顧客単価の計算方法、具体的な上げ方、下がる要因――なぜ重要なのか10のポイントを解説!
顧客単価は、売り上げに大きな影響を与える重要な数値です。売り上げは「顧客単価×個数」で計算でき、顧客単価の向上は「経営の安定」に大きく影響します。
本記事では「売上向上を目的に顧客単価を高めたい」と考えている経営者オーナーに向け、具体的な方法や注意点などを紹介します。
顧客単価とは?
顧客単価とは、1人の顧客が一度に購入した金額を指す言葉です。売り上げを分析するうえで重要な数値になるので、ECサイトを運営するなら欠かせないものです。
訪問者数・購買数が少なくても、顧客単価が高額であれば売り上げは高まります。
顧客単価の計算方法
顧客単価の計算方法は、下記の通りです。
売上金額÷購入者数=顧客単価
具体的な例をあげます。売り上げが100万円で購入者数が500人だった場合、顧客単価は2000円です。顧客単価の指標はデータとして取得して改善するために、特定の期間を定めておきましょう。
前月・前年と比較した際に顧客単価が下がっていれば、どこが問題だったのか気づけます。顧客単価はECサイト運営において重要な指標です。
顧客単価が下がる主な要因
顧客単価が下がる主な要因は、いくつかあります。たとえば「ECサイトの動線設計の失敗」です。ECサイトを改善するつもりで動線設計を変更した後に顧客単価が下がった場合、顧客1人あたりの購入個数が減っている可能性があります。
また「市場の変化」も顧客単価が下がる要因の1つです。たとえば競合の参入により商品自体の単価を下げざるを得なくなることがあります。また顧客ニーズの低迷により商品の購買個数が減ることもあるといえます。
そのほかクーポン・割引券の発行による顧客単価の低下もありえます。販促手法を用いる場合、リピート率などを観察して、効果が出ているかをリサーチしましょう。
顧客単価を上げる前にまず考えるべきこと
ECサイトの運営において「顧客単価の向上」はいずれ取り組まなければいけません。しかし顧客単価を高める前に下記のポイントを達成しているかを観察しましょう。
- ECサイトのUU数とCVRは安定しているか
- 売れ筋の商品はあるか
この2点について、順番に紹介していきます。
ECサイトのUU数とCVRは安定しているか
ECサイトの顧客単価を上げる前に、「ECサイトの設計」ができているかを観察しましょう。
まずは「適切な顧客単価」を考える必要があります。ECを経由した十分な売り上げがなければ、適切な顧客単価を考えるためのデータがありません。まずは「UU数」と「CVR」を十分高めて、安定した売り上げを立てることが重要です。
UU数とは、ユニークユーザー数の略称で、ECサイトの訪問者数つまりアクセス数をいいます。またCVRとは、コンバージョンレートの略称で、コンバージョン率とも表現する購入率です。UU数は集客のためのマーケティング施策で増やします。一方でCVRはECサイトのデザイン・品質を高めることで増やせます。
売れ筋の商品はあるか
ECサイトの顧客単価を上げる前に、売れ筋の商品があるかが重要です。ECサイトを立ち上げたばかりの段階では、すべての商品が均等に売れるわけではありません。一般的にECサイト運営を成功させるためには「売れ筋の商品を作り、売り上げを安定させること」が重要です。
売れ筋商品が決まれば、それを軸に「バンドル商材を作る」「合わせ売りをする」など、顧客単価を上げる手段が増えます。まずはECサイトの売れ筋商品を決めていき、顧客単価の上げ方を考えましょう。
顧客単価を上げることが重要な2つの理由
顧客単価を上げるのが重要になる理由は、下記の通りです。
- 購入者数を増やすより確実性が高い
- 売り上げに大きなインパクトを与える
順番に紹介していきます。
1. 購入者数を増やすより、リスクが低く確実性が高い
顧客単価は、購入者数を増やすより効率的かつ確実性が高い手法です。
購入者数を増やす主な施策は以下です。
- テレビやSNSなどで広告を出す
- SEOで検索エンジンから流入する
- インフルエンサーにPRを依頼する
これらの施策は費用、時間が発生します。また「集客できるかどうか」も確実ではありません。
一方で顧客単価を高めることは追加コストなしで実施できます。結果的に購入者が減ったとしても、売り上げを担保できる可能性がありますし、売り上げが減っても利益率が高まる可能性があります。
2. 売り上げに大きなインパクトを与える
顧客単価を上げると、売り上げに大きなインパクトを与えます。冒頭で記載した通り、売り上げの具体的な計算方法は下記の通りです。
購入者数×顧客単価=売上
購入者数が1000人で、顧客単価が1000円から100円上がれば10万円の売上アップになります。
商品単価を上げる際の注意点
顧客単価を高める選択肢の1つが「商品単価のアップ」です。これはリスクが高く、状況次第では顧客離れが起きるので注意が必要です。
そこで商品単価を上げる際の注意点を紹介します。今回紹介する注意点は下記の2点です。
- 事前に3C分析で自社の優位性を明らかにする
- CRM・MAなどで顧客ニーズを分析する
順番に紹介していきます。
事前に3C分析で自社の優位性を明らかにする
考えなしに商品単価を上げてしまうと、前述した通り顧客離れが起きてしまいます。顧客離れを防止するために必要な方法が3C分析です。
3C分析とは、顧客・市場(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)のそれぞれを分析するフレームワークです。顧客ニーズを調査したうえで競合や自社のビジネスモデルを見て「自社の優位性」を導き出していきます。
たとえば「商品のターゲット層が若年層で、顧客ニーズがコストパフォーマンスだった」とします。この場合、商品価格を上げると多くの顧客が離れてしまう可能性が高いです。
一方で「高所得層がターゲットで、コストより品質を重視する」とします。この場合は少しの単価向上であれば、顧客離れが起きにくいと考えられます。
このように事前に「ターゲット層と顧客ニーズ」を理解したうえで、商品単価の調整を行うかを決めましょう。
CRM・MAなどで顧客ニーズを分析する
上記の「ターゲット層」「顧客ニーズ」を”なんとなく”で考えるのは危険です。必ず「実際のデータ」をベースとして論理的に分析しましょう。データを取得するためのツールにCRMやMAがあります。
CRM(Customer Relationship Management)とは、顧客関係管理・顧客管理ができるツールです。またMA(Marketing Automation)とは、マーケティング視点で顧客を分析できるツールです。
上記で算出したデータをもとに3C分析の質を上げていけば、論理的に値上げのタイミングや自社の優位性が見出せます。
顧客単価の具体的な上げ方12選
顧客単価の具体的な上げ方について、今回は下記の12選を紹介します。
- 商品の単価を上げる
- 提案型のセット商品を用意する
- キャッシュレス決済を導入する
- 高単価商品を用意する(アップセル)
- 商品ラインアップを増やす
- 関連商品でついで買いを促す(クロスセル)
- 3つの価格帯を用意する(松竹梅の法則)
- 優良顧客用の商品を提供する
- アップグレードを促進する
- 初回購入時のフォローに注力する
- 送料無料ラインの設定
- バンドル販売
それぞれ自社のECサイトに取り入れられそうなものから活用してみてください。
1. 商品の単価を上げる
商品の単価を上げるのが、最もシンプルな顧客単価を上げる方法です。商品価格が高いと「品質が高い」と認識されやすい特徴があげられます。
しかし、やみくもに商品単価を上げてしまうのは、前述した通り顧客離れが起きてしまうおそれがあります。つまり、リピーター率の低下になってしまうので、価格設定は慎重さが欠かせません。
たとえば価格設定のタイミングで「原材料にこれまで以上にこだわりました」などのメッセージを発信し、付加価値を提供するのも1つの方法です。
2. 提案型のセット商品を用意する
顧客単価を上げるには、セット商品やまとめ買いのような提案型を取り入れる方法があります。たとえば下記のようなメッセージで提案することで顧客単価を高められます。
- 5点セットで15%OFF
- 5000円以上購入で送料無料
上記以外にも「初回購入者向け」のようなパーソナライズされた提案、また年末年始の特売などシーズナリティによるレコメンドも効果的です。
3. キャッシュレス決済を導入する
キャッシュレス決済の導入は、ユーザーにとってポイントを有効活用できるようになるのでおすすめです。ポイントを多く持っているユーザーは、「普段買わない金額だけど買ってみよう」などの傾向が考えられるので、顧客単価を上げられます。
特におすすめなのが、ポイントがたまりやすい「楽天ポイント」です。「楽天Pay」が使えるECサイトであれば、多くのユーザーがポイントを消費して商品を購入します。またリピート率にも影響します。
4. 高単価商品を用意する(アップセル)
アップセルとは、顧客に「より高額な商品」を提案する販促手法です。
既にある商品を検討している顧客に対して「商品AよりBの方が、便利な機能が搭載されている」「今なら特別価格で販売している」などで提案し顧客単価を高めます。
5. 商品ラインアップを増やす
商品のラインアップを増やすと、顧客ニーズに沿った商品を提供できるので顧客単価の向上につながります。購入点数を増やせるような小物を取り揃えるのも1つの手です。
しかし、商品のラインアップを増やしすぎると、仕入れコストや商品の選定に労力がかかってしまいます。コストを考えたうえで利益率を担保できるよう、バランスを見ながら商品個数を増やしましょう。
6. 関連商品で「ついで買い」を促す(クロスセル)
前述した提案型のような施策でクロスセルもおすすめです。クロスセルとは「購入商品に関連したもの」を提案する販促手法です。
たとえば「スーツジャケット」の関連商品はネクタイ・シャツなどです。また「革靴」はシューズケア商品となります。
7. 3つの価格帯を用意する(松竹梅の法則)
松竹梅の法則とは3つの価格帯を用意する方法で、顧客の「失敗したくない」心理を取り入れた販促手法です。3つの価格帯の商品がある場合、多くの人が「高すぎるのは嫌だ」「安すぎるのは不安」と考える傾向が強く、中間を選びがちです。
松竹梅の法則で売れる商品個数は、比率にすると「松2:竹5:梅3」といわれています。自社ECサイトにとって1番売りたい価格帯の商品を竹に設定しましょう。
8. 優良顧客用の商品を提供する
自社ECサイトを頻繁に利用している優良顧客に向けた商品のレコメンドは、顧客単価向上につながります。顧客にとって優越感を得られるためです。
たとえばメルマガ送信で「数量限定商品」や「会員限定商品」を案内する施策が代表的です。メルマガを受け取った顧客に、お得感・特別感を演出できるので、顧客単価の向上につながるのです。
9. アップグレードを促進する
特にサブスクリプション型の商品の場合、アップグレードを促すことで顧客単価向上につながります。プランが1つの場合、顧客ニーズを見定められません。より手厚いプランを求めている顧客がいる可能性もあります。
サブスク型の商品では、定期的に買い替える場合が考えられます。商品に対する満足度が高い場合は、より多くの金額を支払って、手厚い商品を受け取りたいと考えているかもしれません。
ただしアップグレードプランを設定する場合は、特にリリース後にデータを取得し「上位プランが受け入れられているか」を観察しましょう。
10. 初回購入時のフォローに注力する
初回購入時のフォローは極めて重要です。
ECサイト運営にあたって2回目の購入を「F2転換」といいます。一般的に「2回目の購入」を促すことで3回目以降の購入につながりやすいといわれています。また新規顧客に比べて、既存顧客の獲得は1/5のコストで済むといわれます(1:5の法則)。
初回購入客への「2回目の購入で〇%オフ」などのメッセージングによって、F2転換率を高められます。
11. 送料無料ラインの設定
送料無料ラインとは「〇円以上の購入で送料無料」というマーケティング手法です。顧客に”もう1点”の購入を促進できます。
しかし設定するラインを誤ってしまうと、ほとんど貢献してくれません。たとえば商品単価が5000円以上なのに「あと500円で送料無料」と表示が出ても、購買促進にはつながりにくいです。
必ず、自社の商品単価・顧客の購買単価のデータを観察したうえで適切なラインを設けましょう。
12. バンドル販売
バンドル販売とは、特定の商品の組み合わせで割引を提案する販促手法です。顧客にお得感・利便性を感じてもらえます。
バンドル商品には定期的な買い替えが発生する消費財が向いています。たとえばアパレルなら、シャツ・靴下などです。
消耗品を売ることで、在庫管理の負担を減らしながら顧客単価を上げられるのが魅力です。
顧客単価を上げた際の成功例と失敗例
「futureshop」を利用している事業者を参考に、顧客単価を上げた際の成功例と失敗例を紹介します。
顧客単価を上げた際の成功例
「原材料費の高騰による値上げ」における成功例を紹介します。
ある事業者は、原材料の高騰に対応するため、もともと6000円の商品を7000円に値上げしたいと検討していました。事前にCRMを観察して顧客ニーズを調査した結果「品質が高ければ値上げにはそこまで抵抗がないだろう」と判断し、実施しました。
結果として購入者数・総売上は若干減少しました。しかし顧客単価が増えたため管理コスト削減・利益額増加を果たせました。最終的なゴールと言える利益の増加を重視し、顧客単価を上げるのが効果的です。
顧客単価を上げた際の失敗例
続いて失敗例を紹介します。送料無料のライン設定を安易に設定した結果、CVRが下がった失敗例があります。
ある企業はもともと「全品送料無料」を掲げていました。そんななか利益率を高めるために「送料無料ライン」を設定することになりました。
その際、事前にデータを見ることなく会社の目標をベースとして送料無料ラインを設定したのが、失敗の原因です。蓋を開けてみると、送料無料ラインに達するための商品が無かったため、購入者は増えませんでした。また送料が有料になったことで、顧客数が減少してしまいました。
このような事態を避けるためにも、施策を講じる前には必ず顧客と商品のデータを観察しましょう。
顧客単価の上げ方でよくある6つの質問
ここからは顧客単価の上げ方でよくある質問を紹介します。今回紹介するのは、下記の6つです。
- 顧客単価の上げ方で注意すべきポイントは?
- 客単価以外で売り上げを高めるには?
- ECサイトに有効な顧客単価アップの実例は?
- 自社ECのポイント制度は単価アップに貢献しますか?
- 「futureshop」利用客の顧客単価はどれくらいですか?
- 送料無料ラインと全品送料無料はどちらがおすすめですか?
順番に疑問点を回答していきながら紹介していきます。
質問① 顧客単価の上げ方で注意すべきポイントは?
顧客単価の上げ方で注意すべきポイントは「顧客の理解」と「分析・検証」です。まず顧客の理解は、前述した顧客単価の上げ方を実施するうえで不可欠な要素です。
何かしらの施策を実施する際、「顧客が納得してくれるのか」「メリットを感じてくれるのか」が決め手になります。顧客の理解なく顧客単価を上げようとしても、結果として顧客離れになるおそれがあります。
また、顧客の理解があっても満足してはいけません。施策が本当に成功したのかを分析しておけば、次回の施策における改善策の立案や実行ができます。
質問② 客単価以外で売り上げを高めるには?
顧客単価の向上以外で売り上げを高める方法は「新規顧客の獲得」や「既存顧客のリピート率向上」があげられます。そもそも売り上げは前述の通り「購入者数×顧客単価」で計算するので、新規顧客の獲得は売り上げを伸ばす大きな要因になります。
自社のECサイトを宣伝するために、チラシの配布やSNSの活用を実施しましょう。しかし新規顧客の獲得は、労力やコストに影響するものです。労力やコストをかけた新規顧客がリピートしてもらえるような施策が必須です。
たとえば「次回購入時に使用可能」なクーポンを配布する方法や紹介制度の導入などを取り入れていきましょう。何より新規顧客が「また利用したい」と思ってもらえるような商品やサービスになっているかが重要です。
質問③ ECサイトに有効な顧客単価アップの実例は?
ECサイトに有効な顧客単価アップの実例は、前述したクロスセルです。関連した商品を顧客が購入すれば顧客単価向上につながります。
たとえばAmazonが良い例です。何かカートに入れた際に関連商品が表示されます。表示された関連商品が購入されれば、顧客単価が向上するのです。
他のECサイトでも「2点目以降は10%OFF」「5000円から送料無料」などのサービスを提供しているECサイトがあります。自社ECサイトならではのサービスを展開していきましょう。
質問④ 自社ECのポイント制度は単価アップに貢献しますか?
自社ECサイトのポイント制度導入は、顧客単価よりもCVR向上の施策になります。なぜなら大手ECサイトのAmazonや「楽天市場」ほど「ポイントを貯めよう」とは考えにくいからです。
つまり自社ECサイトのポイント制度の一環として「10ポイントで〇%割引」などの施策は、長期的に見ると不向きになります。CVRの向上を効果的に上げたいなら「誕生月ポイント」「初回購入ポイント」など、その場で活用できるポイントを顧客に向けて設定できると効果的です。
質問⑤ 「futureshop」で構築したECサイトの利用客の顧客単価はどれくらいですか?
2017年にGMOリサーチが約1000人を対象にとったアンケートによると、1回あたりの平均購入金額は男女ともに80%以上が「6000円未満」と回答しました。(参考:GMOリサーチ株式会社「『ネットショッピングに関する実態調査』を日本国内で実施」)
一方で「futureshop」で構築したECサイトの顧客単価平均は、全体的に1万円〜1万5000円と、相場よりも高額になっています。
「futureshop」で構築したECサイトが一般的な顧客単価よりも高くなっているのは「サイト回遊性」を考え抜いて設計しているからです。
サイトの回遊性のデザインは難しく、回遊性を高めようと意識し過ぎると、かえって顧客は困惑してしまいます。離脱率を上げてしまい顧客単価まで下げてしまう恐れがあります。
質問⑥ 送料無料ラインと全品送料無料はどちらがおすすめですか?
送料無料ラインの設定と全品送料無料であれば、CVRの観点でいうなら全品送料無料がおすすめです。
一方で以前までは運送業者とのやりとりで送料を安く設定できましたが、昨今は定額となっており交渉がやりにくくなっています。そのため全品送料無料はCVRの観点ではおすすめですが、利益率観点でいうと現実的ではないといえます。
まとめ
ここまで、顧客単価の上げ方について、まず考えるべき点や重要な理由、注意点や具体的な上げ方などを紹介しました。顧客単価を上げるには、顧客の理解からはじめていく必要があります。
今回紹介した施策も、顧客ニーズの調査や分析・検証があってのものです。これまでに実施していない方法があれば、今回紹介した方法をぜひ実践してみてください。
この記事はフューチャーショップのオウンドメディア『E-Commerce Magazine』の記事を、ネットショップ担当者フォーラム用に再編集したものです。