪問したユーザーの内、何割がコンバージョンに通じる行動を取ったのか、割合を示したものがCVRです。

CVRの計算方法

CVRの計算方法は、下記の通りです。

CV数÷サイトへの訪問者数×100=CVR

たとえばサイトの訪問ユーザー数が2000人で、購入数が20件だったなら下記のような計算になります。

20÷2000×100=1%

指定した期間内でサイトに訪問したセッション数を基に、計算していきます。

CVRの目安

ECサイト運営においてCVRの目安は一般的に1〜3%と言われています。米国のWordStreamが調査した結果では、ECサイトのCVRは1.84%が中央値であると発表しました。(引用元:What’s a Good Conversion Rate?|Word Stream

CVRを高めようとした際、集客に力を入れると必然的にCVRが下がってしまいますが、大きな課題にはなりません。もしほかの施策のプロセスを見て、著しく低下しているのであれば分析が必要です。

商品ジャンル別の平均CVR

Adobeの調査によると、商品ジャンル別の平均CVRは次のような結果になっています。

  • ギフト:4.9%
  • 健康、医薬品:4.9%
  • アパレル:4.2%
  • その他:3.4%
  • スポーツ用品:3.1%
  • ジュエリー、化粧品:2.9%
  • 大手チェーン:2.3%
  • インテリア:2.3%
  • 自動車:2.2%
  • 日用雑貨、大手用品:1.7%
  • 家電:1.4%

以上の調査結果から、健康やアパレルのようなジャンルはCVRが高い数値を出しているのがわかります。また、自動車や家電のような高単価商品は、比較的CVRが低い結果になっているようです。(引用元:Digital Index Consumer Electronics Report 2020

目標値について

ECサイト運営をするうえで「平均値」はあくまで目安です。目標値と混同しないよう、気を付けてください。

前述した平均値について見ても、業界や扱う商品、ターゲットなどによって異なります。運用を進めるなかで目標の売り上げ・利益をかんがみながら、目標のCVRを独自に定めましょう。

ただし、0.1%など過度に低い場合は明らかに異常です。

ECサイトのCVRが低くなる4つの原因

ECサイトのCVRが低くなる主な原因は、下記の通りです。

  • 広告のターゲティングが外れている
  • サイトの構造に何らかの問題がある
  • 市場環境の変化に対応できていない
  • 今すぐ購入すべき理由を明示していない

順番に紹介していきます。

1. 広告のターゲティングが外れている

広告のターゲティングが外れてしまうと、CVRが低くなります。ターゲット外のユーザーに広告を配信しても購入にはつながりにくいからです。

たとえば10代の女性をターゲットにした商品ラインアップなのに、30代以降の女性に広告が表示されても、サイトから離脱してしまいます。年齢層や性別、地域などがずれていた場合も、ユーザーの興味関心につながらないと広告の効果は得られません。

2. サイトの構造に何らかの問題がある

ECサイト自体の構造が使いにくいなど何らかの問題があった場合、ユーザーの購買意欲を高められず、かえってCVRを低くしてしまいます。たとえば次のような問題があった際は、早急に対策しましょう。

  • 会員登録フォームに記入する項目が多い
  • 誇大表現が多くて信憑性が低い
  • 検索機能が不十分で欲しい商品を見つけにくい
  • 商品情報が不透明でわかりにくい

このような問題が発生しないようECサイトを構築して、ユーザーが欲しい商品に早く辿り着ける導線の確保が必須です。ユーザーの興味関心に沿えるよう、寄り添ったECサイトを構築していきましょう。

3. 市場環境の変化に対応できていない

市場環境に順応した商品を展開できていないと、CVRが低くなります。なぜなら、ユーザーの好みは常に変化していくため、ニーズに沿った商品に進化させていく必要があるからです。

アパレル業界でたとえるなら、夏服がよく売れるのは夏のシーズンでそれ以外のシーズンはCVRが下がるものです。市場環境の変化に対応するためにも、季節や流行に沿ったニーズ調査が重要といえます。

4. 今すぐ購入すべき理由を明示していない

ECサイトのCVRを下げる要因の1つに、ユーザーの購入意欲を高められていない点があげられます。なぜならECサイトに訪問したユーザーは、いつでも購入の機会があるためです。言い換えれば、購入するのを後回しにできるので、緊急性が低いものになっているのです。

たとえばユーザーが商品を検索するタイミングが移動中や休憩時間だった場合、検索の目的が商品の購入ではなく、「ただ覗いただけ」といった理由が考えられます。その際に「限定クーポン」などを提示することで、ユーザーの購入テンションを高めることができます。

ECサイトのCVRを改善する12のコツ

次にECサイトのCVRを改善するコツを解説します。それぞれ順にみていきましょう。

1. モバイルファーストに対応する

モバイルファーストに対応したサイトを構築すると、ECサイトのCVRを改善できます。なぜなら、昨今ではスマートフォンでECサイトを閲覧しているユーザーが増えているからです。

パソコンと比較してみても、スマートフォンの方が上回っていると同時に購入数も多い傾向にあります。つまり、モバイルデバイスに適したサイトの構築が不可欠です。たとえば、ボタンが視認しやすかったりスクロールしやすかったりするなど、ユーザビリティを考慮しましょう。

ただし、具体的な検討や購入はタブレット端末やPCを利用するケースも多いため、これらのユーザビリティも疎かにはできません。

2. レビューの質と量を高める

レビューの質や量が多いECサイトや商品があると、CVRを改善できます。ユーザーが商品購入を決めるポイントに、レビューの質や量が関係しています。レビューの件数や悪い印象を与えるレビューが多く集まっているECサイトで、商品を購入したいユーザーは稀です。

つまり、ユーザー自身が他者に勧めるようなレビューが必要になります。たとえばレビューしたユーザーに対してポイントを付与するなどの施策を検討しましょう。

3. CVにつながるような導線設計を意識する

ユーザーが「商品を購入しやすい」と感じられるような導線を確保しておくとCVRを改善できます。商品購入までの導線や欲しい商品の検索機能などが不十分だと、購入機会を失ってしまうからです。

CVにつながるようなボタンの設置や絞り込みがわかりやすい設計にする必要があります。つまりユーザー目線に立った導線設計が重要なのです。

4. カスタマーサポート体制を充実させる

CVRを改善するためには、カスタマーサポートの体制を充実させておく必要があります。なぜならサポート体制が不十分な場合、購入意欲を低くしてしまうだけではなく、クレームや悪いレビューを集めてしまうからです。

購入したユーザーに対してのアフターフォローも充実しておけば、購入後のクレームを防止できます。特に大型家具のように高価な商品をECサイトで販売している場合、より注意しておきましょう。発送時にトラブルが発生した際、状況に応じた訪問修理サービスなども効果的です。

5. 多様な決済方法を用意する

CVRを改善したい場合、決済方法を増やすのが効果的です。なぜなら幅広い年齢層に対応できるからです。言い換えれば、決済方法が多ければユーザーにとって利便性が高くなります。

たとえば学生のようにクレジットカードの発行が難しい世代に対して、「後払い」や「キャリア決済」などを導入するのがおすすめです。またポイントを集めたいユーザーに向けてキャッシュレス決済を導入しておくのも利便性を高めてくれます。

6. ECサイトをメディア化する

ECサイトをメディア化させたCVR改善の施策が一般的になっています。なぜなら、ブランディング力を向上でき、企業への信頼度にも直結するためです。

たとえば商品開発の裏話や代表の想いなどを1つのコンテンツとして公開すると、読者の共感が得られてCVRにつながる見込みがあります。また、インフルエンサーとのコラボレーションでイメージ向上を図っている企業もあります。

7. かご落ち対策をする

ECサイト運営するうえで、かご落ちは避けたいものです。かご落ちとは、ユーザーが商品をかご(カート)に入れたのに購入しなかった状態をいいます。

たとえば、カートに入れて離脱する人は一定数いることを前提に、離脱ユーザーにメールで「お買い忘れはありませんか?」とリカバリーする施策は有効です。また、前述した決済方法が不十分だった場合も、かご落ちする懸念があります。カートに入れてから商品購入までの導線をなるべく短い工程で済むような構造にしましょう。

8. 商品画像や説明文を充実させる

ECサイトで販売している商品を見るユーザーにとって、わかりやすい商品画像や説明文を充実させるとCVRを改善できます。ECサイトは実店舗と異なり、実際に商品に触れないのでイメージが沸きにくいものです。

商品にもよりますが、正面からの写真だけでなくさまざまな角度で写真を撮っておく必要があります。特にアパレル業界であれば、サイズ感を伝えられるようにモデルが実際に着用した写真があると効果的です。

また、家具であれば雰囲気が伝わる写真とともに、ほかに合う家具やおすすめの活用方法など説明文を充実させるのもおすすめです。

9. 入力フォームの最適化を図る

入力フォームを最適化させたものを設計しておくと、CVRを改善できます。ECサイトが購入後に顧客とやり取りするには、ユーザーの名前や住所などの情報が必要です。

入力フォームの項目数が多いと、ユーザーは入力を手間に感じてしまい、入力途中で離脱する傾向があります。最適化できていないECサイトの離脱率は約60〜70%になると言われているため、注意が必要です。

10. 配送面の利便性を高める

CVRを改善したい場合、配送の利便性に注目しておく必要があります。なぜなら「購入後は早めに届けてもらいたい」と感じるユーザーにとって重要な要素になるためです。

たとえば、商品購入からユーザーのもとに到着するまでの期間や受け取り方法など、利便性の高さは顧客満足度に直結します。幅広い年齢層に届ける目的から決済方法を増やしても、商品到着までの期間が長いと、購入意欲を失ってしまうおそれがあります。リピート率を高めるためにも配送面を見直しましょう。

11. 返品無料

CVRを改善する目的から「返品無料」を取り入れるサイト運営者も多いです。この施策により、返品数が増えないか懸念があがりますが、意外と「返品率は上がらない」傾向にあります。そのため、購入のハードルを下げられるこの方法は、CVRを改善する施策として有効です。

特にアパレル業界で活用できる方法で、着用後にサイズ感が合わなかったと感じるユーザーにとって、返品無料は嬉しいポイントになります。ただし、高額商材は返品の送料が高くなるため、おすすめできません。

12. クーポンオファー

クーポンオファーの施策は、利益を考慮したアプローチが重要です。ユーザーにとって「お得感」をアピールできるので効果的ですが、闇雲にクーポンを発行すると利益率を下げてしまう懸念があります。

一例として、過去の施策に「時間設定」をしたクーポン発行がありました。「〇分滞在でクーポン発行」といった方法です。昨今では新規顧客に向けたクーポンのように限定したクーポンオファーが柔軟に調整できるようになりました。

ECサイトのCVR改善に役立つ6つのツール

ECサイトのCVRを改善する際に役立つツールは、下記の通りです。

  • チャットボット
  • アクセス解析ツール
  • EFOツール
  • サイト内検索(サジェスト)
  • ワンページカート
  • レコメンドツール

順番に紹介していきます。

1. チャットボット

昨今、CVRを改善するためにチャットボットが注目を集めています。チャットボットはユーザーからの問い合わせに24時間365日対応できるツールです。

導入するチャットボット次第では、商品の検索機能や注文状況の確認などが充実しているので、購買促進につながります。AI機能が搭載されていて、ユーザーに最適な商品を提案できる機能も搭載されています。ユーザーにとって人間とコミュニケーションしているような体験を提供できるので注目されているツールです。

2. アクセス解析ツール

アクセス解析ツールは、分析を実施する際に客観的な視点からデータを集められるツールです。ツールを導入すればユーザーの好みや傾向、流入経路、売れ筋商品などを洗い出せます。

ツールによってユーザーの行動を可視化できるので、CVR向上の施策を打ち出したい際に活用できます。ECサイトの問題点を洗い出して効率的に分析や改善したい事業者におすすめです。

3. EFOツール

EFOツールとは「Entry Form Optimization」の略称で、前述した入力フォーム最適化の施策で活用されるツールです。ユーザーにとって、入力を効率的にできるツールで、郵便番号を入力したら自動で住所が反映される機能などがあります。

しかしセキュリティ面で注意しておく必要があり、良質なツールの判断も難しいといえます。万が一の場合、顧客の情報漏洩といった懸念もあるため、セキュリティ対策に関する確認はしっかりと行ったうえで選定しましょう

4. サイト内検索(サジェスト)

ユーザーがサイト内で商品を検索した際、「0件」と表示されるのは避けたいものです。またユーザビリティを重視した施策としてサジェストは、キーワードを予測して表示する機能なのでおすすめです。

たとえば、カーディガンが欲しいユーザーが「カー」と入力しただけで「カーディガン」と予測できるような構造を用意しておきます。ECサイトを運営する事業者は、ユーザーの行動を予測や分析し、よく検索される言葉をタグ検索できるようにしておくのもおすすめです。

5. ワンページカート

ワンページカートとは、ページ遷移なしで購入可能なツールです。従来カートシステムは、注文者情報や配送先情報の入力画面や支払い方法の選択などが別々のページに遷移していました。

それぞれのページに遷移するため、通信環境次第では最初から入力する状況も考えられます。つまり、ユーザーの離脱率やかご落ちを防止するためにおすすめのツールがワンページカートです。

6. レコメンドツール

レコメンドツールとは、ECサイトで商品をカートに入れたユーザーに向けて関連商品や類似商品を表示させるツールです。前述した送料無料サービスを展開しているECサイトの場合、特に有効です。

ユーザーにとって「あと〇〇円カートに入れれば送料無料になる」状況になった際、関連したものやおすすめの商品を表示させると、購入意欲の向上につながります。

ECサイトのCVR向上の事例

ここからはECサイトのCVR向上について、企業の事例を3社紹介します。

  • ozie
  • アンブリオリス
  • ファルベ

1. ozie(柳田織物)

ozieは、チャットボットの導入で問い合わせ数を5倍に増加、CVRが38%向上した企業です。ユーザーの問題解決を効率化させる目的から導入し、問い合わせ増加につながりました。

また、チャットと電話対応を併用し、スピーディーかつ丁寧な顧客対応を実現しています。これらの施策により、実店舗と変わらない接客レベルを実現することで成長している企業です。

2. アンブリオリス(アンブリオリス・ジャパン)

コスメ商品を扱うアンブリオリスは、2019年1月にCVRが7%を超えた企業です。カスタマージャーニーを踏まえて戦略的なPRやプロモーションを実施したことで、ブランドに興味をもったユーザーをサイトに誘致することに成功しています。

SNS運用においてもInstagramの発信で、ユーザーが投稿したくなるような商品を企画しているのが特徴的です。なかでも「Amazon Pay」の導入がCVR向上に直結していて、全体の40〜50%を締めています。

3. ファルベ

参考:ファルベ

ウェディングアイテムの製造から販売までを手がけているファルべは、モバイルファーストやカテゴリーの再構築などから業績を回復した企業です。ECサイトをリニュアールした翌月2020年10月の月商は、前年同月比130%に拡大しました。

新型コロナウイルスの影響もあり、結婚式のキャンセルや延期が相次ぎ、売り上げの減少が問題視されていましたが、そのような状況のなか、商品数が3000点を超える大規模なサイトリニューアルを成し遂げて、ユーザビリティを向上させ、CVRの向上に成功しています。

ECサイトのCVRでよくある3つの質問

ここからはECサイトのCVRでよくある質問を紹介します。今回紹介するのは下記の3つです。

  • ECサイトにおける離脱率の平均値は?
  • CROとは?
  • CVRが高いECサイトのTOPページとは?

それぞれについて詳しくみていきましょう。

質問1. ECサイトにおける離脱率の平均値は?

ECサイトにおける離脱率の平均値のデータはありますが、必ずしも平均値を目標にしてはいけません。なぜなら業界や商品、ターゲットなどの観点からユーザーの行動パターンが異なるからです。

つまり、競合他社と比較するのではなく、自社ECサイトの数値から分析する必要があるのです。たとえば前年度より離脱率が高くなっているなら、何が問題だったのか洗い出さなければいけません。自社ECサイトを定期的にモニタリングしておきましょう。

質問2. CROとは?

CROとは、「Conversion Rate Optimization」の略でCVR改善を目的に実施する施策です。CVRが上がらない際の原因を洗い出し、適切な施策をめざしたものです。

たとえば離脱率が高いページを分析し、原因を追求しながら改善する施策やCVRの高いページを他のページで検証できるか分析していきます。

質問3. CVRが高いECサイトのTOPページとは?

CVRが高いECサイトのTOPページは、百貨店のコンシェルジュのような役割を担う重要なものと認識しましょう。TOPページは、ユーザーにとって求める商品ページまで辿り着けるかを左右させるページです。

導線が整っていないと離脱率を高めてしまうので注意が必要です。離脱率を高めないように検索窓を見やすい位置に設置しましょう。

まとめ

今回はECサイトのCVRについて、計算方法や目安を踏まえた概要やCVRを高めるコツなどを紹介しました。ECサイトのCVRは、ユーザーにとってもらいたい行動を成果とし、数値化した指標になるもので利益に関係しています。

サイト構造に問題があったりターゲティングが外れていたりすると、CVRを低くしてしまうので適切な施策をしておきたいもの。ぜひ今回紹介したCVRを改善するコツをもとに自社ECサイト改善の参考にしてください。

この記事はフューチャーショップのオウンドメディア『E-Commerce Magazine』の記事を、ネットショップ担当者フォーラム用に再編集したものです。

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